自民党銀座会食トリオ ー 復党させよかな させるのよそうかな
(2021年6月21日・連続更新第3002回)
「人の噂も75日」って言うだろう。今年の1月18日に召集された通常国会の会期が6月16日閉会までちょうど150日。75日が二廻りだ。通常国会開会時の噂ももう途絶えたころ…そう考えてもおかしくはないじゃないか。
あの通常国会開会の日は、コロナによる緊急事態宣言の真っ最中。その晩、銀座で飲んで物議を醸したのが、我が党の松本純・田野瀬太道・大塚高司の3議員。「銀座豪遊3人衆」とか、「ウソつきトリオ」とも言われたな。緊急事態宣言下での飲酒・会食を週刊誌にすっぱ抜かれた。イタリアンレストランやクラブなど3軒のハシゴ。女性2人の同席があったことも暴かれて、ウソの弁明がみっともなさに上塗りされて世の顰蹙を買った。あのときの世論は殺気立っていた。あれでは、党もかばいようがなかったんだ。
ウソをつく、ごまかす、はぐらかす、などは我が党の前総裁が得意としたところ。でもこのトリオ、ウソのバレ方がひどかった。そして時期も悪かった。飲食が悪かったんじゃない。それは我が党の議員の多くがやっているとこだ。しかし、バレたら覚悟が必要だ。脇が甘いのは政治家としての致命的欠陥だよ。因果を含めて離党届を出させたのが、今年の2月1日だったな。ここから数えても、そろそろ150日になる。
幸いなことに、我が国の選挙民は忘れっぽい。いや、大らかとか寛容とか度量が広いというべきだろう。いつまでもしつっこく他人を責めない、政治家の失態を笑って許してくれる、竹を割ったような性格の良い人が大多数なのだ。意地の悪い例外もいるが、150日の経過はチャンスだよ。
そこで、通常国会閉会を潮時に、何人かの懇意な記者にリークしてみたというわけ。それがたちまち、各紙の記事になった。たとえば次のように。
〈自民党内で、新型コロナウイルス緊急事態宣言下の深夜に東京・銀座のクラブを訪問した不祥事の責任を取り、離党した松本純元国家公安委員長ら3氏の次期衆院選前の復党論が浮上している。複数の関係者が17日、明らかにした。〉
ぶっちゃけた話、これはいわゆるアドバルーン記事だ。この記事を書いた記者の意図は知らんが、こうした記事の世論の反応で、復党の可否を見極めようというわけ。
もちろん、我が党に抜かりはない。念のために、次のような記事も書いてもらっている。
〈党幹部は、コロナ禍でクラブを訪れた3氏の記憶は新しいと指摘。「自分の力で衆院選を勝ち抜き、みそぎを済ませる前に復党を認めれば、有権者から『身内に甘い』と非難される。党全体の勝敗に大きく影響しかねない」と懸念を示す〉
世論の風を見ながらの両論併記の高等作戦。どっちに転んでも傷は避けられないが、できるだけ軽く済むよう二股かけているわけだ。復党させたいのが本音だが、いま復党させれば、全国の有権者がせっかく忘れかけていたあの事件の記憶を鮮明にして、我が党のイメージをいたく傷つけかねない。とは言え、党からの資金援助をしてやれない現状では、貴重な「現有3議席」を野党にもぎ取られるかも知れない。それは余りに惜しい。もったいない。
いま無所属のこの3人、いずれも衆院議員で、松本純は神奈川1区、大塚高司は大阪8区、田野瀬太道は奈良3区。それぞれ、麻生派、竹下派、石原派。これまでは、次期総選挙での当選後に復党させようというのが暗黙の合意。これなら、ミソギを済ませたという名分が立つ。
ところが、今度の選挙は我が党に厳しい。内閣支持率も低迷している。追い込まれ解散でもある。候補者不在の空白区を解消して全国的な選挙態勢を整備しなければならないいま、復党させたいのだ。この3区を空白区扱いとすれば、比例票の目減りともなる。地方選への影響も否定できない。けれどもそれが裏目に出るかも。…だから、迷うんだ。
復党させよかなー
それとも させるのよそうかなー
そろそろ噂も下火になった
だけど気になる 世論はこわい
復党させよかなー やっぱりよそうかなー