澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

アベノミクスへの期待の切れ目が、安倍内閣の命の切れ目

最新の世論調査結果を報じた、本日(1月19日)「毎日」朝刊2面の見出しは、大きな衝撃である。
「アベノミクス地方に浸透 6%」「格差拡大 70%」というもの。

アベノミクスこそは、安倍政権の唯一の看板である。「看板」は、不正確なのかも知れない。「撒き餌」「誘蛾灯」「漁り火」というべきであろうか。いずれにせよ、これが有権者に対する唯一のアピール・ポイントである。

安倍内閣はアベノミクス以外に、アピールポイントをもたない。憲法改悪志向、立憲主義に反する集団的自衛権行使容認、強引な特定秘密保護法の制定、民意無視の原発再稼働、近隣諸国のみならずアメリカをも失望させた靖国神社参拝、福祉の切り捨て、労働法制の改悪、庶民大増税と財界への優遇税制、教科書問題に象徴される後ろ向き教育、TPP、NHK人事、格差の拡大、貧困の蔓延‥‥。安倍政権の不人気政策は、枚挙に暇がない。

それでも、安倍内閣がここまでもってきたのは、ひとえにアベノミクスの「成果」なのだ。ところが、世論調査が、アベノミクスに見切りをつけ始めたとなれば、安倍内閣の末路が見えてきたというもの。

記事の概要は以下のとおりである。
「毎日新聞の17、18日の世論調査で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の効果が地方に十分「浸透している」との回答は6%にとどまり、「浸透していない」が86%に上った。内閣不支持層では96%が「浸透していない」と答え、支持層でも79%が「浸透していない」とみている。」

「安倍晋三首相は5日の年頭記者会見で「全国津々浦々、一人でも多くアベノミクスの果実を味わっていただきたい」と強調した。アベノミクスの地方への波及が課題であることは政権も認めており、統一地方選を控え、地方の不満にどう応えていくかが問われる。」

「これに関連して、日本社会の格差は広がっていると感じるかとの問いには70%が「感じる」と答え、「感じない」は23%だった。」

同調査では、「戦後70年の談話の内容」「集団的自衛権の行使の是非」「川内原発再稼働の可否」「改憲への賛否」等々の具体的な質問項目において、何一つ安倍内閣の方針は国民に支持されていない。明らかに安倍反対の声のほうが大きいのだ。

唯一、アベノミクスだけが、安倍内閣に対する国民の期待をつないできた。「今は、我慢をしても、だんだんよくなるのではないか」「ほかの道は見えていない以上、この道で仕方がない」とのつなぎ方だった。それが、「地方に浸透6%」「格差拡大70%」とは、そろそろ「我慢をしたところでちっともよくならないのではないか」「ほかの道に早めに切り替えた方かよいのではないか」と変わりつつあるのではないか。ようやくにして、アベマジックの呪文が解けつつあるように見える。

毎日だけではない。朝日の世論調査も同様の結果となっている。
「朝日新聞社は17、18日、全国世論調査(電話)を行った。安倍晋三首相の経済政策が、地方の景気回復に「つながる」と答えた人は25%にとどまり、「つながらない」は53%にのぼった。首相は今年の年頭の記者会見で「全国津々浦々、アベノミクスの果実を味わっていただきたい」と述べたが、有権者の期待感は高まっていないことが浮き彫りになった」

テレビ朝日の調査結果は、次のとおり。
「あなたは、安倍総理が進めている経済政策によって、景気回復を実際に感じていますか、感じていませんか?
感じている14% 感じていない77% わからない答えない9%」

読売の調査結果も同様である。
「安倍内閣の経済政策については、「評価する」43%、「評価しない」46%が拮抗きっこうした。安倍内閣が景気の回復を実現できるかどうかについては、「実現できる」は38%で、「そうは思わない」の47%を下回った。また、景気の回復を「実感している」は14%で、「実感していない」は81%に達している。アベノミクスの成果を実感している人は少ないようだ」

いったい、どうしてこれで安倍自民は暮れの総選挙に勝てたのだろうか。明らかに、その答は、小選挙区制のマジックにある。50%の投票率で、自民党はようやくその半分の得票を得た。絶対得票率4分の1で290議席の絶対多数がとれたのは、ひとえに小選挙区制のおかげなのだ。虚構の絶対多数。上げ底の議席数である。

しかし、どの調査でも、安倍内閣の支持率はまだ高い。これはどうしてなのだろうか。おそらくは、ライバル不在の状況の反映なのだろう。
自民党支持率は長期低落の過程を経て2009年総選挙で大敗北に至った。民意は自民を離れて民主党に移行し、劇的な民主党政権誕生を実現させた。民意は民主党に夢と希望を託した。しかしわずか3年で夢はしぼんだ。いったんは民主党政権を誕生させた民意が、今必ずしも自民に復帰したわけではない。しかし、民主党を支持して手ひどく裏切られた思いが、「安倍政権を積極支持はしないが、民主や第三極よりはマシではないか」となってあらわれているのではないだろうか。ライバル不在故の消極的支持の継続であろう。

しかし、それもアベノミクスこそが安倍内閣の命の綱。アホノミクスの正体見たりと、民意がアベノミクスを見限れば、それまでのこと。世論調査の結果は、民意がアベマジックの呪文を解いて覚醒しつつあることを示しているように思える。呪文が解け、覚醒した目で見つめれば、「アベノミクス」は「アホノミクス」に過ぎないのだ。
(2015年1月19日)

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Published in 月曜日, 1月 19th, 2015, at 23:34, and filed under 安倍政権, 経済.

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