澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

ドイツ新政権、核禁条約会議に参加へ。日本は何もしない起承転結。

(2021年11月26日)
 ドイツが変わる。アンゲラ・メルケルからオラフ・ショルツへ。首相の所属政党は、キリスト教民主同盟(CDU)から民主社会党(SPD)へ、である。

 9月のドイツ総選挙で第1党となったのが中道左派の社会民主党(SPD)。同党はこれまでメルケルを首班とする大連立政権に参加していたのだが、今回、緑の党、自由民主党(FDP)との3党連立内閣を作ることとなった。その3党連立の合意が24日に成立した。12月上旬に、民主社会党(SPD)党首であるショルツを首班とする新連立政権が誕生する。

 新政権での幾つかの変化が報じられているが、最も注目されるのが《核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加》である。3党連立の合意文書は、「国際的な核軍縮において主導的な役割を果たしたい」と表明。「核兵器のない世界、ドイツを目指す」としている。「メンバーではなくオブザーバーとして参加し、条約の意図に建設的に寄り添っていく」という姿勢。もっとも、同時にロシアなどの脅威を念頭に、米国と核兵器の運用を「共有」する仕組みを維持する姿勢も明確にされているという。

 核禁条約は全ての核兵器を違法とし、核の使用だけでなく、製造・保有も禁止している。今年1月に正式に発効。これまでに50以上の国・地域が批准の手続きを終え、来年3月にウィーンで第1回締約国会議を開催する。ドイツは、同会議でのオブザーバー参加国となる。その参加表明は、主要7カ国(G7)で初めてのことであり、NATO加盟国としてはノルウェーに次いで2番目だという。

 国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のフィン事務局長は「何十年もの間、核兵器に反対してきたドイツ国民にとって、重要な一歩を踏み出したことを意味する」と歓迎する声明を出した。日本国内の被爆地や被爆者団体はこのニュースに湧いている。日本も、ドイツに続くべきだし、一歩前進が現実的に可能だという期待の確信が高まっている。

 米国の「核の傘」に依存し国内に米軍基地を置くドイツのオブザーバー参加表明である。唯一の戦争被爆国・日本がドイツに続くべきは当然で、ここで動かなければ、ドイツに比較しての岸田政権の後ろ向きの姿勢への批判が高まることは目に見えている。

しかし、日本政府が動く気配はない。松野博一官房長官は25日の記者会見で、まずは、「条約に核兵器国は一国も参加していない」と強調した。その上で、核兵器禁止条約締約国会議について、「オブザーバー参加といった対応よりも、我が国としては唯一の戦争被爆国として、核兵器国を実質的な核軍縮に一層関与させるよう努力しなければならない」と述べている。要するに、何もしませんという宣言である。

 日本政府は、一貫して核禁条約に背を向けてきた。本当は一顧だにする気もないのだ。しかし、核廃絶を願う世論を無碍にもできない。そこで、こういう起承転結の論法を編み出した。

(起) 「日本は唯一の戦争被爆国として、世界の核廃絶を目指す」
(承) 「そのためには核保有国に核廃絶を決意させることが必要だ」
(転) 「非核国による核保有国批判は、核保有国刺激の逆効果だけ」
(結) 「日本は両者間の橋渡しをして核保有国に核廃絶を決意させる」

 まずは、目標をはるか遠くに設定する(起)。次いで、そのはるかな目標に密接した困難な条件を提示する(承)。その困難な条件をクリヤーするためには目前の実現可能な課題の効果を否定する(転)。そして、何もしないことを合理化する(結)。

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Published in 金曜日, 11月 26th, 2021, at 23:18, and filed under 核廃絶.

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