次々と発表される各社世論調査での安倍内閣支持率低下が止まらない。遂に本日(7月14日)発表の時事通信の調査結果で、危険水域と言われる支持率30%割れのの数字が表れた。高慢のアベの鼻が折れた。第1次アベ政権投げ出しの醜態が思い出される。この支持率の数値が当然という思いと、これまでの高支持率はいったい何だったのかという釈然としない思いとが交錯して複雑な気持ではある。
ジリ貧が明らかとなった安倍内閣だが、手負いのアベがどう出るかはまだ読めない。これにまわりがどう反応するかも分からない。改憲の動きはどうなることやら。
常識的には、沈没しそうな船からは乗組員が逃げ出す。乗組員だけではない。ネズミだってヒアリだっておなじこと。逃げ遅れると、船長と不本意な心中となりかねない。これまではウマ味がありそうだとくっついていた有象無象が離れていくことになって、求心力は一気に消滅する。崩壊を待つだけのアベ政権に、もう何をする力もないだろう。
しかし、ジリ貧であればこそ今のうちにできることをやっておかなくてはならない、「我が亡き後に洪水は来たれ」と、猪突猛進することも考えられないではない。
次に選挙をすれば両院とも自民惨敗は明らかで、改憲勢力3分の2の議席は、再びはない永遠の夢となるかも知れない。それなら、今のうちに改憲発議をやってしまえ。捨て鉢にそうなりはしまいか。そのとき、自民の大勢はどうするだろうか。公明は、それでも下駄の雪を演じるだろうか? オポチュニストの集団である維新は風をどう読むだろうか?
都知事選自民惨敗後の世論調査の結果(いずれも、7月7?9日調査)は、以下のとおり驚愕の連続。
NNN 支持32% 不支持49%(差17%)
読売 支持36% 不支持52%(差16%)
朝日 支持33% 不支持47%(差13%)
NHK 支持35% 不支持48%(差13%)
永田町では、「支持率は4割がボーダーライン。2カ月続けて4割を割り込むと危険水域」なのだそうだ。この数字はアベ内閣が明らかに「危険水域」入りしたことを示している。これに加えての時事通信調査である。
時事通信 支持29.9% 不支持48.6%(差18.7%)
時事通信の本日発表の世論調査結果が、「安倍内閣の支持率は前月比15.2ポイント減の29.9%となった。2012年12月の第2次安倍政権発足以降、最大の下げ幅で、初めて3割を切った。不支持率も同14.7ポイント増の48.6%で最高となった」「学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題が響いた。東京都議選で稲田朋美防衛相が、自衛隊を政治利用したと受け取られかねない失言をしたことなども影響したとみられる。」「加計学園に関する安倍晋三首相の発言を信用できるかどうか聞いたところ、「信用できない」が67.3%に上り、「信用できる」の11.5%を大きく上回った。首相が説明責任を果たしているかどうかについても、「果たしていない」79.9%に対し、「果たしている」7.1%となり、首相に対する国民の不信感の高まりが浮き彫りとなった。首相の政権運営は険しいものとなりそうだ。」
「アベ内閣支持率29.9%」は衝撃と言ってよい。国民はアベ内閣とアベ個人に厳しい目を向けている。素晴らしいことだ。
ところが政党支持の調査を見ると手放しでは喜んではおられない。
自民党 21.1%(前月比?3.9)
民進党 3.8%(同?0.4)
公明党 3.2%(同?0.3)
共産党 2.1%(同?0.3)
維新 1.1%(同?0.2)
社民 0.3%(同±0)
支持なし65.3%(同+4.5)
確かに、アベ内閣からも自民党からも人心は大きく離れつつある。しかし、その受け皿がない。国民が信頼に足りるとする、アベ内閣ないしアベ自民党への対抗政治勢力の形成が不十分なのだ。
野党4党と市民運動の連携による「野党連合」こそがその受け皿にならねばならない。それに成功しないと、政治不信だけが蔓延する「議会制民主主義の危機」の時代が訪れることにもなりかねないのだから。
(2017年7月14日)
先日の日民協総会での意見交換の場で、仙台から出席の研究者から「今、5月3日以来安倍首相が提案している9条改憲案を『加憲的改憲案』と呼称することには違和感を覚える」という発言があった。「加憲」とは、厳密に新たに書き加えられた条文が既存の憲法条項の解釈に影響を及ぼすことがない場合にのみ使うべきで、条文の書き加えが既存の条文の意味を変えるおそれがある場合に安易に「加憲」と言ってはならない、というご趣旨。なるほど、そのとおりだ。
9条3項(あるいは9条の2)に、既にある自衛隊を明記するだけ。この条文を書き加えるだけだから「加憲」。この「論理」を是認してしまうと、まさにアベの思惑に乗せられてしまうことになる。憲法に自衛隊を明記することは、これまでの憲法の条文の意味を変えてしまうことになるのに、その注意をそらしてしまうからだ。
5月3日のアベ提案は、「9条1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持)を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」というもの。しかし、そもそも9条1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持)をそのままにして、憲法に自衛隊を明文で書き込むことなどできることだろうか。とりわけ、戦力不保持と自衛隊の存在とは両立し得ない二律背反ではないのか。それでも強引に自衛隊の存在を明文化した場合には、いったい何が起きるのだろうか。なによりも、「自衛隊を明文で書き込む」とはどんな条文となるかが肝腎だ。
