アベ政権の検察庁法改悪案審議強行は火事場泥棒という最大級の非難を受けているが、コロナ禍のドサクサは日本だけのものではない。大きな抗議行動が困難なこの時期だからこそ今がチャンスという火事場泥棒はアベだけではない。香港の事態がまことにアベ政権並みなのだ。
逃亡犯条例案の香港議会への提案は、香港市民を中国の刑事司法のイケニエにするものとして猛反発を受け撤回を余儀なくされた。しかし、問題はこれだけではない。中国の対香港支配実効性を強化しようというもう一つの法案、中国国歌への侮辱行為を禁じる「国歌条例案」の審議が強行されつつある。火事場泥棒との非難を甘受せざるを得ない点において、アベ政権と習近平政権、まことに相い似て、相い親しいのだ。
世界の関心がコロナ禍に集中している。香港でも市民が路上に出にくい。しかも、中国のコロナ禍は小康を得ている。今がチャンス、このドサクサに紛れて、市民の反対運動が大きくならないうちに急いで法案を通してしまえ、と考えたのだ。まさしくアベ政権の発想である。
「国歌条例」の国歌とは、言うまでもなく中華人民共和国国歌のこと。抗日戦争のさなかに作られた聖なる民族独立の歌、である。「チライ!(起来=立ち上がれ)」で始まる勇壮な「義勇軍行進曲」。暴虐な帝国日本による侵略の困苦の中にある中国人民に、「奴隷となるな人々よ」「砲火に負けず、勇敢に闘おう」と呼びかける歌詞。学生時代、この歌に文句なく感動した。今もその思いは消えていない。
その感動は、傲慢な侵略者から人間の尊厳を守るために、団結して立ち向かおうという中国人民の精神と行動の崇高さに対する敬意であった。その憎むべき侵略者とは帝国日本にほかならない。
しかし、今、この歌の神聖性の尊重を香港市民に強制しようというの中国の姿勢は、まことに皮肉というほかはない。この歌の精神はいま香港市民の側にある。抵抗する香港市民を制圧しようというのが、習近平体制の中華人民共和国にほかならないのだから。
中国は2017年9月1日に「中華人民共和国国歌法」を制定、同年10月1日の国慶節を施行日とした。この法には、「国歌を演奏・歌唱する時は、その場にいる者は起立しなければならず、国歌を尊重しない行為をしてはならない。」「公共の場で故意に国歌の歌詞や曲を改ざんして国歌の演奏・歌唱を歪曲、毀損した、あるいはその他の形で国歌を侮辱した場合は、公安機関による警告あるいは15日以下の拘留とする」などの刑事罰をともなう強制条項がある。
予てから香港では、中国に反発する若者らがサッカーの国際試合などで中国国歌の斉唱を促されるとブーイングで抗議する行為が相次いでいた。これに対して、中国からの指示で、中国国歌への侮辱行為を禁じる「国歌条例案」が、立法会(議会)に上程されている。違反行為には、最高刑は禁錮3年という信じがたい法案。
報道によれば、「中国政府 香港マカオ事務弁公室」⇒香港政府⇒親中派政党・「民主建港協進聯盟(民建聯)」という指示ルートによるようである。日本では、自公が議会内では圧倒的な勢力を占めて、火事場泥棒の手先となっている。いびつな選挙制度で民意を反映しない香港の議会(定数70)も同じこと。世論の支持のない「親中派」(40議席)が、数の上では多数派で「民主派」(26議席)を圧倒している。
日本で、検察庁法改正案の審議が野党議員欠席のまま強行された5月8日、香港議会でも、親中派の審議強行に民主派が抵抗して大荒れとなった。
時事の伝えるところでは、「親中派議員による議事進行に民主派議員が激しく反発し、議場で両派がもみ合うなど大荒れとなった。中国国歌への侮辱行為を禁じる「国歌条例」成立へ向け、親中派が審議を加速させようとしており、対立が深まっている。」「条例案を検討する内務委員会が開かれたが、民主派議員が委員長席に詰め寄ってプラカードを掲げるなどして議事を妨害。複数の議員が強制退場させられ、衝突で転倒する議員も出た。」という。これによって、香港では再び中国や政府に対する市民の抗議活動が盛んとなる模様なのだ。
国民に愛国心を強制しなければならない国家とは、国民から見て魅力に乏しいまことにみじめな国家である。国民からの信頼が乏しく、国家としての存在が脆弱なのだ。中国は愛国心の強要という姑息なことをやめ、大国の風格を示すがよろしかろう。
なお、香港議会での次の「国歌条例」審議日程は、5月27日(水)だという。
(2020年5月16日)
本日(5月15日)元検察トップ14氏が連名で、法務大臣宛に提出した話題の意見書。下記URLで全文が読める。
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20200515002893.html
一読して驚いた。わくわくするような躍動感あふれる語り口で、感動的ですらある。よく練れた文章で、具体的なエピソードにも富み、とても読みやすい。法の支配や立憲主義、権力分立などの理念を大切にしようという真摯さに溢れている。検察官の政権からの独立を大切なものと訴えながら、検察独善とならぬよう戒めてもいる。これは素晴らしい。
とは言え、かなりの長文である。まずは、私の抜粋(4パラグラフ)から、お読みいただくのが、楽だろう。
まずは、結論部分は以下のとおりである。この文書は、形式上14氏が作成した「法務大臣宛意見書」だが、実は全国民に宛てた檄文でもあるのだ。そのような趣旨として、私たちはこの意見書を受けとめなければならないと思う。
正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。
黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ないものである。関係者がこの検察庁法改正の問題を賢察され、内閣が潔くこの改正法案中、検察幹部の定年延長を認める規定は撤回することを期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出ることを期待してやまない。
なんという直截で飾らない訴えであろうか。「検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動き」を看過してはならないという。そんなことを許せば、私たちの国家社会は、正しいことが正しく行われる社会ではなくなってしまう。内閣が法案を撤回すればよし、さもなくば「多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出る」べきだと言うのだ。この悲痛な声が、かつて検察幹部だった人たちから発せられているのだ。
