澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

おかしくないか。「統一教会との関係は見直すが、国葬の方針は見直さない」

(2022年8月12日)
 以下は官邸ホームページからの抜粋。組閣を終えての首相記者会見の一部。岸田はこう述べている。あるいは、こうとしか述べていない。このことを記憶しておかねばならない。

令和4年8月10日 岸田内閣総理大臣記者会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)

 いわゆる旧統一教会に関連する問題について申し上げます。
 …信教の自由については憲法上保障がなされているものでもあります。しかし、社会的に問題が指摘されている団体との関係については、国民に疑念を持たれるようなことがないよう十分に注意しなければなりません。
 国民の皆さんの疑念を払拭するため、今回の内閣改造に当たり、私から閣僚に対しては、政治家としての責任において、それぞれ当該団体との関係を点検し、その結果を踏まえて厳正に見直すことを言明し、それを了解した者のみを任命いたしました。
 その上で、2点の指示をいたしました。
 第1に、憲法上の信教の自由は尊重しなければなりませんが、宗教団体も社会の一員として関係法令を遵守しなければならないのは当然のことであり、仮に法令から逸脱する行為があれば、厳正に対処すること。
 第2に、法務大臣始め関係大臣においては、悪質商法などの不法行為の相談、被害者の救済に連携して、万全を尽くすこと。これらを岸田政権として徹底し、国民の皆さんから信頼される行政運営を行ってまいります。

 これに対する記者からの質問時間が限られまことに歯がゆかったが、以下の2記者の質問(抜粋)は、国民の疑問を代表するものであった。

(記者)東京新聞・中日新聞の金杉です。旧統一教会の問題についてお聞きします。首相は、この社会的に問題が指摘されるような団体との関係については十分注意しなければならないと発言されました。(しかし、)自民党は党として組織的関係はないとして各議員任せの対応で、党としての全体調査を行わないようですが、世論調査では政界との関わりについて実態解明の必要があるとの答えが8割に上っています。党総裁として、党として調査し検証し実態を解明する考えはありますか。
 そして、選択的夫婦別姓やLGBTへの対応、改憲の内容など、旧統一教会と自民党の考えが重なるとの指摘もあります旧統一教会が自民党の政策に与えた影響についてどう考えますか。
 また、安倍晋三元首相は、旧統一教会の友好団体の会合にビデオで出演し、韓(ハン)総裁に敬意を表していました。この行動は問題があったと思いますか。

(記者)京都新聞の国貞と申します。安倍元総理の国葬についてお伺いします。各報道機関の世論調査などを見ていますと、反対の声というのが比較的多く、半数を超える人が反対というような世論調査もあります。全額公費負担することへの疑問の声も聞かれるわけです。
 なぜ反対の声が一定程度あるのかということについて、総理はどのようにお考えなのかということを一つ聞きたい。
 そして、もう一つ。近年の首相経験者のように内閣と自民党の合同葬にするとか、別の形での葬儀実施について、もう総理には検討の余地はないのでしょうか。

 ここから先は、官邸ホームページに記載されたものではない。岸田も口にしていない。飽くまで、これが岸田のホンネだろうという私の憶測である。が、決して荒唐無稽なものではない。

(岸田総理)
 まず、自民党と旧統一教会との関係については、御指摘のとおり、組織的関係はないという認識を従来から示させていただいています。組織的関係とは、内実の関係と必ずしも一致するものではありませんから、国民の皆様の目には、ズブズブの癒着とみられてもやむを得ないところです。このままでは、内閣支持率は下がるばかり。何とかしなければなりません。とは言え、諸々の事情があって、これまでお世話になりながら、突然失礼なこともできかねますし、それなりの配慮も欠かせないところです。
 そのような観点から、党所属国会議員に対し、政治家としての責任において、当該団体との関係をそれぞれ点検し、その結果も踏まえて適正に見直す、こういった指示を行ったところであります。つまり、「統一教会との関係を断て」ということではなく、飽くまで「適正に見直す」ようにということです。「適正」とは、党や政権に迷惑がかからぬように工夫せよ、用心せよということ。多分それで、今後も統一教会には選挙の折などに貴重な手助けを得ながら、国民の批判をうまく切り抜けられると考えています。
 そして、統一教会の考え方が自民党の政策に影響を及ぼしたのではないか、こういった指摘でありますが、旧統一教会の政策が不当に自民党の政策に影響を与えたとは認識はしておりません。飽くまで、両者が同じ政治的見解を共有していたということなのです。とりわけ、統一教会は「反共」を掲げる点で、岸信介氏や安倍晋三氏と深い同志的関係にあったのですから、統一教会が一方的に自民党に影響を与えたのではなく、相互に思想も政策も深く共鳴し合ってきたものです。選択的夫婦別姓やLGBTへの対応、改憲内容の一致などは、そのような共鳴関係の所産の一部だとご理解ください。
 そして、安倍元総理がビデオメッセージを送ったということにつきましては、公式なコメントはスルーせざるを得ません。そりゃあ、安倍さんまずいことやったに決まっていますよ。でも、その人の国葬をやろうというのですから、まずいことやったなんて言えるはずはない。その点はご了解を。
 敢えていうなら、このメッセージは、当時の安倍元総理が常々考えておられるところを吐露されたものと理解しております。とうてい、統一教会との関係を断ち切れなどということは無理。でも、今後は国民にの皆様にはできるだけ早く忘れていただくよう、手立てを尽くしたい。それが「見直し」の目的であると認識しております。

(岸田総理)
 安倍元総理の国葬儀については、御指摘のようにいろいろな意見があるということ、これは承知をしております。国費からの支出についても御指摘がありましたが、国葬儀の具体的な規模、あるいは内容については、今、正に検討中であります。こうしたものもしっかりと明らかにしながら、今後様々な機会を通じて丁寧に説明を続けていきたい。これが政府の基本的な方針であります。
 ご質問の第一点は、「国民の中の国葬反対の声が大きくなっている理由をどのようにお考えなのか」ということですが、この質問はスルーです。私は都合の悪い質問は聞こえない振りをしてお答えしないことにしています。これもその一つ。
 だってね、答えようがない。「そりゃ、安倍さんの生前の政治姿勢を冷静に国民が思い出してきたからでしょ」なんて言えますか。「安倍さんが銃撃されて亡くなるというその衝撃に乗じての国葬決定」「安倍さんへの批判はしにくい雰囲気の醒めないうちに国葬をやってしまおう」「国民意識の誘導に成功したはずが、思いもかけぬ統一教会問題が批判材料となっての安倍批判」「その安倍批判が、自民党批判や岸田内閣への批判へのとばっちり」なんて口にできるはずがない。だからスルー。
 そして、「国葬ではない別の形での葬儀の実施は検討の余地がないのか」というご質問。
 「国際社会が様々な形で安倍元総理に対する弔意や敬意を示している、こうした状況を踏まえまして、我が国としても故人に対する敬意と弔意を国全体として表す儀式を催し、これを国の公式行事として開催し、その場に各国代表をお招きする、こうした形式で葬儀を行うことが適切であると判断をしたところであります。」
 えっ? 記者さん、これじゃダメですかね。回答になっていないというお顔ですね。でも、時間がありません。今日はこれまで。
 いつか、またの日の、この次の機会に、きっと、できるだけ、丁寧に、しっかりと、ご納得のいくよう、ご説明をさせていただきます。本当に、かならず、この次の機会かまたはその次の機会に、今日ではなく。

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