澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

『共謀罪』成立に対する抗議声明4題

2017年6月15日「中間報告」(国会法56条の3)なる奇策(法務委員会採決省略)によって、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正法案)が可決成立した。究極の強行採決と言って過言でない。共謀罪の内容の異常にふさわしい、手続的異常であった。あの日から1週間となる。

繰りかえし繰りかえし、この手続の異常と共謀罪の危険性をともに訴え続けることが、この法律(『共謀罪』)を使いにくくし、その運用を押さえ込み、さらには法の廃止を展望することにもつながる。

そのためには、この経過を記憶しよう。それにふさわしい、『共謀罪』の危険性と手続の異常を告発する抗議声明4題を掲記しておきたい。

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共謀罪法案の強行採決に強く抗議する声明
2017年6月19日

共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会
社会文化法律センター     代表理事 宮 里 邦 雄
自由法曹団            団長 荒 井 新 二
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 原   和 良
日本国際法律家協会        会長 大 熊 政 一
日本反核法律家協会        会長 佐々木 猛 也
日本民主法律家協会       理事長 森   英 樹
日本労働弁護団          会長 徳 住 堅 治
明日の自由を守る若手弁護士の会 共同代表 神保大地・黒澤いつき

2017年6月15日午前7時46分,参議院本会議において,「中間報告」(国会法56条の3)により法務委員会の採決を省略するという極めて異例な手段によって,共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)の採決が強行され,同法案は可決成立した。
私たちは,この暴挙に強く抗議する。

共謀罪は,277種類もの犯罪について,日本刑法では例外中の例外とされる予備罪にも至らない,およそ法益侵害の危険性のない「計画」(共謀)を処罰しようとするものであり,刑法の原則を根本から破壊する憲法違反の悪法である。

政府は,共謀罪法案を「テロ等準備罪」と呼び,国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を批准するためには共謀罪の創設が不可欠である,同条約を批准しなければ東京オリンピックも開催できないなどと宣伝してきたが,TOC条約はテロ防止を目的とするものではないこと,同条約を批准するには共謀罪は不要であること,共謀罪が対象とする277の犯罪にはテロと無関係の犯罪がほとんどであり,テロ対策の法制度は整備済みであること,従って共謀罪がいかなる意味でもテロ対策法とはいえないことは,すでに明らかになっている。

また,「計画」,「準備行為」,「組織的犯罪集団」等の概念はあまりにも不明確である上,政府答弁も二転三転し,国民は何が犯罪であり,何が犯罪でないのかを知ることができない。別表に掲げられた対象犯罪277が極めて広範であることとあいまって,共謀罪が罪刑法定主義(憲法31条)に違反することは明白である。

共謀罪の最大の問題は,政府に異をとなえる市民団体などの活動の処罰や,その情報収集・捜査の根拠とされ,市民のプライバシーの権利(憲法13条),内心の自由(憲法19条),表現の自由(憲法21条)を侵害する危険が極めて高いことである。
法務大臣は,衆議院では,条文上何らの根拠がないにもかかわらず,「組織的犯罪集団とは,テロリズム集団,暴力団,麻薬密売組織などに限られる」,「通常の団体に属し,通常の社会生活を送っている方々は処罰対象にならない」と繰り返し答弁してきたが,参議院に至って,「対外的には環境保護や人権保護を標榜していたとしても,それが言わば隠れみの」である団体は組織的犯罪集団となり得るとの重大な答弁を行った。また,組織的犯罪集団の「周辺者」も捜査対象となることを認めた。
これは,共謀罪が成立すれば,正当な目的をもつ団体であっても,警察がその目的を「隠れみの」であると考えれば,その団体や,構成員ないし「周辺者」とみなされた市民が日常的な警察の監視対象とされることを意味する。
対象犯罪277の中に,組織的威力業務妨害罪や組織的強要罪など,基地やマンション建設に反対する行動などに適用される可能性の高い「犯罪」類型が含まれるだけに,上記の日常的な情報収集をもとに強制捜査や処罰が行われるおそれがある。
こうした重大な答弁が参議院になってからなされ,十分な審議がますます必要になったにもかかわらず,強引に採決した与党の強権的な国会運営には憤りを禁じえない。

法案審議中の5月18日,国連特別報告者ジョセフ・カナタチ氏は,共謀罪法案が「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」との懸念を表明する書簡を安倍首相に送付した。ところが,日本政府はこの書簡に対し,単に「強く抗議」し,何ら回答しないという恥ずべき態度をとった。こうした日本政府の対応は海外メディアでも危惧感をもって大きく報道された。共謀罪法案が,このように国際社会に背を向けて成立した経緯も忘れてはならない。

国会法56条の3第2項は,「特に緊急を要すると認めたとき」に限り,法務委員会の採決を省略して本会議で採決することを認める。しかし,共謀罪を成立させることに何らの緊急性はなかった。共謀罪法案は,そもそも立法事実が存在しない上,法務大臣がしばしば答弁不能になるなど政府側の解釈が最後まで迷走し,疑問や矛盾が山積していたのであり,6月18日の会期末をもって廃案にすべき法案であった。このような法案について,奇策というべき手段で強行採決した与党の国会運営は,議会制民主主義を死滅させる暴挙である。

共謀罪法案の廃案をめざす声は,全国に大きく広がった。おびただしい数の市民集会,デモ,街頭宣伝,国会周辺では連日の座り込みや昼夜の共同行動が行われた。国会内では4野党1会派が結束して闘い,法律家も,日弁連及び52の単位弁護士会の全てが共謀罪に反対する声明を出し,多数の学者,作家,ジャーナリスト,マスメディアも反対の論陣を張った。そのなかで私たち法律家団体連絡会もあらゆる努力をした。世論調査では反対が賛成を上回った。こうした運動の広がりは,共謀罪を発動させない大きな力になると確信する。

「現代の治安維持法」,「監視社会を招く違憲立法」として強く批判してきた共謀罪であるが,私たち法律家は,今後も市民・野党と手を携え,共謀罪の廃止をめざし,共謀罪の発動を許さない活動を続ける。その一環として,国連特別報告者カナタチ氏が提案した,「監視活動を行う警察を監督する第三者機関」の設置をめざすことも重要な課題である。
私たちは,これからも市民が絶対に萎縮することなく,自由に表現し,自由に仲間と集いあえる社会を維持するため,全力を尽くす決意である。
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いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する日弁連会長声明

本日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続により、本会議の採決が行われ、成立した。

当連合会は、本法案が、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強いものとして、これまで本法案の制定には一貫して反対してきた。また、本法案に対しては、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明する書簡を発出するという経緯も存した。

本国会における政府の説明にもかかわらず、例えば、?一般市民が捜査の対象になり得るのではないか、?「組織的犯罪集団」に「一変」したといえる基準が不明確ではないか、?計画段階の犯罪の成否を見極めるために、メールやLINE等を対象とする捜査が必要になり、通信傍受の拡大など監視社会を招来しかねないのではないか、などの様々な懸念は払拭されていないと言わざるを得ない。また、277にも上る対象犯罪の妥当性や更なる見直しの要否についても、十分な審議が行われたとは言い難い。

本法案は、我が国の刑事法の体系や基本原則を根本的に変更するという重大な内容であり、また、報道機関の世論調査において、政府の説明が不十分であり、今国会での成立に反対であるとの意見が多数存していた。にもかかわらず、衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては上記のとおり異例な手続を経て、成立に至ったことは極めて遺憾である。

当連合会は、本法律が恣意的に運用されることがないように注視し、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、今後、成立した法律の廃止に向けた取組を行う所存である。
2017年(平成29年)6月15日
日本弁護士連合会
会長 中本 和洋
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/170615.html

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日本ペンクラブ声明「共謀罪強行採決に抗議する」

国内外の専門家、表現者、市民から、多くの意見が表明されるなか、国会において十分な審議が尽くされないばかりか、多くの疑問をのこしたまま、思想・表現の自由に重大な悪影響を及ぼすいわゆる「共謀罪」が強行的に採決されたことを深く憂えるとともに、強い怒りを禁じえない。
今回の衆参両院における法案審議と採決にいたる過程は、民主主義のルールを無視し国民を愚弄したものであり、将来に大きな禍根をのこす暴挙である。
われわれは法案審議のやり直しを強く求める。
2017年6月15日
日本ペンクラブ会長 浅田次郎
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緊急声明:国会不在の共謀罪法案強行成立に抗議する(JCJ)