今、検察制度に関して、国民の眼前に大きな二つの問題がある。その一つは、黒川検事長定年延長の閣議決定である。この閣議決定について意見書は、法的根拠ないものと断じている。
この閣議決定による黒川氏の定年延長は検察庁法に基づかないものであり、黒川氏の留任には法的根拠はない。この点については、日弁連会長以下全国35を超える弁護士会の会長が反対声明を出したが、内閣はこの閣議決定を撤回せず、黒川氏の定年を超えての留任という異常な状態が現在も続いている。
そして、もう一つの問題が、黒川検事長定年延長合法化に端を発した検察庁法改正問題である。改正法案の検察官定年延長導入について、意見書はこう言う。
注意すべきは、この規定は内閣の裁量で次長検事および検事長の定年延長を可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである。これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。検察庁法は、組織の長に事故があるときまたは欠けたときに備えて臨時職務代行の制度(同法13条)を設けており、定年延長によって対応することは毫(ごう)も想定していなかったし、これからも同様であろうと思われる。
今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる。
まことに明快で、分かり易い。では、「検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め」ようという法案が、どうして提案されるに至っているのだろうか。その背景事情について、意見書はこう述べている。
本年2月13日衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕(ちん)は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)させるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。
時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。
これも分かり易い。確かに、アベ政権には「朕は国家である」と口にした亡霊が憑依している。立憲主義も、三権分立も、法の支配も、まったく理解していないのだ。意見書は、「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告を発している。この文脈での「法の終わり」は、《黒川検事長の違法留任の放置》と《検察の人事に政治権力介入を許容する仕掛けの定年制導入》である。このアベ政権の法の無視を許せば、いよいよ本格的な「アベの暴政が始まる」ことになりかねない。「検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出る」しかないではないか。
(2020年5月15日)
本日(5月14日)午後の朝日デジタルの記事。「検察OB有志も改正案に反対 元検事総長ら意見書提出へ」という。
これは、凄いことになった。与党は何が何でも明日15日(金)に委員会強行採決の方針と報じられていたが、まことにグッドタイミング。これでは強行採決などできるはずがない。
政府の判断で検察幹部の定年を延長できるようにする検察庁法改正案について、松尾邦弘・元検事総長(77)ら検察OB有志が、改正に反対する意見書を15日に法務省に提出することがわかった。意見書は、田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件の捜査経験者を中心に十数人の連名になる見込み。同省に提出した後、都内で記者会見する。
改正案では、検事総長や高検の検事長ら検察幹部が定年に達しても、政府の判断で職務を延長することができると規定。国会審議では、野党から「検察の中立性や独立性を損なう」との批判が出ているが、与党は週内の衆院通過をめざしている。
「意見書に名を連ねる十数人」が誰なのかは分からない。しかし、意見書の内容は、ほぼ見当がつく。検察の業務は国民の信頼がなければ成り立たない。政府に幹部人事を握られては、検察に対する国民の信頼が崩壊することにならざるを得ない。そのことを恐れての「改正案に反対」となるのだろう。
今朝の朝日には、検察OBの長老・堀田力さんの「信頼に傷、総長も黒川検事長も「『辞職せよ』」の記事。ずいぶんと思い切った発言となっている。
「検察幹部を政府の裁量で定年延長させる真の狙いは、与党の政治家の不正を追及させないため以外に考えられません。東京高検の黒川弘務検事長の定年を延長した理由に、政府は『重大かつ複雑困難な事件の捜査・公判の対応』を挙げました。黒川君は優秀な検察官ですが、黒川君でなければ適切な指揮ができないような事件はありえません。
今回の法改正を許せば、検察の独立に対する国民の信頼は大きく揺らぎます。「政治におもねる組織だ」と見られると、捜査につながる情報が入らなくなったり、取り調べで被疑者との信頼関係を築きにくくなって真実の供述が得られなくなったり、現場に大きな影響が出るでしょう。」
とりわけ、「検察は…政治家がからむ疑惑を解明する重い責務を国民に対して担っています。与党と対立せざるを得ない関係なのです。」との一言が印象的である。これをゴリ押ししようという、アベ政権のやり口が異常なのだ。
なお、本日、改憲問題対策法律家6団体連絡会などが主催する「検察庁法改正案に抗議する!リレートーク集会」(オンライン)が開催された。Zoom(ズーム)での参加者は500人という規模の「集会」だった。やや勝手が違う雰囲気だったが、慣れていくことになるのだろうか。
身内の弁護士以外のゲストスピーカーは、以下の4名。
浜矩子さん (経済学者 同志社大学大学院教授)
白井聡さん (政治学者 京都精華大学専任講師)
前川喜平さん (元文部科学事務次官)
藤本泰成さん (安倍9条改憲NO!全国市民アクション・平和フォーラム共同代表)
なかで、「元官僚から見た検察庁法改正案の問題点」と題した前川喜平さんのスピーチが素晴らしかった。アベ政権の人事を通じての府省支配の手法を語り、その組織支配の対象は警察に及び、いま検察を狙っている。今回の検察庁法改正は、その人事による政府組織支配の集大成だという位置づけ。
