安倍政権の「戦争する国づくり」にノーの審判をー法律家6団体共同声明
月が変わって今日から師走。いよいよ明日(12月2日)が、師走総選挙の公示日となった。大日本帝国憲法時代の衆議院議員選挙から回数を数えて、今回が第47回の総選挙。12月14日投票日までの一大政治戦が始まる。国政選挙が重大でないことはあり得ないが、今回総選挙はいつにもまして国民の命運に大きな影響をもたらすものとなりそう。
最大の争点は、安倍政権への国民の審判。「安倍政権延命を許すのか阻止するのか」にある。安倍晋三は、自ら「私を右翼の軍国主義者と呼びたいなら呼んでいただきたい」と言う危険人物。安倍政権は、これまでの保守政権とは明らかに次元を異にする。国家主義、軍国主義、非民主、反福祉、そしてあからさまな歴史修正主義、改憲・壊憲派なのだ。
昨日の毎日に保阪正康が、「政治の劣化止めよ」とタイトルして、こう述べている。
「数年前から事実を都合いいようにつなぎ合わせて日本の侵略行為を否定する歴史修正主義者が現れ、実証的に歴史を研究してきた人々を批判している。今は空気、雰囲気、感性が社会を動かしている。その時代に合っているからこそ、安倍晋三首相は高い支持率を得ている。」
「個々の議員が、危うい空気を是としない覚悟を持つべきなのに、実態は逆になっている。これでは政治家の質が劣化していくばかりだ。政治の劣化は、国民の劣化を意味している。ファシズムとは社会が劣化して加速する現象だ。日本は危うい道を歩み始めていると感じている。」
傾聴に値すると思う。安倍政権の存在そのものが政治の劣化を意味する。また、それは国民の劣化でもあり、さらにはその延命はファシズムへの危険の道でもある。
私は、安倍政権と対決する今回の選挙の論争テーマを4分野に整理している。
政治(集団的自衛権、秘密保護法、靖国、近隣外交、沖縄、改憲…)
経済(格差貧困、消費税、雇用、福祉、年金、地方、中小企業…)
原発(原発ゼロ・再稼働阻止・被災地復興支援・エネルギー政策…)
首相の個性(無責任、虚言、歴史修正主義、反知性、右翼的感性…)
「政治」とは、憲法への姿勢と安保・防衛問題、「経済」とはアベノミクス問題、「原発」は特別の緊急課題、そして一国のリーダーとしての安倍晋三の資質を問題にしなければならない。
論争の軸は、かつての保守か革新かではない。旧来の保守も含めた戦後民主主義の擁護か、国家主義・軍国主義・新自由主義の路線かの争いである。
本日、法律家6団体が総選挙に当たって「戦争する国づくりにノーの審判を下すことを呼びかける共同声明」を発表し、共同記者会見の後、この声明を持参して各党に要請行動を行った。私の問題意識とほとんど齟齬がない。容易には実現しない、せっかくの共同声明である。その全文を披露しておきたい。
性格も歴史も違う各法律家団体が、共通の理念としているのは、特定秘密保護法や、集団的自衛権行使容認、そして明文改憲の動きについての反対の立場。経済政策や原発問題への言及はないが、憲法の平和主義に関わる安全保障政策については法律家の常識として明確に反対の立場で一致した。その意味は小さくないと思う。
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衆議院の解散・総選挙にあたって, 安倍政権の「戦争する国づくり」に ノーの審判を下すことを呼びかける法律家6団体共同声明
1 大義なき,政権延命策解散
安倍政権は、11月21日、衆議院を解散し、その後の臨時閣議で12月2日公示、12月14日投票の日程で総選挙を実施することを決定した。
今回の衆議院解散は、アベノミクスの失敗や「政治とカネ」の問題から国民の目をそらし、野党の選挙準備が整わないうちに選挙を行って過半数を獲得しようという意図のもとになされたものであり、政権の延命を図るという私利私欲・党利党略のために行われた大義なき解散である。
