澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

高市早苗の対中国恫喝 「Cよ、おまえがTか仲間のAに手を出して一発でも撃ってみろ。そのときにはな、オレは黙っていないで反撃するぞ」

(2025年11月30日)
 日中関係が冷え込んでいる。先行きを憂慮せざるを得ない。習近平政権の過剰反応も看過できないが、まずはことを起こした高市早苗の責任を明確にしなければならない。

 アジアの平和と繁栄の基礎的条件として日中両国民の友好が不可欠であることは論ずるまでもない。その重要な日中両国の民間交流、経済・文化・学術・スポーツ・観光の発展を妨げているものは何だろうか。
 かつて浅沼稲次郎社会党訪中使節団は「米帝国主義は日中共同の敵」と言った。多少言葉を補えば、「米帝国主義とこれに従属した岸信介政権は、日中両国民共通の敵」と言う意味合い。60年安保闘争の前年のこと。とても分かりやすい情勢だった。

 しかし、時代は変わった。岸の孫の安倍晋三の、その後継を以て任ずる高市が政権を担っている。様変わりした日中の友好をめぐる新たな様相は、どうやら、「日中両国民友好の主敵はアメリカではなく、日中両政府」のごとくなのだ。

 予想に反して高市早苗が自民党総裁を制して総裁に就任したのが10月4日。その後、公明党が政権を離脱し、薄汚い自民にお似合いの、これも薄汚い維新が自民にくっ付いて、臨時国会冒頭の10月21日に高市新政権が発足した。

 日本の国民はきれい好きかと思いきや、自と維の汚い汚いコンビに対する評価は、今のところ、存外に高い。ポピュリズム政治というものを見せつけられる思い。

 その高市が、11月7日の衆院予算委員会審議で大きく躓いた。立憲民主党岡田克也の質問に、高市は「台湾を完全に中国政府の支配下に置くために、戦艦を使って武力の行使も伴うものとなれば、どう考えても存立危機事態…」とはっきり言っちゃった。もの言えば唇寒しである。はしゃいだ雉は撃たれるのだ。

 この答弁で、高市は隠しようもない地をさらけ出した。同時に国防や安全保障についての識見の浅薄さも。「台湾有事? 存立危機事態? ソンナコトヨリ、こんな首相で日本はもつのか」。真剣に考えなければならない。この答弁を引き出した岡田を称賛して当然のところ、これを責めるのは筋違いも甚だしい。

 10年前に、紛糾に紛糾を重ねた存立危機事態。そのの問題性について述べておきたい。
 「存立危機事態」とは、これまで集団的自衛権の行使は憲法(第9条)違反であるとしてきた政府見解を変更して、専守防衛から一歩を踏み出した安倍政権の、大きな負の遺産のひとつである。

 10年前の9月、国民的大反対運動を押しきって、いわゆる「安保法制」(戦争法)が束になって成立した。その中の個別の法律のひとつに「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(通称・事態対処法)という、恐ろしく長い名前の法律が成立した(正確には法の名称を変更しての改正法の成立)。

 その第2条四号が、存立危機事態を次のように定義している。
 「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。」
 物々しく厳重な要件であることは一見明白で、「戦艦を使って武力の行使も伴うものとなれば、どう考えても存立危機事態」とは、これがほかならぬ首相の言葉だけに、背筋が寒くなる。

 存立危機事態と認定された場合には、自衛隊の武力の行使(集団的自衛権の限定的な行使)ができることになる。具体的には、「内閣総理大臣は、原則としては国会の事前承認のもと、自衛隊法第76条第1項の規定に基づく防衛出動を命ずることができる」(事態対処法9条4項二号)ことになる。

日本が攻撃されたわけでもないのに、台湾海峡に戦艦が出て「戦艦を使って武力の行使も伴うものとなれば、どう考えても存立危機事態」だから、内閣総理大臣は自衛隊に中国に対する武力行使、すなわち開戦が可能だと言ったことになる。

 高市の言は、中国側にはこう聞こえる。
 「Cよ、おまえがTか仲間のAに手出しをして一発でも撃ってみろ。そのときにはな、オレは黙っていないで反撃するぞ」
 こんなことを敢えて言ったのだ。しかも、1972年の日中共同声明で、日本は事実上「台湾は中国の領土の一部」と認めている。泥棒にも三分の理と言うが、高市の存立危機事態発言には一分の理もない。

 とは言え、習近平政権の民間交流に介入するえげつなさも相当なもの。日本国民に嫌われてけっこうというやりくちは感心しない。愚かな両政府のやりくちを冷静に批判しながら、民間交流を絶やさない賢い日中の両国民でありたい。

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Published in 日曜日, 11月 30th, 2025, at 15:54, and filed under 未分類.

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