政府・与党は、参議院法務委員会の審議、討論と採決を省略して、委員長中間報告によって本会議採決を強行、共謀罪新設法案の強行成立させた。
メディアは「奇策」と報じたが、「国会の自殺行為」としかいいようがない。われわれは、「内心の自由」「表現の自由」を破壊し、警察権を拡大して、戦争が出来る国をつくる改憲をめざす安倍内閣に対し、満身の怒りを込めて抗議する。
共謀罪法案について政府は、マフィア対策でしかない条約を「テロ防止条約」だと偽り、組織外の周辺の人をも含んで捜査の対象とされるのに「一般人は関係がない」とウソの答弁を繰り返した。そして、法案自体、277といわれる対象犯罪の数どころか、構成要件とされる「計画」や「準備行為」の定義はあいまいなままで、「何をしたら罪になるのか」さえ明らかにされていない欠陥、かつ憲法違反の法案である。
今回の強行は、安倍政権の目玉政策の「特区」が、実は首相の親友の学園に便宜を図り、政策自体が歪められた疑惑が国会審議で明らかになり、その進展を恐れた政権が「加計隠し」を図ったものだと指摘されている。しかし同時に、それだけでなく、「2020年に9条改憲の施行」をめざす安倍政権が今年中の自民党案作成、2018年12月の衆議院任期中の改憲発議、国民投票、さらに天皇退位、元号改元、などという独裁的「改憲スケジュール」に乗ったものだとも取りざたされている。
われわれは共謀罪法案の新設と安倍改憲戦略の狙いを見抜き、日本を再び暗黒の時代に戻すことがないよう、日本国憲法を擁護し、改憲を許さず、平和と人権、そして民主主義を進めるジャーナリズムの精神を貫き、あきらめず闘い続けることをここに声明する。
2017年6月16日
日本ジャーナリスト会議
(2017年6月21日)

「浜の一揆」訴訟第8回法廷(6月22日)・案内

2017年6月20日
岩手・県政記者クラブ各社殿
同 ・県警記者クラブ各社殿
弁護士 澤藤統一郎
同   澤藤 大河

「浜の一揆」訴訟第8回法廷(6月22日)・案内

6月22日、盛岡地裁「浜の一揆」訴訟の第8回法廷のご案内をいたします。
この日、原告漁民4人と担当の県職員1名の尋問で、審理はヤマ場を迎えます。
この訴訟は、注目され話題になってしかるべき大型訴訟です。
行政のあり方を問い、民主主義を問い、震災後の地域復興の問題でもあります。
社会的意義のある訴訟としてご注目いただき、ぜひとも、取材をお願いします。

第1 事案の概要
岩手の河川を秋に遡上するサケは岩手沿岸における漁業の主力魚種である。1992年2月、岩手県は三陸の海の恵みを象徴する「南部さけ」を「県の魚」に指定している。古くから三陸沿岸の漁民は、秋に盛漁期を迎えるサケ漁を生業としてきた。
ところが、三陸沿岸の漁民は、県の水産行政によって、厳格にその捕獲を禁じられている。うっかりサケを網にかけると、最高刑懲役6月となる。漁船や漁具の没収の規定もある。岩手の漁民の多くが、この不合理を不満として、長年県政にサケ捕獲の許可を働きかけてきた。とりわけ、3・11の被災後はこの不合理を耐えがたいものと感じることとなり、これまで岩手県の水産行政に請願や陳情を重ねてきたがなんの進展も見ることがなかった。
そのため、2015年11月100人の沿岸漁民が岩手県(知事)を被告として、盛岡地裁に行政訴訟を提起した。要求は「固定式刺し網によるサケ漁を認めよ」「漁獲高は無制限である必要はない。各原告について年間10トンを上限として」。原告らは、これを「浜の一揆」訴訟と呼んでいる。
訴訟における請求の内容は二つ、「漁民がした『固定式刺し網によるサケの採捕の許可申請』に対する不許可処分を取り消せ」。そして、「県知事は、『固定式刺し網によるサケの採捕の許可』をせよ」というもの。
では、三陸沿岸の海の恵みは誰が手にしているか。二つの類型がある。一つは浜の有力者が経営する定置網業者である。そして、もう一つの類型が漁協の自営定置である。いずれも、大型定置網による漁獲。その漁獲に影響あるからとして、小型漁船で零細な漁業を営む漁民にはサケ漁が禁止されているのだ。
だから、「おれたちにもサケを獲らせろ」という漁民の切実な要求は、社会構造の矛盾に対する挑戦という意味を持っている。社会的強者と一体となって、零細漁民に冷たい県政への挑戦でもある。だから、「浜の一揆」なのだ。
個々の漁民にとって、「零細漁民の漁業を保護して、漁業の生計がなり立つ手立てを講じよ」という切実な要求である。そして、漁民が高齢化する中で、「後継者が育つ希望ある漁業」をという地域の切実な願いを背景にするものでもある。
本件訴訟は県の水産行政のあり方を問うとともに、地域の民主主義のあり方を問う訴訟でもある。また、3・11被災後の沿岸漁業と地域経済の復興にも、重大な影響をもってもいる。
原告ら漁民は、岩手県民の理解を得たいと願う立場から、県内メティアの取材を希望するものである。

第2 当日の日程
1 法廷
午前10時 開廷(盛岡地裁301号法廷)午前中2名尋問
原告藏さん?  主尋問20分 反対尋問20分
サケ漁許可を求める運動の経過について
原告瀧澤さん 主尋問30分 反対尋問30分
漁民が主張する資源保護のあり方(IQ)について

午後1時 再開廷午後3名尋問
原告熊谷さん? 主尋問20分 反対尋問20分
漁民の生計の実態、サケ漁許可を求める理由の切実さについて
原告菅野さん 主尋問20分 反対尋問20分
宮城との県境海域で宮城の漁民はサケを獲っていること
海区漁業調整委員会運営の実態
被告側証人 県漁業調整課長? 主尋問40分 反対尋問40分

2 法廷終了後の記者会見と報告集会
閉廷後直ちに、報告集会
場所 岩手県公会堂 2階講堂(21号室)
冒頭の訴訟経過説明のあと 記者会見
その後 意見交換

第4 これまでの経過概要
1 県知事宛許可申請⇒小型漁船による固定式刺し網漁のサケ採捕許可申請
2014年9月30日 第1次申請
2014年11月4日 第2次申請
2015年1月30日 第3次申請
2 不許可決定(102名に対するもの)
2015年6月12日 岩手県知事・不許可決定(277号・278号)
*277号は、固定式刺し網漁の許可を得ている者  53名
*278号は、固定式刺し網漁の許可を得ていない者 49名
3 審査請求
2015年7月29日 農水大臣宛審査請求(102名)
2015年9月17日 県側からの弁明書提出
2015年10月30日 審査請求の翌日から3か月を経過
4 提訴と訴訟の経過
2015年11月5日 岩手県知事を被告とする行政訴訟の提起
2016年1月14日 第1回法廷
2017年4月20日 第7回法廷 証拠決定
2017年6月22日 第8回法廷 原告本人4名・被告側証人1名尋問
2017年9月 7日 第9回法廷(予定)学者証人2名尋問予定

第3 訴訟の内容
1 当事者 原告 三陸沿岸の小型漁船漁業を営む一般漁民100名
(すべて許可申請・不許可・審査請求の手続を経ている者)
被告 岩手県(処分庁 岩手県知事達増拓也)
2 請求の内容
*知事の不許可処分(277号・278号)の取消し
*277号処分原告(既に固定式刺し網漁の許可を得ている者) 51名
*278号処分原告(固定式刺し網漁の許可を得ていない者)  49名
*知事に対するサケ漁許可の義務づけ(全原告について)
「年間10トンの漁獲量を上限とするサケの採捕を目的とする固定式刺網漁業許可申請について、申請のとおりの許可をせよ。」

