学術会議6候補の任命は、岸田政権の重大な課題だ。
(2022年1月14日)
学術会議が推薦した6候補に対する菅義偉の任命拒否は、権力による学問の自由蹂躙という大事件である。2020年10月1日のその事件が未解決のままに2度の年越しを経て、一昨年のこととなった。こんな「首相の違法行為」が放置されてよいはずはない。岸田政権は、安倍・菅のデタラメを承継してはならない。速やかに前首相の違法を是正して、6名を任命しなければならない。
昨日(1月13日)、岸田はこの問題をめぐって学術会議の梶田隆章会長と会談した。岸田は、「聞く耳」をもつことを、自分の美点と誇示している。「聞く耳」は重要だが、それだけでは何の意味ももたない。聞いたことをどう活かしどう実行するのか、それが問題ではないか。この会談で聞いたことを聞きっぱなしにして済ますのか、6人の任命実現につなげるのか。その姿勢を厳しく問わなければならない。聞くフリだけでは、タチが悪い。
主要メディアの、この会見に関する報道の見出しを拾ってみた。
読売 首相、学術会議の会員候補6人任命拒否は変えず…「当時の首相が判断し一連の手続きは終了」
赤旗 「任命拒否」変えず 首相、学術会議会長と会談
東京 首相、学術会議の任命拒否「もう結論でている」 梶田会長と面会
NHK 首相 学術会議の梶田会長と会談 “今後は官房長官窓口に対話”
毎日 岸田首相、任命拒否問題で学術会議と対話の姿勢 梶田会長と面談
朝日 学術会議の6人任命拒否問題「検討していく」 岸田首相、梶田会長に
産経 学術会議任命拒否 岸田首相「菅氏が決めたこと」
読売・東京・赤旗・産経は、岸田の姿勢を「聞いただけ」と否定的に厳しい見出しの付け方。これに対して、NHK・毎日・朝日は、「今後の対話と検討に期待」と温かく見守る姿勢。
とりわけNHKが暖かい。「日本学術会議が推薦した会員候補が前の政権で任命されなかったことに関連し、岸田総理大臣は学術会議の梶田隆章会長と会談し、今後は松野官房長官を窓口として対話を進めていきたいという考えを伝えました」というリード。
もっとも、「岸田総理大臣は『6人については、任命権者である当時の総理大臣が最終判断したもので、一連の手続きは終了したと承知している』と述べました」とは明記している。その一方で、「今後は松野官房長官を窓口として学術会議側と対話を進めていきたいという考えを伝えました。梶田会長は『少なくとも松野官房長官が担当となって検討していただけるということなので、前向きに捉えたい』と述べました」と期待を滲ませた報道となっている。
各紙の報道も内容は大同小異。岸田の「もう結論は出ている」「手続きは終了した」という発言をメインとするか、「今後も対話を進めていきたい」とする部分に重きを置くか。これは、岸田への幻想を切り捨てているか、持ち続けているかという各メディアの姿勢によるものではあるが、それだけでもないようだ。
世論の指弾が岸田をどれだけ追い詰めているのかということについての評価の差もあるのではないか。岸田は、世論に押されてやむなく学術会議会長との会談に応じざるを得なかった。情報公開請求や審査請求も利いているに違いない。という見方からは、NHK・朝日・毎日タイプの見出しになる。その評価がなければ、読売・東京・赤旗タイプとなろう。
また岸田について、安倍菅政権の残滓に縛られざるを得ないと見るのか、あるいはこの件を期に安倍菅政権から脱してリベラルな岸田色を出して世論の喝采を得ようとするサプライズもありと見るのか。
各紙は、記者団の取材に応じた梶田会長の談話として、「首相は学術会議と対話する姿勢を示し、松野官房長官をその窓口とすると応じた」「(任命拒否について)検討いただけるということなので前向きに捉えたい」「少なくとも官房長官にご担当いただいて、ご検討いただけるということなので、前向きにとらえたい」などと話したと報じている。
今後の「検討」の内容は予測しがたいが、基本は世論の高揚次第なのであろう。菅だけでなく、この件の黒幕とされた杉田和博官房副長官も既にその地位にない。世論を見ての岸田の決断次第で、6人の任命(任命拒否の撤回)は可能ではないか。