しかも、定年延長を手段とする人事支配の有効性は明らかで、現に文科省の次官人事でも実例があると生々しい報告だった。目の前の画面に拍手を送ったが届かない。これが、リアルの集会とは異なるところ。
さて、明日15日が山場だが焦りはない。 前川さんのスピーチのまとめは、「いま、憲法が想定する権力の分立は、相当程度こわされている。こういう時こそ、主権者国民の出番となる。900万件のツィートはその表れだと思う」というものだった。
正論は確実に民意となっている。自民党の中にも、これでは国民から見離されるという危機感をもつ人が出てきている。公明党も、もう自民党にくっついてばかりもおられまい。検察OBも異例の反対意見書だ。歯車はよい方向に回りはじめた。まだまだ、日本の民主主義も捨てたものではない。
(2020年5月14日)
先日、今年の流行語大賞候補には滅入る言葉ばかりと愚痴ったが、必ずしもそうでもなさそうだ。「Twiterデモ」や、「巣ごもりデモクラシー」などには、勇気づけられる。アベ政権とその応援団だけの天下ではない。いや、今やアベ政治の終焉が見えている。コロナ対応の失策と「Twiterデモ」とは、その象徴である。
5月8日17時40分発信という、歴史的な1件のツィートの主は、「笛美@fuemiad」と名乗る方。「広告業界の片隅にいます。20代で女性蔑視に染まり、30代でフェミニズムを知りフェミニズム関連の意見を発信していましたが、新型コロナきっかけで政治にも関心を持つようになりました。」と自己紹介をしている。「fuemiad」は、フェミニズムとアドバタイズの連結語なのだろう。
そのツィートは、下記のとおりである。
「1人でTwiterデモ #検察庁法改正に抗議します」「右も左も関係ありません。犯罪が正しく裁かれない国で生きていきたくありません。この法律が通ったら『正義は勝つ』なんてセリフは過去のものになり、刑事ドラマも法廷ドラマも成立しません。絶対に通さないでください。」
この方が、ネットに一文を寄せている。そのごく一部を抜粋して紹介したい。
「#検察庁法改正案に抗議します デモで知った小さな声を上げることの大切さ」
https://note.com/fuemi/n/n56bdee1d8725
「5月8日にいきなり内閣委員会で野党欠席のもと審議されて、来週には法案が通ることになったというニュースを見て震え上がりました。マスコミも大々的に報道せず、こっそり隠して採決まで持ってこうとしているようにも見えました。いても立ってもいられなくなり、とりあえず金曜の夜に1人でTwitterデモをやってみました。自分から発信した初めてのオンラインデモでした。」
「これまでグルグル考えていたことをベースにしながら、見た人がリツイートする敷居を低くしたいなと思いました。だから燃えるような怒りというより、静かな意思を感じられる表現にしました。それはデモビギナーの自分にとっても、自分らしく気負いなく言えるワードだったなと思います。ドラマなどの例えは、まだ知らない人にも分かりやすく伝わるようにと心がけました。独りぼっちで寂しかったので、バニーの絵文字を入れて行進してるっぽく見せました。…ぶっちゃけ本気で拡散させるぞ!なんて言う気は全くありませんでした。」
「最初はいつも仲良くさせてもらってるフェミニストの方々が投稿に反応してくださいました。…しばらくして、手作りバナーや相関図を作るアカウントさんが出てきたり、政治にアンテナの高いアカウントさん、作家さん、さらには野党の議員さんにも、ツイートが広がっているのに気付きました。」と予想外の事態の展開が述べられている。
この人の文章は、「次はあなたが、どんな声でもいいので出してみませんか?」という呼びかけで締めくくられている。
このたった一人のTwitterデモの呼びかけに多くの人が呼応した。まさしく燎原の火のごとき勢いで。これは、政治的・社会的事件である。本日(5月13日)の東京新聞の紹介では、同じハッシュタグを付けたツィートは900万件を超えたという。多くの人が、この政権への潜在的批判者となっているのだ。
有名無名を問わない多くの人々がツィートに賛意を表し、自分の言葉でこの法案に抗議した。当然これを面白くないとする勢力がある。このTwitterデモの「山が動くがごとき盛り上がり」を貶めようという、いつもながらのアベシンパは少なくない。
これまでその名が目立っているのは、高橋洋一、百田尚樹、加藤清隆、足立康史、竹内久美子、堀江貴文、鈴木宗男などである。総じて、取るに足りない。
彼らの立論のひとつは、「反対論者バッシング」である。「反対論者は、法案を読んで理解の上で反対しているのか」という、上から目線の無礼な物言い。反対論者の反対理由に噛み合った反論はなく、自らは積極的に法案賛成の理由を述べるところはない。ひたすらに反対論者をバッシングし、「政府は正しい。反政府論者は根拠なく騒いでいるだけだ」という発言によって、自らの忠勤な御用ぶりを見せようという、さもしい論者の言でしかない。
立論の二つ目は「陰謀論」である。「検察庁法改正案を反民主主義的悪法と宣伝する陰謀に乗せられるな」というわけの分からない論法。わけが分からないが、政権が論理的に追い詰められたときには「陰謀論」は万能薬として使われる。もっとも、どんなときでも使えるという万能薬の効き目は薄い。普通は、陰謀論を持ち出した途端に論拠破綻の自白とみなされ、みっともなさをさらけ出したことになる。
立論の三っ目は、「すりかえ論」である。「法案に対する反対論は、こう言っている」と的はずれのすり替え論点で、反対論を批判するやり口。反対論の内容を正確に把握しての批判であれば有益な議論になるが、検察庁法改正問題については、官邸も法務省も的確な反論をしていない。
立論の四っ目は、検察権力の過剰な強化に反対の立場からの、体験的な官邸権力強化擁護論である。これは、堀江や鈴木の立場である。検察権力の過剰な強化に反対は納得できるが、今問題は、検察を政権の番犬に貶めてよいかという局面での議論である。現在の法案に賛成する理由にはならない。
問題の本質は、検察官の定年延長にあるのではない。これまでなかった定年延長を導入するに際して、内閣がその恣意に基づき、「特例」として、検察官役職と定年の延長・再延長の可否を決することができることが問題なのだ。この法改正によって、内閣が検察幹部人事に介入し、検察のトップを官邸の息のかかった人物で固めることができる。この権力分立の崩壊は民主主義の根幹に関わる。
