今国会を締めくくる言葉 ― 「憲政史上最悪の国会」「国民を愚弄するにも程がある」
第196通常国会が、昨日(7月20日(金))事実上閉会した。思い起こせば、アベ政治の醜態極まれりという、「憲政史上最悪の国会」。これでいよいよアベ政権も終わりかと思わせる事態は何度もあった。が、膿にまみれ満身創痍となりながらも、アベ政権は持ちこたえた。内閣支持率は下げ止まり、やや上昇の傾向さえ見せている。アベ政治を許し、アベを政権の座にから追い落とせない、これが日本の民主主義の水準なのだ。
本日の朝日は、「通常国会、事実上閉会」「森友・加計など疑惑解明置き去り」「政権の強引さ、際だった」「野党『憲政史上、最悪の国会』」の見出しで、こう報じている。
公文書が改ざん、廃棄され、「ない」とされた文書が見つかる。答弁のうそが明らかになる。国会審議の前提は根底から覆された。過労死を招きかねないと指摘された制度やギャンブル依存症が増えかねないカジノ新設を認める法律も野党の反対を押し切って成立。安倍政権の国会軽視が際立つ通常国会だった。
巨大与党に少数野党。野党が提出した内閣不信任決議案が否決されるのは目に見えている。それでも憲法に基づいた手続きであることには変わりない。
立憲民主党の枝野幸男代表が不信任案の趣旨説明をしている最中、安倍晋三首相は隣の閣僚と談笑した。「何笑ってんだよ」。野党席からヤジが飛んだ。「憲政史上、最悪の国会になってしまった」。枝野氏は2時間43分にわたった趣旨説明をこう締めくくった。
毎日新聞は、「政府強引、国会に禍根」「森友・加計、疑惑解明至らず」「働き方・参院6増・カジノ… 重要法熟議なく」とよく似た見出しで、今国会をこう総括している。
通常国会は20日に事実上閉会した。学校法人「森友学園」「加計学園」を巡る問題で、政府・与党は疑惑解明に後ろ向きな姿勢を取り続け、真相究明には至らなかった。約半年にわたった国会論議が深まることはなく、与党は働き方改革関連法や参院定数を「6増」する改正公職選挙法など、問題を数多く抱える法を熟議なく強引に成立させた。政府が提出する法案や行政機関に対する立法府としてのチェック機能に課題を残した。
立憲民主党の枝野幸男代表は20日の衆院本会議で、安倍内閣不信任決議案の趣旨説明を2時間43分にわたって行った。枝野氏は、不信任の理由は「数え切れないほどある」としたうえで、森友・加計学園問題など7点を挙げて「この国会は民主主義と立憲主義の見地から憲政史上最悪の国会になってしまった」と批判した。
そして、東京新聞。本日(7月21日)の社説が、厳しく力のはいったものとなっている。
国会あす閉会 政権の横暴が極まった
通常国会があす閉会する。与党は延長会期中、国民への影響が懸念される「悪法」の成立を強行する一方、森友、加計問題の解明にはふたをしてしまった。安倍政権の横暴が極まったのではないか。
あす会期末を迎える通常国会はきのう事実上閉会した。実質的な最終日、与党が成立を図ったのがカジノを中核とする統合型リゾート施設(IR)整備法案だった。
そもそも刑法が禁じる賭博を一部合法化する危険性や、ギャンブル依存症患者を増やす恐れがある法案だ。地域振興や外国人の集客に本当に役立つのか、審議を通じても疑問は解消されない。法案成立後に政令などで決める事項が約三百三十項目にも上る。そんな法案を成立させていいのか。
延長国会の期間中、西日本を豪雨が襲い、二百人以上が亡くなった。猛暑の中、多くの被災者が生活再建を急ぐ。避難生活を余儀なくされている方は依然多い。
生活再建や復旧、復興に向けた策を練り、法の不備を補い、予算を確保することこそが、国会が優先すべき課題ではなかったか。
しかし、会期末の限られた時間は安倍政権が優先した「カジノ法案」の審議に費やされ、寸断された道路や鉄道、堤防が決壊した河川を所管する石井啓一国土交通相が答弁に追われた。災害対策より賭博か、との批判が出て当然だ。
西日本豪雨では、気象庁が厳重警戒を呼び掛けた五日夜、自民党議員が「赤坂自民亭」と題する宴会を開き、安倍晋三首相や小野寺五典防衛相らが参加していた。
豪雨発生時から緊張感を持って災害対応に当たっていたのか、疑問を抱かせる振る舞いだ。
与党は延長国会で参院議員定数を六増やし、比例代表の一部に優先的に当選できる「特定枠」を導入する改正公職選挙法も成立させた。法律が求める抜本改革に程遠く、「合区」対象選挙区で公認漏れした自民党現職議員の救済策にほかならない。こんな制度をつくり、恥じることはないのか。
森友学園をめぐる問題では財務省の公文書改ざんが明らかになり、佐川宣寿前国税庁長官による国会での偽証も指摘されている。加計学園は愛媛県に嘘(うそ)をついたと主張する。国民の多くが疑念を抱くのに、与党はなぜ事実を解明しないのか。政治権力を集める首相や官邸への配慮なのか。
国会で多数を占めれば、何をやっても許される。政権がそんな考えで国会を運営したとしたら、国民を愚弄するにも程がある。
確かに、数を恃んだアベの横暴の国会。しかし、当初はこの国会に「憲法改正原案の発議」がなされる恐れが報じられていたのだ。1か月余の会期を延長してなお、今国会に憲法改正原案の発議はできなかった。衆参両院の憲法審査会も実質審議の場となっていない。そもそも、自民党案さえ確定に至っていない。
昨夕、安倍晋三は、通常国会の実質閉会を受けて、官邸で記者会見し、改憲について「九月の自民党総裁選で大きな争点になる」と強調した。自民党がまとめた自衛隊明記など改憲四項目の条文案に関しては「(各党間で)取りまとめを加速すべきだ」と述べ、与野党に発議に向けた議論を呼び掛けた。と報道されている。
何度でも繰り返したい。改憲派にとっては、「アベが総理総裁でいるうち、改憲派の議席が両院ともに3分の2を超えているうち」が千載一遇のチャンスなのだ。
「アベが失脚する」か、「改憲派の議席が衆参のどちらかで3分の2を割る」ことになれば、改憲の危機は遠のくことになる。
アベ政権は、今国会で悪法成立の強行と引き換えに、「憲政史上最悪の国会」「国民を愚弄するにも程がある」との酷評にも晒されているのだ。アベ改憲の阻止は、十分に可能と考えられる。
(2018年7月21日)