本日(5月15日)元検察トップ14氏が連名で、法務大臣宛に提出した話題の意見書。下記URLで全文が読める。
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20200515002893.html
一読して驚いた。わくわくするような躍動感あふれる語り口で、感動的ですらある。よく練れた文章で、具体的なエピソードにも富み、とても読みやすい。法の支配や立憲主義、権力分立などの理念を大切にしようという真摯さに溢れている。検察官の政権からの独立を大切なものと訴えながら、検察独善とならぬよう戒めてもいる。これは素晴らしい。
とは言え、かなりの長文である。まずは、私の抜粋(4パラグラフ)から、お読みいただくのが、楽だろう。
まずは、結論部分は以下のとおりである。この文書は、形式上14氏が作成した「法務大臣宛意見書」だが、実は全国民に宛てた檄文でもあるのだ。そのような趣旨として、私たちはこの意見書を受けとめなければならないと思う。
正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。
黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ないものである。関係者がこの検察庁法改正の問題を賢察され、内閣が潔くこの改正法案中、検察幹部の定年延長を認める規定は撤回することを期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出ることを期待してやまない。
なんという直截で飾らない訴えであろうか。「検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動き」を看過してはならないという。そんなことを許せば、私たちの国家社会は、正しいことが正しく行われる社会ではなくなってしまう。内閣が法案を撤回すればよし、さもなくば「多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出る」べきだと言うのだ。この悲痛な声が、かつて検察幹部だった人たちから発せられているのだ。
今、検察制度に関して、国民の眼前に大きな二つの問題がある。その一つは、黒川検事長定年延長の閣議決定である。この閣議決定について意見書は、法的根拠ないものと断じている。
この閣議決定による黒川氏の定年延長は検察庁法に基づかないものであり、黒川氏の留任には法的根拠はない。この点については、日弁連会長以下全国35を超える弁護士会の会長が反対声明を出したが、内閣はこの閣議決定を撤回せず、黒川氏の定年を超えての留任という異常な状態が現在も続いている。
そして、もう一つの問題が、黒川検事長定年延長合法化に端を発した検察庁法改正問題である。改正法案の検察官定年延長導入について、意見書はこう言う。
注意すべきは、この規定は内閣の裁量で次長検事および検事長の定年延長を可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである。これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。検察庁法は、組織の長に事故があるときまたは欠けたときに備えて臨時職務代行の制度(同法13条)を設けており、定年延長によって対応することは毫(ごう)も想定していなかったし、これからも同様であろうと思われる。
今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる。
まことに明快で、分かり易い。では、「検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め」ようという法案が、どうして提案されるに至っているのだろうか。その背景事情について、意見書はこう述べている。
本年2月13日衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕(ちん)は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)させるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。
時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。
これも分かり易い。確かに、アベ政権には「朕は国家である」と口にした亡霊が憑依している。立憲主義も、三権分立も、法の支配も、まったく理解していないのだ。意見書は、「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告を発している。この文脈での「法の終わり」は、《黒川検事長の違法留任の放置》と《検察の人事に政治権力介入を許容する仕掛けの定年制導入》である。このアベ政権の法の無視を許せば、いよいよ本格的な「アベの暴政が始まる」ことになりかねない。「検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出る」しかないではないか。
(2020年5月15日)
本日(5月14日)午後の朝日デジタルの記事。「検察OB有志も改正案に反対 元検事総長ら意見書提出へ」という。
これは、凄いことになった。与党は何が何でも明日15日(金)に委員会強行採決の方針と報じられていたが、まことにグッドタイミング。これでは強行採決などできるはずがない。
政府の判断で検察幹部の定年を延長できるようにする検察庁法改正案について、松尾邦弘・元検事総長(77)ら検察OB有志が、改正に反対する意見書を15日に法務省に提出することがわかった。意見書は、田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件の捜査経験者を中心に十数人の連名になる見込み。同省に提出した後、都内で記者会見する。
改正案では、検事総長や高検の検事長ら検察幹部が定年に達しても、政府の判断で職務を延長することができると規定。国会審議では、野党から「検察の中立性や独立性を損なう」との批判が出ているが、与党は週内の衆院通過をめざしている。
「意見書に名を連ねる十数人」が誰なのかは分からない。しかし、意見書の内容は、ほぼ見当がつく。検察の業務は国民の信頼がなければ成り立たない。政府に幹部人事を握られては、検察に対する国民の信頼が崩壊することにならざるを得ない。そのことを恐れての「改正案に反対」となるのだろう。
今朝の朝日には、検察OBの長老・堀田力さんの「信頼に傷、総長も黒川検事長も「『辞職せよ』」の記事。ずいぶんと思い切った発言となっている。
「検察幹部を政府の裁量で定年延長させる真の狙いは、与党の政治家の不正を追及させないため以外に考えられません。東京高検の黒川弘務検事長の定年を延長した理由に、政府は『重大かつ複雑困難な事件の捜査・公判の対応』を挙げました。黒川君は優秀な検察官ですが、黒川君でなければ適切な指揮ができないような事件はありえません。
今回の法改正を許せば、検察の独立に対する国民の信頼は大きく揺らぎます。「政治におもねる組織だ」と見られると、捜査につながる情報が入らなくなったり、取り調べで被疑者との信頼関係を築きにくくなって真実の供述が得られなくなったり、現場に大きな影響が出るでしょう。」
とりわけ、「検察は…政治家がからむ疑惑を解明する重い責務を国民に対して担っています。与党と対立せざるを得ない関係なのです。」との一言が印象的である。これをゴリ押ししようという、アベ政権のやり口が異常なのだ。
なお、本日、改憲問題対策法律家6団体連絡会などが主催する「検察庁法改正案に抗議する!リレートーク集会」(オンライン)が開催された。Zoom(ズーム)での参加者は500人という規模の「集会」だった。やや勝手が違う雰囲気だったが、慣れていくことになるのだろうか。
身内の弁護士以外のゲストスピーカーは、以下の4名。
浜矩子さん (経済学者 同志社大学大学院教授)
白井聡さん (政治学者 京都精華大学専任講師)
前川喜平さん (元文部科学事務次官)
藤本泰成さん (安倍9条改憲NO!全国市民アクション・平和フォーラム共同代表)
なかで、「元官僚から見た検察庁法改正案の問題点」と題した前川喜平さんのスピーチが素晴らしかった。アベ政権の人事を通じての府省支配の手法を語り、その組織支配の対象は警察に及び、いま検察を狙っている。今回の検察庁法改正は、その人事による政府組織支配の集大成だという位置づけ。