6月22日の各紙が伝えている。
安倍晋三首相が提起した「自衛隊」を明記する憲法改正を巡り、自民党が検討する条文のたたき台が、21日判明した。新設する「9条の2」で、自衛隊を「我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織」と定義したうえで、「前条(9条)の規定は自衛隊を設けることを妨げるものと解釈してはならない」としている。執行部はこの案を軸に協議を進める考えだが、2項(戦力不保持)や2012年の党改憲草案との整合性を問う声もあり、9月にも策定する改憲案の集約が難航する可能性もある。(毎日)
共同配信記事は、次のように伝えている。
「自民党の憲法改正推進本部が、憲法9条に自衛隊の存在を明記する安倍晋三首相(党総裁)提案を踏まえ、今後の議論のたたき台とする条文案が21日、判明した。現行9条と別立ての「9条の2」を新設し、自衛隊について『わが国を防衛するための必要最小限度の実力組織』と規定。戦力不保持などを定めた現行9条2項を受ける形で『自衛隊を設けることを妨げるものと解釈してはならない』と明示した。首相が自衛隊の指揮監督権を持つことも盛り込んだ。党関係者が明らかにした。」
「推進本部は21日、全所属議員を対象とした全体会合を開き、9条への自衛隊明記案を巡って本格的な議論をスタート。賛成論が出る一方、9条2項との整合性の面などで異論もあった。条文案は示されていない。自民党は年内の改憲案策定を目指しており、早ければ秋にも具体的な条文案を巡って公明党との調整に着手したい意向だ。」
憲法9条2項が「戦力」の保持を禁止しているのだから、自衛隊は「戦力」であってはならない。ということは、自衛隊を「戦力」ではないことにすれば、違憲の存在ではなくなる。そこで、歴代政権は戦力を「固有の自衛権行使のために必要な最小限度を超える実力」と定義し、自衛隊は「固有の自衛権行使のために必要な最小限度内の実力組織」であるから戦力ではなく、したがって合憲としてきた。
しかし、アベ政権になって事情は変わった。長く、集団的自衛権の行使は憲法上できないとしてきた解釈を変えたのだ。自衛隊は基本性格を変え、もはや専守防衛の自衛隊ではない。同盟国の要請に応じて、海外での武力行使も可能な実力組織としての側面を持つものとなっている。その自衛隊を憲法上の存在として、「前条(9条)の規定は自衛隊を設けることを妨げるものと解釈してはならない」とすれば、明らかに9条1項、2項の意味が変わってくる。
戦争法反対運動が盛りあがったのは、「自衛隊違憲論者」だけでなく、「自衛隊の合憲性は認めるが専守防衛に徹すべきだ」とする論者も一緒に、集団的自衛権行使に反対したからだ。
自民党の「たたき台」案は、明らかに専守防衛路線否定を明文化するものにほかならない。戦争法の違憲を明文で合憲化することでもある。ということは、自衛隊違憲論者も、専守防衛なら合憲の論者も、共同してアベ9条改憲に反対しなければならない。反対運動は、自ずから大きなものとならざるを得ない。
(2017年7月12日)
いふまいとおもへどけふのあつさかな
暴力的なまでに照りつける強い日ざしの中の、真昼の街宣活動となった。
本郷三丁目のご近所の皆様、本三交差点をご通行中の皆さま。毎月第2火曜日の昼休みに続けております、定例の「本郷湯島九条の会」からの訴えです。暑いさなかですが、しばらくお耳を拝借いたします。
7月2日東京都議選から10日ほどが経ちました。その前と後とで、政治的な風景は劇的に変わっています。自民党は、前回59議席から23議席に激減しました。その後の世論調査での内閣支持率は軒並み30%代前半の数値を示し、あの読売の調査でも「不支持52%」となっています。
一強といわれた安倍政権は、誰の目にも行き詰まりが明らかとなっています。安倍自身はトカゲの尻尾を切っての生き残りを考えているようですが、それは甘い。国民は、尻尾ではなく頭のすげ替えを要求していると指摘しなければなりません。
アベ一強にガタがきた原因は大きく二つあります。
その一つが、悪法強行の濫発。特定秘密保護法、集団的自衛権行使を容認した戦争法、福祉の切り捨てや労働法制改悪。そして極めつけが治安維持法の再来というべき共謀罪法。いずれも、数を恃んでのゴリ押し。強行採決。終わったあとに、「これから国民の皆様に丁寧に説明してまいります」という口先だけの反省のポーズ。
もう一つが、政治と行政の私物化。「アベのアベによるアベのための政治」、あるいは、「オトモダチのオトモダチによるオトモダチのための政治」に、国民はノーを突きつけたのです。
では、選挙結果はアベ体制の崩壊が始まったことで、すべてOKだったか。イイエ、そうではありません。自民党から離れた票は、都民ファーストの会が最大の受け皿となって都民ファーストの会が55議席も獲得するという大きな変化が生じました。しかし、いったい都民ファーストの会とはなんでしょうか。実はよく分りません。都民は、実態がよく分からぬままに、巻きおこった風のまにまに、都民ファーストの会に投票してしまったのではないでしょうか。
