澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

民意 なんぞかくも気まぐれなる かくも酷薄なる

(2022年7月11日)
 凡人に、一喜一憂するなと言うのは無理な話。今日は、「一憂」の日だ。朝から気が重い。

 肺ガンを患って手術を受けたとき、柄にもなく「歌のようなもの」を詠んだことがある。その30首ほどの中に次の一首。自分がガンになったことで、神を怨んだもの。

  神在りせば神を怨まん
  なんぞかくも気まぐれなる かくも酷薄なる

 今日は、この「歌のようなもの」の気分を苦く噛みしめている。ただし、この「神」を、「民」ないしは「民意」に置き換えて。

 民主主義とは一筋縄ではゆかぬものだ。選挙は民意を政治に反映する手続というが、その民意が気まぐれでまことにはかなく頼むに足りない。なんの見識も持ち合わせなさそうな体育系やら芸能系やら右翼系やら、あるいは愉快犯風やらに票が集まる。セクハラオヤジも当選した。これが、重要対決法案での数の力となるのだ。もしかしたら、改憲策動の手駒にもなる。一方、大門実紀史が落選した。有田芳生も落ちた。なんたることだ。

 憂鬱なのは、この選挙結果が改憲策動に結びつきかねないからだ。毎日新聞の夕刊トップに、「改憲4党 93議席」という大見出し。ますます気が重くなる。

 かつては国会に「3分の1の壁」が厳然と聳えていて、保守派にとっての夢である改憲発議を阻んでいた。今その壁が総崩れ目前だ。自・公・維・国が、この壁を穿ち、あわよくば改憲の実現をと虎視眈々の風である。

 とは言え、主戦場は国会の外にある。本当に、民意は改憲を望んでいるのだろうか。たよりげない民意だが、改憲勢力にとっても、けっして頼もしい味方ということではあるまい。しかも、自・公・維・国の改憲案が一致しているわけでもない。今回選挙で示された民意は必ずしも、改憲の民意と重なるものではない。

 いつまでも落ち込んではいられない。明日は、気を取り直そう。

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