半藤一利・保阪正康両氏の危機感を真剣に受けとめよう
本日、知人から5月5日付「岩手日報」の切り抜きをいただいた。「現論」というコラムに、半藤一利の気合いの入った論稿が掲載されている。タイトルは、「集団的自衛権と総動員法」、副題が「危うい『国防』の野心」である。
国家総動員法は第1次近衛内閣によって、1938年2月第73帝国議会に法案として提出され、3月16日に無修正で可決。5月5日に施行されている。その国会審議の過程で、有名な「黙れ」事件が起きている。
衆議院・国家総動員法委員会において「黙れ!」と叫んだのは、陸軍省の説明員として出席していた佐藤賢了。当時陸軍中佐で軍務課員だった。法案の精神や個人的な信念を滔々と演説した佐藤に「やめさせろ」「やめろ」と野次が飛んだ。そのとき、政府の説明員に過ぎない佐藤が、国会議員に対して「黙れ!」と怒鳴りつけたのだ。軍人の傲慢極まれりという象徴的事件として語られる。
戦後、半藤は、その佐藤賢了をインタビューしたことがあるという。佐藤は、次のようにまくし立てたそうだ。
「いいか、国防に任ずる者は、たえず 強靱な備えのない平和というものはない と考えておる。そんな備えなき平和なんてもんは幻想にすぎん。いいか、その備えを固めるためにはあの総動員法が必要であったのだ」
半藤は述懐する。
「この元軍人には反省という言葉はないと、そのとき思った。そして勝海舟の言葉『忠義の士というものがあって、国をつぶすのだ』とつぶやいたことであった。」
そして、半藤は、今をこう見ているという。
「いま、政治の場での、憲法解釈変更の集団的自衛権行使論議をみていると、奇妙なほど佐藤賢了氏の壮語が想起されてくる」「『国防に任ずる』人たちは、いつの時代でも『いまそこにある危機』型の議論をひたすら強調し、とにかく戦争のできる『正常な大国』にしたがっているようである」「国家総動員法の成立が国家滅亡の一里塚となったような危険を、集団的自衛権はこの国にもたらす。そんな予感が消せないでいる。」
この記事に目を通して、5月10日付毎日の「保阪正康の昭和史のかたち」を思い出した。こちらのタイトルは、[閣議決定による集団的自衛権容認]「統帥権干犯論法復活を憂う」というもの。大意は、以下のとおりである。
「『統帥権の独立』は、明治憲法には明記されていないが、この語が昭和前期を軍事主導体制一色に染めたことは否定できない」「統帥権を手にした軍部は、やりたい放題、国民の生命と財産の保全なんか二の次であった」「太平洋戦争に至る道筋は、この語によって政治家も官僚も政策の進展をなにひとつ具体的に知らされていなかった」「憲法が、昭和のある時期から、こうした不明朗な語を用いることで権力構造を歪めてしまったのはなぜだったのか。私たちは今この事実と向き合う必要がある」
なぜ今、統帥権干犯論争と向き合う必要があるのか。保坂は、今を昭和前期の過去になぞらえる。
「安倍内閣は、この轍を踏もうとしている」「安倍内閣の閣議決定が憲法よりも上位に位置し、それを主権者の国民には知らせない『特定秘密』にするという時代を私は恐れるのである」
半藤も保坂も、保守陣営の人という印象が強い。その両人がそろって、戦前の歴史と比較した安倍政権の危うさを、ここまで深刻に語っている。「今そこにある危機」についての警告。
半藤は、集団的自衛権行使論議が行われる時代の状況を、国家総動員法の時代を想起させるものという。総動員法成立の後3年で、日本は太平洋戦争に突入している。
保坂は、「解釈改憲+特定秘密保護法≒統帥権干犯論」という定式を掲げている。なるほど、憲法がないがしろにされるときは、戦争が近づいているときなのだ。
昭和史研究者の貴重な警告を、真剣に受けとめねばならないと思う。
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*経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
*百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
*経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任勧告せよ。
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(2014年5月11日)