澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

宇都宮健児君、立候補はおやめなさいーその14

のんびりと正月休みを楽しんでいるさなかに、複数の記者が我が家を訪ねてきた。私が携わっている「日の丸・君が代」問題や、消費者訴訟、医療過誤事件、あるいは改憲問題についての取材であれば喜んで時間を割きたいところ。が、都知事選についての取材ということで、お断りした。記者の熱意には頭が下がるが、都知事選について、ここしばらくは取材を受けるつもりはない。

私は、必要と考えた情報は、すべてこのブログに公表する。このブログに出ていない情報を個別の取材に応じて明らかにすることはない。少なくとも、今の時点ではその原則を貫く。だから記者さん、お越しいただいても電話をいただいても、このブログの内容以上に、お答えすることはございません。もし、記事を書かれるなら、ブログに記載の内容をできるだけ正確に引用していただくようにお願いします。

私は、原則として、宇都宮君再立候補問題については、このブログだけで発言をするが、唯一の例外が、1月19日午後1時30分からの「活憲左派集会」(文京シビックセンター3階会議室A)での10分間の特別発言。なお、当初は15分の予定だったが、吉田万三さんの発言も並ぶこととなって、私の持ち時間は10分間となった。私も万三さんも、質疑は受けつけないという事前のお約束。

マスコミの取材は受けないと決めた理由について、少し触れておきたい。

随行員としての任務外し事件のあと、私の息子・大河から上原公子選対本部長宛に、事件の経過の確認を求める「求釈明書」が何通か発信されている。その文中に、「一寸の虫にも五分の魂がある」というくだりがある。私はそれを読んで、誰を敵にまわそうとも、息子の側に立つことを決意した。

五分の魂を踏みにじられたとき、泣き寝入りしてはならない。人間の尊厳をかけて、叫び声をあげなければならない。また、傍観していてもならない。ましてや、それが自分の家族であればなおさらのこと。加害者が、国家権力であろうと、安倍自民であろうと、石原・猪瀬都政であろうと、ブラック企業であろうと、またブラック選対であろうとも、である。

私は、本件を「私怨・私憤」に過ぎないという見解や、「大所高所・大局」に立つべきだという、世に溢れる俗論を絶対に承服しない。それは、弱者に泣き寝入りを強いる強者の論理であり、いじめの被害者にすべての責任を転嫁するいじめる側の論理である。加害者と傍観者を、ともに免責し正当化する論理でもあるのだから。

しかし、国家権力や、ブラック企業を相手に声を上げる場合と、宇都宮選対を相手にする場合とでは、闘い方の違いはあろう。被害があったときには、多くの人に訴えかけて、加害者を糾弾する行動に立ち上がる仲間を作ることが闘いかたの基本だ。しかし、宇都宮君と宇都宮選対に対する「宣戦布告」では、単純にそうであってよいのかという問題の微妙さを意識せざるを得ない。私は、「たった1人の闘い」「筆1本(ブログだけを手段とした)だけの闘い」を決意した。この闘いに味方を募って誰をも巻き込むことをしない。闘う相手を拡げない。これを原則として大切にしたい。

だから、慎重に筆を自制したブログでの発信が、闘う手段として適当だと考えている。記者に挑発されて、うっかりと、「誰をも巻き込まない」「闘う相手を拡げない」原則を自ら破ることを恐れている。よほどの事情の変更がない限り、ブログ以外の場で、この件を語ることはない。

私を取材に訪れた記者は、当然に宇都宮君や選対関係者にも取材するだろう。私のブログもよくお読みいただき、是非、正確なよい記事を書いていただきたいと思う。

ところで、宇都宮君の方は、積極的に取材に応じているようだ。ネットで検索をしていたら、IWJの岩上安身さんが宇都宮君の立候補に関連したインタビューをしていることを知った。岩上安身さんは、そこで私のブログでの選対の選挙違反指摘を意識した質問をしている。要約として、次のようなやり取りがあったということだ。IWJのオフィシャルなテープ起こしではないようだが、複数のブログに掲載されているので、おそらくはほぼ正確なものと思う。

「問:熊谷さんの件について。有給休暇が取れるはずがないのに、実際取っていたのか?
答:本人に聞かないと分からないが、彼は仕事も一部やりながら、昼間は選挙運動、選挙始まるまでは、政治運動をやっていた。少なくても言われている様な事はない。彼は、仕事もちゃんとこなしながら、有給も使いながらやっていた。
「問:上原さんの件について。無給(ボランティア)でやるのが選挙であるが、上原さんにお金が支払われていた事が確認できる。これが公選法違反にあたるのではないか。
答:この点は実際に選対本部長をやられていて、その間の交通費などの実費の補填はしていたと聞いている。金額にして10万円。労務費になっていたが、収支報告書の訂正をする。
問:労務費は適正では無かったと。それは修正すると。
答:公選法違反については、公選法専門の弁護士団の公式見解をまとめて、来週の6日には発表出来る。そういう対応をしている。」