その問題性の本質を理解するためには、政権というものに対する批判の基本姿勢、とりわけ数々の政治の私物化をしてきたアベ政権に対する批判の姿勢がなくてはならない。そして、検察官という職能は、他の公務員とは根本的に異なり、犯罪行為あれば安倍晋三をも逮捕し起訴する権限をもっていることの重要性の把握が不可欠である。その地位の保障は、公務員一般と同等に考えることはできない。準司法的立場にあって、政権の清廉のために、検察官は政権からの介入を厳格に排除した独立性の確保が求められる。これを切り崩すことにならざるを得ないというのが、法案反対論の核心である。
これに対する、真正面から噛み合った反論も弁明も提起されていない。
(2020年5月13日)
ご近所のみなさま、ご通行中の皆さま。お騒がせしますが、もう少しの時間。耳を傾けていただくようお願いします。
本郷湯島九条の会は、日本国憲法とその平和の理想をこのうえなく大切なものと考え、毎月第2火曜日の昼休み時間を定例の街頭宣伝活動の日と定めて、ここ本郷三丁目交差点「かねやす」前で、雨にもまけず風にも負けず、新型コロナの緊急事態にも負けずに、ささやかな訴えを続けています。
緊急事態と言われる今だからこそ、国民の声が封じ込められるようなことがあってはならない。このようなときにこそ、大切な表現の自由を錆び付かせず、訴え続けなければならない。そのような思いからの、本日の宣伝活動です。
先月同様、私たちからご通行中の皆様に、署名を求めたり、ビラの配布のために近づいたりはいたしません。基本的には、全員マスクをして、スタンディングのスタイルで訴えております。横断幕や、スローガンを書いたプラスターをご覧ください。そして、昼休みの限られた時間、マイクでの訴えに耳をお貸しください。
「この非常時だ、国を信頼して思いきったことをやらせるべきだ」という声もあります。しかし、それは明らかに間違っています。権力には常に批判が必要です。このようなときにお上にお任せしていては、徹底した弱者の切り捨てが行われます。しかも、安倍政権まやることです。政治と行政を私物化し、ウソとごまかしに明け暮れ、散々に公文書を隠し改竄してきた、薄汚い政権ではありませんか。こんな政権を信頼してお任せできるはずはありません。
アベ内閣のコロナ禍対策には、後手後手という批判が集中しています。しかし、それだけではありません。この汚い政権は、コロナに国民の意識が集中している間に、どさくさ紛れの悪法成立をたくらんでいます。まさしく火事場泥棒。その典型が、検察庁法改正法案です。
先週の金曜日5月8日に、衆院内閣委員会は、国家公務員法と検察庁法の抱き合わせ法案の審議を行いました。野党抜きの審議強行です。国家公務員の定年延長については問題がない。問題は、幹部検察官の人事に官邸が介入できるように仕組みをあらためる検察庁法改正案にあります。
アベ政権は、各省庁の幹部人事に介入することによって、その権力を固めてきましたが、検察庁人事にも手を出したい。そうすることによって、マクラを高くして眠りたいのです。
かつて、検察は国民からの信頼を得る存在でした。田中角栄をも逮捕し、起訴した実績を持ちます。検察のトップは、「巨悪を眠らせない」と名言を吐いています。そんな検察では、安倍は安眠することができない。アベは、検察を我が手におさめることで、ぐっすり眠りたいのです。
この法案のねらいは、官邸による官邸のための検察人事への介入を認めることなのです。人事への介入を通じて政権に対する検察の牙を抜こうというのです。この法案は、官邸が幹部検察官を選り好みして、政権に擦り寄るヒラメ検察官には定年を延長し、硬骨漢には定年延長の途を閉ざそうというのです。
こうして、検事総長や検事長や、あわよくば検事正までの全ての検察官を官邸寄りの人物で固めてしまおうということなのです。
アベ政権とは、後ろ暗い政権です。政治を私物化し、行政を私物化してきた。しかも、その手法は嘘とごまかしで固められたもの。公文書の隠匿・廃棄・改竄はお手のもの。モリ・カケ・サクラでは、内閣の関係者多数が刑事告発されています。安倍晋三本人も告発対象となっています。
硬骨な検察幹部が決意を固めれば、政権トップに対する刑事訴追がなされて、たちまち政権は崩壊の危機に陥ることになります。そこで、アベは、黒川弘務東京高検検事長を検事総長にしようと考えました。彼こそは、安倍政権の守護神と異名をとった検察官。そのための布石として、定年となった黒川の定年を延長した。2021年8月に定年退職する稲田検事総長のあとがまに据える含み。
この露骨な検察幹部人事介入強行は実は違法なのです。これに対する非難が巻きおこると、アベはまたまた考えました。違法・脱法だというのなら、法律を変えてしまえ。そうすれば問題ないじゃないか。いかにもアベらしいやり口。
これが、どさくさ紛れの法案の正体です。検察を手中に置くことでのアベの安心は、国民の不安、民主主義の不安でもあります。何よりも、刑事司法の公正に対する国民の信頼を失墜させることにほかなりません。このことに危機感を抱いた一人の女性が、8日に「ツイッターデモ」を呼びかけて、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを付けたツイッターを発信しました。これに賛同する同じハッシュタグのツイートが600万件を超えたと報じられています。
しかし、それでも政権は明日(5月13日)の委員会審議強行を明言しています。強行採決もあるかも知れません。これを止める力は、世論しかありません。
皆様。ツイッターでも、メールでも、ブログでも、ファックスでも、声を上げてください。鑑定や国会や、与党に声を届けてください。よろしくお願いします。
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薄曇りの夏日になった本郷三丁目かねやす前の昼街宣になりました。
男女合わせて7人の方々が結集しました。これまでのように署名・チラシ配布は控え、かつ social distance を取るという気の配り用なのです。マイクの声は本郷通り、春日通りに響き渡りました。さまざまな plasterを一人2枚持ち、かねやす前に立ち道行く人々に訴えました。
