喜ばしや、2度までの維新の目論見の蹉跌。
(2020年11月2日)
昨日(11月1日)投開票の「大阪市廃止」住民投票。1万7000票余の僅差ではあったが否決された。欣快の至りというしかない。
それにしても、仕掛ける側が「絶対に勝てる」という確信があっての住民投票実施である。維新は、このタイミングなら絶対勝てるとの判断で賭に出た…はず。5年前の投票では1万票差の否決だった。今回は、公明党を賛成派に抱き込んでの再提案。必ず勝てると思い上がっていたに違いない。それでも負けたのだ。この衝撃と影響は前回にもまして大きい。
「大阪都構想」は、維新にとっては「1丁目1番地の看板政策」である。それに固執して2度までも負けたのだ。一説では100億円という府・市の予算を投じ、コロナ対策そっちのけでの住民投票対策。住民を敵味方に2分しての宣伝戦は、大山鳴動したのみでネズミ一匹出てこなかった。当然のことながら、維新のこの責任は大きい。
維新の打撃について、時事はこう報じている。
「大阪都構想」が1日、否決された。実現を目指した日本維新の会にとって打撃だ。看板政策が地元の理解を得られず、次期衆院選で狙う全国展開の推進力を失った形で、今後は国政で厳しい立場に立たされそうだ。松井一郎代表(大阪市長)は否決を受け、市長の任期満了後の政界引退を表明。将来的に党が維持されるかも見通せない。
また、政治状況に影響が大きい。維新とは、与党でも野党でもない「ゆ党」だと揶揄される立ち位置。その実態は政権の補完勢力である。いざというときに政権に自らの存在を高く売りこもうという意味での改憲別働隊でもある。こんな輩に勢いづかせてはならない。
ところで、「15年の住民投票に続く2度目の否決で、維新代表の松井一郎大阪市長は23年4月の市長任期満了での政界引退を表明した」と報じられている。意味不明というしかない。任期満了までの在職継続宣言が、どうしてケジメをつけることになるのか、責任を取ることになるのか理解しかねる。
自分に市長としての適格性のないことを自覚したからこそのケジメではないか。重要政策に市民の信頼を得られなかったことに関する責任を取ろうということでもある。速やかに職を辞するのがスジというものであろう。なにゆえ、あと2年半も、のうのうと市長として録を食むと言えるのだろうか。
10月26日に、「大阪市廃止なら年間218億円分の財政コスト増」との試算をメディアに提供した大阪市の財政局長は、事態をどう見ているだろうか。速やかに市長が引責辞任してくれれば今後の軋轢は防げるのだが、あと2年半もの市長在任となれば、その間戦々恐々と報復を恐れなければならない。
また、大阪維新の会の代表代行を務めるという、大阪府知事の吉村洋文である。敗北後の記者会見で、「進退についてだが、今回、1丁目1番地の都構想が否決された。重く受け止め、僕自身が都構想について再挑戦することはない」と述べたという。重くは受け止めたが、責任を取ることまでは考えていないというわけだ。この姿勢もいただけない。
ところで、前回5年前の敗北と同様、確実に維新の存在感に陰りが生じることになる。次の衆院選戦略にも影響を与えるとの観測記事が多い。松井と菅とが親しいことは知られており、「次期衆院選で自民、公明両党の議席が減った場合は「自公維政権を作ればいい」(自民関係者)との声もあるほど」(毎日)だという。ここでの松井のレームダック化は、首相の政権運営に影響を及ぼしそうだ。それ故に、昨日の住民投票の結果が「欣快の至り」なのだ。
なお、偶然なのか必然なのかはわからないが、昨日今日の大阪府と東京都とのコロナ感染者数の比較は以下のとおりである。人口比から見て、大阪の感染蔓延は相当なものだ。
11月 1日 大阪 123人 東京 116人
11月 2日 大阪 74人 東京 87人
大阪都構想などにかまけている余裕なんぞははなかったのだ。