維新の政治資金規正法違反告発と、被告発人馬場伸幸の弁明
(2021年12月11日)
昨日(12月10日)上脇博之さんら学者グループ11名が告発人となって、大阪地検に維新の政治献金収支における違法を告発した。告発代理人弁護士は阪口徳雄君以下21名。私もその一人である。
本日の赤旗は、この告発を次のように報じている。
「維新共同代表らを告発」「投資家から上限超す献金の疑い」「教授ら大阪地検に」
日本維新の会とその党支部が2020年、旧「村上ファンド」で知られた投資家の村上世彰(よしあき)氏から政治資金規正法が定める年間の上限額を上回る計2150万円の寄付を受けたと届け出ていた問題で、神戸学院大学の上脇博之教授ら11人が10日、規正法違反の疑いがあるとして村上氏や維新の会の馬場伸幸共同代表らを大阪地検特捜部に告発しました。告発状によると、党本部である日本維新の会は、20年10月26日に村上氏から2000万円の寄付を受けました。翌27日には馬場幹事長(当時)が代表者の「日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部」が、村上氏からの寄付150万円を受け取ったため、上限を超える寄付を受けた疑いがあるとしています。
規正法は、一個人から政党への年間の寄付が2000万円を「超えることができない」としています。党本部と支部の額は合算され、違反した場合は寄付と受領の双方に「1年以下の禁錮または50万円以下の罰金」を規定しています。
本紙はこの問題を1日に維新の会に質問し、3日付で特報していました。馬場氏は8日に自身のツイッターで、支部が政治資金収支報告書で届け出た150万円の寄付について、別団体である馬場氏の後援会への寄付を支部への寄付として誤記したと説明。今月1日に収支報告書を訂正したとしています。
NHKは、被告発人馬場の弁明を次のように報道している。
【馬場氏“ケアレスミス”】
告発状を提出されたことについて、馬場氏は「事務所が記載する団体を間違えたケアレスミスだった。今後は、このようなことがないよう複数人態勢でチェックするように事務所に指示した」とコメントしています。
政治家の責任逃れは、自民党だけの専売特許ではない。「秘書のせい、部下のせいで、オレの責任じゃない」という醜悪なセリフがここでも聞かれる。決して自らの身を切ろうとはせず、秘書や部下に責任を転嫁してすまそうというみっともなさ。
被告発人馬場はこう言っている。「村上から維新本部への寄附のうち2000万円は維新の本部に、150万円は馬場個人の後援会口座に振り込まれた。ところが、それを後援会事務所職員のケアレスミスで 大阪府第17選挙区支部の入金として届けてしまった。今は訂正されているのだから問題はない」
それはない。常識的に考えられない不自然な弁明としか言いようがない。
本件告発状の冒頭、「告発の趣旨」は下記のとおりである。
1.告発事実
(1) 被告発人村上世彰は、
「日本維新の会」本部に対し2020年10月26日に金2000万円を、
「日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部」に対し同年同月27日に金2000万円を超える金150万円の寄附を供与した。(2) 被告発人「日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部」は、2020年10月27日、被告発人村上世彰から金2000万円を超える金150万円を受領した。
また被告発人同支部代表馬場伸幸、被告発人同支部会計責任者米田晃之らは、互いに共謀して、同日上記金員を受領した。2.罪名及び罰条
(1)被告発人村上世彰は、政治資金規正法第26条第1号(第21条の3第1項1号)違反。
(2)ア 被告発人「日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部」は政治資金規正法第26条第3号(22条の2違反)同第28条の3第1項違反(両罰規定)。
イ 被告発人馬場伸幸及び被告発人米田晃之は、刑法第60条、政治資金規正法第26条第3号(第22条の2)違反。
政治資金収支報告書の作成・届出に関する違反行為が発覚して後に「訂正」しても、遡及して犯罪の成立を消滅させることはできない。「盗んだが盗品は返還済み」「詐欺はしたが金は戻し」ても、情状として考慮はされても、犯罪成立を否定する弁明にはならない。本件の事後訂正も同様である。
