澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

真夏の夜のまやかしー奇々怪々なり安倍談話

安倍談話が発表となった。村山富市の「何を言っているのか、分からん」というのが言い得てまことに妙だ。これが、多くの人の偽らざる気持ちを代弁する名言だろう。ことほどさように、いたずらに目眩ましの贅言が積み重ねられている。意図的に、わけの分からぬ代物に仕立てたのだ。

わけの分からぬ複雑なモノは、見る人それぞれが見たいように見ることができる。安倍の狙いないしは願望はその点にある。苦し紛れ安倍の忍法カメレオンだ。国内世論や、公明党・中・韓には、「侵略・植民地支配・反省・お詫びのキーワードがすべて揃っているでしょう」と言い訳ができるように組み立てた。彼が支持基盤としている国内右翼の面々には、「よく読んでみて。私は自分の見解として何にも言っていない。これまでの政府の立場を承継せざるを得ないというだけのこと」とすり抜けることができる。コウモリ路線を狙ったわけだ。

その評価は、両面から適切になされなければならない。
一面、安倍は言いたくもない「侵略・植民地支配・反省・お詫び」を言わざるを得なかったのだ。歴史修正主義者が、「謙虚に歴史に学ぶ」などと、屈辱的な言葉を口にした。これは、彼が追い詰められている証左だ。このことには自信を持つべきだろう。

他面、実のところ、談話は先の大戦を侵略戦争といわず、天皇制政府の植民地支配を反省していない。歴代政権の立場を踏襲するとはいったが、自分の言葉として反省もお詫びもしていない。中・韓のメディアも国民も、これで納得するはずはない。村山富市その人が、「村山談話が受け継がれたという印象はない」と言っていることに着目しなければならない。

コウモリ路線とはどちらにもよい顔をしようということだが、結局はどちらからも評価されることなく排斥されることになる。それが、安倍の命運なのだ。

安倍晋三とは何者か。歴史修正主義者というだけの人物ではない。「アンダーコントロール」だの「完全ブロック」だのと、平気で嘘を言える人物である。口から出任せを信用できるはずもなかろう。本当に「歴代政権の立場を踏襲する」のなら、まずはただちに戦争法案を撤回しなければならない。この法案は、日米の軍事的連携を深めて、主として中国を牽制しようという法整備である。安倍は、繰りかえし、「これまで以上に日本の安全性は高まる」と言っているが、あちらから見れば挑発行為だ。緊張が高まり、危険が増大することは目に見えている。

次いで、靖国神社参拝根絶を宣言しなければならない。自分だけでなく、閣僚の参拝もさせてはならない。侵略神社への閣僚の参拝が、どんなに中韓両国民の神経を逆撫でしているか、よく知っているはずではないか。

さらに、侵略や植民地支配の反省の立場を明記した歴史教科書を採択させ、つくる会系の歴史修正主義教科書を厳格に排斥することも必要だ。

そうすれば、安倍の評価は少しは上がるはず。どうだ、アベ君。頑張ってみないか。

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安倍談話ーあら面妖な その1
有識者懇の言い分には耳を傾けたとの安倍晋三。どうして、名だたる憲法学者の言には耳を傾けないの。不思議だな。

安倍談話ーあら面妖な その2
「特定の国を想定したものではないと言いながら、ウクライナや南シナ海・東シナ海などで力による現状変更は許すことができない」と言っちゃう。どうして? 不思議だな。

安倍談話ーあら面妖な その3
「最も重要なのは、不戦のメッセージ」などと言いつつ、どうして戦争法案を夏の終わりまでに成立させようというのだろう。どうして? 不思議だな。

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 旗幟鮮明 は叩かれる、
 隠忍自重 と身をすくめ、
 捲土重来 期すべきが、 
 自業自得 の身の破滅。

 美辞麗句 をちりばめて、
 自画自賛 はしておれど、
 奇々怪々 なる文面は、
 四面楚歌 へと一直線。

(2015年8月14日)

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