しかも、定年延長を手段とする人事支配の有効性は明らかで、現に文科省の次官人事でも実例があると生々しい報告だった。目の前の画面に拍手を送ったが届かない。これが、リアルの集会とは異なるところ。
さて、明日15日が山場だが焦りはない。 前川さんのスピーチのまとめは、「いま、憲法が想定する権力の分立は、相当程度こわされている。こういう時こそ、主権者国民の出番となる。900万件のツィートはその表れだと思う」というものだった。
正論は確実に民意となっている。自民党の中にも、これでは国民から見離されるという危機感をもつ人が出てきている。公明党も、もう自民党にくっついてばかりもおられまい。検察OBも異例の反対意見書だ。歯車はよい方向に回りはじめた。まだまだ、日本の民主主義も捨てたものではない。
(2020年5月14日)
先日、今年の流行語大賞候補には滅入る言葉ばかりと愚痴ったが、必ずしもそうでもなさそうだ。「Twiterデモ」や、「巣ごもりデモクラシー」などには、勇気づけられる。アベ政権とその応援団だけの天下ではない。いや、今やアベ政治の終焉が見えている。コロナ対応の失策と「Twiterデモ」とは、その象徴である。
5月8日17時40分発信という、歴史的な1件のツィートの主は、「笛美@fuemiad」と名乗る方。「広告業界の片隅にいます。20代で女性蔑視に染まり、30代でフェミニズムを知りフェミニズム関連の意見を発信していましたが、新型コロナきっかけで政治にも関心を持つようになりました。」と自己紹介をしている。「fuemiad」は、フェミニズムとアドバタイズの連結語なのだろう。
そのツィートは、下記のとおりである。
「1人でTwiterデモ #検察庁法改正に抗議します」「右も左も関係ありません。犯罪が正しく裁かれない国で生きていきたくありません。この法律が通ったら『正義は勝つ』なんてセリフは過去のものになり、刑事ドラマも法廷ドラマも成立しません。絶対に通さないでください。」
この方が、ネットに一文を寄せている。そのごく一部を抜粋して紹介したい。
「#検察庁法改正案に抗議します デモで知った小さな声を上げることの大切さ」
https://note.com/fuemi/n/n56bdee1d8725
「5月8日にいきなり内閣委員会で野党欠席のもと審議されて、来週には法案が通ることになったというニュースを見て震え上がりました。マスコミも大々的に報道せず、こっそり隠して採決まで持ってこうとしているようにも見えました。いても立ってもいられなくなり、とりあえず金曜の夜に1人でTwitterデモをやってみました。自分から発信した初めてのオンラインデモでした。」
「これまでグルグル考えていたことをベースにしながら、見た人がリツイートする敷居を低くしたいなと思いました。だから燃えるような怒りというより、静かな意思を感じられる表現にしました。それはデモビギナーの自分にとっても、自分らしく気負いなく言えるワードだったなと思います。ドラマなどの例えは、まだ知らない人にも分かりやすく伝わるようにと心がけました。独りぼっちで寂しかったので、バニーの絵文字を入れて行進してるっぽく見せました。…ぶっちゃけ本気で拡散させるぞ!なんて言う気は全くありませんでした。」
「最初はいつも仲良くさせてもらってるフェミニストの方々が投稿に反応してくださいました。…しばらくして、手作りバナーや相関図を作るアカウントさんが出てきたり、政治にアンテナの高いアカウントさん、作家さん、さらには野党の議員さんにも、ツイートが広がっているのに気付きました。」と予想外の事態の展開が述べられている。
この人の文章は、「次はあなたが、どんな声でもいいので出してみませんか?」という呼びかけで締めくくられている。
このたった一人のTwitterデモの呼びかけに多くの人が呼応した。まさしく燎原の火のごとき勢いで。これは、政治的・社会的事件である。本日(5月13日)の東京新聞の紹介では、同じハッシュタグを付けたツィートは900万件を超えたという。多くの人が、この政権への潜在的批判者となっているのだ。
有名無名を問わない多くの人々がツィートに賛意を表し、自分の言葉でこの法案に抗議した。当然これを面白くないとする勢力がある。このTwitterデモの「山が動くがごとき盛り上がり」を貶めようという、いつもながらのアベシンパは少なくない。
これまでその名が目立っているのは、高橋洋一、百田尚樹、加藤清隆、足立康史、竹内久美子、堀江貴文、鈴木宗男などである。総じて、取るに足りない。
彼らの立論のひとつは、「反対論者バッシング」である。「反対論者は、法案を読んで理解の上で反対しているのか」という、上から目線の無礼な物言い。反対論者の反対理由に噛み合った反論はなく、自らは積極的に法案賛成の理由を述べるところはない。ひたすらに反対論者をバッシングし、「政府は正しい。反政府論者は根拠なく騒いでいるだけだ」という発言によって、自らの忠勤な御用ぶりを見せようという、さもしい論者の言でしかない。
立論の二つ目は「陰謀論」である。「検察庁法改正案を反民主主義的悪法と宣伝する陰謀に乗せられるな」というわけの分からない論法。わけが分からないが、政権が論理的に追い詰められたときには「陰謀論」は万能薬として使われる。もっとも、どんなときでも使えるという万能薬の効き目は薄い。普通は、陰謀論を持ち出した途端に論拠破綻の自白とみなされ、みっともなさをさらけ出したことになる。
立論の三っ目は、「すりかえ論」である。「法案に対する反対論は、こう言っている」と的はずれのすり替え論点で、反対論を批判するやり口。反対論の内容を正確に把握しての批判であれば有益な議論になるが、検察庁法改正問題については、官邸も法務省も的確な反論をしていない。
立論の四っ目は、検察権力の過剰な強化に反対の立場からの、体験的な官邸権力強化擁護論である。これは、堀江や鈴木の立場である。検察権力の過剰な強化に反対は納得できるが、今問題は、検察を政権の番犬に貶めてよいかという局面での議論である。現在の法案に賛成する理由にはならない。
問題の本質は、検察官の定年延長にあるのではない。これまでなかった定年延長を導入するに際して、内閣がその恣意に基づき、「特例」として、検察官役職と定年の延長・再延長の可否を決することができることが問題なのだ。この法改正によって、内閣が検察幹部人事に介入し、検察のトップを官邸の息のかかった人物で固めることができる。この権力分立の崩壊は民主主義の根幹に関わる。
その問題性の本質を理解するためには、政権というものに対する批判の基本姿勢、とりわけ数々の政治の私物化をしてきたアベ政権に対する批判の姿勢がなくてはならない。そして、検察官という職能は、他の公務員とは根本的に異なり、犯罪行為あれば安倍晋三をも逮捕し起訴する権限をもっていることの重要性の把握が不可欠である。その地位の保障は、公務員一般と同等に考えることはできない。準司法的立場にあって、政権の清廉のために、検察官は政権からの介入を厳格に排除した独立性の確保が求められる。これを切り崩すことにならざるを得ないというのが、法案反対論の核心である。
これに対する、真正面から噛み合った反論も弁明も提起されていない。
(2020年5月13日)
ご近所のみなさま、ご通行中の皆さま。お騒がせしますが、もう少しの時間。耳を傾けていただくようお願いします。
本郷湯島九条の会は、日本国憲法とその平和の理想をこのうえなく大切なものと考え、毎月第2火曜日の昼休み時間を定例の街頭宣伝活動の日と定めて、ここ本郷三丁目交差点「かねやす」前で、雨にもまけず風にも負けず、新型コロナの緊急事態にも負けずに、ささやかな訴えを続けています。
緊急事態と言われる今だからこそ、国民の声が封じ込められるようなことがあってはならない。このようなときにこそ、大切な表現の自由を錆び付かせず、訴え続けなければならない。そのような思いからの、本日の宣伝活動です。
先月同様、私たちからご通行中の皆様に、署名を求めたり、ビラの配布のために近づいたりはいたしません。基本的には、全員マスクをして、スタンディングのスタイルで訴えております。横断幕や、スローガンを書いたプラスターをご覧ください。そして、昼休みの限られた時間、マイクでの訴えに耳をお貸しください。
「この非常時だ、国を信頼して思いきったことをやらせるべきだ」という声もあります。しかし、それは明らかに間違っています。権力には常に批判が必要です。このようなときにお上にお任せしていては、徹底した弱者の切り捨てが行われます。しかも、安倍政権まやることです。政治と行政を私物化し、ウソとごまかしに明け暮れ、散々に公文書を隠し改竄してきた、薄汚い政権ではありませんか。こんな政権を信頼してお任せできるはずはありません。