マイクはやはり検察庁法改定案に集中しました。黒川弘務東京高検検事長の定年は2月8日で、その前の1月31日に「黒川弘務東京高検検事長の定年延長の閣議決定」を安倍晋三首相は強行したのです。黒川検事長を検事総長に据えようという魂胆がみえみえなのです。ということは安倍晋三首相は自らの罪を自覚し、罰を恐れている証左とも言えます。このことを訴えました。かつ国家公務員法改定案に潜り込ませる「束ね法案」ということです。検察庁法が一般の国家公務員法と別につくられている意義は、検察官は起訴の権限を独占し準司法官的な役割を担っていることにあります。安倍晋三政権は、法体系・法解釈を破壊し、法の支配から「人の支配」に変えるというクーデターを強行しようとしているのです。
plaster のいくつかを書いておきます。
●アベ政権の検察私物化ゆるさない
●憲法改悪許さない
●おそいおそい 急いで給付を
●倒産・廃業・失業 ストップ
●はやく家賃給付・給料補償・雇用助成金を
●だまされないぞ コロナ不安につけこむ憲法改悪
●エッセンシャルワーカーの給料引き上げよう、みなさんありがとう
まだまだいっぱいありますが、このへんにしておきます。
道行く人々もそれとなく聴いているようでした。これからが正念場です。
「本郷・湯島九条の会」石井 彰
(2020年5月12日)
今年の流行語大賞の選考は、気が滅入る言葉ばかりとなる。「コロナ」と「サクラ」、それに「ソーシャル・デスタンス」と「マスク」は当確だろう。「3密」と「アマビエ」も有力。さらに「後手後手」と「火事場泥棒」もダークホースだ。これまでは、「嘘とごまかしのアベ政権」、「公文書、隠匿・改竄・破棄のアベ政権」、「政治と行政私物化のアベ政権」と言ってきたが、このたび目出度くも「後手後手のアベ政権」、「火事場泥棒アベ政権」と枕詞が増えたわけだ。
「後手後手」は誰の目にも分かり易い。なにしろウィルスは融通がきかない、アベに忖度してくれないのだからこうなる。これに対して、「火事場泥棒」には、一言説明が必要だろう。昔から、火事場泥棒は卑劣極まりない犯罪と非難されてきた。混乱に乗じた手口が汚いということもあろうが、被害者の不幸に付け込んで私益をむさぼろうという心根こそが卑劣極まりないという非難の本質なのだろう。アベ政権と与党が今国会でしていることは、まさしく「火事場泥棒」と非難を受けねばならない。
いま、コロナ禍という大火の真っ最中である。国政は、国民のために、全力を上げて鎮火に努力しなければならない火急の事態。人びとが火を避け、火を消そうと必死で右往左往しているその火事場で、政権と与党はずる賢く立ち回ろうとしている。国民の関心がこの火勢に集中しているのをこれ幸いと、普段ならできないことを火事場の混乱に乗じて一気呵成にやってしまおうというのだ。薄汚い、「火事場泥棒」以外の何ものでもない。
政権が火事場泥棒として狙うものは、まずは改憲である。その第一歩としての憲法審査会での審議入り。そして今注目の検察庁法改正問題(検察人事コントロール法案)。その他、種苗法改正、「スーパーシティ」法案(国家戦略特区法改定案)、サクラ疑惑封じ込め、森友事件収束等々。油断も隙もない。
この火事場で盗まれようとしているのは、法の支配であり、立憲主義であり、 三権分立であり、刑事司法の公正であり、農産物の自給体制と農家の経営であり、行政の公平性等々である。コロナだけにではなく、アベ政権と自公の与党、そして急速に政権に近づこうとしている維新の動向に目を光らせねばならない。
火事場でも、泥棒の被害を避けるための警戒が必要なのだ。火事にだけでなく、戸締まりにも用心していることを示さなくてはならない。普段なら、集会、デモがその役目を果たすことになるのだが、今それができない。
それでも、知恵のある人はいるもので、この事態での火事場泥棒被害を避けるための工夫として、「Zoomで『#検察庁法改正案に抗議します』の反対集会をしよう」という呼びかけが始まっている。さて、どんなものになるのか、これは興味深い。
(2020年5月11日)
本日(5月10日)の朝日新聞デジタルに、「検察庁法改正に抗議、ツイッターで470万超 著名人も 」という記事。20時18分の掲載である。
検察官の定年を65歳に引き上げる法改正案を認めていいのか――。作家や漫画家、俳優、音楽家らが10日未明、疑義を唱える声をツイッター上で次々と上げた。「#(ハッシュタグ)検察庁法改正案に抗議します」の投稿が相次ぎ、その数は午前8時過ぎには約150万件、同10時過ぎには200万件、午後8時には470万件を超えた。
NHKオンライン(5月10日16時59分)では、この数が380万件を超えたと報じられている。
検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、ツイッター上では、9日夜から10日にかけて、俳優や演出家などの著名人による抗議の投稿が相次ぎ、同じハッシュタグをつけた投稿が10日午後3時半の時点で380万件を超えるなど、広がりを見せています。
朝日の記事を抜粋する。
「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい」。俳優の井浦新さんが10日朝に投稿すると、「いいね」が1万(後には3万)件以上ついた。
法改正案への抗議として、ハッシュタグ(#検察庁法改正案に抗議します)で賛意を示したのは、俳優の浅野忠信さん、秋元才加さん、芸人の大久保佳代子さん、漫画家のしりあがり寿さん、羽海野チカさんら。小泉今日子さん本人によるものとみられる投稿もあった。
9日午後に10万件程度だった投稿数は、10日午前3時ごろに100万件を突破。「三権のバランスをくずすこと、国を『国民』ではなく『自ら』の都合のよい形にするのはやめてほしいです」という声があがり、著名人に対しては「勇気あるツイートに感謝します」「とっても頼もしい」という賛意も寄せられた。
ネットメディア・言論に詳しいジャーナリスト津田大介さんは、驚きを隠さない。
「新型コロナウイルスへの政府の対応は緩慢な一方、『不要不急』にみえる定年延長の法改正は迅速に進む。一般に馴染みがなく、わかりにくい問題だったが、政府に注目が集まる今だからこそ気づかれることになった」と読み解く。
内閣の判断で検察幹部の「役職定年」を延長できるようにする検察庁法改正案の委員会審議は今月8日、与党が強行する形で始まった。黒川弘務・東京高検検事長(63)の定年延長問題を追及する野党側は、森雅子法相の出席が必須などと求めているが、与党は応じず、与党は週明けの委員会採決をめざすとみられる。
