澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

戦後70年「安倍談話」は8月14日に。「国民の談話」は8月13日に。

<シンポジウム>「国民の70年談話」─日本国憲法の視座から
?過去と向き合い未来を語る・安全保障関連法案の廃案をめざして?
の確定プログラムのお知らせです。

開場が10時30分。プログラムは11時?13時40分となります。
プログラムの全体を、3部構成にしました。
◆第1部 「過去と向き合う」 有識者の講演
  あの戦争と戦後70年を、各分野で振り返っての
◇日本フィルハーモニー 戦没者鎮魂の弦楽四重奏演奏
◆第2部 「未来を語る」 会場発言リレートーク
  若者、女性、憲法課題に取り組んでいる立場から
  (高校生や大学生、母親、若手弁護士、
   裁判で闘っている方などに発言を依頼しています)
◆第3部 「国民の70年談話」の発表と採択

下記のURLが、シンポジウムの確定内容のチラシになっています。
ぜひとも拡散をお願いいたします。
http://article9.jp/documents/symposium70th.pdf

集会のコンセプトは次のとおりです。
いま、政権と国民が、憲法をめぐって鋭く対峙しています。
その政権の側が「戦後70年談話」を公表の予定ですが、これに対峙する国民の側からの「70年談話」を採択して発表しようというものです。
そのことを通じて、彼我の歴史認識や平和な未来への展望の差異を明確にし、きちんとした批判をし、国民の立場からの平和な未来の展望を語ろうという企画です。

日時■2015年8月13日(木)11時?13時40分
(開場10時30分)
会場■弁護士会館 2階講堂「クレオ」ABC
  http://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/organization/map.html
■参加費無料 (カンパは歓迎)
<シンポジウム>「国民の70年談話」─日本国憲法の視座から?過去と向き合い未来を語る・安全保障関連法案の廃案をめざして?
◇第1部 過去と向き合う
■戦後70年日本が戦争をせず、平和であり続けることが出来たことの意義
  高 橋 哲 哉(東京大学教授)
■戦後改革における民主主義の理念と現状
  堀 尾 輝 久(元日本教育学会・教育法学会会長)
■人間らしい暮らしと働き方のできる持続可能な社会の実現に向けて
  暉 峻 淑 子(埼玉大学名誉教授)
■日本国憲法を内実化するための闘い─砂川・長沼訴訟の経験から
  新 井  章 (弁護士)
■安全保障関連法案は憲法違反である
  杉 原 泰 雄 (一橋大学名誉教授)
◇レクイエム 弦楽四重奏(日本フィルハーモニー)
◇第2部 未来を語る会場発言リレートーク
  お一人5分間でお願いします。時間の許す限り。
◇第3部 「国民の70年談話」の発表と採択

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 戦後70周年を迎える今年の夏、憲法の理念を乱暴に蹂躙しようとする政権と、あくまで憲法を擁護し、その理念実現を求める国民との対立が緊迫し深刻化しています。
 この事態において、政権の側の「戦後70年談話」が発表されようとしていますが、私たちは、安倍政権の談話に対峙する「国民の70年談話」が必要だと考えます。
 そのような場としてふさわしいシンポジウムを企画しました。憲法が前提とした歴史認識を正確に踏まえるとともに、戦後日本再出発時の憲法に込められた理念を再確認して、平和・民主主義・人権・教育・生活・憲法運動等々の諸分野での「戦後」をトータルに検証のうえ、「国民の70年談話」を採択しようというものです。
 ときあたかも、平和憲法をめぐるせめぎ合いの象徴的事件として安全保障関連法案阻止運動が昂揚しています。併せて、この法案の問題点を歴史的に確認する集会ともしたいと思います。
 ぜひ、多くの皆さまのご参加をお願いいたします。

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主 催■「国民の70年談話」実行委員会
    代表・新井 章   事務局長・加藤文也
連絡先■東京中央法律事務所(電話 03-3353-1911)

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報じられるところでは、戦後70年の安倍談話の発表は8月14日(金)になる模様である。この日、閣議決定を経て出される首相談話は、日本の戦争と戦後の歴史の総括的評価に関する公式文書となる。
既に、戦後50年村山首相談話が「植民地支配と侵略を、痛切に反省し心からお詫び」するものと出され、これが国の公的な歴史認識として定着し、小泉首相60年談話がこれを踏襲した。「戦後レジームからの脱却」を呼号する、歴史修正主義者安倍晋三が70年談話を出そうというのだから、村山談話修正に執念を燃やしてのことだとは誰にでも分かることだ。

