「こんな日本に誰がした」 ー いま、切実に問わなければならない。
本日(3月25日)の毎日新聞第8面「みんなの広場」欄に、市民感情を代表する投書が掲載されている。タイトルが、「こんな日本に誰がした」というもの。大阪の主婦・岡田マチ子さんの叫ぶがごとき文章である。
このタイトルだけでおよその見当がつく。「こんな日本」とは、「ウソとゴマカシが横溢し、正直者が苦しむ日本」である。「誰がした」か? 今さらいうまでもなく、「ウソとゴマカシが横溢した、こんな日本のトップ」である。もっとも、この『誰』は、一人とは限らない。投書は2人の名を挙げている。佐川宣寿と安倍晋三である。
もう我慢できない。平気でうそをつき、権力者の顔色をうかがい、国税庁長官に上り詰めたその人物に。
まったく同感だ。私も我慢ができない。「平気なうそ」にも、「権力者の顔色をうかがう」その卑屈な姿勢にも。そして、そのような人物の一群が、この国の権力者を支えていることにも。
森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で2018年3月に自殺した近畿財務局の男性職員の奥さまが、真実を求めて国と元国税庁長官の佐川宣寿氏を相手取り訴訟を起こした。
権力を持つ者に不都合な真実は常に隠されている。厚いベールに覆われて、容易に真実に近づくことができないのだ。そのベールを剥ぎ取って、権力を持つ者に不都合な真実を明るみに曝け出すことが提訴の狙いである。そうしてこそ、亡くなった人の無念を晴らすことができようというもの。
17年2月17日、国会中継を見ていた。森友疑惑に関して安倍晋三首相は「私や妻が関係していたら首相も国会議員もやめる」と語気を荒らげた。首相の奥さまが学園の予定する小学校の名誉校長に就任していたというのに。
佐川宣寿の背後に安倍晋三がいる。安倍が佐川に不都合な文書の改竄を指示したのか、あるいは佐川が安倍の意向を勝手に忖度したに過ぎないのか。いずれにせよ、安倍の私益を擁護するために、佐川が文書改竄を指示し末端職員が違法行為の実行を余儀なくされたのだ。
男性職員の手記によるとその9日後、上司から改ざんを指示される。指示の大本は当時、財務省理財局長だった佐川氏だという。新聞記事にある「『僕の契約相手は国民』が口癖だった」のくだりで活字がにじむ。
この手記は涙なくしては読めない、というのが真っ当な市民感情。安倍や麻生には、血も涙もない。手記で名前を上げられた佐川も、中村も、田村も、杉田も、そして美並も池田も、その後はみんな見事に出世している。公文書改竄で自ら命を断った者と、悪事をともにして出世した人びととのなんたるコントラスト。
森友問題、加計問題、桜問題、東京高検検事長定年延長問題……。こんな日本に誰がした。安倍氏をおいて他にない。
安倍晋三の罪は重い。国政を私物化し、国政をウソとゴマカシで固めたのだ。「こんな日本」の「こんな総理」に、国民の支持がいまだに4割を超える。その国民の責任も大きい。森友、加計、桜、検事長定年延長…、これだけあって何ゆえ「こんな総理」が生き延びているのだ。「こんな日本に誰がした」は、今切実な発問である。
(2020年3月25日)