安倍内閣は、1月末に政権に近いとされる黒川氏の定年延長を閣議決定。検察トップの検事総長に就ける道を開くことになったため、「検察の私物化」との批判の声が上がっていた。
これは、凄いことになってきた。山が動くという感がある。この法案は、単なる検察官の定年延長法案ではない。この法案のねらいは、官邸による官邸のための検察人事への介入である。人事への介入を通じて政権に対する検察の牙を抜くことにある。この法案は、官邸が幹部検察官を選り好みして、政権に擦り寄るヒラメ検察官には定年を延長し、硬骨漢には定年延長の途を閉ざそうというのだ。こうして、検事総長(全国の検察官のトップ)や検事長(全国8高検のトップ)の人事を、あわよくば検事正(各地検のトップ)までの全て官邸寄りの人物で固めてしまおうという狙いが見え見えである。
アベ政権とは、後ろ暗い政権である。政治を私物化し、行政を私物化してきた。しかも、その手法は嘘とごまかしで固められたもの。公文書の隠匿・廃棄・改竄はお手のもの。モリ・カケ・サクラでは、内閣の関係者多数が刑事告発されている。安倍晋三本人も告発対象となっている。
硬骨な検察リーダーが決意を固めれば、政権トップに対する刑事訴追がなされて、たちまち政権は崩壊の危機に陥ることになる。今はそのような事態なのだ。安倍晋三はマクラを高くして、眠ることができない。
かつて、検察のトップは、「巨悪を眠らせない」と名言を吐いている。そんな検察では、安倍は困るのだ。アベはぐっすり眠りたい。
そこで、アベは考えた。黒川弘務東京高検検事長を検事総長にしよう。黒川こそは、安倍政権の守護神と異名をとった検察官。かつて、彼が法務事務次官に就任したときも、官邸のゴリ押しだったと報道されている。そのための布石として、定年となった黒川の定年を延長した。来年8月13日に定年退職する稲田検事総長のあとがまに据える含み。
検事の定年の定めは検察庁法に記載してあるが、定年延長の定めはない。そこで、アクロバティックに国家公務員法の規定を使った。まったく前例のないことである。この露骨な検察幹部人事介入強行に対する国民の非難が囂囂と巻きおこった。違法だ、脱法行為だ。官邸による検察を支配を許すな。
そこで、アベはまたまた考えた。違法・脱法だというのなら、法律を変えてしまえ。そうすれば問題ないじゃないか。自公で十分な議席をもっている。維新まで、アベに擦り寄っているいま、国会は思いのままだ。今のうちに、できることはやってしまえ。
これが、火事場のどさくさに紛れての検察人事コントロール法案の正体なのだ。
(2020年5月10日)
最近の会合は、オンラインで行われる。そのほとんどが、Zoom(ズーム)を使ってのもの。あっという間に、このアプリが社会に入り込み生活に定着した。その普及の迅速さに、感覚がついていけない。振り返って、「コロナとともに蔓延したZoom(ズーム)」と思い起こす日が来るのだろう。
確かに便利ではある。しかし、どうも機械を介しての複数の遠隔会話は勝手が違う。場の空気を読めない。従って発言がしにくい。どうしても絞られた要件だけの発言となる。事務的な会議ではそれでよいわけだし、時間の節約にもなる。だが、談論風発して弾んだ話が思いがけない方向に進展して新しい方針として結実する、などという会合の妙味には乏しいのではないだろうか。まだ、単に慣れないせいなのかも知れないが。
昨日(5月8日)は、日民協の執行部会。ややぎこちないZoom(ズーム)での会議だが、要領よく発言する方に感心した。
テーマのひとつが、検察庁法改正問題。昨日(5月8日)に、唐突な衆院内閣委員会での審議入りである。立・国・社・共の野党が欠席のまま、自・公の与党に準与党の維新が加わっての審議強行と報告された。次回予定は13日、来週の水曜日とされている。野党は強く反発しているが成り行きは予断を許さない。13日までの運動が喫緊の重要事となっている。
報告の中に、法案の問題点が意識的に分かりにくくされているとの指摘があった。
「国家公務員法と検察庁法の二つの改正法案が意図的に抱き合わせにされているところが注意点。国家公務員の定年延長に問題はない。しかし、官邸が恣意的に検察庁幹部の定年延長人事を左右できるようにすることは大問題だ。官邸の非違を質すべき立場にある検察が、官邸に忖度する検察になり下がってしまう。」
「だから、国家公務員法改正法案と、検察庁法改正法案を分離して審議せよというのが、野党の主位的な主張だが、数の力のゴリ押しでなかなかそれが通らない」
「せめて、内閣委員会だけではなく、法務委員会との連合審議にせよというのが、野党の妥協線なのだが、これにすら耳を貸さないのが、本日の内閣委員会での審議強行」
改正案は、毒まんじゅうなのだ。餡にくるまれた毒が入っている。アベ内閣の、またまたの暴走。普段なら、大問題としてメディが大きく取りあげるところが、コロナ禍に隠れた格好で報道がまことに小さい。また、メディアが的確に問題点を把握していないのではないか。与党と維新の側も、問題が大きくならないうちに、コロナ禍に隠れて一気呵成にことを進めようという魂胆がありあり。まさしく、「火事場泥棒」。
ここで、ジャーナリストの丸山重威さんから的確な発言があった。
「分かりにくい抱き合わせ改正法案は、これまでも経験してきたところ。こんなときには、まずネーミングに工夫が大切。」「『検察庁法改正案に反対』では、訴える力がない。本質に切り込んだ法案のネーミングを考えなければ」「たとえば、『検察官人事コントロール法案』ではどうだろうか」
なるほど、おっしゃるとおりだ。火急の問題。あれこれ考えているよりは、この提案を生かしたい。
なお、共産党・山添拓議員からは、メーリングリストでこんな報告があった。
「今日(5月8日)は午前9時から、衆院内閣委員会で実質審議入りが強行されました。自民2名、公明、維新各1名が質疑し、野党の持ち時間は「空回し」せず休憩に入り、そのまま散会となりました。
与党も維新も、検察庁法について全く質問していません。そもそも法務省の政府参考人を誰も呼んでいませんので、ハナから審議するつもりはなく、世論の批判などおかまいなしに(あるいは批判を恐れて?)、国会審議でスルーと決め込んでいます。通常、批判のある法案であれば与党も一応気にして、政府に弁明させる質問を一問ぐらいはするものですが、それすらできなかったようです。」