アベ内閣のコロナ禍対策には、後手後手という批判が集中しています。しかし、それだけではありません。この汚い政権は、コロナに国民の意識が集中している間に、どさくさ紛れの悪法成立をたくらんでいます。まさしく火事場泥棒。その典型が、検察庁法改正法案です。
先週の金曜日5月8日に、衆院内閣委員会は、国家公務員法と検察庁法の抱き合わせ法案の審議を行いました。野党抜きの審議強行です。国家公務員の定年延長については問題がない。問題は、幹部検察官の人事に官邸が介入できるように仕組みをあらためる検察庁法改正案にあります。
アベ政権は、各省庁の幹部人事に介入することによって、その権力を固めてきましたが、検察庁人事にも手を出したい。そうすることによって、マクラを高くして眠りたいのです。
かつて、検察は国民からの信頼を得る存在でした。田中角栄をも逮捕し、起訴した実績を持ちます。検察のトップは、「巨悪を眠らせない」と名言を吐いています。そんな検察では、安倍は安眠することができない。アベは、検察を我が手におさめることで、ぐっすり眠りたいのです。
この法案のねらいは、官邸による官邸のための検察人事への介入を認めることなのです。人事への介入を通じて政権に対する検察の牙を抜こうというのです。この法案は、官邸が幹部検察官を選り好みして、政権に擦り寄るヒラメ検察官には定年を延長し、硬骨漢には定年延長の途を閉ざそうというのです。
こうして、検事総長や検事長や、あわよくば検事正までの全ての検察官を官邸寄りの人物で固めてしまおうということなのです。
アベ政権とは、後ろ暗い政権です。政治を私物化し、行政を私物化してきた。しかも、その手法は嘘とごまかしで固められたもの。公文書の隠匿・廃棄・改竄はお手のもの。モリ・カケ・サクラでは、内閣の関係者多数が刑事告発されています。安倍晋三本人も告発対象となっています。
硬骨な検察幹部が決意を固めれば、政権トップに対する刑事訴追がなされて、たちまち政権は崩壊の危機に陥ることになります。そこで、アベは、黒川弘務東京高検検事長を検事総長にしようと考えました。彼こそは、安倍政権の守護神と異名をとった検察官。そのための布石として、定年となった黒川の定年を延長した。2021年8月に定年退職する稲田検事総長のあとがまに据える含み。
この露骨な検察幹部人事介入強行は実は違法なのです。これに対する非難が巻きおこると、アベはまたまた考えました。違法・脱法だというのなら、法律を変えてしまえ。そうすれば問題ないじゃないか。いかにもアベらしいやり口。
これが、どさくさ紛れの法案の正体です。検察を手中に置くことでのアベの安心は、国民の不安、民主主義の不安でもあります。何よりも、刑事司法の公正に対する国民の信頼を失墜させることにほかなりません。このことに危機感を抱いた一人の女性が、8日に「ツイッターデモ」を呼びかけて、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを付けたツイッターを発信しました。これに賛同する同じハッシュタグのツイートが600万件を超えたと報じられています。
しかし、それでも政権は明日(5月13日)の委員会審議強行を明言しています。強行採決もあるかも知れません。これを止める力は、世論しかありません。
皆様。ツイッターでも、メールでも、ブログでも、ファックスでも、声を上げてください。鑑定や国会や、与党に声を届けてください。よろしくお願いします。
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薄曇りの夏日になった本郷三丁目かねやす前の昼街宣になりました。
男女合わせて7人の方々が結集しました。これまでのように署名・チラシ配布は控え、かつ social distance を取るという気の配り用なのです。マイクの声は本郷通り、春日通りに響き渡りました。さまざまな plasterを一人2枚持ち、かねやす前に立ち道行く人々に訴えました。
マイクはやはり検察庁法改定案に集中しました。黒川弘務東京高検検事長の定年は2月8日で、その前の1月31日に「黒川弘務東京高検検事長の定年延長の閣議決定」を安倍晋三首相は強行したのです。黒川検事長を検事総長に据えようという魂胆がみえみえなのです。ということは安倍晋三首相は自らの罪を自覚し、罰を恐れている証左とも言えます。このことを訴えました。かつ国家公務員法改定案に潜り込ませる「束ね法案」ということです。検察庁法が一般の国家公務員法と別につくられている意義は、検察官は起訴の権限を独占し準司法官的な役割を担っていることにあります。安倍晋三政権は、法体系・法解釈を破壊し、法の支配から「人の支配」に変えるというクーデターを強行しようとしているのです。
plaster のいくつかを書いておきます。
●アベ政権の検察私物化ゆるさない
●憲法改悪許さない
●おそいおそい 急いで給付を
●倒産・廃業・失業 ストップ
●はやく家賃給付・給料補償・雇用助成金を
●だまされないぞ コロナ不安につけこむ憲法改悪
●エッセンシャルワーカーの給料引き上げよう、みなさんありがとう
まだまだいっぱいありますが、このへんにしておきます。
道行く人々もそれとなく聴いているようでした。これからが正念場です。
「本郷・湯島九条の会」石井 彰
(2020年5月12日)
本日(5月10日)の朝日新聞デジタルに、「検察庁法改正に抗議、ツイッターで470万超 著名人も 」という記事。20時18分の掲載である。
検察官の定年を65歳に引き上げる法改正案を認めていいのか――。作家や漫画家、俳優、音楽家らが10日未明、疑義を唱える声をツイッター上で次々と上げた。「#(ハッシュタグ)検察庁法改正案に抗議します」の投稿が相次ぎ、その数は午前8時過ぎには約150万件、同10時過ぎには200万件、午後8時には470万件を超えた。
NHKオンライン(5月10日16時59分)では、この数が380万件を超えたと報じられている。
検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、ツイッター上では、9日夜から10日にかけて、俳優や演出家などの著名人による抗議の投稿が相次ぎ、同じハッシュタグをつけた投稿が10日午後3時半の時点で380万件を超えるなど、広がりを見せています。
朝日の記事を抜粋する。
「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい」。俳優の井浦新さんが10日朝に投稿すると、「いいね」が1万(後には3万)件以上ついた。
法改正案への抗議として、ハッシュタグ(#検察庁法改正案に抗議します)で賛意を示したのは、俳優の浅野忠信さん、秋元才加さん、芸人の大久保佳代子さん、漫画家のしりあがり寿さん、羽海野チカさんら。小泉今日子さん本人によるものとみられる投稿もあった。
9日午後に10万件程度だった投稿数は、10日午前3時ごろに100万件を突破。「三権のバランスをくずすこと、国を『国民』ではなく『自ら』の都合のよい形にするのはやめてほしいです」という声があがり、著名人に対しては「勇気あるツイートに感謝します」「とっても頼もしい」という賛意も寄せられた。
ネットメディア・言論に詳しいジャーナリスト津田大介さんは、驚きを隠さない。
「新型コロナウイルスへの政府の対応は緩慢な一方、『不要不急』にみえる定年延長の法改正は迅速に進む。一般に馴染みがなく、わかりにくい問題だったが、政府に注目が集まる今だからこそ気づかれることになった」と読み解く。
内閣の判断で検察幹部の「役職定年」を延長できるようにする検察庁法改正案の委員会審議は今月8日、与党が強行する形で始まった。黒川弘務・東京高検検事長(63)の定年延長問題を追及する野党側は、森雅子法相の出席が必須などと求めているが、与党は応じず、与党は週明けの委員会採決をめざすとみられる。
安倍内閣は、1月末に政権に近いとされる黒川氏の定年延長を閣議決定。検察トップの検事総長に就ける道を開くことになったため、「検察の私物化」との批判の声が上がっていた。
これは、凄いことになってきた。山が動くという感がある。この法案は、単なる検察官の定年延長法案ではない。この法案のねらいは、官邸による官邸のための検察人事への介入である。人事への介入を通じて政権に対する検察の牙を抜くことにある。この法案は、官邸が幹部検察官を選り好みして、政権に擦り寄るヒラメ検察官には定年を延長し、硬骨漢には定年延長の途を閉ざそうというのだ。こうして、検事総長(全国の検察官のトップ)や検事長(全国8高検のトップ)の人事を、あわよくば検事正(各地検のトップ)までの全て官邸寄りの人物で固めてしまおうという狙いが見え見えである。
