小池百合子の学歴詐称についての正念場が間近である。もしかしたら修羅場にも、土壇場にも、そして愁嘆場にもなるのかもしれない。
(2024年4月21日)
既に初夏、ツツジが美しく、今日初めて鯉のぼりを見た。上野公園では何台かの神輿が練っていた。6月20日の都知事選告示まであと2か月、投開票は7月7日。この時期に至ってなお、有力候補の出馬表明はまだない。
いまだに革新側の候補者の名が上がらない。いったいどうしたことだろうか。候補者選定のまずさと準備の不足から、目も当てられない都知事選が繰り返されてきた。今回もこの時期に候補者すら決まらないのでは絶望せざるを得ない。そう思っていたら、突然状況が変わった。今回こそはチャンスなのだ。何とかこのチャンスを活かせないか、希望をつなぎたい。
衆院補選(東京15区)への出馬の噂があった小池百合子だが、同補選には乙武洋匡を立候補させたとき以来、小池百合子の都知事三選出馬は確実で当選も間違いなかろうと言われてきた。今、その事態が大きく揺れている。小池百合子は、はたして都知事選に立候補できるだろうか。仮に立候補したとして、当選できるだろうか。状況を大きく変えたのは、小池百合子の学歴詐称問題の再燃である。もちろん、小池自身の身から出たサビ。
人間、ウソはよろしくない。見栄のための小さなウソが、引っ込みつかずに大きなウソを重ねなくてはならない羽目となる。小池百合子の学歴詐称がその最悪のお手本。普通人の感覚からは本人もさぞ苦しかろうと思うのだが、あの顔を見ていると案外そうでもないのかも知れない。かつては、「ウソつきは安倍のはじまり」と言われ続けてきたが、今や、「ウソつきは小池のはじまり」「ウソにウソが重なる小池のウソ」「終わりの見えない小池のウソ」と言わねばならない。安倍も小池もウソをついて平然としておられるのは、天性の資質なのだろう。
これまで、黒木亮、石井妙子、北原百代等々の関係者や取材者、あるいはアラビヤ語の達者からの解説で、小池百合子主張のカイロ大学卒業は真っ赤なウソと納得してきた。それに加えての、この度の小島敏郎告発である。同氏は小池百合子の側近であったとされる。事実、東京都の特別顧問であり、都民ファーストの会東京都議団政務調査会事務総長の肩書も持っていた。その人物が、小池の経歴詐称と隠蔽工作を天下に公言している。
小島敏郎の説明は立証として完璧なものではないにせよ、具体的で関係者の実名も出している。もし虚偽なら直ちに反論可能な内容だが、これを虚偽と反論する関係者はいない。樋口高顕千代田区長がその典型。小池と一緒に反論するのではなく、逃げ回っているのだという。以下は、文春オンライン 4/17(水) 16:12配信の記事である。
月刊「文藝春秋」5月号に掲載された「『私は学歴詐称工作に加担してしまった』小池百合子都知事元側近の爆弾告発」。この手記の中で学歴詐称工作に加担した一人と名指しされる現千代田区長の樋口高顕氏(41)が、月刊「文藝春秋」の発売日である4月10日から12日まで区役所に登庁せず、13日の公務をドタキャンするなど、行方不明となっていたことが「週刊文春」の取材で分かった。
今や小池百合子の学歴詐称は、万人の常識となっている。誰もが、内心では小池百合子をウソつきと認めている。しかし、実は彼女のカイロ大学卒業という経歴の真否はさほどの重要事ではない。問題は、このウソを突き通すために、際限なくウソにウソを重ねていく彼女のやりくちである。これでは、政治家としての彼女の言動のすべてを疑わざるを得ない。ウソつきは政治家失格だが、とりわけ民主主義社会においては、ウソつきと烙印を押された政治家の政治生命は終わったも同然である。
さて、夏の深まりとともに、小池百合子の正念場が近づきつつある。もし、小池が政治家人生を継続するつもりなら、都知事選の告示日である6月20日には立候補を届けなければならない。その際に、「カイロ大学卒業」の経歴にこだわり続けるのか、それともきれいさっぱり清算するのか。ここがロードスだ、さあ跳べ。だが、どう跳ぶべきだろうか。
無難なのは、学歴として「関西学院大学社会学部中退」、あるいは「カイロ大学中退」と記載すること。こうすれば、選挙犯罪として立件されることはなくなる。しかしそれでは、これまでウソをついてきたことを自ら認めることになる。刑事訴追は避けられても、政治家としては致命傷だ。自ら墓穴を掘ることになる。
さりとて、立候補届に「カイロ大学卒業」と書き込めば、確実に公職選挙法上の経歴詐称として刑事告発されることになる。そうなれば、あの怪しい「卒業証書」(アラビヤ語の表題は「証明書」に過ぎず、「卒業の証明」にはなっていないそうだが)も押収され徹底的に実況検分されることにもなり、口先だけでごまかし通すことはできなくなる。小池百合子よ、さあ、どうする。さあ、さあ、さあ、さあ。
公職選挙法235条1項は、(虚偽事項の公表罪)として、「当選を得…る目的をもつて公職の候補者…の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、…に関し虚偽の事項を公にした者は、2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する」と定める。
小池自身が、「当選を得る目的をもって、経歴に関し虚偽の事項を公にした」場合は、「2年以下の禁錮または30万円以下の罰金」に処せられる。のみならず、有罪が確定すれば、公民権停止ともなる。仮に当選しても、議席を失うことにならざるを得ない。政治家人生の終焉というべきであろう。
なお、黒木亮、石井妙子、北原百代、そして小島敏郎の各言論は、明らかに小池百合子の社会的評価を根底から損なう名誉毀損表現となっている。カイロ大学卒業の学歴が真実であれば、小池百合子は直ちに名誉毀損での刑事告訴をするか、民事的な損害賠償請求の提訴をすべきである。これだけのことを言われっぱなしで、何の法的措置もとらないのは、不自然極まりない。もちろん、「カイロ大学卒業が真実であるとすれぱ」という仮定の話ではあるが。
ちなみに、名誉毀損の提訴は、実に簡単だ。訴状を書き上げるのに半日はかからない。他方、被告とされた側の応訴は実務的に面倒限りない。真実性あるいは真実相当性を主張立証しなければならないのだから。そのゆえに、かつては武富士が名誉毀損訴訟を濫発した。10年ほどを経てDHC・吉田嘉明がこれを真似た。いずれも、スラップ専門弁護士の積極的助力あってのことである。今、猪瀬直樹や松本人志が同様の提訴している。弁護士としてこういう訴訟を引き受けるのは楽な仕事なのだ。小池が提訴を躊躇する理由はない。提訴依頼を引き受ける弁護士探しに困難もなかろう。それでも、提訴を躊躇しているのは、訴訟での審理の結果、却って学歴詐称が立証されかねないと恐れているからと憶測するしかない。