澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

汲むべき教訓に満ちた、「お粗末極まる反共主義」の跋扈

(2022年2月15日)
 昨年暮の12月22日、自民党は今夏の第26回参院選・岩手県選挙区公認予定候補を決定した。広瀬めぐみという新人、第二東京弁護士会所属の弁護士だというが、まったく無名の人。何者であるか知られていないし、もちろん私も知らない。
 
 この人、はからずも自らのツイートで、自分が何者であるかを自己紹介するところとなった。正確に言えば、2月4日朝のツィートの内容と、その日の夕刻のツィート削除によってである。

 2月10日の赤旗に、要旨以下の記事が載っている。
 「自民候補 共産党に中傷ツイート」「『まず綱領を読んで』党県委の批判文に反響」という見出し。赤旗が紹介する「共産党に対する中傷」の内容は、
 「個人の資本を否定する共産党」
 「自分や他人が稼いだものすべてを党が管理し、分配する共産主義」
 「本質は個人の自由を認めない共産主義」
というもの。

 「共産党員から『まず綱領を読むべきでは』と批判されると、『拝見します』と返事をしたものの、4日夜には全文を削除し」たそうだ。

 この人、悪い人ではなさそう。でも、軽率で、およそ社会科学の素養に欠ける人。軽々に自信のないことを発言して、叩かれると直ぐに引っ込める。朝令暮改を地で行く自民党岸田政権の候補者としては、まことにふさわしいのかも知れない。

 日本共産党岩手県委員会の抗議文は、「党の綱領は、社会発展のあらゆる段階を通じて生活手段としての私的財産が保障されると明記」「共産党がめざす社会主義・共産主義は、人間の自由と全面的な発展が保障される社会」だと強調。「戦前の絶対主義的天皇制の下で平和と民主主義を掲げて不屈にたたかい、戦後も同じ党名で活動することができ、今年で創立100周年を迎える」というもの。この岩手の自民党候補、初めて耳にしたのではないか。

 この人が言う「個人の資本を否定する共産党」とは、「共産主義社会=私有財産制の否定」「共産主義=資本主義の否定」という、どこかで聞きかじったフレーズがごちゃまぜになってのわけの分からぬ文章。共産主義は生産手段の社会化を目指すものではあるが、消費生活に必要な財貨の私有化を否定するような愚を犯すものではない。

 「自分や他人が稼いだものすべてを党が管理し、分配する共産主義」とは、何を根拠とした妄想であろうか。この予定候補者、4年制大学の出身者で弁護士であるというが、ギラつく反共意識だけの人で、知性のかけらもない。慎重にものを言う姿勢もなければ、弱者に対する優しさも感じさせない。

 「本質は個人の自由を認めない共産主義」は、陳腐な反共スローガンだが、無内容。「共産主義の本質}をこう語るからには、その根拠を示す責任があろう。

 ところで、この件はいくつもの教訓に満ちている。

 大学教育を受けた者の知的水準の低下を思い知らされる。
 司法試験の合否は社会科学の素養や理解とはまったく無縁なのだ。
 こんな程度の人物が自民党の候補者になり、もしかしたら議員にもなる。恐るべきことではないか。
 「反共」とは、この程度の底の浅いものなのだ。
 深刻なのは、わけも分からずに「反共」を叫ぶのは、それが集票効果をもつと思わせる状況があるからだ。
 本来の社会主義・共産主義は、人間の解放を目指した思想であり運動である。なによりも、この社会において貧困や格差に苦しむ人々の寄るべきもの。
 だから、「反共」は、支配体制の宣伝による反知性の所産。おそらくは、スターリニズムや中国共産党の専制支配の悪影響なのだろうが、これが功を奏する現状を嘆かざるを得ない。
 しかし、歴史が教えるとおり、反共は、平和や人権や民主主義を擁護する運動の破壊物である。そのことを知らしめなければならない。このお粗末な岩手の候補者にも。

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