たとえば、地元文京区の選挙結果を見てみましょう。立候補者は3名でした。そのうちの2人の憲法に対する姿勢ははっきりしています。憲法擁護、憲法の理念の実現を掲げる候補がひとり。共産党の福手裕子さんです。もうひとりは、現行憲法を敵視し自主憲法制定を党是とする自民党から立候補した中屋文孝候補です。この2人の票は接近し、26,782対26,997の票差わずか215票。得票率では、27.91%と28.13%でした。福手裕子さんは共産党公認でしたが、事実上護憲勢力の代表だったと言えます。そして、敗れはしましたが新人でありながら前回トップの自民候補と互角のつばぜり合いを演じました。
トップ当選は、前回民主党から出馬して落選した都民ファーストの会の増子博樹候補でした。間違いなく公明党の票もここに入っています。都民ファーストの会は護憲政党でしようか。それとも改憲政党なのでしようか。実は歴とした改憲派勢力だといわねばなりません。
都民ファーストの会の役員は2人だけ。代表の野田数(かずさ)と小池百合子、この2人だけですべてを決めています。野田は、スキャンダラスな話題を振りまいていますが、大日本帝国憲法の復活を願う立場の極右。そして小池百合子が日本国憲法に敵意満々の右翼。極右と右翼の組み合わせが、都民ファーストの会にほかなりません。
野田は、もと東京維新に所属して、「我々臣民としては、国民主権という傲慢な思想を直ちに放棄し」という驚くべき思想の持ち主です。そして、小池百合子は、かつて『VOICE』誌の座談会で「核武装の選択肢は十分ありうる」と次のように述べています。
「軍事上、外交上の判断において、核武装の選択肢は十分ありうるのですが、それを明言した国会議員は、西村真吾氏だけです。わずかでも核武装のニュアンスが漂うような発言をしただけで、安部晋三官房副長官も言論封殺に遭ってしまった。このあたりで、現実的議論ができるような国会にしないといけません。」
核武装是非の論議ができるまともな国会にしていこうというのです。
アベ一強を政権の座から追放するだけが課題ではなく、小池百合子やその亜流の跋扈も許してはならないと思います。都民ファーストの会が安倍自民と組んで、自・公・都ファの大連携だって考えられるのではないでしょうか。是非、批判の目で国政も都政も、安倍も小池も見つめていこうではありませんか。
(2017年7月11日)
そもそも人間チョボチョボだ
背伸びしたって知れたもの
みんなちがってみんなよい
威張るヤツほどエラかない
おそれいるのはやめようぜ
大統領はおバカさん
環境破壊もわしゃ知らぬ
人種差別もハイけっこう
票になるならなんでもさ
身内大事でカネ儲け
こんなお人に
おそれいるのはやめようぜ。
総理大臣ひどいヤツ
頭のレベルはデンデンで
戦後レジーム否定して
戦前体制取り戻す
邪魔な憲法目の仇
政治の私物化 恥知らず
批判されれば切れまくる
こんな程度が総理なの
おそれいるのはやめようぜ。
防衛大臣エラかない
化粧と衣装に念を入れ
公務や本務はそっちのけ
ときどき涙を目に浮かべ
「緊張感もってやっていく」
その内任期は過ぎていく
こんな程度が大臣だ
おそれいるのはやめようぜ。
東大出身エラかない
4年かかっておぼえたは
「このハゲ――――――!」「コノヤロー」「豊田真由子様」「バカ!」
さすがに豊富な語彙の数々と
「死ねば? 生きてる価値ないだろ。おまえとか」
人を見下す酷薄さ。
東大出たという人に
おそれいるのはやめようぜ。
東京都知事はエラかない
所詮は政界渡り鳥
今の止まり木一休み
いつになったら飛び立つか
次にはどこに止まるやら
この人本籍右の人
本性隠した厚化粧
いつかは剥がれる化けの皮
票を取ったと言うだけの そんなお人に
おそれいるのはやめようぜ。
テンノウヘイカもエラかない
かつては神とされていた
テンノーヘイカの命令で
臣民たちは戦場に
今は神様廃業で霊長類のヒト科ヒト
特殊なゲノムがあるじゃなし
オケラだってミミズだって
みんなみんなが万世一系
テンノウヘイカだからって
ありがたがるのはやめようよ
おそれいるのもやめようぜ
社長も上司もエラかない
社長と社員は対等だ
パワハラ・セクハラ許されぬ
心細けりゃ組合だ
しっかり団交やればよい
会長・社長・CEO
会社潰すのこんな人
社長や上司だからって
おそれいるのはやめようぜ
そもそもおれたちエラかない
こんな政権できたのも
こんな総理が威張るのも
こんな大臣居座りも
こんな議員を選んだも
職場の組合弱いのも
郵便ポストが赤いのも
みんなおれたちやったこと
おそれいるのをやめたあと
おそれいらずに声を上げ
おそれいらない第一歩
(2017年7月9日)
本日、日本民主法律家協会の第56回定時総会。毎年総会議案書を読むたびに、日本国憲法が常に危機の事態にあることを痛感させられる。
考えてみれば、途中にやや途切れはあったにせよ、1955年以来の長期保守政権である。日本国憲法を敵視し、改憲を党是にするという保守政党が政権を握り続けてきたのだ。とりわけ今は、保守というよりは右翼というべき安倍政権。こんなものが権力を握っているのだから、「改憲」の危機でもあり、憲法理念がないがしろにされる政治がまかり通っている「壊憲」の危機でもあるのだ。
それと同時に、毎年総会議案書を読むたびに感じるのは、国民の政権への抵抗による改憲阻止運動の粘り強さである。それは同時に、憲法理念の徹底を求めて闘う種々の国民運動の逞しさでもある。
