「暴走する戦車」を止めようーNHK職員・OBの諸君とともに
正月に多くの方から年賀状をいただいた。中には何通か「毎日のブログを楽しみにしています」などというお世辞も。とてもありがたいことと思う。だが、私の方はこの20年ほどは賀状を出していない。汗顔、無礼をお詫びするばかり。
年賀状はそれぞれのメッセージに満ちている。なるほどごもっとも、と膝を叩くようなご意見をたくさん頂戴した。以下はそのうちの一つ。学生時代同級だった多菊和郎さんからのもの。多菊さんは、元はNHKの国際放送局国際企画部職員。NHK放送文化研究所のメディア経営研究部長の任にもあった。退職後には、江戸川大学の教授として、その紀要に「受信料制度の始まり」という優れた論文も書いている。(http://home.a01.itscom.net/tagiku/)
ご承諾を得て、挨拶の部分を割愛してご紹介する。
「broadcastという英語の第一の語義は『種を播く』という意味です(OED)。とすると40?の貸農園で少しの野菜を作る私も一人のbroadcasterということになりますが、さて東京・渋谷の大農場ではどのような采配の下にbroadcastingの事業が営まれているのでしょうか。
去年の夏NHK退職者有志が呼びかけた『籾井会長の罷免を求める活動』には1,500人を超える元職員が賛同の意思を表明しました。古巣の組織の変事というよりは民主主義を毀損する、節度を欠いた権力主義的人事との問題意識が多くの人の脳裏にあったと思います。
原発再稼動、集団的自衛権行使、言論統制、沖縄‥。暴走する戦車を傍観していてはいけないと私は考えます。」
さすがにメディアの人らしいセンス。ネギやキャベツ、レタスなどが青々とした農園の写真が添えられている。これが彼のbroadcast成果。対して、本家のbroadcasting事業者の方は、豊かな成果どころではない。芽生える緑を踏みつぶすブルドーザーと化そうとしている。「民主主義を毀損する、節度を欠いた権力主義的(会長)人事」とは、事態の本質を喝破したものだ。
OBと現職、思想信条も感性も大きく異なっているはずはない。1500人の「もの言うOB」は、明らかに現職の気持を代弁し現職を励ましていることだろう。がんばれ、NHK職員諸君。
多菊さんの目には、「暴走する戦車」が映っている。NHK人事を通じての言論統制だけでなく、原発再稼動、集団的自衛権行使、沖縄‥等々。同感だ。いま、あらゆる分野で「暴走する戦車」の脅威が目に余る。暴走する戦車を止めなければならない。まずは暴走にブレーキをかけよう。そして止めた戦車には退場を願おう。いまなら、まだ間に合うのだから。
なお、多菊さんの賀状の冒頭に、「謹賀新年 2015年元旦」とある。これが嬉しい。NHKはいまだに元号使用にこだわっているからだ。私も元号不使用にこだわりがある。元号使用は一世一元制の尊重という、体制に従順な姿勢の表明ではないか。なにしろ、「現天皇の即位を起算点として年を特定」しようというのだから。今年の年賀状を眺めると、元号使用派がめっきり減っていることを好ましく思っている。
(2015年1月4日)