道徳教育の教科化に反対する
小中学校における道徳教育の教科化がはかられようとしている。「文部科学省は、近く中央教育審議会に諮問し、2018年度にも実施の見通し」などと報道され、「道徳科」検定教科書の導入も既定の方針のごとく語られている。安倍政権の教育政策の柱のひとつとして危険極まりなく、看過しえない。
「道徳」には、上から目線の胡散臭さがつきまとう。そのような役割を果たしてきたからだ。人類が社会を形成して以来、支配被支配の関係が途絶えることはなかった。支配者は暴力で支配を確立し、宗教的権威で支配を確実化しようと試みた。時代が下ってからは、経済力による支配の比重が大きくなっている。そして、安定した支配の手段として、被支配層にその時代の支配の秩序を積極的に承認するよう「道徳」が求められてきた。
社会的支配の手段としての道徳とは、被支配者層の精神に植えつけられた、その時代の支配の仕組みを承認し受容する積極姿勢のことだ。内面化された支配の秩序への積極的服従の姿勢といってもよい。支配への抵抗や、権力への猜疑、個の権利主張など、秩序の攪乱要因が道徳となることはない。道徳とは、ひたすらに、奴隷として安住せよ、臣下として忠誠を尽くせ、臣民として陛下の思し召しに感謝せよ、お国のために立派に死ね、文句をいわずに会社のために働け、という支配の秩序維持の容認を内容とするのだ。
本家の中国に「王土王臣」思想というものがあった。詩経に「溥天の下王土に非ざるは莫く、率土の濱王臣に非ざるは莫し」とあるそうだ。要するに、「広大無辺のこの地のすべてが帝王のものであり、その地の人々のすべてが帝王の臣なのだ」という、王と王の支配に加担する者たちが勝手に作りあげたご都合主義の「思想」。この強者の押しつけが、被支配者に積極的に受容されれば、「道徳」となる。儒家とは、そのような道徳の主たる宣伝者であった。「君君足らずとも、臣臣たれ」と、自虐的にバカ殿にも忠義を尽くせとまで説いたのだ。
中国を真似て、古代日本にも「ミニ王土王臣思想」が取り入れられた。割拠勢力の勝者となった天皇家を神聖化し正当化する神話がつくられ、その支配の受容が皇民の道徳となった。支配者である大君への服従だけでなく、歯の浮くような賛美が要求され、内面化された。
武士の政権の時代には、「忠」が道徳の中心に据えられた。幕政、藩政、藩士家政のいずれのレベルでも、お家大事と無限定の忠義に励むべきことが内面化された武士の道徳であった。武士階級以外の階層でもこれを真似た忠義が道徳化された。強者に好都合なイデオロギーが、社会に普遍性を獲得したのだ。
明治期には、大規模にかつ組織的・系統的に「忠君愛国」が、臣民の精神に注入された。学校の教室においてのことである。荒唐無稽な「神国思想」「現人神思想」が、大真面目に説かれ、大がかりな演出が企てられた。天皇制の支配の仕組みを受容し服従するだけではなく、積極的にその仕組みの強化に加担するよう精神形成が要求された。個人の自立の覚醒は否定され、ひたすらに滅私奉公が求められた。
恐るべきは、その教育の効果である。数次にわたって改定された修身や国史の国定教科書、そして教育勅語、さらには「国体の本義」や「臣民の道」によって、臣民の精神構造に組み込まれた天皇崇拝、滅私奉公の臣民道徳は、多くの国民に内面化された。学制発布以来およそ70年をかけて、天皇制は臣民を徹底的に教化し臣民道徳を蔓延させて崩壊した。この経過は、馬鹿げた教説も大規模に多くの人々を欺し得ることの不幸な実験的証明の過程であったといえよう。
戦後も、「個人よりも国家や社会全体を優先して」「象徴天皇を中心とした安定した社会を」などという道徳が捨て去られたわけではない。しかし、圧倒的に重要になったのは、現行の資本主義経済秩序を受容し内面化する道徳である。搾取の仕組みの受容と、その仕組みへの積極的貢献という道徳といってもよい。
為政者から、宗教的権威から、そして経済的強者や社会の多数派からの道徳の押しつけを拒否しよう。そもそも、国家はいかなるイデオロギーももってはならないのだ。小中学校での教科化などとんでもない。
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☆抗議内容の大綱は
*籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
*経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
*百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
*経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任勧告せよ。
こちらもよろしくお願いします。
(2014年5月9日)