政府は真摯に沖縄県民の声を聞け
本日は、8月17日。防衛省沖縄防衛局が沖縄県に通知した、大浦湾埋立の土砂投入開始予定日とされていた日。
午前中、カヌー50艇や小型船数隻が周辺海域に繰り出し、「美ら海を守れ」「違法工事はやめろ」「サンゴを殺すな」と訴えた。埋め立て土砂の投入や護岸工事、工事用ゲートからの資材搬入はなかったという。
土砂投入の通知がなされたのは6月12日。通知は、沖縄県赤土等流出防止条例上の義務なのだそうだ。県は通知後、45日の調査期間に、県が設定した基準に適合しているか否かを審査して、不適合の場合には計画変更命令を出すことができる。
その6月12日の記者会見で、翁長知事は「辺野古に新基地は造らせないとの決意はみじんも揺るがない。看過できない事態となれば、躊躇することなく(埋立承認)撤回を必ず行う」と明言している。
以来、8月17日が、辺野古新基地建設を推進する政府と、これに反対する県民・国民との抜き差しならぬ対決の日と想定され、沖縄県はこの日までに仲井真前知事の埋立承認を撤回すべく準備をしてきた。
翁長知事が、埋立承認撤回の具体的手続に着手し、その旨を公表したのが、7月27日。条例上の45日の調査期間満了の日に当たる。この日の記者会見で、知事は、承認撤回の理由について、国が「全体の実施設計や環境対策を示さずに工事に着工した」こと、サンゴ類を移植せずに着工したこと、埋め立て予定海域の地盤が軟弱であること、新たな活断層が発見されたことなど「承認時には明らかにされていなかった事実が判明した」ことを説明した。このときも、知事は「今後もあらゆる手法を駆使して辺野古に新基地を造らせないという公約の実現に向け全力で取り組む」と述べている。
同日県は、埋立の事業者である国から事前の反論を聴く「聴聞」の手続きを8月9日と指定して通告した。8月17日以前に承認撤回実行を意識しての日程である。
こうして、承認撤回を経て8月17日を迎えることが予想されていたが、聴聞手続きの前日8月8日に翁長知事急逝という予期せぬ事態の出来で事情が変わった。
沖縄県(知事職務代行者)は、本日(8月17日)までに「承認撤回」の通告をしていない。また、沖縄防衛局も土砂投入の工事の強行を差し控えている。現地での衝突もなく、法的手続の応酬もないままに、8月17日を迎えた。
政府は一昨日(8月15日)土砂投入を先送りする方針を固めたと伝えられている。17日の工事予定は台風の影響で準備が間に合わないというのが表向きの理由だが、翁長知事急逝を受けた知事選前倒しを踏まえ、「選挙戦への影響を見定める狙い」があると報道されている。
台風の影響で準備が間に合わないというのなら、数日の順延ということにしかならないが、本日の琉球新報は、「県関係者によると、翁長氏急逝を受け、政府が県に対し埋め立て承認撤回や土砂投入の延期を申し入れており、投入時期が9月30日投開票の知事選後にずれ込む見立てもある」との記事を掲載している。
当初は知事選が11月に予定されていたため、8月からの土砂投入で既成事実を積み上げておくほうが得策という政府の判断だった。しかし、9月に前倒しの選挙となると、もろに辺野古基地建設強行の可否が選挙戦の争点として問われることになる。その事態を避けたい、という本音なのだろう。
朝三暮四という故事成語が思い出される。餌の量は、朝三暮四でも朝四暮三でも変わらない。それでも、餌付けをされる猿は、朝三暮四では怒り、朝四暮三なら喜んだという。被治者を猿に喩えた、不愉快な寓話。
安倍や菅は、国民を猿並みに見下している。いずれ本格的な基地建設工事の強行は避けがたいが、選挙前は手荒なことをせずにやり過ごし、選挙後にやれば抵抗は少なかろうという、選挙民を愚弄する手口。県民の意思を真摯に聞こうという姿勢が欠落しているのだ。
政府は、沖縄知事選を県民操作の手段と見てはならない。新基地建設反対の県民の声に謙虚耳を傾けよ。そして、嵐の前の静けさのあとに、状況は激しく動くことになる。それを乗り越えた、オール沖縄の新知事誕生を期待したい。
(2018年8月17日)