おぞましい安倍政権である。発足以来、教育基本法を改悪し、特定秘密保護法を制定し、戦争法を強行し、共謀罪も通した。しかし、その都度大きな抵抗を受け、各法律も使いにくいものとなっている。そして、安倍政権の危険な本性が多くの国民に知られるようになってきている。安倍と安倍を擁立する右翼勢力の憲法敵視攻撃の激しさにもかかわらず、抵抗勢力はよくこれに耐え凌いできた。
結局のところは、緊張感張り詰めたせめぎあいが続いている。こうして、今年が憲法施行70周年の年。この70年、権力に抗して改憲を阻止し続けることで、この日本国憲法を自分自身のものとして、日々獲得してきたのだ。
この一年の共謀罪反対運動と改憲阻止に向けた運動での総括は、日本民主法律家協会の果たした役割を自信をもって報告するものだった。そして、改憲を阻止するためには野党と市民の共闘を緊密にそして大きなものとする以外になく、各野党の紐帯のために法律家が積極的役割を担おうと、確認された。
本日の総会人事で森英樹理事長が退任した。一抹の淋しさを感じる。そして、新理事長に右崎正博さんが就任。「暴走する安倍政権の壊憲策動とどう闘うか」と題する記念講演をされた。自ずと、安倍のいう「9条3項『加憲』案」に、話題は集中した。
後法は前法に優先する。2項がそのまま手つかずであったとしても、これと矛盾する3項が付け加えられると、2項の「戦力不保持」「交戦権否認」が空文化することになる。その右崎記念講演詳細レジメの「結び」の部分だけをご紹介する。
この秋が焦点となるであろう、暴走する安倍政権の改憲策動とどう闘うか。9条3項「加憲」案の日本国憲法との不整合性を徹底して理論的に明らかにするとともに、広く国民にその危険性を伝え、改憲の発議を阻止する道助を組織していく必要がある。
すでに特定秘密保護法、安保法制と政府与党による強行採決に対して、国民的な共同が組まれ、2016年7月の参議院選挙ではじめて野党の選挙協力により大きな成果を上げた経験がある。共謀罪の与党・維新による強行採決に対しても、同じ国民的な共同が組まれた。これが安倍改憲策動への大きな障害となり得る。
6月8日野党4党の党首が国会内で会談し、「安倍政権の下での憲法9条の改悪に反対すること」など、当面する政治課題での対応とともに、次の総選挙における4野党の協力について合意したと伝えられた。公権力を私物化する安倍政治を総括するとともに、この秋に向けて、安倍改憲阻止のために国民的な共同を作ることが求められている。
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日本民主法律家協会第56回定時総会アピール
憲法の危機に立ち上がろう
安倍音三政権は、特に2012年の第2次政権以降、「戦後レジームからの脱却」を唱え、国民の強い反対の声を押し切って、特定秘密保護法の強行成立、国家安全保障会議の創設と国家安全保障戦略の決定、武器輸出三原則の廃止と防衛装備移転三原則の決定、武器の共同開発の推進、日米防衛協力ガイドラインの第3次改定、戦争法(安保関連法)の制定、刑事訴訟法・盗聴法(通信傍受法)改悪、そして今年6月15日の共謀罪法案の強行成立と、矢継ぎ早に憲法破壊の法制、施策を進めてきました。
こうした経緯を経て、安倍首相は今年5月3日以降、「憲法9条1項2項を残したまま3項を加え自衛隊を書き込む」と提案し、秋の臨時国会で自民党改憲案を国会に提出、来年6月を目標として通常国会で改憲の発議、国民投票を経て2020年新憲法施行という改憲スケジュールを打ち出しました。
310万を超す日本人と2000万に及ぶアジアの人たちの犠牲の上に生まれた日本国憲法は、戦後70年余、日本を戦争に巻き込ませず、1人の日本人も戦争で命を落とすことなく、また1人の外国人兵士をも殺すことなく、平和創造に寄与してきました。
しかし、安倍政権は、米国の庇護の下で、沖縄基地の恒久化と「日米軍事一体化」を進め、「世界で最も企業が活動しやすい国にする」という新自由主義を推進し、教育・文化など国民の意識をも改変しようとしてきました。そして、今回、遂にその「本丸」である9条をターゲットとして、改憲の具体化に乗り出したのです。
特に、安倍政権の政治手法は、日本国憲法の下で長年積み重ねられてきた、社会や政治の民主主義的ルールを全く無視し、小選挙区制と政党交付金制度による与党内部の締め付けの強化、内閣府に一元化された官庁の人事権の恣意的運用、重要な行政上の経過を示す公文書の破棄、隠蔽など、かってないほどの独裁性を強めてきた点て重大な問題を抱えています。とりわけ第193通常国会における政府・与党の政治行動は、森友学園問題や加計学園問題など首相による政治と行政の「私物化」に対する国民からの異論や質問に答えない「問答無用」の姿勢、最大の対決法案であった共謀罪法案について「中間報告」という異例の手法で委員会採決を省略し本会議で採決を強行するなど、あまりにも強引な議事運営に終始したものでした。このような安倍政権に憲法や民主主義を語る資格はありません。
