自民党さん、二枚舌はいけません
霊長類ヒト科ヒトの舌は1枚であって、2枚はない。ところが、永田町類保守科自民党には、二枚の舌がある。いや、もしかしたら3枚も4枚もあるのかも知れない。
舌の枚数問題は、臨時国会の開催をめぐる論争において生じている。去る10月21日、民主、維新、共産、社民、生活の野党5党が、憲法53条にもとづいて、臨時国会召集を要求する手続きを衆参両院で行った。あれから、既に20日を経過した。しかし、政府・与党に、臨時国会を開催しようという意欲はまったく見られない。憲法に規定されている内閣の義務だから「ノー」と明確には言えない。「時期の定めがないから」と、のらりくらり「日程調整中」を決めこんでの20日間。自民党と政権の思惑は、「国会開催しても、なんの得にもならない。『3本の矢』どころではなく、無数の槍衾の餌食になりかねない。それなら、36計逃ぐるに如かず」というところ。
朝日新聞が痺れを切らして、本日(11月12日)の社説に「国会召集要求 逃げ切りは許されない」と書いた。「逃げ切り許さず」は言い得て妙。明らかに自民党は逃げまくっている。今のままなら、逃げたことによる世論の風当たりを甘受しても、逃げ切った方が得だ。国会を開いて野党の追及を受けてつく傷よりも、浅い傷で済む。そう、読んでいるわけだ。
昨日の毎日新聞社説は、「閉会中の予算委 たった2日の論戦では」と標題し、「2日間で「野党のガスを抜いた」とばかりに済ませるわけにはいかない。TPP、沖縄基地問題など議論を急ぐべき課題は多い。国会召集に政府が応じざるを得なくなるような活発な提言を野党にも求めたい。」と述べている。
私が20日間にこだわるのは、自民党「日本国憲法改正草案」(2012年4月27日)の53条改正案に「20日以内の招集」と期限が明記されているからだ。
改めて、現行53条と、自民党草案を比較してみよう。
《日本国憲法》
第53条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
《自民党改憲草案》
第53条 内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。
この改憲案の公式解説である「Q&A」は、次のとおりに述べている。
「53条は、臨時国会についての規定です。現行憲法では、いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならないことになっていますが、臨時国会の召集期限については規定がなかったので、今回の草案では、『要求があった日から20日以内に臨時国会が召集されなければならない』と、規定しました。
党内議論の中では、『少数会派の乱用が心配ではないか』との意見もありましたが、『臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然である』という意見が、大勢でした。」
とある。
「臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然」「だから、野党の請求があれば、20日以内に臨時国会を召集する」。全体としては、メチャメチャに評判の悪い改憲愚案だが、ここだけは立派な見識ではないか。ところが、これは自民党の「1枚目の舌」に過ぎないのだ。
2枚目の舌が、安倍晋三のいう、「外交日程、予算の策定、税制についての議論を勘案しつつ、様々な検討を行っている」としゃべる舌。様々な検討を行っているうちに、既に20日は過ぎた。なんとか逃げ切れそうだというもの。
残念だったね自民党。やせ我慢で、自ら提案の20日ルールを遵守していれば、世の中から見直されたのに。やっぱり、自民党は自民党、安倍は安倍。自民党感じ悪いよねー。
立派な舌を看板に、看板に偽りありの二枚目の舌。こんな使い分けをしているうちは、自民党さん、あなたの言うこと、到底信用できません。
(2015年11月12日・連続第957回)