それだけではなく、本件での馬場の「ケアレスミス」弁明も常識的には成り立ち得ない。こういう姑息な弁明が見苦しい。
本件の告発人らは、この点について12月10日付け「告発補充書」を提出している。その要点は、以下のとおりである。
1.馬場議員の弁明
私たち告発人・告発代理人は、2日前の8日正午過ぎに、被告発人村上世彰氏及び被告発人馬場伸幸衆議院議員(当時日本維新の会幹事長、現在共同代表)らを10日10時に政治資金規正法違反で御庁(大阪地検)に刑事告発し、その後記者会見する旨、大阪地裁司法記者クラブに連絡したところ、
馬場議員は、同日午後5時49分自らのツイッター上に「【ご報告】令和2年分政治資金収支報告書の訂正について」を公表し
(https://mobile.twitter.com/baba_ishin/status/1468502968005984260)、その内容の一部が報道された。
その内容を箇条書きすると、以下の通りである。
? 昨年10月、村上世彰氏が党(日本維新の会本部)及び馬場幹事長に対し個人献金を申し出た。
? その際、村上氏は、党(日本維新の会本部)に対しすでに上限額(2,000万円)の献金をする意思を示していたので、馬場幹事長への献金は政党支部(日本維新の会衆議院大阪府第17選挙区支部)ではなく個人後援会(馬場伸幸後援会)に行い、実際馬場伸幸後援会の銀行口座に振り込んだ。
? その経過については、事務方同士で行ったメールのやり取り等もすべて残っている。
? 村上氏は、上限額を超える寄附をする意図がなかったことは確実である。
? しかし、馬場事務所のミスにより、村上氏が振り込んだ献金を政党支部への寄附として誤って計上し、収支報告書にも誤記した。
? (1年1か月経過の後)今年の12月1 日に政党支部と馬場伸幸後援会の両政治団体の収支報告書の訂正を届け出た。
2.上記弁明はとうてい真実とは言い難くおよそ信用できない
被告発人村上氏が本当に「馬場伸幸後援会の銀行口座」に金150万円を振り込んでいたら、当該後援会が村上氏には領収書を発行し、それらに基づき会計帳簿にその旨を記載して、それに基づいて収支報告書も記載したはずである。にもかかわらず、入金されていない政党支部の会計帳簿に金150万円の寄附収入を計上して収支報告書に記載するミスを犯すことなどありえない。たとえ、そのようなミスをしたとしても、後援会と政党支部の各収支も各残高も合わないことになるはずだから、必ずミスに気付いていたはずであり、支部の収支報告書の作成段階で気が付き、訂正するはずである。
また、馬場議員側は、2015年分以降の政治資金収支報告書を見ると、個人からの寄附は全て政党支部で受けており、後援会では一切受けていない。昨2020年も同様である。したがって、被告発人村上氏には政党支部の口座情報を伝え、村上氏は、伝えられた政党支部の口座に金150万円を振り込んだというのが真実であると思われる。そして、寄附を受けた政党支部は、村上氏に領収書を発行しているはずである。もしも村上氏が後援会に寄付するつもりだったら、領収書の発行者が政党支部になっていることに驚き、その領収書を突き返して後援会の領収書を発行するよう求めていたはずである。しかし、それもしていない。村上氏は政党支部に寄附する故意を有し、馬場議員側は政党支部で寄附を受領する認識を有していたことを間違いではないと思われる。
3.領収書、会計帳簿、金融機関口座等の捜査を!
被告発人馬場議員の政党支部と後援会の両政治団体の収支報告書の訂正は、以上の通り虚偽であると思われる。被告発人馬場議員は、被告発人村上が党本部に2000万円の寄附をしたことを知らなかったとは弁明せず、被告発人村上氏が党本部に2000万円の寄附をしたことを知っており、それが政治資金規正法の定める個人寄附の上限額だと知っていたと認めた(上記1?)。
告発人らは、御庁に対し、被告発人村上が受け取った領収書、被告発人馬場議員の政党支部と後援会の会計帳簿、送金銀行口座、事務方同士の間で送信・受信された電子メールがあるというなら強制捜査で確認して、本件政治資金規正法違反事件の真相を解明していただき、刑事事件として立件していただきたい。国会議員側の収支報告書訂正で犯罪を不問にする「不当な特権」を許してはならないとの思いで告発補充書を提出する。