世にも恐ろしい、震災・津波・原発・戦争、そして嘘。
(2022年3月11日)
3・11である。11年前のこの日、東日本を大震災が襲い、東北3県の沿岸に甚大な津波の被害が生じた。映像で見る悲惨な光景は、目を覆うばかり。共生する人間社会は、共同して繰り返す自然災害を防止する手立てと被災した人を救済する手立てを講じなければならない。そのことを強く印象づけられた彼の日。
しかし、3・11は、自然災害だけの日ではなかった。福島第1原発の事故という明らかな人災が伴った。女川原発も間一髪だった。人間は、自らの手では完全に制御しきれない危険物をもてあそんでいるのだ。この、人類を絶滅させかねない危険物。どうして、脱原発の意思統一ができないのだろうか。
今起きているロシアによるウクライナ侵略。これも人災である。人が人を大量に殺傷し、環境を破壊し、資源を浪費している。愚かな限りではないか。しかも、さらに恐るべきは、ロシアがウクライナ内の原発を標的に砲撃しているという。狂気の沙汰としか評しようがない。
戦争と原発と並ぶ、もう一つの災厄が「嘘」である。
侵略国ロシアのラブロフ外相と、被侵略国ウクライナのクレバ外相は、昨日(10日)、トルコ南部アンタルヤで、トルコの外相も交えて約1時間半にわたって会談した。特になんの進展もなく、「ロシア、降伏を要求」と見出しを打った報道もあった。このことは想定されたところだった。
が、驚いたのは、会談後のロシア外相記者会見である。「ロシアはウクライナを攻撃していない」とのたもうたのだ。
つまり、現在進展しているのは、プーチンの言う「住民を保護するための特殊な軍事作戦の遂行」に過ぎず、戦争でも侵略でも、軍事侵攻ですらない。もそもそも「ウクライナを攻撃していない」というのだ。
同じ日、ウクライナ南東部マリウポリ。この日、市民を避難させるための「人道回廊」が設置され一時停戦が合意されていたはずのこの町で、産科と小児科をもつ病院が爆撃された。被害者は妊産婦と幼児である。顔を血に染めた妊婦の映像が痛々しい。
ところがこの病院爆撃の事実も、存在しないとロシアは言う。”あの報道はフェイクニュースだ“、“病院はすでに兵士によって使われていて、小児病院ではなかった”、“フェイクニュースはこうやって生まれる”とまで言ってのけた。
「あることをない」と平気で言うプーチン流。きっと、「ないこともある」と平気で言うのだろう。自然災害と原発事故と戦争と、そして権力者の嘘。恐いものばかりだ。