アベ政権とは、後ろ暗い政権である。政治を私物化し、行政を私物化してきた。しかも、その手法は嘘とごまかしで固められたもの。公文書の隠匿・廃棄・改竄はお手のもの。モリ・カケ・サクラでは、内閣の関係者多数が刑事告発されている。安倍晋三本人も告発対象となっている。
硬骨な検察リーダーが決意を固めれば、政権トップに対する刑事訴追がなされて、たちまち政権は崩壊の危機に陥ることになる。今はそのような事態なのだ。安倍晋三はマクラを高くして、眠ることができない。
かつて、検察のトップは、「巨悪を眠らせない」と名言を吐いている。そんな検察では、安倍は困るのだ。アベはぐっすり眠りたい。
そこで、アベは考えた。黒川弘務東京高検検事長を検事総長にしよう。黒川こそは、安倍政権の守護神と異名をとった検察官。かつて、彼が法務事務次官に就任したときも、官邸のゴリ押しだったと報道されている。そのための布石として、定年となった黒川の定年を延長した。来年8月13日に定年退職する稲田検事総長のあとがまに据える含み。
検事の定年の定めは検察庁法に記載してあるが、定年延長の定めはない。そこで、アクロバティックに国家公務員法の規定を使った。まったく前例のないことである。この露骨な検察幹部人事介入強行に対する国民の非難が囂囂と巻きおこった。違法だ、脱法行為だ。官邸による検察を支配を許すな。
そこで、アベはまたまた考えた。違法・脱法だというのなら、法律を変えてしまえ。そうすれば問題ないじゃないか。自公で十分な議席をもっている。維新まで、アベに擦り寄っているいま、国会は思いのままだ。今のうちに、できることはやってしまえ。
これが、火事場のどさくさに紛れての検察人事コントロール法案の正体なのだ。
(2020年5月10日)
最近の会合は、オンラインで行われる。そのほとんどが、Zoom(ズーム)を使ってのもの。あっという間に、このアプリが社会に入り込み生活に定着した。その普及の迅速さに、感覚がついていけない。振り返って、「コロナとともに蔓延したZoom(ズーム)」と思い起こす日が来るのだろう。
確かに便利ではある。しかし、どうも機械を介しての複数の遠隔会話は勝手が違う。場の空気を読めない。従って発言がしにくい。どうしても絞られた要件だけの発言となる。事務的な会議ではそれでよいわけだし、時間の節約にもなる。だが、談論風発して弾んだ話が思いがけない方向に進展して新しい方針として結実する、などという会合の妙味には乏しいのではないだろうか。まだ、単に慣れないせいなのかも知れないが。
昨日(5月8日)は、日民協の執行部会。ややぎこちないZoom(ズーム)での会議だが、要領よく発言する方に感心した。
テーマのひとつが、検察庁法改正問題。昨日(5月8日)に、唐突な衆院内閣委員会での審議入りである。立・国・社・共の野党が欠席のまま、自・公の与党に準与党の維新が加わっての審議強行と報告された。次回予定は13日、来週の水曜日とされている。野党は強く反発しているが成り行きは予断を許さない。13日までの運動が喫緊の重要事となっている。
報告の中に、法案の問題点が意識的に分かりにくくされているとの指摘があった。
「国家公務員法と検察庁法の二つの改正法案が意図的に抱き合わせにされているところが注意点。国家公務員の定年延長に問題はない。しかし、官邸が恣意的に検察庁幹部の定年延長人事を左右できるようにすることは大問題だ。官邸の非違を質すべき立場にある検察が、官邸に忖度する検察になり下がってしまう。」
「だから、国家公務員法改正法案と、検察庁法改正法案を分離して審議せよというのが、野党の主位的な主張だが、数の力のゴリ押しでなかなかそれが通らない」
「せめて、内閣委員会だけではなく、法務委員会との連合審議にせよというのが、野党の妥協線なのだが、これにすら耳を貸さないのが、本日の内閣委員会での審議強行」
改正案は、毒まんじゅうなのだ。餡にくるまれた毒が入っている。アベ内閣の、またまたの暴走。普段なら、大問題としてメディが大きく取りあげるところが、コロナ禍に隠れた格好で報道がまことに小さい。また、メディアが的確に問題点を把握していないのではないか。与党と維新の側も、問題が大きくならないうちに、コロナ禍に隠れて一気呵成にことを進めようという魂胆がありあり。まさしく、「火事場泥棒」。
ここで、ジャーナリストの丸山重威さんから的確な発言があった。
「分かりにくい抱き合わせ改正法案は、これまでも経験してきたところ。こんなときには、まずネーミングに工夫が大切。」「『検察庁法改正案に反対』では、訴える力がない。本質に切り込んだ法案のネーミングを考えなければ」「たとえば、『検察官人事コントロール法案』ではどうだろうか」
なるほど、おっしゃるとおりだ。火急の問題。あれこれ考えているよりは、この提案を生かしたい。
なお、共産党・山添拓議員からは、メーリングリストでこんな報告があった。
「今日(5月8日)は午前9時から、衆院内閣委員会で実質審議入りが強行されました。自民2名、公明、維新各1名が質疑し、野党の持ち時間は「空回し」せず休憩に入り、そのまま散会となりました。
与党も維新も、検察庁法について全く質問していません。そもそも法務省の政府参考人を誰も呼んでいませんので、ハナから審議するつもりはなく、世論の批判などおかまいなしに(あるいは批判を恐れて?)、国会審議でスルーと決め込んでいます。通常、批判のある法案であれば与党も一応気にして、政府に弁明させる質問を一問ぐらいはするものですが、それすらできなかったようです。」
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本日(5月9日)の赤旗一面トップは、次のように、報じている。
「検察庁法改定案 与党が審議入り強行」「コロナの最中に 野党、抗議し欠席 衆院内閣委」
自民、公明などの与党は8日、衆院内閣委員会で、検察人事に内閣が露骨に介入する仕組みが盛り込まれた検察庁法改定案を含む国家公務員法等改定案の審議入りを強行しました。野党議員は、与野党の合意がないままの委員会開催と検察庁法改定案の審議入り強行に抗議し委員会を欠席しました。
野党側はこれまで、検察庁法の改定は憲法の要請に基づく三権分立にかかわる問題だとして、国家公務員法改定案と検察庁法改定案の切り離しを要求。検察庁法を所管する森雅子法相の出席を求めてきました。
ところが、与党側はこれらを拒否。与野党の合意がないままに委員長職権で委員会を開催し、改定案の審議入りを強行しました。
野党の内閣委員は同日、そろって記者会見し、日本共産党の塩川鉄也議員と、立憲民主党、国民民主党などの共同会派の大島敦(国民民主党)、今井雅人(無所属)両議員が抗議を表明しました。
塩川氏は、同改定案が昨年段階ではなかった検察官の勤務延長を突如盛り込んだ点について、この改定の出発点は、官邸に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の勤務延長の閣議決定にあると指摘。「憲法の基本原則である三権分立と司法権の独立を脅かし、官邸の意のままになる検察人事を行い、その勤務延長にあわせようとするのが今回の法改定だ」と批判しました。
その上で、「審議を強行するのは、道理のない法改定についてまともに説明することができないことを認めたのと同然だ」と強調。「新型コロナ感染症対策に全力を挙げるべきときに、火事場泥棒的に悪法を強行する安倍政権の姿勢が厳しく問われる」と抗議しました。
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35弁護士会「反対」検察官定年延長 「三権分立脅かす」
検察の独立性を侵す検察庁法改定案の審議を自民・公明と維新が衆院内閣委員会で強行する中、全国に52ある単位弁護士会の3分の2にあたる34都道府県の35弁護士会の会長が検察官の定年延長と同法案に反対する声明を発表したことが8日、本紙の集計でわかりました。
同法案をめぐっては、日本弁護士連合会の荒中(あら・ただし)会長が4月6日に反対する声明を発表。これを受けて、10を超える弁護士会で続々と声明が発表されています。
安倍晋三首相の地元、山口県弁護士会は先月23日に反対の会長声明をあげています。
