澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

あらためて中国の人権状況を嘆く

(2021年12月1日)
 半世紀も前のこと。長く共産中国を敵視していたアメリカや日本が中国との国交を回復し、「一つの中国」を認めた。そのとき、私はわがことのように嬉しかった。「一つの中国」論は、当然に台湾を切り捨てるものであったが、そのことに何の心の痛みも感じなかった。高慢にも、これが歴史の必然と思っただけ。

 中国共産党は、中国人民の中から生まれ、中国人民の利益に徹した政権運営を行う。それは、とりもなおさず世界の人民の共通の利益に通じるものに違いない。当時、私はそう思い込んでいた。今となっては、不明を恥じいるばかりである。

 BBC News がこう報じている。「中国、台湾人600人超を海外で逮捕 中国へ強制送還=人権団体報告書」

 「中国が2016?2019年の間に台湾人600人以上を海外で逮捕し、中国に強制送還していたとする報告書を、人権団体が11月30日に発表した。スペインを拠点とする人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」は報告書で、こうした活動が「台湾の主権を弱めるための道具として利用されている」と指摘している。」

 海外で逮捕された台湾人が中国に強制送還されれば、その人権が危うくなることは目に見えている。被送還者は家族からも知人からも切り離され、仕組みも分からぬ見知らぬ世界で、満足な弁護も受けられなくなるだろう。この人権団体は、「迫害や深刻な人権侵害のリスクがある」と警告しているというが、この600人にとって事態はこの上なく深刻である。

 中国といえば、あっちでもこっちでも「深刻な人権侵害」の話ばかり。台湾の方が遙かに人権と民主主義の国ではないか。「一つの中国」という原則は、人権侵害の拡大を容認するスローガンに変質している。

 その中国での女子テニス選手による性的被害告発事件は深刻な様相である。中国でなければ、被害者や加害者とされた党幹部に、メディアの取材が集中するだろう。被害を告発した者の安否が知れない状態が一か月も続いているのだ。暗黒社会の出来事と言わざるをえない。

 朝日新聞北京特派員の記事によると、

 「中国共産党の元高官から性被害を受けたと告発したプロテニス選手の彭帥さんが、女子テニス協会(WTA)のスティーブ・サイモン最高経営責任者(CEO)らに送ったとされるメールが26日、彭さんの知人のツイッター上で公開された。彭さんは「私のことで騒がないで」「私はいま、邪魔されたくない。特に私の個人的なことで騒がないでほしい。私は静かに暮らしたい。あなたのお気遣いには感謝します」などと伝えたという。

 このメールは事態の沈静化を図りたい党指導部の意向にも沿う内容だが、11月2日にSNSで性被害を告発して以降、この問題に対する彭さん自身の発言機会はなく、真意は分からない。中国国内では一切報道されない状況が続いており、ツイッター上では「なぜ彭さんのメールを他人が公開するのか」「信用できない」などと批判が出ているという。

 さらに、読売は「彭帥さん告発を情報発信した人権派、北京当局が弁護士資格取り消し通知」と報じている。

 「中国・北京市の司法局は、著名な人権派弁護士、 梁小軍氏に対して弁護士資格を取り消す方針を通知した。梁氏のインターネット上での主張が「社会に悪影響をもたらした」としている。梁氏が27日、ツイッター上で明らかにした。
 梁氏は、人権問題について積極的に情報発信してきた数少ない弁護士の一人だ。今月18日には、元政府高官から同意のない性的関係を迫られたと告発した女子テニス選手、彭帥さんや、獄中から無実を訴える女性人権活動家、張展さんの写真をツイッターで投稿し、「彼女たちは世界に勇気を示した」とたたえていた。」

 中国では、「愛国無罪」であり、「人権有罪」なのだ。もう少し正確には、「愛国とは愛党と同義であるが故に無罪」であり、「人権擁護とは反党であるが故に有罪」なのだ。誰もが台湾を応援したくなるのが理の当然ではないか。

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Published in 水曜日, 12月 1st, 2021, at 21:30, and filed under 未分類.

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