さらに、「9条を残したまま憲法に自衛隊を書き込む」とする首相の改憲構想は、公明党の「加憲」論にすり寄り、「日本会議」の論文に明らかな通り護憲勢力を分断し、憲法9条2項の戦力不保持の原則を空文化させるものです。世界有数の軍隊に巨大化し、戦争法で米軍等と共に海外で戦うようになった自衛隊を、「その存在を憲法に書きこむだけなら問題はない」という論理は成り立ちません。しかし安倍政権は、この誤った宣伝を、囲い込んだ巨大マスコミを巧妙に使って、広めようとしています。
しかし、憲法9条を守り活かすことの意義は、ここ数年、諸悪法への反対運動や「九条の会」の運動などによって、広く国民の間に共有されてきています。この度の東京都議選の結果はその証左です。私たちは、さらに進んで「安倍改憲論」の狙いを見抜き、広げ、反対してこれを挫き、併せて憲法を擁護し発展させる運動を一層発展させていかなければなりません。
私たちは、憲法を守り活かす法律家として、国民の運動の先頭に立ち、闘いを広げることを、改めてここに宣言します。日本の平和と民主主義のために、ともに頑張りましょう。
2017年7月8日
日本民主法律家協会第56回定時総会
(2017年7月8日)
アベ君。いつもは傲慢で高慢なキミだが、今回都議選の大敗はよほどショックのご様子。精神の衝撃が体調に響かなければよいが…。
永田町では、「敗因は『THIS』だが主犯は『A』」と誰もが無遠慮に語る雰囲気だとか。なるほどキミが言っていたとおり、「築城3年、落城1日」。驕れる者は久しからずして、春の夜の夢の如しだ。
ところで、キミは記者には今回の敗因を、「大変厳しい都民の審判が下された。自民党に対する厳しい叱咤と深刻に受け止め、深く反省しなければならない」と言ったそうだね。「叱咤」は感心できない。通例、「叱咤激励」と使う。さすがに、「激励」は控えたようだが、まるで都民の批判は一時的なもので、キミを励ますためのお灸の程度というニュアンス。そんなことだから、反省が足りない。反省したふりしかできない、と言われるんだ。
キミは、「深く反省し、初心に立ち返って信頼回復に全力を挙げる」とも言ったそうだ。相変わらず、具体性に欠けた「反省」。キミが「国民には丁寧に説明してまいります」と言って実行したためしのないことは全国民に周知の事実。キミの反省ポーズは国民から信用されていない。なまなかなことでは、信頼を取り戻すことなどできっこないのだよ。
しかもだ。キミは、政権と自民党の反省のポーズとして、野党からの閉会中審査要求に応じると言わせておきながら、自分の出席は拒否したというではないか。そんなことだから、キミの信用は限りなくゼロとなる。このままでは、キミの政権は緩慢に死を待つしかない。
そこで、キミに起死回生の策を教えよう。キミの具体的な反省の仕方をだ。
まずは、憲法改正の提案を撤回することだ。かたちだけのものではなく、これからは心を入れ替えて、日本国憲法を尊重し、その理念を謙虚に学び実践することを誓うのだ。
もう一つ。辺野古新基地建設断念を閣議決定するのだ。大浦湾の埋立工事はストップして、警備は解散させる。すべて総理の権限でやらせる。
その上で、「THIS」を切ることだ。豊田と下村は閣僚ではないからキミが総理としてクビは切れない。だから、自民党を除名することにしよう。離党届けを受理してはならない。新生自民党に旧体質の政治家は不要だという宣言をすることに意味がある。もちろん萩生田と稲田は直ちに免職だ。しかし、この程度では、国民が納得するとは思えない。
そうしておいて、この4人には、議員辞職を勧告する。この4人のことだ。簡単に議員辞職勧告に応じることはないだろう。そのときに、キミが説得のために伝家の宝刀を抜く。まずは、「ボクも議員をやめる。一切の政治活動から手を引く。だからキミたちも一緒にやめてくれ」と泣き落とす。
これで落ちなければ、いつもの最後の手段だ。
「前川が、怪しげなところに出入りしていたことを暴露したのが誰だか、知らないはずはなかろう。キミたちそれぞれが、脛に傷のない身か、よくよく胸に手を当てて考えてごろうじろ」。これで十分だろう。
こうして、「THIS」+「主犯A」のすべてが政界から身を引く。そして、改憲と辺野古新基地建設はなくなる。それが、国民からの信頼を回復する起死回生の秘策だ。
えっ、それは起死回生策ではなく、自滅策ではないかって?
分かっていないね。キミはもう死に体なんだよ。万に一つでも、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの策をとるしか方法はない。自分だけ生き残ろうとしても無理なんだ。
潔さこそ、右翼の美学だろう。キミはキミにふさわしく、散る桜となるのだ。春の夜のはかない夢のごとくに。
キミ、まだ怪訝な顔をしているね。まだ、よくお分かりではないようだね。これで分からぬようでは、やっぱりダメなんだ。キミに本当の反省はできない。残念だけどね。
(2017年7月4日)
都議選の開票が進んでいる。
自民党は、歴史的大敗である。負けたのはアベ様ご一統。「アベのアベによるアベのための政治」あるいは、「トモダチのトモダチによるトモダチのための政治」に、国民の批判が沸騰した。都民は国民を代表して、アベ自民に「ノー」を突きつけたのだ。
前回59人の立候補者全員を当選させた自民が、今回選挙では23議席。そのマイナス36議席。アベ政治の完敗であり惨敗であり総崩れであり、凋落というほかはない。
アベ政治は、株価に支えられた政治との思い込みがあった。財政を株式市場に投じて無理矢理株価を上げて景気の高揚を演出することで、虚構の支持率を保持している底上げ政権。いずれ株価の下落とともに、アベ政治も終わるであろうはかない運命。しかし、裏を返せば株価が下落ぬかぎりは、しぶとく命脈を保つ政権ということでもある。