声明では「この改正案が、最高検察庁次長検事などの役職人事に政府の介入を認めるものであって、検察官の独立性をより強く侵害し、三権分立を定める憲法秩序を脅かす」と指摘しています。
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検察官の定年延長 有志団体「弁護士1500人が反対」と批判
(NHK2020年5月8日 17時)
検察官の定年延長を最長で3年まで可能にする検察庁法の改正案に反対する団体がオンラインで会見を開き、団体の活動に賛同する弁護士が全国で1500人に上ることを明らかにしたうえで「新型コロナウイルスの影響が広がる中、拙速に国会での審議を進めるべきではない」と訴えました。
検察官の定年を段階的に65歳に引き上げ、定年延長を最長で3年まで可能にする検察庁法の改正案は、国家公務員の定年を引き上げるための法案と合わせて8日から衆議院内閣委員会で審議が始まりました。
これについて法改正に反対する有志の弁護士で作る団体が8日、オンラインで記者会見を開き、「改正案は検事長らの定年延長の判断を内閣や大臣に委ねるもので、検察の政治的中立性や独立性を脅かす」と訴えました。
そのうえで、呼びかけを始めた4月下旬からのおよそ2週間で、活動に賛同する弁護士が、日弁連(日本弁護士連合会)の会長や副会長経験者を含め全国で1500人に上ったことを明らかにしました。
(2020年5月9日)
安倍の悪事は多過ぎて、追いかけるだけでも目が回る。コロナだけに気を取られてはいけない。モリ・カケ・サクラ、テストにカジノにカワイ。その全てと関わるのが、幹部検察官人事に介入しようという検察庁法改正案。国家公務員の定年延長法案と抱き合わせとなっている。それが、昨日(4月16日)衆議院で審議入りした。こんなにも評判の悪い、こんなにも不当性見え見えの法案が、堂々と国会で審議されている。
塩川鉄也議員(共産)は、衆院本会議で質疑。これが、分かり易い。
「発端は安倍政権が1月に黒川弘務東京高検検事長の定年を延長させる閣議決定をしたことだ」「戦後、日本国憲法のもとで制定された検察庁法は、検事の定年延長は認めなかった。それは、検察官人事への政治の恣意的な介入を阻止し、検察官の独立性確保のためだ」「違法な閣議決定につじつまを合わせるため検察官の役職定年に例外を設け、内閣が認める時は63歳を超えても、さらには退官年齢(65歳)を超えても検事長などのまま勤務させることができるという抜け穴まで設けたもので許されない」「今回の法案は、検察官人事への介入を通じて内閣が恒常的に司法の一角に対する支配をを可能とすることで、憲法の基本原理である権力分立を破壊するもの」と批判した。まったくそのとおりだ。
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ところで、16日に法案の審議入りが予想されるとして、法律家6団体が、15日に記者会見を開いた。それがズーム(Zoom)を用いた「ウェッブ会見」だと報告を受けた。ふーむ、世は遷っている。
2020年4月14日
「国家公務員法等の一部を改正する法律案(検察庁法改正案)」
に反対する法律家団体の共同記者会見に関する取材と報道のお願い
改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター 共同代表理事 宮里 邦雄
自 由 法 曹 団 団 長 吉田 健一
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議 長 北村 栄
日本国際法律家協会 会 長 大熊 政一
日本反核法律家協会 会 長 佐々木猛也
日本民主法律家協会 理 事 長 右崎 正博
改憲問題対策法律家6団体連絡会事務局長 弁護士大江京子
お問い合わせ先 弁護士 江夏大樹
1 検察庁法改正案が衆院で審議入り
政府は,「国家公務員法の一部を改正する法律案(検察庁法改正案)」を,4月16日に衆議院で審議入りする方針を固めました。
検察官は,「公益の代表者」であり,内閣総理大臣を含む政権中枢の権力犯罪に対しても捜査・起訴権限を付与された準司法官的な地位を有する国家機関であることから,政権からの独立性・公正性が制度的に保障されなければなりません。しかしながら,検察庁法改正案では,すべての検察官の定年及び定年延長について国家公務員法の規定が適用されること,内閣ないし法務大臣の広範な裁量により定年延長ができることを規定し,次長検事,検事長,検事正,上席検察官に役職定年制を導入するとともに,内閣ないし法務大臣の広範な裁量に基づき役職定年を延長する規定が盛り込まれています。この改正案では,検察官全体の人事に政権が恒常的に介入することが合法化することになります。
2 新型コロナ感染が広がる中での検察庁法改正
現在、新型コロナの感染拡大が止まらない中、内閣ないし法務大臣が検察人事に介入するという極めて問題のある検察庁法改正案を国会で審議する必要は全くありません。
また、安倍内閣は現在、自民党の河井克行前法相、河井案里参院議員に対する公職選挙法違反事件や元自民党の秋元司衆院議員に対するカジノを含む統合型リゾート(IR)事業の汚職事件が直撃している上に、自身も森友問題や桜を見る会に関連する支出を政治資金収支報告書に記載していない等の様々な疑惑が浮上しており、捜査の対象となる立場です。そうすると、今回の検察庁法の改正は新型コロナの混乱に乗じて、自身への疑惑の追及を回避する仕組み作りにあるとの謗りを免れません。
そこで,私たちは,4月16日に予定されている検察庁法改正案の国会審議入りを前に,同法案の問題点を明らかにし,同法案の廃案を訴えるために共同記者会見を行うことといたしました。
日時: 4月15日午後3時?4時(予定)共同記者会見
手段: Zoomのウェビナー機能を用いて行います。
参加方法:幹事社の毎日新聞の方に参加URLをメールで送ります。
? Zoomのウェビナーでは参加者がパネリスト(発言可)と一般視聴者(視聴のみ)に分かれます。
? 各メディアの方でご参加いただける方は事前に江夏(enatsu@tokyolaw.gr.jp)に「お名前」と「お使いになるアドレス(Zoomに登録したアドレスの場合はそちらのアドレス)」をお伝えください。パネリストとして記者会見にご招待いたします。
? 本記者会見は一般の方々も視聴者として参加することを可能としました。
? Zoomの参加方法にご不明な点がありましたら江夏までお問い合わせください。
会見出席者:各団体からの発言をご依頼するとともに、各野党の国会議員の先生方に発言をしていただく予定です。
是非,取材をして頂くと共に,報道の程,お願い致します。
(2020年4月17日)
今夕(4月7日)緊急事態宣言という。これも重大事だが、コロナ禍での大騒ぎを奇貨としての安倍の諸疑惑逃れを許してはならない。桜疑惑、森友文書改竄疑惑、カジノ疑惑、河井夫妻疑惑…。そして、そのすべてに関わるものが幹部検察官人事介入疑惑である。
ことの発端は、黒川弘務東京高検検事長についての違法な定年延長。露骨なえこひいき人事であった。これを指摘された安倍は反省するどころではない。いま開き直って検察庁法改正を含む国公法改正を強行しようとしている。今後は、「合法的に」内閣の裁量によって幹部検察官の人事に介入しようというのだ。
昨日(4月6日)、日弁連がようやくこの問題に会長声明を発した。「法の支配と権力分立を揺るがすと言わざるを得ない」と踏み込んで批判している。各地の単位弁護士会のうち、既に22会がこの問題について、実務法律家の立場から反対意見を表明している。日弁連としてはやや遅きに失したという声もあるが、荒中新会長の決断に敬意を表したい。
声明も言うとおり、刑事司法の根幹を揺るがし、三権分立の大原則をも崩壊させかねない大問題である。安倍政権への国民の信頼がなくなることは些事であるが、刑事司法への国民の信頼が失われることは、憂慮すべき由々しき事態である。
なお、本年3月5日、日本民主法律家協会を含む法律家9団体が、「東京高検検事長黒川弘務氏の違法な任期延長に抗議する法律家団体共同声明」を公表しており、4月2日付けで日本民主法律家協会が、下記の「検察官の独立を侵す検察庁法改正案に反対する声明」を出している。これをご紹介しておきたい。
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検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明