ところが、天の時、地の利、人の和、すべてが安倍の思惑とは大きくかけ離れてしまった。到底中央突破で我意を押し通せる事態ではない。依拠する右翼の諸君のために、多少なりとも村山談話にケチをつけなければならない。その落としどころとして「侵略」「植民地支配」のキーワード外しを考えていたのに、有識者懇談会の答申が、「侵略」も「過酷な植民地支配」も盛り込んでしまった。これをことさらに省けば、内外からの袋叩きが目に見えている。「反省」も然りだ。

残るは「痛切なおわび」。これはなんとかごまかしたい。これを取り入れたら、安倍カラーは皆無。なんのために70年談話発表を言い出したのか、わけが分からなくなってしまう。

そんな見方が一般的で、「安倍談話の原案『おわび』盛らず」となりそうなのだ。一部の報道では、「首相が7日夜に自民、公明両党幹部に示した原案には、戦後50年の村山談話や戦後60年の小泉談話に盛り込まれたアジア諸国への「おわび」の文言が入っていないことが分かった。」とされている。また、「原案には過去の大戦に対する『反省』は盛り込まれていたが、『植民地支配と侵略』については、必ずしも明確な位置づけではなかった。このため、公明側は『なぜ日本は反省をするのか。その対象を明確にしないと伝わらない』と主張し、『侵略』という文言もしっかりと位置づけるよう求めた。」(朝日デジタル)ともいう。

この詳報のソースは、公明党幹部のメディアへのリーク以外に考えがたい。公明が、安倍を牽制にかかっているのだ。安倍をめぐる「人の和」が崩壊を始めている。

また、8月7日の日テレ報道は「来週発表する戦後70年の首相談話について、安倍首相が過去の村山談話などに盛り込まれた『侵略』との表現を踏襲しない方向で調整していることがわかった。」と報じている。「6日、安倍首相に提出された有識者会議の報告書では『侵略』を明記したが、2人の委員からは異議が出ていた。7日、安倍首相はこうした点をあげながら、『侵略』との表現を踏襲しないことをにじませた」という。なんともフザケた話し。

実のところ、安倍談話がどういうものとなるかは、当日まで分からない。安倍自身も、自分の意思をどこまで貫けるのか、大いに迷っていることだろう。「国民の70年談話」は、先行する安倍談話を批判するものとして案文を作れるものと考えていたが、後出しジャンケンはできそうにない。

侵略戦争や植民地支配という歴史認識に揺るぎがあろうはずはない。これを踏まえて、首相談話には「痛切な反省」と「心からお詫び」が不可欠である。しかし、国民の談話ではどうだろうか。日本の天皇制ファシズムや超国家主義・軍国主義は、近隣諸国民衆の敵であっただけでなく、日本の民衆の敵でもあった。リベラルな日本の良心も、かつての日本国家から野蛮な弾圧を受けたのである。日本の「国民」のどの部分の立場を代理するかで、「反省とお詫び」の内容は大きく変わってくる。

さらには、未来をどう志向するかの問題について、政権と国民の立場の違いは大きい。安倍談話の未来志向の基本は、「積極的平和主義」となるだろう。「消極的に何もしないで平和を待つのではなく、平和を求める諸国と共同して積極的に平和を創出する」覚悟が語られることだろう。

ここが対決点だ。安倍は積極的に何をしようというのか。明らかに自衛隊を世界に派遣することが想定されている。あるいは集団的自衛権という武力による威嚇がもたらす「武力に基づく平和」の思想である。互いの軍備による抑止力に依存した「平和」。国民の側は、これに憲法9条が指し示す「武力によらない平和」を対置しなければならない。「平和を望むなら武力の整備を」ではなく、「平和を望むなら、武力を減らし、なくす」努力をしなければならない。

安倍首相は14日に談話を閣議決定した上で会見する方針という。またまた、同じことを繰り返し、丁寧にはぐらかして説明するのだろう。それでも、きちんと安倍の説明を聞き、きちんと批判しよう。
(2015年8月9日)

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