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本日(5月9日)の赤旗一面トップは、次のように、報じている。
「検察庁法改定案 与党が審議入り強行」「コロナの最中に 野党、抗議し欠席 衆院内閣委」
自民、公明などの与党は8日、衆院内閣委員会で、検察人事に内閣が露骨に介入する仕組みが盛り込まれた検察庁法改定案を含む国家公務員法等改定案の審議入りを強行しました。野党議員は、与野党の合意がないままの委員会開催と検察庁法改定案の審議入り強行に抗議し委員会を欠席しました。
野党側はこれまで、検察庁法の改定は憲法の要請に基づく三権分立にかかわる問題だとして、国家公務員法改定案と検察庁法改定案の切り離しを要求。検察庁法を所管する森雅子法相の出席を求めてきました。
ところが、与党側はこれらを拒否。与野党の合意がないままに委員長職権で委員会を開催し、改定案の審議入りを強行しました。
野党の内閣委員は同日、そろって記者会見し、日本共産党の塩川鉄也議員と、立憲民主党、国民民主党などの共同会派の大島敦(国民民主党)、今井雅人(無所属)両議員が抗議を表明しました。
塩川氏は、同改定案が昨年段階ではなかった検察官の勤務延長を突如盛り込んだ点について、この改定の出発点は、官邸に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の勤務延長の閣議決定にあると指摘。「憲法の基本原則である三権分立と司法権の独立を脅かし、官邸の意のままになる検察人事を行い、その勤務延長にあわせようとするのが今回の法改定だ」と批判しました。
その上で、「審議を強行するのは、道理のない法改定についてまともに説明することができないことを認めたのと同然だ」と強調。「新型コロナ感染症対策に全力を挙げるべきときに、火事場泥棒的に悪法を強行する安倍政権の姿勢が厳しく問われる」と抗議しました。
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35弁護士会「反対」検察官定年延長 「三権分立脅かす」
検察の独立性を侵す検察庁法改定案の審議を自民・公明と維新が衆院内閣委員会で強行する中、全国に52ある単位弁護士会の3分の2にあたる34都道府県の35弁護士会の会長が検察官の定年延長と同法案に反対する声明を発表したことが8日、本紙の集計でわかりました。
同法案をめぐっては、日本弁護士連合会の荒中(あら・ただし)会長が4月6日に反対する声明を発表。これを受けて、10を超える弁護士会で続々と声明が発表されています。
安倍晋三首相の地元、山口県弁護士会は先月23日に反対の会長声明をあげています。
声明では「この改正案が、最高検察庁次長検事などの役職人事に政府の介入を認めるものであって、検察官の独立性をより強く侵害し、三権分立を定める憲法秩序を脅かす」と指摘しています。
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検察官の定年延長 有志団体「弁護士1500人が反対」と批判
(NHK2020年5月8日 17時)
検察官の定年延長を最長で3年まで可能にする検察庁法の改正案に反対する団体がオンラインで会見を開き、団体の活動に賛同する弁護士が全国で1500人に上ることを明らかにしたうえで「新型コロナウイルスの影響が広がる中、拙速に国会での審議を進めるべきではない」と訴えました。
検察官の定年を段階的に65歳に引き上げ、定年延長を最長で3年まで可能にする検察庁法の改正案は、国家公務員の定年を引き上げるための法案と合わせて8日から衆議院内閣委員会で審議が始まりました。
これについて法改正に反対する有志の弁護士で作る団体が8日、オンラインで記者会見を開き、「改正案は検事長らの定年延長の判断を内閣や大臣に委ねるもので、検察の政治的中立性や独立性を脅かす」と訴えました。
そのうえで、呼びかけを始めた4月下旬からのおよそ2週間で、活動に賛同する弁護士が、日弁連(日本弁護士連合会)の会長や副会長経験者を含め全国で1500人に上ったことを明らかにしました。
(2020年5月9日)
毎日新聞の仲畑万能川柳、これが常にも増して面白い。憂さ晴らしに、川柳はもってこいである。本日(5月8日)選の中に次の一句。
コロナうつ万柳詠んで吹き飛ばせ 尾道 瀬戸の花嫁
のみならず、このご時世ネタは尽きない。この万柳のためだけに、毎日新聞を定期購読しているファンもあると聞く。むべなるかな、この川柳欄に群がる投稿者たちは独特の部分社会を形作っている。社会の本流からは少しはずれた、それゆえに健全な部分社会。
※最近の句で目立ったのは、マスクネタである。
マスク二枚配りみんなの口封じ 浦安 さやえんど
これは秀逸。愚かな意図を見抜いた上で、笑い飛ばしている。
アベマスク家族4人であみだくじ 鹿沼 鹿沼土
ハズレの二人がバツゲームとして使うことになる。
マスクよりお似合いですよ「頰っ被り」 戸田 小松多代
もちろん、マスクを配ったあの人のこと。
二枚ずつアベノマスクの二百億 北九州 エミリー
当初は200億の報道だった。いずれにしても愚かの極み。
10万とマスクのどっち先か賭け 静岡県 増田謙一郎
布マスク変えられないか前広に 千葉県 姫野泰之
散会時マスク総理は即外す 東京都 後藤克好
躊躇なくマスク二個とは情けない 町田 不銹鋼
一世帯一人もいれば七人も 宗像 水芭蕉
売れる程手作りマスク上手くなり 寝屋川 ヒロポン
マスクかけ佐保姫別れの袖を振り 埼玉県 磯貝満智
春うららマスクの形に日焼けして 柏原 年中無給
香港のマスク禁止は終わったの? 大野城 ぶび子
完売の文字が褪せても来ぬマスク 多治見 和宇茶中
※マスク以外のコロナ禍も笑いのネタに
二週間いつまでたっても二週間 東京都 新井文夫
捲(めく)っても出口見えないカレンダー 茨城県 清水方子
検査する代わりコーヒー嗅がされる 青森 よしのまち
オナラして臭い感じて安心し 大阪 板はん
コーヒーのたびに匂うか確かめる 東京 緑カレー
恐ろしやコロナ対策銃を買う 西宮 軒の小雀
取った税貸してあげると言う政治 海老名 しゃま
言い訳のアベオンステージNHK 別府 タッポンZ
志村さん「だいじょぶだあ?」って言ってたじゃん 千葉 ペンギン
オレなんざもともと距離を置かれてる 行田 ひろちゃん
ニュースから消えて下さいコロナの字 大田原 武田正子
メモを読む総理に空気読まぬ嫁 福岡 猫懐