政府は、本年1月31日の閣議において、2月7日付けで定年退官する予定だった東京高等検察庁検事長について、国家公務員法(以下「国公法」という。)第81条の3第1項を根拠に、その勤務を6か月(8月7日まで)延長する決定を行った(以下「本件勤務延長」という。)。
しかし、検察官の定年退官は、検察庁法第22条に規定され、同法第32条の2において、国公法附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基づいて、同法の特例を定めたものとされており、これまで、国公法第81条の3第1項は、検察官には適用されていない。
これは、検察官が、強大な捜査権を有し、起訴権限を独占する立場にあって、準司法的作用を有しており、犯罪の嫌疑があれば政治家をも捜査の対象とするため、政治的に中立公正でなければならず、検察官の人事に政治の恣意的な介入を排除し、検察官の独立性を確保するためのものであって、憲法の基本原理である権力分立に基礎を置くものである。
したがって、国公法の解釈変更による本件勤務延長は、解釈の範囲を逸脱するものであって、検察庁法第22条及び第32条の2に違反し、法の支配と権力分立を揺るがすものと言わざるを得ない。
さらに政府は、本年3月13日、検察庁法改正法案を含む国公法等の一部を改正する法律案を通常国会に提出した。この改正案は、全ての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げた上で、63歳の段階でいわゆる役職定年制が適用されるとするものである。そして、内閣又は法務大臣が「職務の遂行上の特別の事情を勘案し」「公務の運営に著しい支障が生ずる」と認めるときは、役職定年を超えて、あるいは定年さえも超えて当該官職で勤務させることができるようにしている(改正法案第9条第3項ないし第5項、第10条第2項、第22条第1項、第2項、第4項ないし第7項)。
しかし、この改正案によれば、内閣及び法務大臣の裁量によって検察官の人事に介入をすることが可能となり、検察に対する国民の信頼を失い、さらには、準司法官として職務と責任の特殊性を有する検察官の政治的中立性や独立性が脅かされる危険があまりにも大きく、憲法の基本原理である権力分立に反する。
よって、当連合会は、違法な本件勤務延長の閣議決定の撤回を求めるとともに、国公法等の一部を改正する法律案中の検察官の定年ないし勤務延長に係る特例措置の部分に反対するものである。
2020年(令和2年)4月6日
日本弁護士連合会
会長 荒 中
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検察官の独立を侵す検察庁法改正案に反対する声明
2020年4月2日
日本民主法律家協会
第1 はじめに
2020年3月13日、政府は、検察官のいわゆる定年延長(以下、原則として勤務延 長と呼ぶ。)などを盛り込んだ検察庁法の改定を含む「国家公務員法等の一部を改正する法律案」(以下、法案という。)を閣議決定し、国会に提出した。
検察官について、法案は、
?検察官の定年を検事総長と同じ65歳に段階的に引き上げる、
?63歳に達した検事正、検事長、次長検事につきいわゆる役職定年制を導入する、
?役職定年を超える任用の特例を認める、
?定年年齢に達した検察官について「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由」があると認める場合に勤務延長を認める、
というものである。
しかしながら、法案のうちとりわけ??については、時の政治権力による検察人事への不当な介入、それによる検察行政への不当な影響をもたらすという危険を多分に有する。これは、法の支配・法治国家という近代国家の基本原則をゆるがせにすることでもあり、到底容認することができない。
第2 正当な立法事実の不存在と法案による違法な事実の追認
1 法案には、そもそも、正当な立法事実が存在していない。一般の公務員の場合、職務の内容、その執行される場所が多岐・広範であることから、いわゆる余人をもって代えがたいなどの状況もありうる。従って、それに対処するために定年延長が必要な場合があることは事実である。しかし、検察官の場合、検察事務・検察行政ないし法務行政のいずれであれ、その職務内容や執行の場所は一般の行政に比して限局されている。また、検察官同一体の原則に基づく事務委任・事務引取移転により、検察官の行う事務作業を円滑に維持することが可能で、現にそのように実施されてきた。戦前の裁判所構成法の下で一時期存在していた判検事の定年延長制度を、戦後の裁判所法・検察庁法が引き継がなかったのも、裁判所構成法の立法当初指摘された勤務延長を認める必要性が現実には存在しなかったことに由来する。ある検察官の定年退職によりこれらの事務が阻害されたとの事実ないしそのおそれの存在は、まったく示されていない。正当な立法事実の存在自体が、極めて疑わしい。2019年10月末に内閣法制局が一度了承した検察庁法改正当初案においては、勤務延長などに関する規定はなく、法務省が2019年10月にまとめた説明資料でも、「(検察官は)柔軟な人事運用が可能」で、「公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考え難く、…(特例)規定を設ける必要はない」と明記している。
2 法案は、2020年1月31日に閣議決定された黒川弘務東京高検検事長のいわゆる定年延長問題に端を発したものである。黒川氏は現行の検察庁法に基づき2月に定年退職する予定であったところ、安倍政権は、「検察官は国公法の定年延長を適用されない」という従前の法解釈を変更し、これに基づいて黒川氏の定年が半年間延長された。これは、「首相官邸に近い」とされる同氏を次期検事総長に就任可能とする措置だとも言われている。しかし、このような解釈変更とそれに基づく勤務延長措置がきわめて恣意的であり、違法・不当であることは、われわれを含む法律家9団体が先に発表した2020年3月5日付「東京高検検事長黒川弘務氏の違法な任期延長に抗議する法律家団体共同声明」、各報道機関の論調をはじめ、各方面からすでに多数指摘されているところである。すなわち、国家公務員法の規定する勤務延長制度は検察官には適用されないとしてきた従来の解釈を、官邸の独断により正規の手続もなく変更するという違法手段によって、たった1人のためにだけ勤務延長が強行され、これにより政治権力による検察への介入に対する防波堤が崩されることとなった。これを契機として準備されたと思われるこの法案は、立法事実を欠くのみならず、上記のような違法・不当な措置を、立法という形をとって「合法化」するものである。社会状況の変化などで法解釈が変更されることはありうるとしても、法案はそのような要請に基づくものでない。きわめて不公正かつ邪悪な意図に基づくものである。
第3 時の政府による検察支配のための法案
1 検察官は、内閣に属する行政権を担う行政官であるが、その職務は司法権の行使と密接に関係する。このため、検察官が行う事務を統括する検察庁も、通常の行政機関とは異なる「特別の機関」(国家行政組織法8条の3)とされている。また、検察官は、いわゆる独任官庁として自己の良心に従った事件処理を行うべきことも要求されている。かかる特殊性から、検察官には、一般公務員よりも手厚い、裁判官に近い身分保障が付与され、停職・免職事由は法定の事由に限られる(検察庁法25条)。これらは、政治権力が検察に対して不当に介入することを防止し、検察官が自己の良心に従って独立した判断を行うことを可能とするためであるが、法律に事由を明定することによって検察官人事の客観性・透明性を担保する機能をも有する。法務大臣のいわゆる具体的指揮権の対象を検事総長に限った(同14条)のも、検察に対する政治的影響を極力排する趣旨からである。このことは、日本に限らず世界的な要請である。