第4 争点の概略
1 処分取消請求における、知事のした不許可処分の違法の有無
(1) 手続的違法
行政手続法は、行政処分に理由の付記を要求している。付記すべき理由とは、形式的なもの(適用法条を示すだけ)では足りず、実質的な不許可の根拠を記載しなければならない。それを欠けば違法として取消理由となる。ましてや、本来国民の自由な行為を一般的に禁止したうえ、申請に従って個別に解除して本来の自由を回復すべき局面においては、飽くまでも許可が原則であって、不許可として自由を制約するには、合理性と必要性を備えた理由が要求される。その具体的な理由の付記を欠いた本件不許可処分はそれだけで手続的に違法である。
本件不許可処分には、「内部の取扱方針でそう決めたから」というだけで、まったく実質的な理由が書かれていない。
(2) 実質的違法
法は、申請あれば許可処分を原則としているが、許可障害事由ある場合には不許可処分となる。下記2点がサケ採捕の許可申請に対する障害事由として認められるか。飽くまで、主張・立証の責任は岩手県側にある。
?漁業調整の必要←漁業法65条1項
?水産資源の保護培養の必要←水産資源保護法4条1項
2 義務づけの要件の有無 上記1と表裏一体。

第5 義務付けについての原告主張の概要
1 基本的な考え方
*三陸沖を泳ぐサケは、無主物であり、そもそも誰が採るのも自由。
これが原則であり、議論の出発点。
*憲法22条1項は営業の自由を保障している。
⇒漁民がサケの漁をすることは原則として自由(憲法上の権利)
⇒自由の制限には、合理性・必要性に支えられた理由がなくてはならない。
*漁業法65条1項は、「漁業調整」の必要あれば、
水産資源保護法4条1項は、「水産資源の保護培養」の必要あれば、
「知事の許可を受けなければならないこととすることができる。」
*岩手県漁業調整規則23条
「知事は、「漁業調整」又は「水産資源の保護培養」のため必要があると認める場合は、漁業の許可をしない。」
⇒ということは、許可が原則。
県知事が「漁業調整」「水産資源の保護培養」の必要性について
具体的な事由を提示し、証明しなければならない。
2 ところが、被告(県知事)は、不許可事由として、「漁業調整」「水産資源の保護培養」の必要性にまったく触れるところがない。
不許可の理由は形式的に「庁内で作成した「取扱方針」(2002年制定)にそう書いてあるから」というだけ。

第6 漁協中心主義は漁民の権利を制約しうるか。
1 漁業法にいう、漁業の民主化とはなにか。
零細の個々の漁民の権利にこそ配慮することではないか。漁協の営業のために、漁民の営業を圧迫することは「民主化」への逆行である。
2 漁民あっての漁協であって、漁協あっての漁民ではない。
主客の転倒は、お国のための滅私奉公と同様の全体主義的発想ではないか。
3 結局は、浜の有力者に奉仕する漁業行政の「カムフラージュの理論」ではないか。

☆これに対して、被告岩手県は、訴訟進行後ようやく「固定式刺し網によるサケ漁」を許可しない実質的な理由を整理して述べてきた。
以下のとおりである。
?岩手県の長年に亘るサケ産業(水産振興)政策とそれに基づく関係者の多大な尽力を根本的に損ねてしまうこと
?種卵採取というサケ資源保護の見地からも弊害が大きいこと
?各地漁協などが多大な費用と労力を投じた孵化放流事業により形成されたサケ資源をこれに寄与していない者が先取りする結果となり、その点でも漁業調整上の問題が大きいこと
?解禁に伴い膨大な漁業者が参入し一挙に資源が枯渇するなどの問題が生じること
?沖合で採捕する固定式刺し網漁業の性質上、他道県との漁業調整上の摩擦も看過できないこと
?近年、県内のサケ資源が深刻な減少傾向にあること

以上の各理由は一応なりとも、合理的なものとは到底考えがたい。こんなことで漁民の切実な漁の自由(憲法22条の経済的基本権)が奪われてはならない。
☆各理由に通底するものは、徹頭徹尾定置網漁業完全擁護の立論である。およそいささかなりとも定置網漁業の利益を損なってはならないとする、行政にあるまじき偏頗きわまる立論として弾劾されてしかるべきでもの。利害対立する県民当事者相互間の利益を「調整」するという観念をまったく欠いた恐るべき主張というほかはない。
☆しかも、利害対立の当事者とは、一方は原告ら生身の零細漁民である。20トン以下の小型漁船で生計を立てる者で、法的には経済的基本権の主体である。そして対立するもう一方が、大規模な定置網漁業者である。その主体は、漁協単独の経営体であり、漁協と複数個人の共同経営体であり、株式会社であり、有限会社であり、定置網漁業を営む資本を有する経済力に恵まれた個人である。「浜の有力者」対「一般漁民」のせめぎあいなのである。
☆定置網漁業者の過半は、漁協である。被告の主張は、「漁協が自営する定置営業保護のために、漁民個人の固定式刺し網によるサケ漁は禁止しなければならない」ということに尽きる。
☆漁民の繁栄あっての漁協であって、その反対ではない。飽くまで「漁民優先」が当然の大原則。漁協の健全経営維持のために漁民の操業が規制される筋合いはない。
☆以下は、被告が「近年、県内のサケ資源が深刻な減少傾向にあること」を不許可の理由として挙げていることに対する批判の一節である。

「近年のサケ資源の減少傾向」が、固定式刺し網漁業不許可の理由とはなりえない。これを理由に掲げる被告の主張は、いわゆる「獅子の分け前」(Lion’s Share)の思想にほかならない。
漁協は獅子である。獅子がたっぷり食べて余りがあれば、狐にも分けてやろう。しかし今はその余裕がないから、狐にやる分け前はない。被告岩手県は無邪気に、傲慢な差別を表白しているのである。
行政は平等で、公正でなくてはならない。漁協を獅子とし、漁民を狐として扱ってはならない。原告ら漁民こそが人権の主体であり、漁協は原告ら漁民の便益に奉仕するために作られた組織に過ぎないのだから。」

(2017年6月20日)

 

加計学園が経営する獣医学部ー文科大臣による設置認可のストップを

刑法学でも刑事司法実務でも、保護法益という概念が多用される。ある犯罪類型を作ることで、法が守ろうとしている価値ないし利益のことをいう。殺人罪の保護法益は人の生命。偽証罪の保護法益は、適正な国家の司法作用。では、賄賂罪の保護法益はなんだろうか。

最高裁判例は、「公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼を保護法益とする」と言っている。「公務員の職務の公正」だけでなく、「公務員の職務の公正に対する社会一般の信頼」も守られるべき価値なのだ。

賄賂罪の基本である単純収賄罪の構成要件は、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をすること」(刑法197条第1項前段)である。現実に職務の公正が害されたことを要件としていない。公務員たるもの、職務の公正を害してはならないだけではなく、職務の公正に対する社会一般の信頼を損ねてはならないのだ。

以上は、刑事法レベルでの議論。政治的道義的レベルにおいてはなおさらのことだ。公務員たるもの、職務の公正を害してはならないだけではなく、職務の公正に対する社会一般の信頼を失わぬよう、よくよく注意して職務の執行にあたらねばならない。これが、閣僚や、官邸の最高レベルの公務員ともなれば、最高レベルの注意が要求されることになる。いささかも職務の公正に対する疑惑を持たれてはならない。そのように身を持さねばならない。

加計学園事件に関する安倍晋三の弁明の見苦しさは、このあたりの理解を決定的に欠いていることである。もともと、首相の座にふさわしい人物ではないのだ。

国家戦略特区諮問委員会議長としての行為によって、腹心の友に利益をもたらした。しかも、自らも「岩盤に穴を開ける」という、強引なやり口でのこと。のみならず、そこに至るまでの経過が不透明で、「ご意向」「忖度」の文字が躍る文書が数多く出て来ている。洗いざらい経過を説明せよという真っ当な要求にたいしては、「書類は廃棄」「記憶にない」、不都合な発言者には、身辺調査と人格攻撃で威嚇して黙らせようとする。誰が見ても、政権は真実の露呈を恐れているとしか思えない。

この期に及んで、「具体的に指示したり、働きかけたりしたことは一度もない」「法律にのっとった意思決定だったことに一点の曇りもない」と言っていることが的はずれ。既に首相の職務の公正に対する社会一般の信頼は完全に失われているのだ。