それが、株価の下落より先に、アベ自民が大逆風に見舞われたのだ。自業自得とはいえ、この現実は予想をはるかに超えるものとなった。
これまでも、世論調査での安倍政権支持の理由は「ほかよりマシだから」。消極的支持でしかなかった。少しのきっかけで、驚くべき奔流が堤防を決壊させる。
これは、アベ自民にお灸というレベルではない。国民がアベ自民を見限ったというべきだろう。「謙虚に選挙結果を受けとめる」のなら、アベ退陣しかあり得ない。
選挙期間の最終日、初めて安倍晋三が秋葉原の街頭演説に顔を出して、盛大な「帰れコール」を浴びた。そして「アベやめろろ」コールも沸き起こった。これがこの選挙のハイライト。状況を象徴するできごと。
安倍の応援を受けたのが、千代田区(定員1)自民公認の中村あや候補。みごと大差で落選している。アベの応援は、足を引っ張るだけだったようだ。
その中村のツィッター。開票前と後。
「最終日午後は秋葉原にて安倍総裁はじめとした多くの国会議員の先生方から激励をうけ、最後の思いを述べさせていただきました。その後マイク納めし、夜は半蔵門駅で最後のご挨拶。選挙戦、悔いはございません!皆様明日は投票へ! 」
「先程の会見でお世話になった先生方に恨み節を言ったかのような変な切り取られ方をしましたが、反論します。”今の国政どう思うか”という質問の答えの中で”…党問わず公人なら国民の代表者としての意識をもたなければならない。…脇が甘い”と言っただけで敗因を押し付けたりしていません。」
「脇が甘い」とはよく言った。しかし、アベ様ご一統、脇が甘い程度ではなかったのだ。
それにしても、都民ファーストの会の票の出方には驚く。風は恐い。明日はどちらに吹くのやら。
共産党が、都ファに埋没せず、前回17議席を今回19議席に増やしたことは欣快の至り。
我が文京区(定数2)の開票結果は、以下のとおり。
当 増子博樹〈元〉 42,185票 43.96% 都フ
当 中屋文孝〈前〉 26,997票 28.13% 自民
次 福手裕子〈新〉 26,782票 27.91% 共産
共産候補は200票差での次点。28%の得票率での落選。無念というほかはない。
最大の関心事は、この選挙結果が改憲策動にどう影響するかという点。レームダック同然のアベの号令で、自公連立が改憲を急ぐなどということは常識的にあり得ない。また、沖縄の県民いじめに居丈高となることもできまい。
残念な面も多々あるものの、ひとまずは胸をなで下ろした開票結果。
(2017年7月2日)
7月1日である。安倍内閣が集団的自衛権行使容認の閣議決定をしたあの日からちょうど3年。両院で「底上げの絶対多数」を握った自公与党と、これを閣外から支えた維新。その非立憲勢力が暴走してトンデモ政治状態が続いたこの3年。ようやくにして、これに歯止めが必要との風が吹き始めている。
明日(7月2日)が、注目の東京都議会選挙。本日が、その選挙期間の最終日である。今日までは、ブログでの選挙運動が可能だ。そして、ブログの記載を消す必要はない。だから、しっかりと書いておきたい。
なによりも、アベ一強政治の暴走をストップさせなければなりません。あなたが、平和や民主主義や暮らしを大切にしたいと願うなら、決して自民党に投票してはなりません。そして、衣の下に鎧が見える、自民党と同類の都民ファーストの会にも、です。都知事・小池百合子、なんの実績もありません。なんの理念も、なんのビジョンも。ただ、風を読み、風に乗るだけの節操のない人。
さらに公明党。国政では自民党の下駄の雪となり、腹心の友ともなってともに悪政を推進し、自民党劣勢と見るや手のひらを反して都政では小池と組もうという、これも節義・節操に欠けること甚だしい。何をやりたいのか、政治の理念を語ることがあまりにも少い。
真っ当な政治を取り戻すために、ぜひとも日本共産党の諸候補への投票をお願いいたします。文京選挙区では、共産党公認の福手よう子が厳しい闘いを繰り広げています。ぜひ、当選させてください。
なお、共産党都委員会のホームページは以下のとおり。
http://www.jcp-tokyo.net/
共産党の公認・推薦候補一覧は以下のURL。
http://www.jcp-tokyo.net/profile/list.html
そして、福手ゆう子のサイトは以下に。
https://twitter.com/yukofukute
https://twitter.com/yukofukute
http://yufukute.exblog.jp/
文京区の選挙情勢は、全体の政治状況を象徴している。
都議の定数は2。この2議席を、これまで自民・民主・共産の3候補が、熾烈に争ってきた。順位が入れ替わって勝敗の明暗が変わる。前回選挙では、自民と共産が勝って、民主が落ちた。
今回は、前回民主党公認候補として出馬し落選した増子博樹が、今度はタスキの色を変えて、都民ファーストの会から立候補する。鳩山邦夫秘書から民主党議員を経て、都ファに鮮やかな転進。4年前前回の民主基盤の得票は1万7500票。その大半は期待できないだろう。公明票の基礎票と、小池支持の風の上積みを期待する。公明党は自党の候補者を擁立する力量はない。どの候補にでも、票をとりまとめることができるのが、この宗教政党独特の「強み」。