各国の検察官が参加する組織である「国際検察官協会」(INTERNATIONAL ASSOCIATION OF PROSECUTORS)の策定した「専門職責任と検察官の基本的な権利義務に関する宣言の基準」(STANDARDS OF PROFESSIONAL RESPONSIBILITY AND STATEMENT OF THE ESSENTIALDUTIES AND RIGHTS OF PROSECUTORS)なども、検察官の不羈独立・公平を強く求めている。定年制も、人事の新陳代謝を確保しつつ、年齢という客観的基準のみで検察官の身分を失わせる点で、きわめて公正な制度であり、政治権力の検察への恣意的な介入を防ぐ機能を有している。日本において特殊な定年制を導入してきた官職の多くは、独立性・専門性の高い職種で、検察官の定年制も、そのような職務の特殊性に由来するものであった。司法権の地位と機能を強化した日本国憲法の下では、判検事の独立性はきわめて重要であり、定年制も、判検事の人事に対する政治権力の介入を防止するという趣旨から理解されるべきである。政治権力の検察への介入、あるいは検察権限の政治的利用が市民社会や国家の在り方にきわめて悪い影響を与えることは、大逆事件、帝人事件、造船疑獄事件をはじめとする多くの事件が示すとおりである。現在の検察庁法も、そのような弊害を引き起こさないことを重要な柱としている。しかし、法案による勤務延長や役職定年の延長は、以上の原則に逆行する。
2 検事総長などの検察最高幹部は、内閣により任免され天皇により認証される(検察庁法15条1項)。この点で、政治権力が検察官人事に関与することは事実である。しかし、免職は法定事由に限られ、任用も、具体的な検察事務などとは関係なく当該検察官の人格識見に基づくものである点で、恣意的な介入の度合いは相対的に少ない。これに対し、法案によれば、検事正を含む検事・副検事については法務大臣の定める準則、検事長・次長検事・検事総長については内閣の定めるところにより、当該検察官にかかる「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由」を考慮して、それぞれ勤務延長や役職定年延長の措置を執るというものである。この点で、政治権力が具体的な検察事務などに踏み込んで勤務延長などの要否・当否を判断することが、可能となる。このことはまた、政治権力の絡む事件の捜査・公判について、いわゆる「忖度」などによる検察官の萎縮効果をもたらしうることとなり、検察の不羈独立や公平は画餅に帰しかねない。特に、検事総長などの検察最高幹部は、政治権力と接触することが多い地位であるだけに、一層の不羈独立・公平が求められる。にもかかわらず、法案によれば、内閣の意向でその地位を左右することが可能となる。検察は、権力者の番犬に成り下がることとなる。
第4 結論―法案は廃案とすべきである
以上のように、法案は、その必要性を欠き、むしろ、百害あって一利のないものというべきである。そして、法案が提起された背景をも見るならば、そこには、法の支配・法治主義という近代国家の原則を理解せず、むしろそれに敵対的で、絶対王政的な人の支配に親和的で、現にそのような政権運営をあらゆる方面で行ってきた現政権の姿勢を如実に表わしたものというべきである。従って、法案は速やかに廃案とされるべきであり、われわれはそのために最大の努力を尽くすものである。
以上
(2020年4月7日)
広島地検が、自民党・河井案里参院議員の選挙運動員3名を逮捕したのが3月3日。その勾留期限が24日に迫っている。昨日(20日)来、処分内容の見通しが、各メディアで語られている。いずれも、「関係者への取材で明らかに」とされているが、地検の意図的なリークがあったと見るべきだろう。各メディアの見出しが同じ方向のものとなっている。
共同通信配信記事の見出しが、「河井案里秘書 連座制視野に起訴へ」と端的であり、朝日が「案里氏秘書ら、連座制対象と判断か 百日裁判申し立てへ」、毎日が「公選法違反事件、連座制を視野 地検、百日裁判申し立てへ 河井案里議員、失職も」と順次詳細である。この3本の見出しで、大方の内容は把握できよう。
当ブログでも、この問題を下記のとおり3度取りあげている。
哀しいかな、議席もカネで買える現実がある。河井案里を当選させた、巨額の「安倍マネー」。
https://article9.jp/wordpress/?p=14179 (2020年1月23日)
河井案里選挙違反事件でざわつく党内。自民党内からのアベ批判。
https://article9.jp/wordpress/?p=14198 (2020年1月26日)
広島地検は、徹底して河井案里選挙の違法を追及せよ。政権への忖度などあってはならない。
https://article9.jp/wordpress/?p=14443 (2020年3月8日)
報じられているところを整理すれば、以下のとおり。
逮捕された被疑者は、次の3人である。
立道 浩(54) 案里の公設第2秘書(現在) 広島市在住
参院選公示前に車上運動員調整役の事務担当となり、選挙カーの遊説ルート作りなどを担い、案里当選後に秘書になった。車上運動員の手配や街頭宣伝のスケジュール管理、運動員への報酬支払も担当した。
高谷真介(43) 河井克行前法相の政策秘書 東京都在住
選挙運動を実質的に仕切ったとされる河井克行(前法相)と案里陣営とのパイプ役で、違法な報酬を車上運動員の仲介役に伝えた 候補者の遊説の統括や広報を担当、日当3万円の「河井ルール」適用について克行から了解をとり、昨年5月22日に現場に伝えた。
脇 雄吾(71) 案里陣営幹部 広島市在住
選挙対策事務所の事務長として選挙を取り仕切った。昨年6月11日に日当3万円の最終確認をウグイス嬢に伝えている。
被疑事実は公選法違反(運動員買収)
車上運動員14人に公選法が定める日当の上限(1万5000円)を超える報酬計204万円を支払った。
連座制の適用
3名のうちの少なくとも1人を連座制の対象者に当たるとして起訴し、連座制の適用に向け、迅速に裁判を進める「百日裁判」を広島地裁に申し立てる方針。有罪が確定すれば、案里議員の当選は無効となり失職する。
この件を取り巻く状況は、当初とは劇的に変わった。黒川検事長定年延長と検察庁法改正問題が出来して以来、この件の処分如何が、検察庁の政権に対する独立性に関する試金石となっているからだ。広島地検は、この件の処分に関していささかの妥協も許されない。妥協は、安倍政権に対する忖度と指弾されざるをえないのだ。
報じられているところでは、地検が連座制の適用を意識した起訴に及ぶことは確実と思われる。これで、案里議員の失職は見えてきた。問題は、予てから「本丸」とささやかれてきた、河井克行元法相の立件の有無である。報道では「地検は違法な報酬の決定に克行氏が関与したかどうかも慎重に調べている。」「克行氏が選挙の実務の全てを取り仕切る実質的な最高責任者であると述べている供述調書もある」「現場では、ほぼ証拠は固まりつつある。後は上の決断ではないか。」
前法相起訴となれば、政権へのインパクトは大きい。厳しくその任命責任が問われることになる。安倍晋三にしてみれば、こういうときにこそ検察トップに頼りになる人物が欲しいのだ。河井の次は、いつ自分の問題になり得るか心配なのだから。あらためて、権力から真に独立した、公正・中立な検察業務を願う。
(2020年3月21日)
泥棒は夢を見る。「警察官の人事をオレが握ることができれば、安心して仕事ができるんだが…」。 反社の諸君も夢を見る。「検事の人事をオレが握ることができさえれば、心おきなく大きな仕事ができるだろうに…」。 そして、安倍晋三も夢を見る。「検察トップの人事を握ってしまおう。そうすれば、国政私物化だの嘘とごまかしだのという批判は恐くない。心おきなく、私と妻とオトモダチのために特化したお仕事に邁進できる。」 泥棒と反社の願望は夢のまた夢だが、晋三の夢はひょっとすると実現することになる。
政府は3月13日、検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる検察庁法の改正案を閣議決定し国会に上程した。これは、単なる公務員の定年延長問題ではなく、検察官の定年を延長するだけの問題でもない。権力の分立に関わる原理的な問題を孕んでいるとともに、国政私物化の安倍政権の野望の表れでもある。泥棒に警察官の人事を与えるに等しい。こんな法案を通してはならない。
翌3月14日の朝日の社説「検察庁法改正 許されぬ無法の上塗り」が、問題点をよく整理して、しかも分かり易い。リベラルな立場からのもっともな怒りがにじみ出ている。その抜粋を引用する。
法をまげたうえで、さらに法の本来の趣旨を踏みにじる行いを重ねるという話ではないか。納得できない。
国家公務員の定年延長にあわせ、検察官の定年を63歳(検事総長のみ65歳)から65歳に段階的に引き上げる検察庁法改正案が、国会に提出された。
見過ごせないのは、63歳以上は高検検事長や地検検事正といった要職に就けないとしつつ、政府が判断すれば特別にそのポストにとどまれる、とする規定を新たに盛り込んだことだ。