クラスター→オーバーシュート→ロックダウン 交野 令和の令子
怖いのはコロナニュースに慣れたとき 神奈川 カトンボ
新聞が痩せた戦中思い出す 神奈川県 金澤紀六
ステイホーム肥後で申せば「籠城じゃ」 長崎県 前田一笑
あるんだね皆テレワークできる社も 宝塚 おーい銅将
ウイルスは「やってる感」では騙せない 東京 三次
コロナ禍も議員歳費はご安泰 水戸 むっちゃん
コロナから知る全国の知事の顔 岐阜 金子錆男
消毒をした手でノブを触るドジ 和歌山 松原まつこ
予定表消してばかりだこの春は 高槻 風頼坊
ひと月の長さ感じる新コロナ 山形 かみやじい
こんな時弱い人から解雇され 相模原 アンリ
日本語で怖さがわかる都市封鎖 茨木 イシマリ
我も彼もマクベスのごと手を洗う 熊本 しゅ
こんな事あるんやなあと空見上げ 伊丹 しずく
世界から握手抱擁消える日が 芦屋 言閑マダム
目に見えぬコロナこわくてひきこもる 三豊 泣きっ子
呼吸器もベッドも足らぬ医療大国 白石 よねづ徹夜
※川柳子は安倍晋三にも優しい
万柳の良いとこ安倍の支持もいる 白石 よねづ徹夜
もう既に「あきれ夫人」と呼ばれてる 川崎 さくら
後手後手の旦那のたまう「前広」と 神奈川県 安藤隆喜
取る気ない責任だから軽く言え 東京 城山光
※9月始業もネタになる。
新入生引き受けますと秋桜(コスモス)が 埼玉県 磯貝満智
これは優しい。コスモスがサクラにささやいている。
袴(はかま)から浴衣に変わる卒業式 埼玉県 金子雄一
なるほど。それも楽しい。
九月から始業コロナが薄笑い 東京都 大和田淳雄
これは恐い。9月からの始業などできるものかと鬼のよう。
※ そして健全な精神は森友事件を忘れない。赤木さんのことも。
悪代官しっぽ切りまで部下にさせ 鹿沼 鹿沼土
部下死んだかまっちゃおれぬ出世道 周南 石丸壽人
忖度は懲戒受けても出世する さいたま 高本光政
権力の凄まじさ遺書見せつける 日立 北の馬場
忖度は人を殺すと皆知った 福岡 ナベトモ
もういいよ事実を言っても佐川さん 豊川 雨ニモ負太
起訴不起訴凄い力の検事さん 兵庫 新ポスト
(2020年5月8日)
お代官様。
3郡16か村の百姓一同からのお願いでごぜいますだ。よろしくお聞きくだされ。
ほかでもねえ、今年の年貢のことでごぜいますが、どうしたって払えっこねえ。
ご存じのとおり、今年はこの領内に悪疫が流行りましてな。疫病神は、田にも畑にも、森にも林にも、はびこりましたでごぜいます。疫病神から逃れる場所と言えば、疫病退散のお札を貼った家の中だけでごぜいましてな。
そんな案配で、お代官様の指図もありまして。田起しから出穂の季節まで、村人一同は、外に出ることはかないませんで、一家揃って家内で自粛でございました。もちろん、子どもの寺子屋通いも、できねいありさまで。
だあれも、田にも、畑にも出ることとてなく、薪を切ることも、山菜摘むこともできんまま。これまでの蓄えを食い潰して、とうとう秋を迎えたでごぜいます。いつもの年であんしたら、五公五民で米俵を積み上げとるころですが、今年ばかりは納めるにも米はない。米に代わる金目の物もない。村人は、芋ばかりを食って生き延びておりやんす。そんなわけで、今年ばかりは年貢をご勘弁いただきたい。
いや、おねげいはそれだけではごぜいませんだ。来年の種籾は村内のどこを探しても、一粒たりともござりませんので。このままでは、来年の米の作付けはおぼつかねいことでございましてな、来年の年貢を納めることもできません。ここは、代官様の思し召しで、村民一同の全所帯に種籾一俵ずつを、お助け米として一律にお配りいただきとうごぜいます。
もとはと言えば、百姓どもが毎年この場に積み上げて納めた年貢の内のちょびっとをお返しいたただきたいというだけのこと。ぜひとも、お聞き届け願いたいものでごぜいます。
もちっと、おねげいがごぜいます。村の子どもたちが、今年は手習いやら稽古事も満足にできません。立派な子どもは、領国の宝でごぜいますし、親の願いでもごぜいます。子どもたちの学びのためのお金の工面を、代官様、是非ともおねげいしますだ。
いんや、それだけではねい。村人みんな、疲れ果て、腹を空かせ、病んでおります。ご領主様が、領民のためにやってくれたのはマスク2枚を配っただけ。あとは、ご城内にこもって犬と遊びほうけているちゅうとか。このままでは、領民は飢えて死ぬか、他国に逃げるかするより外はございませぬ。領民がいなくなれば、ご領主様もあの奥様も、食べてはいけなくなりますぞ。ぜひとも、お城と代官所の藏を開けて、お助け米を領民にお配りいただくよう、お願いしますだ。
まだある。すっかり荒れた田畑も山も林も手入れをしなけりゃならん。疫病退散のお祝いの祭りも盛大にやらねばならん。川のさらいも、堤防の直しもせねばならん。村人の薬も買わねばならん。ここは、思い切って、ドーンとお助け金を弾んでもらわねばなんねい。
この段、覚悟のお願いじゃ。お気付きなされまたかな。村人3千人。鉈だの鎌など携えてこの代官屋敷を取り巻いておりますぞ。必ず聞いてくだされい。
なんとな。そんなカネはないとな。そうは言わせぬ。ご領主は、遠国のバカ殿からF35ステルス戦闘機やイージス戦闘システムを買い付ける約束をしたそうじゃと聞いておる。なんと愚かなご領主様よ。百姓どもの汗と涙が不要不急の武器の買付に消えて、それでも疫病で苦しむ民百姓を見殺しにするとおっしゃるか。
同じ遠国のバカ殿から、同じような兵器買付の約束をした隣国のご領主の方はウチのご領主とはずいぶん違って、こうじゃというではないか。
「韓国政府は4月16日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対策として追加補正予算を編成し、全世帯に支給する「緊急災害支援金」の財源として、国防費9047億ウォン(約795億円)を削減して充てることを決定。4月30日に補正予算が成立しました。削減対象はF35ステルス戦闘機やイージス戦闘システムの米国からの購入費で、支払いを来年に先送りする方向だといいます。」(半田滋)
隣国にできたことが、どうしてご領内ではできぬことがありましょうや。いずれ、ご承知いただけないときは、われら一揆に立ち上がる覚悟はとうにできている。この屋敷を取り巻いた百姓どもの鬨の声が聞こえませぬかの。そっちの覚悟はいかがかの。
さあどうじゃ、肚をくくってご返答をいただきたい。さあ、さあ。さあさあさあさあ。
(2020年5月7日)