日本テレビ系NNNの世論調査に次の問の項目がある。
問 あなたは、加計学園の獣医学部開設のいきさつについての、安倍総理の説明に納得しますか、納得しませんか?
その回答が次のとおりだ。
(1) 納得する 9.6 %
(2) 納得しない 68.6 %
(3) わからない、答えない 21.7 %

首相の説明に納得できるという国民は、10人中にたった一人。7人ほどは首相を信じられないというのだ。だから、防衛的に「疑惑の実体はない」と言うだけではダメ。行政の経過は透明でなくてはならず、行政には説明責任が伴うという大原則の原点に戻って、すべての経過を積極的に明らかにする覚悟が必要なのだ。

それができなければ疑惑を甘受しなければならない。「政治の私物化」、「公正であるべき行政がゆがめられた」、「官邸は、既得権益者攻撃の名で、新たな既得権益者をつくり出している」「首相と、その取り巻き一味の利益のための政治が横行している」という疑惑を真実として受け入れるという意味の甘受である。

具体的な対象検証の一つとして、2017年6月30日に閣議決定された「4条件」(あるいは、「3条件+1留意事項」)充足の可否がある。同日、「『日本再興戦略』改訂2015」が決定され、国家戦略特区における獣医学部の新設に満たすべき「4条件」が確定された。以下のとおりである。

「獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
1. 現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し、
2. ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり、かつ、
3. 既存の大学・学部では対応困難な場合には、
4. 近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。」

前川前文科事務次官や農水相の担当を呼んで徹底審議をすれば、この4要件充足の有無は明瞭になる。そのことを明瞭するまで、加計学園が経営する岡山理科大獣医学部の設置は、ペンディングとするしかない。

なお、同学部設置手続の進展は、国家戦略特区諮問会議での区画計画認定(2017年1月20日)には至っているものの、文科大臣による獣医学部設置認可には至っていない。

文科大臣宛の認可申請は本年3月31日になされた。8月下旬に認可、来年(18年)4月開校予定と伝えられているが、明らかに事情変更の事態となっている。「文科大臣による獣医学部設置認可ストップ」が、声を合わせて叫ばなければならない、喫緊のスローガンとなろう。
(2017年6月19日)

あがれあがれ、もっとあがれ不支持率ーこの暴挙への怒りを持続させよう

6月18日。193通常国会終了の日である。
この国会で共謀罪法が成立し、アベ友学園・腹心の友学園の疑惑は晴れぬまま、会期は閉幕した。アベ政権は国民をなめきっている。「戦争法案であれだけ支持率を下げたものの、有権者の物忘れのスピードは早かったではないか」「今度も多少は支持率下がるだろうが、なに、アベ一強に代わる選択肢はなかろう」という見くびり方だ。

日本の政治は、批判の言論に反応しての修正能力を失っている。権力者による行政の私物化が進行し、行政の公正・公平に疑惑を持たれるのに、政権担当者に懼れの気持がない。疑惑の隠蔽が可能と自信過剰に陥っている。疑惑の指摘者を脅して黙らせ、記録は徹底して破棄し隠匿する。この国会で垣間見えたこの国の行政は腐りきっている。アベ自身が、「これから丁寧に国民の皆様に説明していく」と神妙な顔つきを見せながら何もせずにすっぽかす光景を何度も見せつけられてきた。

その行政の横暴を国会がチェックできない。与党議員は、政権から独立した立法府の一員であることのプライドを持たない。読売・産経に代表されるメディアの劣化も甚だしい。総じて、政治の劣化であり、民主主義形骸化の事態である。

朝日は、この国会に表れた政府の姿勢を、「厳しい追及を受けた政府は、『認めない』『調べない』『謝らない』答弁を連発した。会期150日間の答弁に、批判や疑問を正面から受け止めない姿が浮かぶ。」と表現した。

私は戦前の政党政治形骸化の過程を直接に知る世代ではない。しかし、なるほどこんな風だったのかと思わせる時代の空気を感じる。戦前の臣民は、天皇制に弾圧された人々ばかりではない。天皇にひれ伏し圧倒的に支持した人々が、侵略にも戦争にも熱狂したのだ。株価上昇の一事で政権を支持している現在の国民が、「満蒙はわが国の生命線」と納得した当時の臣民に重なって見える。

これだけのムチャクチャな横暴をやってのけたアベ政権に対する世論の批判は、それなりに大きい。本日(6月16日)、幾つかの世論調査結果が発表され、軒並み内閣支持率を下げている。

共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は44・9%で、前回5月から10・5ポイント急落した。不支持は43・1%。安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡り、行政がゆがめられたことはないとする政府側の説明に「納得できない」としたのは73・8%で、「納得できる」は18・1%にとどまった。加計学園を巡る記録文書についての政府の調査で真相が「明らかになったと思う」は9・3%、「思わない」は84・9%だった。「共謀罪」の採決で、与党がとった異例の手続きについては、67・7%が「よくなかった」と批判した。(共同)

毎日新聞調査でも、支持率は「前回から10ポイント減」となって、不支持が逆転している。

毎日新聞は17、18両日、全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は36%で、5月の前回調査から10ポイント減。不支持率は44%で同9ポイント増加した。不支持が支持を上回ったのは2015年10月以来。「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法を参院委員会採決を省略して成立させた与党の国会運営や、学校法人「加計学園」の問題への政府の対応などが影響したとみられる。(毎日)

日本テレビ系の、NNN世論調査では安倍内閣支持率の推移は以下のとおり。この調査でも、不支持が支持を上回っている。
       支持する  支持しない  わからない
今 回 (6月) 39.8%   41.8%     18.4%
前 回 (5月) 46.1%   36.4%     17.6%
前々回 (4月) 50.4%   30.8%     18.8%

こんな問に対する回答もある。
問 あなたは、加計学園の獣医学部開設のいきさつについての、安倍総理の説明に納得しますか、納得しませんか?

(1) 納得する 9.6 %
(2) 納得しない 68.6 %
(3) わからない、答えない 21.7 %

問 「総理のご意向」「官邸の最高レベル」などの言葉を使って、文科省に積極対応を求めたとされる内閣府が、「そのようなことを伝えた認識はないことが確認された」などとする調査結果を公表しました。あなたは、内閣府の調査結果に納得しますか、納得しませんか?

(1) 納得する 11.3 %
(2) 納得しない 68.1 %
(3) わからない、答えない 20.6 %

問 「共謀罪」の趣旨を含んだテロ等準備罪を新たにつくる、「改正組織犯罪処罰法」が、国会で成立しました。あなたは、この法律に賛成ですか、反対ですか?

(1) 賛成 31.8 %
(2) 反対 39.5 %
(3) わからない、答えない 28.8 %

各世論調査に現れた国民意識の反応は健全なものだ。問題は、その持続性。私は、この怒りを忘れない。そして、「忘れるな」「忘れてはならない」と執拗に訴え続けたい。
(2017年6月18日)

ロンドンの高層公営住宅の火災に思うーこの惨事は格差社会の落とし子だ

6月14日ロンドンの高層公営住宅の大規模火災。これが、格差社会がもたらした悲惨な事故として物議を醸している。

かつての英国は、「揺りかごから墓場まで」の福祉が充実した先進国とのイメージが強かった。しかし、サッチャリズムの禍々しい旋風以来、この国も弱者に冷たい新自由主義の社会になっているようだ。

「16日夕には、ロンドン各地で地元行政や政府に抗議するデモが行われた。火災が起きた公営住宅を所有する地元の区役所には数百人が詰めかけ、責任追及を求めて『メイ首相は退陣しろ』などとシュプレヒコールをあげた。」(朝日)という。

大火になった原因が耐火性の低い安価な外壁材の使用にあった、防火設備の不備の放置もあった。これが低所得者層が多く住む公営住宅の管理の不備と指弾されている。

「発火原因が4階の冷蔵庫の爆発」で、「大火になった原因が耐火性の低い安価な外壁材の使用」との指摘が、よく分かる。安全にはコストがかかる。金をけちれば惨事につながるのだ。