安倍内閣は1月末に東京高検検事長の定年を延長する閣議決定をした。検事総長に昇格させるための政治介入ではないかと不信の目が向けられている。
政府は従来、検察官の定年延長は認められないとの立場だったが、今般、解釈を変えることにしたと言い出し、決定を正当化した。立法時の説明や定着した解釈を内閣だけの判断で覆す行為は、法の支配の否定に他ならない。法案は、その暴挙を覆い隠し、さらに介入の余地を広げる内容ではないか。
政治家が特定の人物を選び、特別な処遇を施すことができるようになれば、人事を通じて組織を容易に制御できる。その対象が、政界をふくむ権力犯罪に切り込む強い権限を持ち、司法にも大きな影響を与える検察となれば、他の行政官と同列に扱うことはできない。
戦後、三権分立を定めた憲法の下で制定された検察庁法は、その問題意識に立ち、検察官の独立性・公平性の担保に腐心した。その一環として、戦前あった定年延長規定は削除され、歴代内閣は検察人事に努めて抑制的な姿勢をとってきた。
だが安倍政権は公然とその逆をゆく。延長の必要性について森雅子法相は、「他の公務員は可能なのに検察官ができないのはおかしい」という、検察の職務の特殊性や歴史を踏まえぬ答弁を繰り返すばかりだ。
混迷の出発点である高検検事長人事の背景に、首相官邸の意向があるのは明らかだ。検察への信頼をこれ以上傷つけないために、定年延長の閣議決定をすみやかに取り消すとともに、検察庁法の改正作業も仕切り直すことを求める。
さらに、3月17日東京弁護士会が、以下の会長声明を出した。これも、問題の全体像を簡明に語っている。その素早い対応に敬意を表したい。
検察庁法に反する閣議決定及び国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対し、検察制度の独立性維持を求める会長声明
東京弁護士会 会長 篠塚 力
1 政府は本年1月31日、2月7日に63歳で定年を迎えることになっていた東京高検検事長の勤務を、国家公務員法の勤務延長規定を根拠に半年間延長するとの閣議決定をした(以下「本件閣議決定」という。)。
しかし、検察官は一般の国家公務員とは異なり検察庁法によって定年が規定されている。特別法が一般法に優先するのは理の当然であることから、国家公務員法の規定する定年退職の規定(国家公務員法第81条の2)はもとより、勤務延長の規定(同法第81条の3)も検察官には適用されないと解される。これは内閣、人事院の一貫した法律解釈であって、時の政権が閣議決定によってこの解釈を変更することは検察庁法の規定に明白に違背する。
2 検察官が一般の国家公務員とは異なる法律によって規律されるのは、検察官は行政官ではあるものの、刑事事件の捜査・起訴等の権限が付与され司法の一翼を担って準司法的職務を担うことから、政治からの独立性と中立性の確保が特に強く要請されるためである。
すなわち、検察官は「公益の代表者」(検察庁法第4条)であって、刑事事件の捜査・起訴等の検察権を行使する権限が付与されており、ときに他の行政機関に対してもその権限を行使する必要がある。そのために、検察官は独任制の機関とされ、身分保障が与えられている。にもかかわらず、内閣が恣意的な法律解釈によって検察の人事に干渉することを許しては、検察官の政権からの独立を侵し、その職責を果たせなくなるおそれがある。
したがって本件閣議決定は、検察官及び検察組織の政権からの独立を侵し、憲法の基本原理である権力分立と権力の相互監視の理念に違背する。
3 このような違憲・違法というべき法律解釈の変更について、法務大臣が国会内外で厳しく批判されている中で、政府は3月13日、さらに国家公務員法等の一部を改正する法律案(内容として検察庁法の一部改正を含む。)を閣議決定し、これを国会に提出した。
改正案は、すべての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げた上、63歳になった者は、検事総長を補佐する最高検次長検事や、高検検事長、各地検トップの検事正などの役職に原則として就任できなくなるが(役職定年制)、「内閣」が「職務遂行上の特別の事情を勘案し(中略)内閣が定める事由があると認めるとき」(検察庁法改正案第22条第5項)に当たると判断するなどすれば、特例措置として63歳以降もこれらのポストを続けられるようにするとの内容である。
このような法律改正がなされれば、時の内閣の意向次第で、検察庁法の規定に基づいて上記の東京高検検事長の勤務延長のような人事が可能になってしまう。
しかしこれは、政界を含む権力犯罪に切り込む強い権限を持ち司法にも大きな影響を与える検察官の独立性・公平性の担保という検察庁法の趣旨を根底から揺るがすことになり、極めて不当である。
4 以上の理由により、当会は政府に対し、本件閣議決定に抗議し、撤回を求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち検察官の定年ないし勤務延長に係る「特例措置」に係る部分を撤回し、憲法の権力分立原理を遵守して検察官の独立性が維持されるよう、強く求めるものである。
3月19日の毎日新聞(デジタル)解説記事も、意を尽くしたものとなっている。
国会に3月13日提出された検察官の定年を63歳から65歳に段階的に引き上げる検察庁法改正案への批判が強まっている。今年1月になって急きょ法解釈を変更して可能となった検察官の定年延長だけでなく、内閣が検察幹部の人事に介入できる余地を残すもう一つの「仕組み」も盛り込まれたためだ。内閣が必要と認めれば、例外的にその役職を続けさせることができる――この規定に野党は「検察人事に内閣が露骨に介入するものだ」と反発。東京弁護士会も反対する会長声明を出した。
検察庁法改正案とともに国会提出された国家公務員法(国公法)改正案には、定年の段階的引き上げのほか、管理監督職の年齢の上限を定める「役職定年制」が導入される。検察庁法改正案でも同趣旨の制度が導入され、63歳になるのに合わせて検事総長を補佐する最高検次長検事、高検検事長、地検トップの検事正は役職から退き、「検事」に戻ることになる。ただ、これに伴い、内閣の判断で例外的に63歳以降も役職を続けさせるという規定も入った。
「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、次長検事、検事長が63歳に達した日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き勤務させることができる」
この例外規定は現行法で検察官の定年を定めた「22条」に加えられた(検事正は別の条文)。さらに次の項で「前項の期限又はこの項の規定により延長した期限が到来した場合、前項の事由が引き続きあると認めるときは、内閣の定めるところにより、1年を超えない範囲で期限を延長することができる」とし、再延長、再々延長まで想定されている。
…検察官は他の国家公務員と違い、刑事事件の捜査・起訴の権限を付与されている。「首相も逮捕できる」存在であり、政治からの独立性と中立性の確保が極めて重要だ。しかし、この例外規定を素直に読めば、検察幹部の立場からいえば、職を続けられるかどうかは内閣の判断に左右されると言い換えられる。これで内閣の検察幹部への影響力を排除できるのだろうか。
以上で、この問題の論点は尽くされていると思う。
検察官は、他の公務員とは異なり、本来的に行政からの独立を要求される職務なのだ。必要があれば、首相をも逮捕し、起訴し、論告求刑し、刑の執行も行うべき立場にある。だからこそ、その人事が首相の手に握られるようなことがあってはならない。しかし、だからこそ、国政私物化をこととする首相の立場からは、人事権を通じて幹部検察官を手の内に納めておきたいのだ。
このほど、森友問題で文書の改竄を命じられたことを苦にして自殺した近畿財務局職員の手記が公表された。これまで知られていなかった新事実が明るみに出た。明らかに必要な事件の再調査を安倍晋三は拒否した。その理由をなんと言ったか。
「検察が捜査を行い、結果が出ている。財務省でも、麻生大臣のもとで、事実関係を徹底的に調査し、明らかにしたところだ」と言ったのだ。「検察が告発を受けて捜査して不起訴とした」のだからもう問題はない。これが、安倍晋三の錦の御旗となっている。忖度検察は、汚い内閣にとっての頼もしい味方なのである。
こんな法案が議会の数の力でゴリ押しされて通るようでは、刑事司法の権威は失墜する。警察官人事を握らせる泥棒の夢を叶えるに等しく、世も末だ。なんとしても、撤回してもらいたい。
(2020年3月20日)