自民前職で立候補するのが、中屋文孝。東京都議当選3回で、前東京都議会警察・消防委員長、自民党東京都第18代青年部長という肩書。前回選挙では追い風吹いて、2万8400票とダントツのトップだった。今回は、確実に公明票が離れる。安倍政治への逆風が批判票として離れる。
前回の共産候補は3期目の小竹紘子で1万9700票だった。今回は民進党と争わない。民進党区会議員の中には公然と福手応援者が出ている。社民党・自由党・革新無所属などの支援もある。自民離れ票も期待できる。メディアは福手有望とは書かないが、新人の福手にバトンタッチがうまくいけば、十分に当選の目はある。
ところで、昨日の当ブログで、「明日、新たに檜舞台に躍りでる『戦犯』は誰だろう。楽しみでならない。」と書いた。新しい名前はでなかったが、選挙運動最後の日の「戦犯」の任務は、本命のアベ・シンゾー本人が本領発揮して立派に務めた。さすが、シンゾー。
朝日.comでは、「首相演説に『「辞めろ』『帰れ』の声 都議選で初の街頭に」「首相街頭演説に籠池氏現る 『100万円返金したい』」とのタイトル。
私は近所にいながら、現場を見ていない。臨場感あふれるリテラの記事を引用する。
『駅前を覆い尽くす政権批判のプラカード、そしてものすごい音量の「安倍やめろ」の声──。安倍首相は本日16時から秋葉原駅前で行われた都議会選の応援演説に登壇したが、自民党候補の応援どころではなく、国民の激しい批判の声にさらされる結果となってしまった。
「安倍やめろ」コールは自民党陣営の演説スタートまもなくからはじまった。聴衆からは安倍政権を批判するさまざまなプラカードが掲げられ、「安倍やめろ」と書かれた大きな横断幕まで登場。それを自民党スタッフは「自民党青年局」の幟を並べることで隠そうとするなど必死に。他方、駅前にはあの籠池泰典・前森友学園理事長夫妻まで登場するなど、演説会はまさにカオス状態となった。
そして、安倍首相が16時40分ごろに演説カーに登ると凄まじいブーイングと「帰れ!」コールが噴出。安倍首相がマイクを握ると、支持者らが拍手を送るも、より強くなった激しい「帰れ!」「安倍やめろ!」の声に掻き消されたのだ。
この国民の批判が殺到する事態に、しかし、安倍首相は反省するどころか逆ギレ。なんと聴衆を指差しながら「演説を邪魔するような行為」「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫んだのだった。
国民の批判の声に陰謀論丸出しで“演説妨害”と決め付けるというのはいかにも安倍首相らしいが、しかしいくら話をスリ替えようが、負け惜しみを言おうが、安倍首相にとって、こうした批判を浴びせかけられる絵ができあがってしまったことは大誤算だったはずだ。この都議会選で安倍首相は2度、応援演説に参加したが、どちらとも街頭ではなく小さな屋内の会場だった。これは批判のヤジがあがることを見越し、声があがりづらい屋内を選んだことは明白。だが、にもかかわらず、会場からはヤジが飛ぶ結果に。』
秋葉原は、右翼の結集地でありアベ支持勢力にとってのメッカである。2012年暮れのアベ政権樹立となった総選挙の最終日には、ここに日の丸と旭日旗が林立した。都内で、安倍が街宣に顔を出すとしたらここしかないはず。それがこの結果だ。天下分け目の秋葉原になるやも知れぬ印象。さあ、明日が選挙だ。
(2017年7月1日)
いよいよ都議選が目前だ。この都議選は、なによりもアベ一強弾劾選挙だ。付随して自公政権批判の選挙。アベ自民と公明党への打撃が、憲法の擁護に直接つながってくる。
アベ自民の勢力を減殺し、「市民と野党」連合勢力を大きくすることが、特定秘密保護法や戦争法、そして共謀罪の発動を阻止し、その法の廃止の展望につながる。
さて、私の身のまわりでは、その手応えは小さくない。私は、文京区本郷に住んで20年余になる。20年余ご近所との付き合いは、深からず濃からず…。そのご近所のお一人が、こちらから語りかけずして、「今度(だけ)は、共産党に入れる。安倍さんって明らかにおかしい。公明党も。でも本当におかしいのはこんな人たちを選んだ私たちだものね」と。これは、20年来なかったことなのだ。
この好ましい状況は誰のおかげだろう。アベ自民から見ての「戦犯」は誰だ。メディアは、「都議選の戦犯は安倍首相と『加計3悪人』」と言っている。『加計3悪人』とは、萩生田・菅・下村の3人。
とりわけ、下村博文は文科大臣時代に学校法人加計学園から200万円の闇献金を受領していたとして叩かれ、しょうもない釈明記者会見で、さらに自らの首を絞めた。これが自民党都連会長なのだから、自民党の目はない。
『加計3悪人』にアベを加えた4人だけのおかげではない。いや、さすが自民党人材は豊富だ。日替わりメニューで出てくるニュー・スターたち。おなじみのイナダ朋美、豊田真由子様、そして二階俊博幹事長。
イナダは本当に弁護士なのだろうか。法的素養と法的な思考・判断力ゼロを露呈して恥じるところがない。豊田様の暴言は議員様たちの裏の顔を露わにして分かり易い。河村健夫議員の「あれはたまたま彼女が女性だから、あんな男の代議士なんかいっぱいいる。あんなもんじゃすまない」というホンネと相まって、影響はとてつもなく大きい。そして、大物が登場する。二階俊博幹事長である。