下記の一文をお読み願いたい。

「 冷凍庫に限らず、各種電気製品はみな火を噴く報告例をもっている。電気行火やファンヒーターはもちろん、テレビも、パソコンも、扇風機も、冷蔵庫も火を噴くのだ。コンセントも発火源となり、コードの被覆も燃える。もちろん、製品のすべてが発火するわけではない。しかし、小さい確率でも発火事故は確実に起こり続けている。
冷蔵庫や冷凍庫の発火は、サーモスタットの小さな火花が製品内の可燃物に引火することで起こる。実は冷凍庫の断熱材ウレタンフォームが可燃物なのだ。石油でできており、庫内に石油を敷き詰めているのと変わらないという。その密閉が破綻して酸素と触れあう状態となれば発火の条件が調うことになる。安価ではあるが、危険なのだ。」

これは、ロゴス社の季刊誌『Fraternity フラタニティ』No.3 2016年8月1日号に、「私がかかわった裁判闘争・第3回」「『冷凍庫が火を噴いた』訴訟ー消費者事件の持つ意味」として、私が寄稿した記事の一部である。できれば、「フラタニティ」をご購読いただけたらありがたい。
http://logos-ui.org/fraternity.html

家人の留守の間に冷凍庫が火を噴いた。これが火元となって店舗兼居宅が全焼した。目撃者はない。1991年7月、福島県いわき市でのことである。被害者が、その被害の損害賠償を冷凍庫製造元の三洋電気に請求したというのが問題の事件の概要。この訴訟、正式には「三洋電機冷凍庫発火事故製造物責任訴訟」と呼称していた。製造物責任法(PL法)制定運動が訴訟を支援し、法運用の象徴的な事件として知られた事件。消費者運動対企業の天下分け目の大事件と注目された訴訟だった。

弁護士実務に消費者事件・消費者訴訟というジャンルがあり、弁護士会内に消費者弁護士・消費者族という一群がある。イメージは、「族議員」とさして変わらない。私は、長く消費者問題に取り組んできた消費者弁護士である。

消費者問題とはなにか。一言で言えば、商品流通の末端における消費者と事業者の矛盾である。資本主義社会では、すべての人の生活を支える消費財は、利潤獲得を目標とする商品となっている。人の生活は、企業がつくった商品や、企業が提供するサービスに依存して営まれている。最大限利潤を求める企業と、生身の生活者との利害の葛藤が不可避となる。これも、資本主義の矛盾のあらわれかたの一面。

実際、労働問題と消費者問題、労働事件と消費者事件とは似た面が多々ある。いずれも一方は営利を目的とする企業である。これに対峙する労働者も消費者も個人としてはまことに弱い存在で、保護が不可欠である。そして、労働運動や消費者運動を通じて、個別の利益を超えた権利の拡大が必要なことも共通している。

消費者事件においては、強い立場の企業(事業者)と、弱い立場の消費者の対峙がある。とりわけ、提供される商品やサービスが高度化し、消費者の側に事実上商品選択の能力が失われると、原理的に「賢い消費者像」を期待し得なくなる。「消費者よ、注意せよ」のスローガンは意味を失い、もっぱら「業者注意」を強調しなければならなくなる。

事業者と消費者との大きな力量格差を、どうすれば民事訴訟実に的確に反映させて実質的平等を実現することができるか。これが、消費者事件に取り組む、消費者弁護士の問題意識である。その典型が、PL訴訟にあらわれる。

安全であるはずの食品やサプリメントで中毒事故を起こした。薬品の副作用で半身不随となった。テレビが火を噴いて子どもが火傷した。自動車のブレーキが効かず人身事故を起こした。走行中自転車の車輪がはずれて路上に投げ出された。化粧品で顔が真っ黒になった。赤ちゃんがベビーベッドの隙間に挟まれて大けがをした。草刈り機の刃こぼれが飛んできて失明した。ハシゴが折れて転倒し骨折した。シロアリ駆除剤で人間がまいってしまった……。身近な「製品事故」は、枚挙にいとまがない。深刻な被害も少なくない。しかし、伝統的な損害賠償法制では、被害を受けた消費者は加害企業の過失を立証しなければ損害賠償を受けられない。この過失の立証が消費者に大きな壁となって立ちはだかっていた。

企業の利益に優越して生活の安全を重視する社会の要求が、製品に起因する事故で損害が生じた場合には、企業に無過失でも賠償の責任があってしかるべきだという法原則転換の要求となる。これが不法行為責任一般とは区別された意味での「製造物責任」である。

消費者の声が産業界の反対を押し切る形で、ようやく1995年7月1日の製造物責任法(通称PL法)施行にこぎ着けた。この日以後に出荷された商品については、PL訴訟に過失の立証は不要となった。商品に事故の原因となった「欠陥」さえあれば、メーカーは無過失でも責任を負う。「欠陥」とは「商品が通常有すべき安全性を欠いていること」と条文に定義されている。つまり、消費者がふつうの使い方をしていて事故が起これば、その商品には欠陥があったことになり、製造業者に被害の賠償責任が生じるのだ。

さて、可燃性断熱材の使用が悲劇の原因となったロンドン公営住宅の大規模火災。被害の把握の視点に、PL訴訟との共通点を見ることができる。その理念は、弱者の保護である。

PL事故被害の消費者と、住宅の安全性欠如によって被害を被った居住者と。いずれも、この資本主義社会が構造的に生みだした事故の犠牲者として保護されなければならない。日本国憲法の条文を引けば、憲法25条(生存権の保障)であり、13条(個人の尊厳の確保)であろう。

現代憲法は、国民に国家からの自由を保障しただけでなく、国家に対して国民への福祉政策の実現を命じている。PL法による製品の安全も、住環境の安全も、日本国憲法はその実現を目指すべく命じている。資本主義経済原則が国民にもたらす災厄を防止し救済する福祉政策の実現こそが憲法の生存権規定の目指すところ。

可燃性の断熱材がもたらす火災は、あるときはPL事故として、またあるときは建築被害として、憲法の命じる生存権保障ないしは福祉政策の理念から、救済対象とされ防止対策が施されなければならない。
(2017年6月17日)

「安倍政権を支持しない」が93%!という調査も出てきた

朝は、6時半からウトウトしながらのTBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」。金曜日の小沢遼子さんがリタイヤしてさびしくなったが、森本毅郎はハリのある声で健在。しばらく腰痛の治療でのお休みもあったが、今やこの人、齢をとることを忘れたのではないかと思わせる。

今週は、番組の特別企画として、「忖度しない!ご意向まつり」を実施。リスナーの「ご意向」を募集してきた。ミニ世論調査である。森本ファンの投票だから、当然にサンプルは偏っている。世間とはひと味違うところに面白みがある。

今日(6月16日・金)がその最終日で、テーマは「あなたは安倍政権を支持しますか。しませんか」。究極の強行採決で共謀罪法案を強引に押し通したその翌日というタイミング。支持と不支持の二者択一で、「分からない」も、「どちらとも言えない」もない。興味津々の結果は…。

「支持する!」・・・・・7%
「支持しない!」・・・93%
 (応募総数701通)
https://www.tbsradio.jp/156827

この結果は、「やはり」というべきか、それとも「驚くべき」というべきか。

読み上げられた、主な不支持の理由。
「共謀罪の決め方がひどかった。とても支持できない。支持する人がいるのが不思議」「国有地払い下げもすっきりしない、獣医学部新設もすっきりしない。国会や官房長官の説明は国民を馬鹿にしている。自浄作用がなくなった現政権は、まったく支持できない」「首相でありながら平気で野次を飛ばし、自分が野次を飛ばされると怒り出し、野党議員に対して反撃する様は見ていられない。」「『丁寧に説明していく』となんども言っているが、その説明を聞いたことがない。」「異論を唱えるものに冷たく、お友達には手厚い政権に未来を託せない」「秘密保護法、カジノ法案、安保法案、共謀罪を強行採決。しかし、この力を与えたのは国民。次は自民党に投票するのをやめて、暴走を止めなければと思う」

支持の7%は「経済政策の評価」と、「民進党よりはマシ」。
「(アベの)振る舞いは目にあまるが、金融緩和で株は上昇している。この実績は評価すべき」「民進党を見ていると、安倍政権を支持するしかない。蓮舫さんはパフォーマンスばかり。共謀罪の審議も、法案の問題点を追及すべきなのに、法相の個人攻撃ばかりだった」