このインタビュー記事を見る限り、宇都宮君は私の指摘を無視せずに、何らかの対応が必要だという認識には至っているようだ。それは良しとして、次のことを指摘しておきたい。

「選挙運動収支報告書の訂正」をせざるを得なくなっている事態の深刻さの認識が決定的に不足しているのではないか。候補者が、自分の選対の公的な収支報告書の記載の不備を認めて訂正せざるを得ないと言っているのだ。そのみっともなさを自覚しなければならない。「訂正すればいいんだろう」「自分がやったことではない」という彼の姿勢が、遵法精神と責任感の欠如をよく表している。

実は、この問題は本来訂正になじむものではない。住所の記載の誤記訂正や、数字の書き間違いの訂正などとは自ずから異なる。上原公子選対本部長も服部泉出納責任者も、「選挙報酬として」と明記した自署押印のある領収証を作成して、各10万円を受けとっている。選挙収支報告書に、「選挙報酬として」と書けば、あまりに露骨な選挙違反(運動員買収)に当たるので、「労務者報酬」と記載したのだ。このカムフラージュは悪質と言わねばならない。指摘されて、書き直せば問題ないという感覚が、さらなる批判の対象となるだろう。

この選挙運動費用収支報告書には、平成24年12月28日付けで、「この報告書は公職選挙法の規定に従って作成したものであって、真実に相違ありません」という「出納責任者服部泉」の署名押印がある。訂正となれば、その責任が問われることになる。

書き直すとして、いったいどう書き直そうというのだろうか。支出区分を「選挙運動」として報酬を受けている者は29人にのぼる。そのすべてを書き直そうというのか。一部だけなのか。添付の領収証は間違ったものとして廃棄しようというのか。本来添付が必要な新規の領収証はどうしようというのか。

さらに、本当に実費分の支払いならよいのかという問題がある。宇都宮選挙には多くのボランティアが参加した。そのボランティアは手弁当・交通費その他の実費も自分持ちだった。誰もが、それを当たり前と思っていた。ところが、選挙運動に参加者の中の特定グループの人には、交通費その他の実費の支給がなされていたということなのだ。それで良いのだろうか。選対本部長の廉潔性が問われている。

宇都宮君自身の運動員買収問題や、熊谷事務局長の運動員被買収の問題について、「人にやさしい東京をつくる会」内部で具体的な指摘がなされたのは、選挙後2か月余経った2013年2月28日のこと。それから、10か月を経た時点で、明快な説明をすることができていない。「本人(熊谷事務局長)に聞かないと分からない」「公選法違反については、専門弁護士団の公式見解をまとめて、1月6日には発表出来る」ということなのだ。

私自身が弁護士で選対メンバーの一員として、選対のコンプライアンスに責任がなかったとは言わない。繰り返し申しあげているとおり、自らの不明や無能を恥じいるばかりだ。だが、どのように金が入り、どのように金が使われたか、その収支の管理にはまったくタッチしていない。具体的な報告に接することも皆無だった。選挙運動収支報告書の作成への弁護士の関与はまったくなかった。

改めて関係書類に目を通してみた。私が、上原公子選対本部長の選挙運動報酬受領を知ったのは、2013年4月11日のことである。私は、石原宏高の選挙違反を問題として、その選挙運動収支報告書を閲覧に都選管に足を運び、ついでに宇都宮陣営の報告書も閲覧して驚いた。これが発端。同日開示請求をして4月26日に写しを入手した。関係領収証については、別途6月3日に情報公開請求をして6月17日に開示決定を得、20日にその写しを入手している。

選対本部長が本来もらってはならない選挙報酬を労務者として受領していることは、「人にやさしい東京をつくる会」の代表である中山君には、一再ならず電話で伝えた。そして、中山君にも書類の閲覧を勧めた。もちろん、このことは中山君も知らなかった。同君が実際に収支報告書を閲覧したかどうかは知らない。

具体的に知らなかったとはいえ、私も責任を感じないわけにはいかない。宇都宮君も、候補者として責任を感じなければならない。私は今回選挙に関わらない。宇都宮君、君も立候補はおやめなさい。
(2014年1月3日)

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Published in 金曜日, 1月 3rd, 2014, at 23:03, and filed under 宇都宮君おやめなさい.

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