澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「政治的中立」という名目での政治的偏向

神戸新聞や毎日、そして赤旗が報じている。神戸市が「中立性損なう」という理由で今年5月3日に予定されている「神戸憲法集会」の「後援」要請を拒絶したという。これは、見過ごせない。

後援を求められた「神戸憲法集会」は、50年も継続しているイベントで、神戸市内の労働団体や護憲グループがつくった実行委員会が主催する。地域に根づいた典型的な草の根憲法運動だ。今年は、同市中央区の神戸芸術センターを会場として、メインの企画は内田樹神戸女学院大名誉教授の講演だという。

これまでも、要請して後援を得た実績がある。最近では、1998年と2003年には、同じ集会が神戸市の後援を得ている。ところが今回、実行委員会は昨年12月、市と市教委に後援を申請したが、今年2月に「後援しない」との通知を受けた。申請して拒否されたのははじめてのことのようだ。

市が申請された後援を拒絶した理由が問題だ。「昨今の社会情勢を鑑み、『改憲』『護憲』の政治的主張があり、憲法集会そのものが政治的中立性を損なう可能性がある」というもの。

問題は3点。「昨今の社会情勢」とはいったい何のことか。「『改憲』『護憲』の二つの政治的主張」を同じに扱ってよいのか。そして、「憲法集会そのものが政治的中立性を損なう可能性がある」とは、まことにもって聞き捨てならない。

「昨今の社会情勢」とは、安倍政権下の改憲動向を意味するものであろう。明文改憲の動きが急で、解釈改憲の流れも明確だ。神戸市は、安倍政権の動きだけを見て、天下の形勢が改憲に傾いているとでも思っているのかも知れない。しかし、改憲阻止の動きも活発だ。けっして、昨今の民意の動向が改憲に向かっているわけでも、社会情勢が全体として右傾化してるわけでもない。

現在の神戸市長は元総務省自治行政局長の肩書をもつ人。昨年(2013年)10月に副市長から初当選している。自・公・民の3党に推薦され、選挙戦では麻生太郎や石破茂、菅義偉ら政府・自民党の大物からの応援を得ての「辛勝」と報じられている。今は律儀に、そのご恩返しのときと考えているのかも知れない。

神戸市は、「『改憲』『護憲』の政治的主張があり」と、あたかも「改憲」も「護憲」も同等の政治的主張であるかのごとき扱いをしている。これは許されない。

憲法とは、社会の公的なルールとして最も高次の存在であって、政治権力にはこれを尊重し擁護すべき義務がある。このことを、憲法99条はすべての公務員に対して、「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と定める。神戸市長も市教育委員長も、私人として憲法改正の思想を持つことは自由であるにせよ、公務員として職務を行うに際しては、「日本国憲法を尊重し擁護する義務」を負う。

その場合の「憲法を尊重し擁護する義務」の意味の解釈として、消極的に違憲の行為をしてはならないというだけではなく、憲法の理念の実現に努力すべき積極的義務までを含むものと説かれる。憲法の理念の実現や普及のための「護憲」集会への後援や支援をすることは「憲法を尊重し擁護する義務」に合致するが、現行憲法の理念に反する「改憲」集会への支援は背馳することにならざるを得ない。両者を同等に扱うなど許されようはずはない。

「憲法集会そのものが政治的中立性を損なう可能性がある」との含意は、「護憲集会も政治的中立性を損なうものでありうる。だから、自治体が後援しがたい」というもの。聞き捨てならない。

日本国憲法が制定されたとき、憲法公布の式典が貴族院本会議場で行われ、また、宮城前広場で、天皇まで出てきて新憲法公布記念祝賀都民大会も行われている。政府も、最初は憲法記念日を祝賀したのだ。長期保守政権が、憲法を邪魔者扱いするようになると、政府や自治体の祝賀行事は消えた。祝賀行事を主催しないことが、十分に政治的な意思表示なのだ。

そして神戸市は、草の根憲法運動が主催する市民集会の後援も拒絶するという。形式的な「政治的中立」をカムフラージュとした、憲法への憎悪の表明である。

かつて、青年法律家協会に所属した裁判官が数多く輩出した時代があった。最高裁の司法行政当局は、全力を上げて彼らを青法協から脱退させることに成功した。これを当時、レッドパージをもじって「ブルーパージ」と称した。そのときに持ち出された「理屈」が、裁判官としての公正性や政治的中立性であり、それへの国民の信頼であった。

青法協裁判官が、党派的な政治性をもっていた事実はない。むしろ、保守的な政治勢力や反憲法的司法行政の圧力から裁判官の独立を守ろうとし、支え合って憲法に忠実な裁判を志向しただけのことである。まさしく、その姿勢自体が当時の司法行政当局にとって思わしいものではなかった。当時の司法行政当局を使嗾していた保守勢力にとってはなおさらのことであった。

「裁判官としての公正性や政治的中立性」の強調は、実は保守政権や行政の意向を尊重せよ、というメッセージだった。神戸市の「政治的中立性の尊重」はまったく同様に、改憲勢力への政治的迎合のメッセージなのだ。「政治的中立」を称した、その実極めて党派性に偏した意思表明にほかならない。

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NHK籾井会長、百田・長谷川両経営委員の辞任・罷免を求める署名運動へのご協力のお願い

下記URLからどうぞ
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-3030-1.html
http://chn.ge/1eySG24
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    NHKに対する「安倍首相お友だち人事」への抗議を
☆抗議先は以下のとおり
 ※郵便の場合
  〒150-8001(住所記入不要)NHK放送センター ハートプラザ行
 ※電話の場合 0570?066?066(NHKふれあいセンター)
 ※ファクスの場合 03?5453?4000
 ※メールの場合 下記URLに送信書式のフォーマット
    http://www.nhk.or.jp/css/goiken/mail.html
☆抗議内容の大綱は
  *籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
  *経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
  *百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
  *経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任勧告せよ。
以上よろしくお願いします。
(2014年3月13日)

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Published in 木曜日, 3月 13th, 2014, at 22:01, and filed under 未分類.

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