「100対0」となっては、却って恐い。「93対7」は、確実に今の良質な国民意識の一面を物語っている。みんなもどかしいのだ。こんな粗暴な政権をのさばらせ放置してきたことを。そして、いまだに退治することができずに拱手傍観せざるを得ないことを。

そんな気持で、7時45分に家を出た。今日は東北新幹線に乗り遅れてはならない。やや急いで、丸の内線・本郷三丁目駅の入り口まできて、オジさん5?6人がビラを配っているのに遭遇した。てっきりマンション販売ビラかと思ったら、これが自民党都議会議院選挙候補者の宣伝行動。

思わず、言葉が出た。「えっ? 自民党?」「自民党だけは絶対にダメだ」「自民党よ。昨日は、国会で何をした」「キミたち恥ずかしくないか」「アベ晋三のために政治をねじ曲げて恥ずかしいとは思わないのか」。一番駅寄りに、議員バッジを付けた、候補者と思しき人物が立っていた。配っていたビラの写真の人物。睨みつけて大きな声で、「恥を知れ。自民党!!」

件の人物はなにも言わずに、えへらえへらしているだけ。もちろん、自民党にだって表現の自由はある。しかし、共謀罪法をだまし討ちで成立させた翌日のことだ。これくらいは言っておかなくては。

えこひいき政治も、だまし討ち国会運営も、結局は国民がアベ政権与党に与えた議席の数の力によるものだ。まずは、至るところで「アベ政権ノー」の声を出そう。NHKや読売の世論調査で内閣支持率が、「森本毅郎スタンバイ!」並みに近づけば、確実に政治状況は変わる。

このまま自民党が選挙に勝つようなことでは、「アベの、アベによる、アベのための政治」「アベ政権の、自公与党による、アベの身内とおともだちのための政治」が続くことになる。

まずは東京都議選で、驕る自公勢力に熱いお灸をすえなければならない。
(2017年6月16日)

「共謀罪法」成立のこの日を、しっかりと記憶に留めておこう。

今朝、与党が参院本会議で採決を強行し共謀罪法(形式は、「組織犯罪処罰法」改正)が成立した。身震いがする。

2017年6月15日を記憶せねばならない。この稀代の悪法を国会に提出したのは安倍晋三内閣。成立させた主力は自民党だが、自民と連立を組んで下駄の雪になり下がって久しい公明党の罪は深い。それだけではない。日本維新の会という与党別働隊の姑息さも記憶に留めておこう。

備忘録として、問題点をできるだけ簡潔に書き留めておきたい。

まずは法案審議から法成立までの手続の問題。
民主主義とは手続的正義である。民主主義の立場からは、法案審議の結果ではなく、過程こそが重要なのだ。審議とは国民の代表者による討議を意味する。充実した討議が尽くされ、その内容が国民に公開されなければならない。主権者国民は、この熟議の過程を把握して法案への賛否の意見を形成する。その主権者の意見分布が、自ずから審議に影響する。少なくとも、次の選挙における主権者の審判の判断材料となる。

ところが、共謀罪法案の審議に、手続的正義はなかった。与党は、衆院での審議30時間、参院は20時間と、強行採決までの勝手な時間設定をして、ひたすらその消化にのみ関心を寄せ、およそ真摯な議論応酬の姿勢はなかった。まったくの消化不良のまま、衆院での強行採決が行われ、参院では委員会採決すらカットされた。囁かれた「20時間で強行採決」の20時間の議論すらなかった。時間だけでなく、その討議の質も目を覆わんばかり。

私は、「中間報告」という委員会審議カットの奥の手あることを知らなかった。過去にも例があると指摘されて、思い出してみればそんなこともあったかとおぼろげな記憶があるかないか。すぐには、与党側の作戦が理解できなかった。

これは、手続的正義の観点からは、「だまし討ち」「卑劣」「姑息」「議論からの逃走」「汚い禁じ手」「究極の強行採決」…。どう言われようと、弁解の余地はない。積み残した問題山積のまま、自公は、野党との議論を避けて逃げたのだ。形式的に取り繕ってみても、実質的には手続的正義を欠いた行為。政党として、政治家として、なんと恥ずべきことをしでかしたものか。今朝成立した共謀罪法は、こんな恥ずべき手段で成立した法律だと、深く烙印を押しておこう。

「議会制民主主義の危機」「国会死にかけている」「参議院の自殺行為」などの刺激的なフレーズが、誇張に感じられない。いつから、どうして、日本はこんなムチャクチャな国になってしまったのだろう。

さて、問題は成立した法案の内容である。
内閣が提案理由とした「テロ対策」に有効かという問には、明らかに「ノー」という以外はない。しかも、この法律は不必要というだけではない。著しく危険で有害なのだ。

取って付けたような、「テロ等準備罪」という命名。名は体を表していない。批准のために必要と、共謀罪成立のためのダシにされたパレルモ条約(TOC条約)。政治的なテロ対策条約ではなく、マフィア・ヤクザの国際越境的な経済活動取り締まりが目的であることはよく知られてきた。テロ対策に役立つものではないと化けの皮が剥がれそうになって、自公勢力が幕引きに焦り出したのでもあろう。

しかし、この法が「役に立たない」というのは不正確である。刑事権力を持つ者の立場からは、非常に役に立つのだ。テロ対策にではなく、権力に抗う者、まつろわぬ者、あるいは権力から見て好ましからざる者に対する弾圧に、極めて有用なのだ。弾圧にまで至らずとも情報収集段階でこの法律は使える。

なにしろ、犯罪行為の着手以前の「準備行為」を一般的に犯罪とするというのだ。なんでも、「準備行為」として把握できる調法な法律。

「国民総監視社会」とは、現実に一億国民が監視対象となる社会ではない。権力が不都合と考えた誰でもが、監視対象となりうるということなのだ。政権に楯突きそうな人物のプライバシーを丸裸にして弱みを探し出す、そんなことをやるのに役に立つ。

権力にとって使い勝手がよいということが、とりもなおさず国民にとって非常に危険な代物ということになる。

なにしろ、犯罪行為の着手以前の「準備行為」が一般的に犯罪とされるというのだ。なんでも、「準備行為」として把握される危険極まりない法律。

集会結社の自由も言論出版の自由も、政権が嫌う思想、権力に憎まれる思想の表現の自由に意味がある。読売や産経が、権力からの弾圧を心配する必要はない。彼らはのびのびと権力の広報で紙面を飾ることができる。しかし、これを言論出版の自由が保障されているとは言わない。

反権力の表現の自由、あるいは反権威の表現の自由こそが権利として保障されることに意味をもつ。実に曖昧な、なにが犯罪か茫漠とした行為を犯罪とすることは、権力の恣意的な取り締まり対象の選択を許容することになる。権力は、いつでも好ましくないとする行為を取り締まることができるのだ。このことは、社会全体に広範で深刻な萎縮効果を及ぼすことにもなる。多くの国民が無難に、見ざる・聞かざる・言わざるを決めこむことになる。忖度の充満した息苦しい世の中になる。それは、権力にとって支配しやすい望ましい時代。

安倍晋三とその取り巻きの高笑いが聞こえる。身震いがする。

とりあえずのリベンジは、次の選挙でするしかない。東京都民には、7月2日がその日だ。
(2017年6月15日)
なお、本日付で日弁連会長声明が出ている。以下のとおり。
**************************************************************************
いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する会長声明
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/170615.html

本日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続により、本会議の採決が行われ、成立した。
当連合会は、本法案が、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強いものとして、これまで本法案の制定には一貫して反対してきた。また、本法案に対しては、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明する書簡を発出するという経緯も存した。
本国会における政府の説明にもかかわらず、例えば、?一般市民が捜査の対象になり得るのではないか、?「組織的犯罪集団」に「一変」したといえる基準が不明確ではないか、?計画段階の犯罪の成否を見極めるために、メールやLINE等を対象とする捜査が必要になり、通信傍受の拡大など監視社会を招来しかねないのではないか、などの様々な懸念は払拭されていないと言わざるを得ない。また、277にも上る対象犯罪の妥当性や更なる見直しの要否についても、十分な審議が行われたとは言い難い。
本法案は、我が国の刑事法の体系や基本原則を根本的に変更するという重大な内容であり、また、報道機関の世論調査において、政府の説明が不十分であり、今国会での成立に反対であるとの意見が多数存していた。にもかかわらず、衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては上記のとおり異例な手続を経て、成立に至ったことは極めて遺憾である。
当連合会は、本法律が恣意的に運用されることがないように注視し、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、今後、成立した法律の廃止に向けた取組を行う所存である。
2017年(平成29年)6月15日
日本弁護士連合会 会長 中本 和洋

