澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

再度の法廷傍聴のお願い ー NHK「情報公開請求」訴訟第1回口頭弁論

(2021年9月24日)
 NHKを行政のくびきから解放して、真に独立したジャーナリズムに育てようという壮大な市民運動。その一環としてのNHK情報公開請求訴訟にご注目とご支援をお願いいたします。

 その第1回期日が目前です。当日のスケジュールは以下のとおり。
  日時 9月28日(火)午前10時40分から約1時間
  法廷 東京地裁103号(1階の「大法廷」)

(傍聴には、10時20分からの抽選が予定されています。しかしコロナ禍のさなか、おそらく満席にはならないと思われます)

法廷では、下記の原告と原告代理人(計4名)の口頭意見陳述が行われます。
(1) 西川幸さん(視聴者の立場から)
(2) 長井暁さん(副原告団長・元NHKチーフプロデューサー)
(3) 醍醐聰さん(原告団長・東大名誉教授)
(4) 澤藤大河弁護士(原告ら訴訟代理人)

その後、下記のとおり報告集会を行います。こちらにもぜひご参加を。
 時間 13:00 ?
 場所 参議院議員会館 B108会議室

この訴訟の原告は104名の受信契約者(視聴者)、被告はNHKと森下俊三(経営委員長)の2名。被告NHKに対しては「文書の開示」を請求し、被告森下には文書開示を懈怠した責任者として損害賠償をせよという内容。
 
被告NHKに対して開示を求める最重要の文書が、「2018年10月23日のNHK経営委員会議事録」。放送法41条は、「委員長は、経営委員会の終了後、遅滞なく、経営委員会の定めるところにより、その議事録を作成し、これを公表しなければならない」と、経営委員会委員長の任にある者に経営委員会の会議議事録の作成と公表を義務付けている。しかも、「遅滞なく」である。
 
ところが、法律で明確に定められたこの義務は、履行されていない。なぜか。経営委員会にとって都合が悪いものだから出せない、と考えざるを得ない。

この日の経営委員会で何が行われたのか。森下主導で経営委員会は、当時の上田良一NHK会長に「厳重注意」を言い渡した。これは、NHKの良心的番組「クローズアップ現代+」が取りあげた「日本郵政のかんぽ生命不正販売問題」の制作妨害の意図によるものである。

つまり、NHKの最高意思決定機関である経営委員会が、外部勢力(日本郵政)の意を受けて、NHKの番組潰しを画策したのだ。経営委員会は具体的な番組の制作に干渉してはならない、とする放送法32条に違反する、明らかな違法行為。

この文書については、これまで5件の開示請求(NHKの手続では「開示の求め」という)があり、NHKが委嘱した「情報公開審議委員会」は5度に渡って、NHKに公開すべしと答申したが、NHK(実質的には経営委員会)が答申を拒否した。

そこで、原告らが、「仮に今度も開示を拒否されたら提訴する」ことを宣言して、開示の求めを行い、所定の期限までに開示に至らなかったことで、提訴に及んだのがこの訴訟なのだ。

原告らは今年の4月7日に「開示の求め」を行い、提訴は6月14日となった。その後、7月9日になって、『議事録』が開示された。提訴の効果として、一定の前進あったことの評価はやぶさかではない。

しかし、実は問題が解決したわけではない。もし、この『議事録』が放送法の定める議事録だとすれば、当然に公表されなければならないところ、この議事録は文書開示の求めをした当事者には写しが交付されているが、誰もが見ることができるように「公表」されていない。通常、公表はNHKのホームページに掲載されるが、今に至るもその掲載はない。

しかも、この議事録には「別紙」が付されて、「これは経営委員会の確認を経ていない」旨が明記されている。果たして、7月9日交付を受けた文書が、原告らが開示を求めた文書であるかについては、いまだ納得しえない。そんな経緯の中で、第1回法廷を迎える。

なお、被告森下の答弁書は、9月21日の夕方ファクス送信されてきた。請求の趣旨に対する答弁だけで、何の内容もないもの。被告NHKの答弁書は9月22日の夕刻だった。こちらは、さすがに内容のあるものだった。

そのNHKの答弁は、「既に請求された情報開示は実行されている」というものだが、原告が納得できるようにはなっていない。原告は、文意必ずしも明確とは言えないとして翌23日付の求釈明書を提出している。28日の法廷は、この点のやり取りが中心となる。

NHKの答弁書を一瞥して、それなりの真摯さを印象づけられた。いたずらに論点をはぐらかしたり、挑発的な、あるいは居丈高な姿勢はない。認めるところは認めるという穏当な答弁。

この訴訟にはメディアの関心が集中しており、メディアの背後にはNHKのあり方を憂慮する広範な国民が存在している。私は、NHKがそのことを意識してこその、この答弁書の姿勢だと思う。

そしてもう1点。原告は、決してNHKを非難し追及しているわけではない。むしろ、励ましているのだ。この件では、元総務次官の日本郵政上級副社長・鈴木康雄と、当時は経営委員長代行だった森下俊三との二人が、良心的番組潰しの両悪役である。NHK執行部は、番組制作の現場を守ろうとして力が足りなかったと言ってよい。原告らは、森下とNHK執行部との責任の強弱を明確に区分して認識している。NHKには、そのような原告の思いが伝わっているのだとも思う。

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