「二階氏は30日夕の国分寺市の演説で、自身を含む政権中枢の発言を伝えている報道機関に矛先を向け、『マスコミは偉いには違いないが、偉いと言っても限度がある。あんたらどういうつもりで書いているのか知らんが、我々はお金を払って(新聞を)買ってんだよ。買ってもらっていることを、やっぱり忘れちゃダメじゃないか』と述べた」と報じられている。
この論理、「スポンサー・ファースト主義」という。あるいは「スポンサー・オンリー主義」。「国が金を出しているのだから、国立大学では日の丸・君が代を掲揚斉唱しろ」というあの理屈。いまや、「スポンサー・ファースト主義」は三歳児からの幼稚園・保育施設に「国旗国歌に親しむ環境」の押しつけにも使われている。
「我々はお金を払って(新聞を)買ってんだよ。買ってもらっていることを、やっぱり忘れちゃダメじゃないか」というときに、二階の頭の中にある「我々」とは誰のことだろう。
政権や権力中枢のことだろうか。与党勢力のことだろうか。あるいはこの世を支配している企業のことだろうか。いずれにしても、ジャーナリズムに対して、堂々と「カネの力に屈せよ」という、凄すぎるこのセンス。さすが自民党幹事長。やっぱり安倍さんと、安倍さんにつながる人々はおかしいのだ。
コチラから見ての最大の功労者、アチラから見ての最大の戦犯は、やはりアベ・シンゾー本人なのだ。それにしても、明日、新たに檜舞台に躍りでる「戦犯」は誰だろう。楽しみでならない。
(2017年6月30日)
あー。いやなことを思い出す。政権1期目のおしまいのころのこと。歯車が軋んで、何をどうやっても、うまくいかなくなった。何をやっても、何を言っても、裏目に出て叩かれっぱなし。その結果が史上例を見ない、みっともない政権投げ出しとなったんだ。2007年8月のこと。あれからもうすぐ10年。10年前の悪夢を思い出すと、またキリキリ腸が痛む。
あれは、オレだけの責任じゃない。獅子身中の虫は獅子を食らうというじゃないか。オレが獅子だというほどのうぬぼれはないが、何匹もの虫に身を食われた痛みを忘れることができない。一年足らずの短命政権が、不祥事で5人もの大臣辞任者を出した。だから、オレの責任じゃない。身中の虫のせいだ。
あのときの虫は、まず規制改革担当大臣の佐田玄一郎だ。事実上存在しない事務所の費用に7800万円も支出したという政治資金の虚偽報告だ。この佐田の辞任が、ケチのつきはじめ。
次が、厚生労働大臣柳澤伯夫。「残業代ゼロ法案」推進が国民の反発で挫折した挙げ句が、女性を「産む機械」とした失言。この追及は応えた。女性の支持率が下がっちゃった。
その次が、「原爆投下しょうがない」発言で辞任した久間章生防衛相。まだある。農水相の松岡利勝。事務所費問題の追及で自殺に追い込まれた。その後任が赤城徳彦。あの「バンソウコウ王子」だ。政治資金虚偽報告疑惑渦中の彼の顔がテレビに映るたびに支持率が下がって、持ちこたえられなくなった。政権も、オレの腸もだ。
第2次政権以後も、虫虫虫虫…。虫だらけだ。
小渕優子経産大臣と松島みどり法務大臣の『ダブル辞任』。次いで、経済財政政策担当大臣甘利明、高木毅原発事故再生担当相、西川公也農水大臣、下村博文前文科相、沖縄対策担当大臣鶴保庸介、復興大臣今村雅弘、地方創生担当大臣山本幸三、法務大臣金田勝年。アベチルドレンと言われた政務官クラスだと、数え切れない。
中でも噛みつかれて痛い虫が、パワハラ豊田真由子だ。「このハゲーーーーーっ!」の衝撃はメガトン級だ。しかも、選挙の応援演説で、オレが豊田を連呼しているところが繰り返された。豊田にではなく、オレにとって最悪だ。都議選でオレが街頭演説をやれば、聴衆は豊田真由子の「このハゲーーーーーっ!」を連想するだろう。イメージ悪過ぎで、オレの出番がなくなった。
せっかくダメージの少ない方を選択して、無理して国会閉じて森友・加計に蓋をして都議選になだれ込んだのに、あまりにも悪いタイミング。政権末期には、こんなことが起こるんだ。
そして、イナダだ。あの無能、懲りずにまたやらかした。いったい何度目だ。
産経報道の見出しが「稲田朋美氏発言で“三重苦” 『とばっちりだ…』突然の後ろ矢、憤る自民候補 他党は『敵失で好機』」というもの。「影響は自民現職2人や都民新人2人など10人の候補で5議席を争う激戦の板橋区選挙区にとどまらず、都議選全体に飛び火しつつある。」と遠慮がない。
産経ですら、厳しいイナダ批判で、自民と政権に手厳しい。ということは、全メディアが政権に遠慮せずにものを言うようになったということだ。政権への遠慮した物言いができない空気が蔓延しはじめているのだ。やっぱり、政権の末期症状だ。
もっと大きな虫がいる。菅だ。もっと上手に懸案を処理してくれるはずではなかったのか。森友問題も、加計問題も、収束の筋書きが書けていない。失敗続きで、責任大きい。何とかしろ。
いや、忘れていた。最大の虫はオレ自身だ。獅子を食い尽くした虫をよく見たら、獅子そのものだった。オレがオレ自身を食いちらし、食い尽くしたのだ。考えてみれば、惨めに政権を投げ出したオレが、第2次政権を作ったのがそもそもの間違い。そもそもオレの右翼体質が、結局は国民に受け入れられなかったということなのだ。
都議選の結果が恐ろしい。とりわけ、真っ向からの政権批判者だった共産党の議席次第で、悪夢が正夢になる。
ああ、祇園精舎の鐘の音が耳に重く響く。
「アベーーーーーっ! ヤベーーーーーっ!」「ダメーーーーーーっ!」と。
(2017年6月28日)