もう堪忍袋の緒が切れたーバカ殿にはやめてもらおう。

のう、皆の衆。
緊急にお集まりいただいたのは、ほかでもない。最近の藩政のことだ。
役人どもの目のないことは確かめてある。存念なく話し合いたい。

最近の藩政はおかしい。とうてい見過ごしてはおられない。とりわけ、藩主〈アベ加計の守〉のバカ殿ぶりには、愛想もこそも尽き果てた。アベ加計が転封でこの地の藩主になってからもう4年半になる。最初から、おかしな奴だとは思っていたが、これほどとは思わなんだ。

このバカ殿は、領民あっての藩であることが、まったく分かっておらん。藩政には公道がある。領民の声に耳を傾け、公平・公正を旨としなければならない。

ところが、このバカ殿は、「ご意向」を振りかざし、「忖度」を流行らせ、藩政批判には聞く耳を持たず、「印象操作」だとバカの一つ覚えの反論を繰り返すばかり。

アベ自身が、領民から疎まれていることは、よく分かっておろう。だから、特定秘密保護法だの共謀罪だのと言い出しているんじゃ。こうやっての皆の衆との話し合いに目を光らせ、一網打尽でしょっぴきたい。それが共謀罪の狙い。そのために、藩庁の役人どもが、うろうろ見回りをしている。領民総監視藩政がアベの目指すところ。

しかも、どうにも我慢のできないのは、アベ一存のえこひいき政治じゃ。アベシンゾ?小学院は、藩主の奥方が名誉校長を務めるとかで一時はたいへんな勢いじゃった。9万両相当の藩の敷地をだな、わずか1万両で払い下げて大問題となった。もっともこの事件、旗色悪いとみたアベがな、途中で盟友籠池を裏切って知らん顔となって、馬鹿を見たのは籠池よの。気をつけねばならんのは、この大問題が偶然に発覚したことじゃ。これは氷山の一角じゃろうて。発覚しない同じような問題が数多くあるに違いなかろうと、領民皆がバカ殿政治に疑心暗鬼となっておる。

「信なくば立たず」と、政治の神髄を寺子屋で習うたろう。藩政は、領民からの信頼なくして成り立たないということじゃ。アベ・バカ殿政治は、アベ友学園事件の不始末で完全に信を失った。この辺でアベ加計は腹を切るかと思ったものじゃった。

ところが、これがしぶとく生き延びての。そして、続いて発覚したのが今話題の加計学園問題。バカ殿の腹心の友の事業のために藩政の中枢が動いて、支藩から、土地はただで提供するは、建物建設には補助金を出すは、という至れりつくせりでな。

実は、アベの威を借るキツネやタヌキの有象無象が藩政を壟断しておる。菅が筆頭かの。それに萩生田や、八田、竹中だのという連中。そしてそれを手助けする読売・産経・山口・田崎などの面々。この連中を一掃しなければならない。

反対に、役人の中にも真面目な者もおってな。内部告発とか、公益通報とかする者が現れた。これは、バカ殿派には大きな痛手。これを鎮圧しようと奴らは躍起になっている。その先頭に立っているのが、あのヨシイエのところのせがれ。あいつは、元はおれたちの味方のような顔をしておったがな。ところが、士分に取り立てられてからは、ひどい寝返りだ。張り切ってバカ殿派の手先になってな、今度も内部告発者は処罰するぞ、と息巻いておる。

しかもだ。今日になって、アベの一味が狂ってしまったようだ。突然に今日(6月14日)中に、共謀罪のお触れを出そうと深夜になっても作業中だ。これはトンデモナイ事態。アベのバカ殿やその取り巻きを一掃するには、久々に一揆を起こさねばならない。

一揆の趣意書を直訴状として拵えてみた。飽くまで素案だ。今日はこれを皆の衆で練り上げていただきたい。孫子のために、打倒アベで立ち上がらねばならん。このことに気持は一つよのう。なあ、皆の衆。

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             直  訴  状
バカ殿アベ加計の守信介・罪となるべき下記八つの所業あるにつき、直ちに職を辞し蟄居謹慎を申しつけられるべきこと。領民一同之を建白。

第1の所業 明文改憲の罪
明文改憲によって、国防軍創設・天皇元首化・基本的人権の侵奪をたくらむほか、96条先行改憲論に象徴される立憲主義への飽くなき攻撃こそ最大の罪。今は、9条3項加憲を行おうとしていること、不届き千万。

第2の所業 解釈改憲の罪
集団的自衛権行使容認の強行や武器輸出解禁の姿勢に表れているとおり、改憲手続きを迂回して憲法の理念を実質的に破壊する罪は重い。

第3の所業 共謀罪法案審議強行の罪
国民運動弾圧の「平成の治安維持法」を制定し、国民総監視社会を作ろうとすること大罪なり。

第4の所業 公平公正を害するえこひいき行政の罪
腹心の友のためや、「アベシンゾー首相ガンバレ」とコールする教育施設に特別の配慮を惜しまない偏り行政の罪。

第5の所業 マスコミ介入と懐柔の罪
一方では停波をチラつかせ、他方では「読売を読め」という、批判するメデイアと擦り寄るメデイアを意識的に選別した対応の罪

第6の所業 原発再稼動と輸出の罪
3・11で顕在化した恐怖、利権構造、政策決定過程の密室性は、脱原発の澎湃たる天の声を呼び起こした。再稼動と輸出とは、人類の未来に対する大罪である。

第7の所業 核廃絶に反対の罪
唯一の被爆国でありながら、国民と被爆者の意思に反して核兵器禁止条約に反対するという愚行こそ、天地の許さぬ大罪である。

第8の所業 辺野古新基地建設強行の罪
沖縄県民の立ち場でアメリカと交渉するのではなく、アメリカの立ち場で沖縄に基地を押し付け、新たな基地被害をつくり出す重罪。
(2017年6月14日)

アベ・えこひいき政治には、もううんざりだ。

本日(6月13日)は、本郷湯島九条の会による定例の本郷三丁目街頭宣伝の日。午後の法務委員会での、共謀罪法案強行採決があり得るとの報せで緊迫した雰囲気の中、参加者のボルテージも上がった。そのメンバーと一緒に国会へ。衆議院第一議員会館内でのシンポジウムに参加した。

本日は、与党側が内閣委員会の委員長(民進党)に対する解任決議案提出をきっかけに、野党側が国家戦略特区を担当する山本地方創生担当大臣に対する問責決議案を提出。加えて、金田法務大臣に対する問責決議案が提出されて、審議はストップしたようだ。この成り行きは、シンポジウムの途中で、宮本岳志議員から報告された。会期末まであと5日。場合によっては延長もある。強行採決の危機は、ずっと続くことになる。野党がどれだけがんばれるかは、ひとえに国民世論のあり方にかかっている。

参加したシンポジウムは、「森友問題の幕引きを許さない市民の会」が主催した「森友・加計問題を考えるシンポジウム」。
パネリストは、小川敏夫(民進党 参議院議員)、宮本岳志(日本共産党 衆議院議員)、杉浦ひとみ(弁護士)、青木理(ジャーナリスト)の各氏。コーディネ?タ?が、醍醐聰さん。時宜を得て盛会だったし、議論も盛りあがった。

幾つかのテーマが話題となった。今のアベ政治が、私益のためにねじ曲げられたデタラメ政治となっていることは確認できたが、さて、この事態にどのような具体的な対抗策が考えられるのか。これがシンポ参加者の問題意識。暴走する権力を、誰が、どのように止めることができるのか。「最後は国民の一票」というのはそのとおりなのだろうが、誰もがそれではもどかしい。その余の術はないのか。

まずは議会である。とりわけ野党の役割が期待される。国政調査権をフル活用して、国民の声を背に権力の横暴を暴き追及する。今国会では、野党はよくやっているとは思う。しかし、所詮は数がものをいう世界の話。野党側議員の数が少ない。数の力で押し切られては如何ともしがたい。

