澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

維新の正体が見えたー戦争法成立に手を貸す維新に批判を

維新とはなんであろうか。
自民を見限って民主に期待し、民主にも裏切られた保守層の期待幻想が紡ぎ出した虚妄である。半自民、反民主ではあるが、自らの中にプリンシプルを持たない。だからまとまりはなく、一貫した政策もない。全員が一色ではなかろうが、全体としては、世の風向きを読むことに敏感で、自己保身の遊泳に精一杯なだけの、政治世界の盲腸のようなもの。

その盲腸、場合によっては虫垂炎を起こす危険な代物となる。虫垂内部で細菌が増殖すると、膿瘍を形成し穿孔し腹膜炎を起こして重症化する。対処を誤ると、局所症状に留まらず重篤な全身症状となって死に至ることさえもある。起因菌が増殖を始めた盲腸は早めに摘除しなければならない。

今まさしく、維新が危険な盲腸として炎症を起こしつつある。維新が、戦争法案の成立に手を貸そうとしているのだ。自・公とならんで、維新を世論の矢面に立たせなければならない。3本目の批判の矢が必要となっている。取り立ててなんの理念ももたない維新のことだ。世論の風向き次第で態度は変わる。摘出手術の荒療治まではせずとも、批判の注射だけで無害の盲腸に戻すことが可能となる公算もある。

昨日(7月7日)配信の時事通信記事は次のとおりである。
「民主党の枝野幸男、維新の党の柿沢未途両幹事長は7日、国会内で会談し、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対処する『領域警備法案』について、共同提出を見送ることを確認した。…政府提出の安全保障関連法案の採決日程をめぐって対立し、共同提出に向けた協議が決裂。両党は8日にそれぞれ単独で国会提出する。
 会談では同席した維新の馬場伸幸国対委員長が、領域警備法案の審議時間を確保するため、同法案と政府案の採決日程をあらかじめ与党側と合意するよう提案。政府案の廃案を目指す民主党は『与党に手を貸すようなことには協力できない』として拒否した。」

読売がきわめて適切な見出しをつけている。「枝野氏『突然、非常識な提案』 維新との協議決裂」というもの。記事は、「維新の党側は、与党が求めている関連法案の採決について、7月下旬に応じることを民主党に持ちかけた。」となっている。

産経の報道は次のとおり。
「民主党の枝野幸男幹事長は不快感をあらわにした。維新から『与党に手を貸すような提案』があった」「『出口の話をするような無責任な野党としての対応はできない』として決裂した」

この報道には驚いた。そして、呆れた。これまでは、極右政党「次世代」を除いて、野党の足並みは政府提案の戦争法案反対で揃っていたはず。少なくも、徹底審議での共闘合意ができていたはず。ところが、維新は態度を豹変させて、「戦争法案採決について7月下旬に応じることを民主党に持ちかけた」というのだ。枝野幹事長が「突然、非常識な提案」と怒るのはもっともな話。民主党の感覚が、真っ当ではないか。

ああ、そうなのか。あらためて合点が行く。6月14日突然に設定された安倍・橋下密談がこんな筋書きを描いていたのか。あれ以来様相が変わってきたではないか。対案を出すだの、民主と共同提案だのと維新が言っていたことは、すべて野党分断、民主抱き込みの伏線だったのか。自民党へ恩を売るための下工作だったのか。与党と維新の間では密約が成立し、「7月下旬採決強行」のスケジュールが組まれていたのだ。自民が、「7月15日採決案」をリークする。維新が手柄顔に、「7月下旬まで先延ばし」して、与党強行のイメージを薄めた採決の舞台を整える。この筋書きに、うっかり欺されるところだった。

維新とは「これ(維)新たなり」の意味だが。昨日露わになった維新のやり口は、まったく清新なところがない。旧態依然の、裏工作、駆け引き、目眩まし。永田町流政治術は自民の専売ではないのだ。

しかし、盲腸の変身が戦争法案反対の運動に大きな影響を及ぼすはずもない。飽くまで、正攻法で、戦争法に反対しよう。違憲法案は廃案にさせるしかない。それが、平和を維持し、国民の安全を守ることなのだ。政権と与党と維新に、3本の矢を突きつけて、それぞれを正々堂々と批判しよう。
(2015年7月8日)
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事態の変化は目まぐるしい。昨日(7日)民主と維新の幹事長会談では壊れた領域警備法案の共同提案が、本日(8日)の党首会談で元の鞘に収まったという。その上で、「党首会談では、与党に領域警備法案の十分な審議を求めることを確認し、法案が参院送付後60日経ても議決されない場合、衆院で再可決が可能となる「60日ルール」の適用を阻止することでも一致した。維新は7日の幹事長会談で、政府案と対案の採決日程を決めて与党と交渉する提案を行ったが、党首会談では取り上げなかった。」(産経)と報道されている。

それでも、「維新の正体」「維新への批判の必要」の私の見解は変わらない。本日のブログの原稿を訂正することなく、掲載する。

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