衆院特別委員会は、特定秘密保護法案を徹底審議せよ
国会における公聴会は、国会法51条の「委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験者等から意見を聴くことができる。」という規定に基づいて開かれる。いうまでもなく、「真に利害関係を有する」国民の声に耳を傾け、国民の意見を審議に反映させる目的で行われる。聞きっぱなしは主権者に対する冒涜である。公聴会を開いたからには、陳述された意見を審議に反映させなければならない。「意見は聞いてやった」「だから、もう採決だ」などという傲慢無礼が許されるはずがない。
特定秘密保護法案を審議している衆院の国家安全保障特別委員会の地方公聴会が本日(25日)、福島市で開かれた。自民党の推薦者(浪江町長)を含む7人の意見陳述者全員が法案に反対したという。これはまた、思いがけない展開。到底、採決の強行などできるわけがない。
本日の公聴会プログラムは以下のとおり。
<プログラム>
*額賀団長あいさつ
*[意見陳述者の意見陳述(各10分、計1時間10分/陳述順)]
馬場有(浪江町長)
槇裕康(福島弁護士会副会長)
二瓶由美子(桜の聖母短期大学キャリア教養学科教授)
名嘉幸照(株式会社東北エンタープライズ会長)
畠中信義(いわき短期大学と特任教授)
荒木貢(弁護士)
佐藤和良(いわき市議会議員)
*[意見陳述者に対する質疑(各15分、計1時間45分)]
今津寛 (自民)
近藤昭一 (民主)
丸山穂高 (維新)
遠山清彦 (公明)
畠中光成 (みんな)
赤嶺政賢 (共産)
玉城デニー(生活)
朝日による各意見陳述者の意見要約は以下のとおりである。
☆馬場有(たもつ)・福島県浪江町長
(東京電力福島第一原発事故の際)SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報が適切に公開されなくて、町民の避難に生かせなかった。法案は(特定秘密の)範囲が非常に広くて明確ではない。秘密にするのではなく情報公開をすることが一番大切だ。現在の状況を見ると、慎重な対応をしながら十分に国民のために論議を尽くすことが大切だ。
☆槇(まき)裕康・福島県弁護士会副会長
何を秘密にするかわからない仕組みなので、秘密は拡大の一途をたどる。事故が起きれば「原発に関連する情報は特定秘密にあたる可能性がある」と情報を持っている当事者が考え、萎縮効果により、適切に開示されない恐れが十分ある。事故の教訓に鑑み、特定秘密を指定し重要な情報を秘匿する方向ではなく、情報公開を積極的に進める法制度が重要だ。
☆二瓶由美子・桜の聖母短大教授
短大生と震災を経験し、ここで若い女性たちを教育してよいのか思い悩む日々だ。この状況で何より求めるのは情報の公開だ。法案で特定秘密の指定の拡大が危惧される。パブリックコメントは77%が反対だった。法案はストップをかけてください。民主主義を揺るがす今回の手続きについてはもう1度考えていただきたい。
☆名嘉(なか)幸照・東北エンタープライズ会長
現場の技術者として福島第一、第二原発に携わってきた。原発労働者は安全性を知る立場にあっても、家族でも話せない。そういう環境が長年続いた。原子力の安全神話を生み、取り返しのつかない事故につながった。国会の皆さん、福島を忘れないで下さい。
☆畠中信義・いわき短大特任教授
確かに国防や外交は政府の専権事項だが、国民が知らずして「秘密、秘密、秘密」で秘匿されれば、どうやって公益を図れるのか。それが一番の問題だ。
☆荒木貢・弁護士
法案が通れば、原発問題まで軒並み秘密指定される可能性が高い。国民は何が特定秘密として指定されているのかされていないのか知り得ない。法に抵触するとなれば厳罰を免れず、恐怖心は萎縮効果をもたらす。全国の多数の国民が反対している。私も断固反対だ。
☆佐藤和良・福島県いわき市議
原発に関する情報が特定秘密として秘匿され、市民の安全に関わる情報が非公開になると、国民の基本的人権を侵害する結果を生む。反対、廃案を求めるのが国民の圧倒的な声だ。慎重の上にも慎重に審議を重ね、全国で公聴会を開催し、国民の声を聴いて頂きたい。
以上の陳述は、まさしく「真に利害関係を有する」国民の声ではないか。委員会は、原発被害を受け、さらに国の情報秘匿による2次被害を受けた福島の深刻な声に耳を傾けなくてはならない。すべての意見陳述者が、情報隠しによる具体的な被害を指摘し、秘密の保護ではなく、積極的な情報開示の必要性を語っているではないか。地方公聴会の制度を設けた趣旨に、この上なくふさわしい公聴会のこの成果を審議にどう生かすべきか、そもそも廃案にすべきではないのか。誠実にその審議を続けなければならない。
自民党は、福島県内の地方選挙で負け続けていることを肝に銘じなければならない。本当に、地元の声に耳を傾ける姿勢のないことを見すかされているのだ。ここで、地元の声ををないがしろにするようなことがあったら、全国の国民に見放される。自民党よ、そして修正協議に応じて、稀代の悪法作りに手を貸している「公・み・維」の翼賛野党よ。国民を舐めてはならない。甘く見ると、たいへんなことになるぞ。
本日の公聴会は、原発に関する情報が特定秘密に指定されることにより、国民生活に具体的な危険が生じるという懸念があって、福島での開催となった。もちろん、「知る権利」が侵害されるという懸念についても、初めて有識者でない国民の生の声を聞いたことになる。その全員が、具体的に懸念を裏付ける意見陳述をしたのだ。委員会は、この国民の懸念を払拭する具体的な措置をとらねばならない。それをせずに、やみくもに採決強行では、形式的に意見を聞いたという「アリバイ作りだ」との批判を受けざるを得ない。
当然といえば当然だが、批判一色となった地方公聴会を伝える各メディアの報道も、この法案への批判色を強めている。
本日、本郷三丁目交差点での昼休み宣伝行動には、16人にご参加いただいた。手作りプラカードを各自の胸に、賑々しくやった。明日の昼休みにも同じことをやる。
全国の辻々で、抗議の声よ、巻き起これ。
(2013年11月25日)