次いで、メディアに期待が集まる。官房長官を30分にわたって質問ぜめにして食い下がり追い詰めた、東京新聞社会部記者の話題に拍手が湧いた。しかし、この拍手は普段のメディアへの失望をも表したもの。欧米の記者たちの要人に対する切り込みの鋭さが話題となった。彼我の落差はどこから来るのだろうか。本来権力への監視こそがジャーナリズムの役割。「大手町に本社のある新聞2社」の権力とつるんだ体たらくが、今の日本のメディアのあり方を象徴している。パネラーからは「がんばっているメディアや番組を応援していただきたい」との発言があった。

さらには、暴走する権力への司法の歯止め期待される。会場から「具体的な司法活用の方策はないのか」という質問が寄せられた。パネラーからは、「行政訴訟や民事訴訟の活用は、具体的な被害を受ける者以外には原告適格は認められず、一般的にはむずかしい。」「場合によっては、罰則のある具体的な法違反について告訴や告発をすることはできるだろう」と回答された。

ひとしきり話題となったのは、準強姦の被告訴人として逮捕寸前であった元TBS記者山口敬之の不起訴事案。アベ政権御用達記者として名高い彼の逮捕状の執行を取り消したのは警視庁中村格刑事部長(当時。現警察庁)。これも、アベ政権の「ご意向」ないしは「忖度」事件。自らにシッポを振って忠誠を誓う者に対する、「えこひいき政治」の腐臭が漂っている。

この件について、パネラーからは、「検察審査会の起訴相当決議は検察官を拘束する。場合によっては強制起訴にもなる。検察審査員は一般国民から選任されるのだから、世論の後押しは効果があると思う。検察審査会に世論を示して後押しする行動の工夫が大切」との発言。

議会、メデイア、司法の各局面を通じて重要性が強調されたのが、行政文書の保存と公開。情報公開制度の形骸化を許してはならないことが、繰りかえし語られた。

そして、加計学園問題において公益通報を決意した公務員に対する「守秘義務違反攻撃」の卑劣さが話題とされた。

行政情報は公開が大原則である。公務員法が刑罰で漏示を禁止されている秘密とは、いわゆる「実質秘」に限られる。非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいう、とされている。

具体的には、微妙なグレーゾーンがあるにせよ、今回の「内部告発」を公務員の守秘義務違反として封じ込めようとは、さながら悪代官の悪あがきではないか。元ヤンキー先生こと義家弘介文科副大臣よ。悪代官になり下がりたいか。

内容の濃いシンポジウムだったと、同行した地域の方にたいへん好評だった。このことが、地域の運動の盛りあがりにもつながるだろう。
(2017年6月13日)

アベ政権打倒に世論は変わりつつある。

世論調査によるアベ政権に対する支持率が一部で急落している。典型は、北海道新聞の5月26?28日調査。安倍内閣を「支持する」は4月の前回調査から12ポイント減の41%、「支持しない」は12ポイント増の57%と、不支持が支持を逆転した衝撃。

6月1日発表の日経新聞電子版「クイックVote」の調査結果も話題となった。内閣支持率は前回調査の52.1%から25.4ポイントもダウンして26.7%だった。6月8日発売の週刊文春は、独自の調査で「内閣支持率22%」というタイトルを打った。

大手メディアの通常の調査が続いてこうなるかは分からない。しかし、明らかに、風向きは変わってきた。アベ政治へのアゲィンストに。そして、世評はアベに冷たくなってきている。私の印象では、社会の良質の人々が、これ以上アベ政権の所業を看過しておけないという気持になっている。メデイアにも、ようやく遠慮のない政権批判ができる空気ができている。

「アベはいいやつだ。放っておいてもらいたい」は、通用しなくなっている。「アベのやることは見ちゃおれない。もう、いい加減に退場してもらわねばならん」という世の中の空気なのだ。昨年、都知事だった舛添が襲われたバッシング。あの現象が突然にアベの身に起こっても不思議はない。

アベの悪行は、大きくは2つに大別される。
一つは、人権や民主々義の蹂躙である。憲法敵視、憲法改悪、沖縄への基地押しつけ、共謀罪法案の強行、歴史修正主義、原発再稼働、教育への介入、核廃絶への不熱心……。
二つ目が、政治の私物化である。アベ友学園問題、腹心の友学園問題がその典型。岩盤規制に穴を開け、その穴から滲み出る甘い汁を身内に吸わせようとしているだけのこと。
そして、無反省で居丈高で傲慢で不誠実な人格と姿勢を三つ目に挙げることもできよう。今は、「内閣支持率急落の前兆が見えはじめた時期」なのかも知れない。

毎日新聞の投書欄(「みんなの広場」)を最近丹念に読んでいる。アベ政権を批判し、叱責する投書者の質の高さと批判の的確さ、そして政権に対する怒りのボルテージに驚かされる。その表題を追ってみると、たとえば以下のとおりである。

昨日月11日(日)
「功利的」へ導く安倍政権=無職・松沢肇・60
民主国家は憲法のおかげ=無職・中川富蔵・86
「安倍晋三首相の場違いの一言が憲法改正を走り出させた。発言には憲法99条違反の声もあるが、元々祖父・岸信介元首相の遺志を継いでいる…」
議会政治の危うさ覚える=主婦・岡本信子・67
「こんなに政府が一丸となり暴走するような政権を私は知らない。」
黒を白にする政治でいいのか=元教員・高須賀嘉夫・85
「黒は黒であり、白は白である。黒が白になることはあり得ない。だが、私は黒が白になった現実を体験している。太平洋戦争末期、私は少年だった。…」

一昨日(6月10日)
加計問題のすり替えを危惧=主婦・松葉ナリ子・74
「加計学園の獣医学部新設計画に関して、文部科学省の前事務次官、前川喜平氏が行った証言が興味深い。「あったことをなかったことにはできない」という言葉…」

一昨々日(6月9日)
自由民権運動の熱意に敬意=無職・国友英宏・69?
民主政治のため総辞職を=無職・岡部光彦・75

以下
若者に不信感抱かせる政治家=無職・山本浩実・56
9条こそアメリカファースト=会社員・中村俊夫・55
義家氏よ、元教育者の矜持は=元小学校校長・喜島成幸・65
安倍首相に謙虚な行動望む=臨時公務員・高江貞徳・61
記者団の軟弱姿勢に失望=僧職・中山道・87
「ノー」と言う議員いないのか=無職・吉岡辰典・70
「共謀罪」国民の萎縮が狙い=無職・鳥塚鈴子・65
直接民主主義の気概持とう=無職・飯田豊・66
ぞんざいな姿勢の安倍首相=無職・山原孝夫・62
不徳の議員、心に響かぬ言葉=無職・森本秋雄・72
維新議員、矜持はないのか=会社員・東山貢之介・61
この国はどこへ行くのか=会社員・浜尾幸一・68
加計問題、前川氏の喚問を=無職・佐久間信行・61
安倍政権下での改憲許せない=年金生活者・勝田秋広・71
加計学園問題、前川氏の勇気=主婦・吉葉和子・71
疑心暗鬼が渦巻く日本へ=団体職員・谷口歩・46
喜寿を迎えて思うこと=主婦・井上邦子・77
政治劣化に抗議の声を=自営業・永冨芳信・68
「NO」が届かぬもどかしさ=主婦・佐藤千賀子・60
「共謀罪」時限立法にしては=僧侶・小圷洋仙・74
政治不信が募るばかり=無職・松崎準一・67
もの言いにくい社会を危惧=無職・篠原基修・74
加計学園問題国民は怒りを=派遣社員・吉澤重信・68
気になる首相の強気発言=自由業・曽我正彦・61
政官一体の真実隠しか=主婦・原紀子・76
憲法を軽々に変えるな=有期雇用職員・福島洋一・62

今、政治に敏感で、真っ当にものを考える人々がアベ政権を見限りはじめたのだ。国連は、はやばやとアベ政権を批判している。先頭集団が走り出せば、第2集団が続くだろう。そして、その後裔も同じ方向に走り出す。そのような時に差し掛かっているという実感がある。雪崩をうっての政権の崩壊。その予兆が感じられる。
(2017年6月12日)

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