澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

安倍政権の憲法改悪暴走にストップを ー都議選の争点その2

いよいよ、都議選が始まった。
日本共産党東京都委員会の都民に対する呼びかけでは、「この都議選は、今後の都政のあり方を問う選挙ですが、連続して7月におこなわれる参議院選挙とともに、国政の動向にも大きな影響をおよぼす、たいへん重要な選挙です。」として、「憲法改悪、消費税増税、TPP参加など、国政での安倍自公政権の暴走に、東京からストップを」と訴えている。選挙スローガンのトップが「憲法改悪という安倍政権の暴走にストップを」となっているのだ。

そして、本日夕刊に、「共産 志位委員長」の第一声が見出しになっている。「立憲主義を守りたい」というもの。「憲法96条改正の動きには、護憲・改憲の立場を超え、立憲主義を守りたい」(毎日)が本文。憲法問題がこれほど大きな争点となった地方議会選挙は、未曾有のことであろう。

その改憲問題の状況はどうなっているか。
第183通常国会の会期は6月26日まで。昨日(6月13日)今会期13回目の衆議院憲法審査会が開かれた。これが今国会最終回となって、次は参院選後の臨時国会に舞台は移ることになる。

昨日の審査会では、各会派の代表が総括的に意見を述べた。
権力機構の伝声管である産経が、「自民党は改憲案の具体化に向けた各党協議会の設置を提案し、日本維新の会も議論の加速化を主張した。民主党は憲法改正手続きを規定する96条改正への慎重論を唱え、7月予定の参院選に向け、自民、維新などとの違いをあえて明確にしようとした。」と伝えている。

さらに産経によれば、「審査会では、共産党を除く6党が目指す憲法改正の方向性を説明した。自民、維新、みんなの3党は96条改正で足並みをそろえた。」と、この3党が96条改憲派とまとめている。よくおぼえておこう。憲法擁護勢力から見て、改憲問題における当面の「敵」は、自民、維新、みんなの3党なのだ。ということは、この3党が都議選における当面の「敵」でもある。いささかなりとも憲法を大切に思う、心ある人にとってこの3党に投票することは、「利敵」行為となる。

但し、この3党にも色合いの違いがある。これも産経によれば、「維新の馬場伸幸氏は、国会発議要件を緩和するため96条を先行改正する必要性を強調」「馬場氏の主張には、安倍晋三首相が一時言及した『先行改正』を打ち出さなかったこととの違いを強調する狙いがある。」という。96条改憲3人組みのうち、自民を中心に、維新がより積極、みんながより消極と役割を分担している。

整理をすれば、「維新・自民・みんな」の改憲積極グループと、改憲阻止の「共産」との間に、「民主・公明・生活」の改憲慎重派という図式が浮かび上がってきている。憲法をこの上なく大切と思う人にとって、一票しかない選挙権の有効な行使方法は自ずから明らかではないか。

もっとも、今国会の審議では、「民主・公明・生活」の改憲への慎重さが印象的である。当初は「49対1」で孤立するかに見えた共産の笠井亮議員が、議事録を読む限り孤立の感はない。世論の動向の掩護があるからなのだろう。

本日の東京新聞朝刊が紹介する、「審査会終了後、保利耕輔会長(自民)は『どのように進めていくかということ自体が、われわれの問題点だ』と指摘。『(改憲発議に必要な衆参両院の総議員の)3分の2を集めることは容易ではなく、慎重にやらないといけない』と話した。」との保利発言の内容が現状の雰囲気をよく表している。

なお、今会期最後の審議会では、改憲派にとっての思惑外れを象徴するハプニングがあった。これも、最も詳しい東京新聞から引用する。
「自民党の河野太郎氏は13日の衆院憲法審査会で、同党が昨年まとめた改憲草案について『憲法の名を借りて、国民の権利を制限する方向に安易に行くことは断固反対を申し上げたい』と批判した。
河野氏は、憲法の在り方として『多くの国民が歴史を通じて、国家権力にたがをはめてきた』と説明。『権利を制限し、義務を課すのは、今の日本にはふさわしくない』と指摘した。
さらに、草案に『家族の助け合い義務』が盛り込まれたことも疑問視。元衆院議長の父・洋平氏への生体肝移植の経験を話し『いいことをしたと思うが、それができる人もいれば、できない人もいる。家族は助け合うべきだが、道徳を憲法で定義するのは少し違う。個人に任せるべきものだ』と述べた。
草案への身内からの手厳しい批判に、自民党の衛藤征士郎氏は『憲法が国民を抑えつけ、拘束するという観念で言っているが、ちょっと違う』と反論した。
憲法論議で自民党と対立する共産党だが、同党の笠井亮氏は『河野さんに共感する。自民党の中にもいろいろ議論があるとあらためて感じた』とエールを送った。」

自民党の中にも、「右翼」ではない人もいる。保守の中にも、真っ当な感覚を持った人がいる。本当は、このような人が最も手強い相手なのだが、今はこの真っ当な保守派が「エールを送りたい」ほどの味方に見える。安倍政権や維新などが大きな顔をする、今の状況が異常なのだ。

そのような憲法問題に徹した視点から、都議戦の論戦に加わりたい。
(2013年6月14日)

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