同時に、安倍政権がこの時期に解散・総選挙に踏み切らざるを得なかったのは、特定秘密保護法の強行や集団的自衛権行使容認の閣議決定、原発再稼働、TPP交渉への参加、消費増税など、民意を無視し、憲法を破壊し、国民の命と暮らしを蔑ろにする安倍政権の暴走に対する国民の強い怒りと批判が広がったからにほかならない。これに追い打ちをかけたのが沖縄県知事選挙である。11月16日に実施された沖縄県知事選挙では、現職の仲井真弘多氏が名護市辺野古への新基地建設に反対する翁長雄志氏に歴史的大敗を喫し、新基地建設を強引に押し進めようとする安倍政権への抗議の県民意思が明確に示されたのである。その意味では世論と運動とによって安倍政権の側が追い込まれた解散・総選挙である。
2 秘密保護法の強行採決・集団的自衛権行使容認閣議決定 問われる「戦争する国づくり」
今回の総選挙によって問われるべきは安倍政権の「戦争する国づくり」である。
安倍政権は、2012年12月の第二次政権の発足以来、「戦争する国づくり」に邁進している。安倍政権は、7月1日に立憲主義を踏みにじって「集団的自衛権」の行使を容認するよう憲法解釈を変える閣議決定を行った。集団的自衛権は、日本が武力攻撃をされてないにもかかわらず、アメリカなどの他国のために戦争することを意味するものである。集団的自衛権の行使を認める閣議決定が、戦争を放棄し、陸海空軍を持たないとした憲法9条に違反することは明らかである。まさに違憲の閣議決定というほかない。
日本は、アジア諸国民2000万人、日本人310万人の尊い命を失った侵略戦争の悲惨な経験から、二度と同じ過ちを犯さないと決意し、不戦の誓いをもって戦後の国際社会に復帰したのである。この不戦の誓いに立つ憲法9条の下、日本は、戦後70年近くにわたって、海外での武力行使を許さない立場を堅持してきた。集団的自衛権の行使を容認する閣議決定は、こうした70年の年月をかけて培ってきた平和国家としての日本の国のあり方を根本から変える暴挙である。
安倍政権は、本閣議決定に先立ち、権力が情報を独占し、国民から知る権利を奪う稀代の悪法である特定秘密保護法を強行採決し、日本の安全保障政策を一部の権力者で秘密裏に決定しうる「日本版NSC」を設置し、武器輸出三原則の破棄等を行い、さらには、初めて国家安全保障戦略を策定し、新防衛大綱や中期防衛計画において軍拡路線をあからさまにしている。
安倍政権の一連の政策は、まさに平和主義を投げ捨て、憲法9条を空文化し、日本をアメリカと一緒に戦争する国にしようとするものにほかならない。
3 岐路に立つ日本 平和と自由と民主主義を堅持する国民の意思を示すとき今回の総選挙は、安倍政権の改憲・壊憲政策による戦争への道を突き進むのか、それとも、戦後70年近くをかけて積み上げてきた日本国憲法が示す平和国家の道を堅持し、深化させるのか、国民の選択が迫られている。今、日本は岐路に立たされている。今こそ、日本と世界の未来のために平和国家としての道を歩み続けることを願う国民の意思を示す時である。
私たち法律家6団体は、安倍政権による憲法破壊の「戦争する国づくり」が日本と世界の未来にとって重大な禍根を残すものであること強く訴え、日本の進路が問われる今回の総選挙で、国民が選挙権を行使し、安倍政権の「戦争する国づくり」にノーの審判を下すことを呼びかけるとともに、集団的自衛権の行使容認の動きと、憲法9条の意義を掘り崩すあらゆる動きに対して反対していくこと、とりわけ集団的自衛権行使容認を閣議決定で強行したことに強く抗議し、平和・自由・民主主義の擁護のために全力を尽くすことを、ここに表明するものである。
2014年12月1日
社会文化法律センター 代表理事 宮 里 邦 雄
自 由 法 曹 団 団 長 荒 井 新 二
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議 長 原 和 良
日本国際法律家協会 会 長 大 熊 政 一
日本反核法律家協会 会 長 佐 々 木 猛 也
日本民主法律家協会 理事長 森 英 樹
(2014年12月1日)