澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「9・18」を忘れてはならない―謀略によって侵略を開始した日本こそ

本日の朝刊各紙は、9月28日臨時国会での冒頭解散が確定したごとくの報道。政権の総選挙の投開票が10月22日だろうという。官邸のリークが紙上におどっているのだ。官邸は、その反応を見ているのだろう。

実に腹立たしい。冒頭解散はあり得ない。ちがうだろうー、アベ晋三よ。森友学園問題も、加計学園疑惑も、ほかならぬ汝と汝の妻のしでかしたことではないか。二人揃って疑惑を釈明の責任がある。二人揃って謝罪をし引責しなければならない。

「丁寧にする」との国民に対する説明の約束。またも引き延ばしておいて反故にするのか。もうそろそろ忘れたころだろうとほっかむり。いつもの手口で、夫婦への共同責任追及を解散総選挙で逃げ切ろうとの魂胆丸見え。国民もなめられたものだ。

疑惑隠し解散、頬被り解散、敵前逃亡解散、ずる逃げ解散、海苔弁解散、もりかけ解散、党利党略解散、私利私略解散、自己保身解散、しめたこのタイミング解散、抜け駆け解散、火事場泥棒解散、人の弱みに付け込み解散、因循姑息解散、卑怯破廉恥解散、奸佞悪辣解散…ではないか。

ところで、本日は9月18日。敬老の日でもあるが、柳条湖事件勃発の日。
86年前になる1931年9月18日深夜、奉天(現審陽)近郊柳条湖で起きた南満州鉄道「爆破」事件が、足かけ15年に及んだ日中戦争のきっかけとなった。後に爆破は日本軍自らが仕組んだ謀略であることが明らかになったが、関東軍はこれを中国軍の仕業と喧伝し、奉天を占領してさらに満州(現東北三省)全土への軍事侵攻の口実にした。

こうして、事件は、満州事変となり、翌32年3月には傀儡国家「満州国」の建国が強行され、国際連盟リットン調査団の報告を経て、33年2月日本の国際連盟脱退に至る。傍若無人の振る舞いの結果、軍国日本が敗戦によって壊滅する、そのきっかけの日となったのが、「9・18」である。

何年か前、この事件の現場を訪れたことがある。事件を記念する歴史博物館の構造が、日めくりカレンダーをかたどったものになっており、「九・一八」の日付の巨大な日めくりに、「勿忘国恥」(国恥を忘ることなかれ)と刻み込まれていた。侵略された側が「国恥」という。侵略した側は、この日をさらに深刻な「恥ずべき日」として記憶しなければならない。

「9・18」を、中国語で発音すると、「チュー・イーパー」となる。何とも悲しげな響き。その博物館で、「チュー・イーパー」という歌を聴いた。もの悲しい曲調に聞こえた。中国の国歌は、義勇軍進行曲と名付けられている。作詞田漢、作曲聶耳として名高く、「起来!起来!起来!」(チライ・チライ・チライ=立ち上がれ)と繰り返される勇猛な曲。「チュー・イーパー」の曲は、およそ正反対のメロディだった。

柳条湖事件は関東軍自作自演の周到な謀略であったが、満州侵略を熱狂的に支持する「民意」があればこその「成功」であった。世論は、幣原喜重郎外相の軟弱外交非難の一色だった。「満蒙は日本の生命線」「暴支膺懲」のスローガンは、当時既に人心をとらえていたのだ。「中国になめられるな」「満州の権益を日本の手に」「これで景気が上向く」というのが圧倒的な世論。真実の報道と冷静な評論が禁圧されるなかで、軍部が国民を煽り、煽られた国民が政府の弱腰を非難する。そのような、巨大な負のスパイラルが、1945年の敗戦まで続くことになる。

今の世はどうだろうか。極右安倍晋三が政権を掌握し、極右政治家が閣僚に名を連ねている。自民党は改憲草案を公表して、国防軍を創設し、天皇を元首としようとしている。ヘイトスピーチが横行し、歴史修正主義派の教科書の採択が現実のものとなり、学校現場での日の丸・君が代の強制はすでに定着化しつつある。秘密保護法、戦争法、さらに共謀罪までが成立した。

北朝鮮脅威論が過剰に喧伝されてはいないだろうか。偏狭なナショナリズム復活の兆し、朝鮮や中国への敵視策、嫌悪感‥、1930年代もこうではなかったのかと思わせる。巨大な負のスパイラルが、回り始めてはいないか。

今日「9月18日」は、戦争の愚かさと悲惨さを思い起こすべき日。軽々に政権の扇動に乗せられてはならないと、自らを戒めるべき日。心して、隣国との友好を深めよう。過剰なナショナリズムを警戒しよう。今ある表現の自由を大切にすることで、権力への抵抗を心がけよう。まともな政党政治を取り戻そう。冷静に理性を研ぎ澄まし、極右勢力の煽動を警戒しよう。そして、くれぐれもあの時代を再び繰り返さないように、まず心ある人々が手をつなぎ、力を合わせよう。疑惑隠し解散に負けてはおられない。
(2017年9月18日)

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Published in 月曜日, 9月 18th, 2017, at 21:47, and filed under 中国, 安倍政権, 歴史認識.

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