澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「誰一人、置いてきぼりにしない」北海道5区の池田まき候補に注目

北海道5区の衆議院補欠選挙の日程が間近だ。4月12日告示24日投開票。この選挙の意味が大きい。参院選の前哨戦でもあり、野党共闘成功の試金石でもある。この選挙結果が衆参同時選挙の有無を決めることになるかも知れない。今後の情勢を大きく変えうる選挙として注目せざるを得ない。

北海道5区とは、札幌市厚別区、江別市、千歳市、恵庭市、北広島市、石狩市、当別町、新篠津村の地域。有権者455,720人。

補欠選挙は、町村信孝前衆院議長の死去に伴うもの。自民党は亡町村信孝の次女の夫を立てての「弔い合戦」。これに対抗して「安全保障関連法廃止を目指す野党統一候補」となっているのが、無所属新人池田まき(43歳)。どのメディアも、「池田まき急追」「大接戦」の報。当然のことながら知名度はイマイチだが、清新さでは断然リード。

下記URLが、池田まき公式WEBサイト。政治家らしくなく、候補者らしくない、同候補の好感度は抜群と言ってよい。
  http://ikemaki.jp/

 「ずっと平和を。もっと安心を。北海道5区から日本を変えよう」
これが、同候補のメイン・スローガン。
そして、同候補の最大の強みは、福祉の現場で働いてきたこと。多くの人の生活苦や不幸と直接に接してきたことである。

同サイトでは、こんな挨拶文を読むことができる。
 「飢餓、貧困、格差、紛争、難民、テロ。
  立憲主義、民主主義の危機。
  世界の、そして日本の大きな課題です。

  強い者による強い者たちのための政治が、
  こうした問題を深刻化させています。
  権力の暴走を止めなければなりません。
  声なき声をもよく聞き、政治に反映させなくてはいけません。
  『誰一人、置いてきぼりにしない』
  『誰もが安心して暮らせる社会をつくる』

  私、池田まきはそれをモットーに、福祉の現場で、
  既成概念にとらわれず、行動を起こしてきました。
  さらに、環境、経済、政治など広い分野で
  社会的な危機の解決に取り組んでいくために。
  ここ北海道から、より良い日本をつくりたい。
  池田まきは、皆さんと共に、
  平和、いのち、暮らしを守る戦いに挑みます。」

『誰一人、置いてきぼりにしない』は、手垢の付いた政治家には言えないセリフ。「安保関連法案に反対するママの会」の名言、「だれのこどもも、ころさせない」を連想させる。野党共闘候補としてまことにふさわしいものではないか。

北海道新聞が同候補の人となりを詳報している。
「池田氏 虐待、夫蒸発…壮絶な半生あえて語る」という見出し。およそ、二世候補などとはまったく違う生い立ち。政治家になるべく育ったのではない。恵まれない家庭に生まれ、社会に翻弄された「普通の生活者」が政治の世界に跳び込もうというのだ。

「子供時代は平和な家庭でなかった。今でいうDV(ドメスティックバイオレンス)。社会は助けてくれず、いつも空を見ていた。」
「幼いころから、父親によるDVは日常茶飯事。母親、妹とともに、暴力を受け続けた。中学時代には父親から避難するため、4人家族がバラバラになった。18歳で結婚した。2人の子どもに恵まれ、やっとつかんだ幸せも、わずか2年で夫が借金で蒸発。シングルマザーとして生活保護を受けながら介護ヘルパーなどの資格を取得し、東京都板橋区職員に採用された。」
「安全保障関連法廃止を目指す野党統一候補として脚光を浴びるが、政治家を志した原点は福祉だ。生きづらさをばねにはい上がり、当事者目線で福祉の仕事をしてきた自負がある。」
こんな候補者なら、応援したくなるではないか。

2014年12月の前回(第47回総選挙)北海道第5区の選挙結果は、以下のとおりだった。なお、投票率は58.43%。

当 町村信孝 70 自民(公明推薦) 前 131,394票 50.9%
  勝部賢志 55 民主党       新 94,975票 36.8%
  鈴木龍次 54 日本共産党    新 31,523票 12.2%

単純な票数合計なら、「自・公」対「民・共」は自公若干有利ながらもほぼ互角。但し、今回の自民公認(公明推薦)候補は、町村後継の強み。「弔い合戦」の有利もある。これに対して、反安倍統一候補は、選挙協力の相乗効果を生かせるかどうかがカギ。

相乗効果ならぬ「相殺効果」が生じることもある。民共各支持者の意見が余りに違い、各党の公認候補なら投票するが、共闘候補では投票の意欲が湧かないという場合だ。あるいは、共闘を至上目的として候補者を選任した結果、結局魅力ある共闘の候補者を得られなかった場合など。そんな場合は、共闘候補の得票数は、民・共それぞれ単独立候補の場合の想定得票数に及ばぬことになる。

しかし、今回の場合その心配はなさそうだ。何よりも、共闘の大義がある。非立憲安倍政治の暴走を許すなという広範な市民層に後押しされての共闘である。大きな相乗効果が期待できるのではないか。

前回選挙で、日本共産党候補に投票した3万人余の多くは、死票になることを覚悟で同党への支援アピールの投票であったろう。反自民候補当選の可能性が低いことから、投票の意欲を失った有権者もすくなくなかったのではないか。これらの有権者が今度は、共闘候補に投票するだろう。何しろ、民共の統一候補ならば、現実に当選の可能性が出て来る。この可能性は選挙活動のモチベーションを上げることになるだろう。

私はひそかに思っている。
 北海道5区選挙共闘成功⇒緒戦の勝利⇒参院選野党選挙共闘の進展⇒参院選での野党共闘勢力の勝利⇒衆院小選挙区での選挙共闘の進展⇒総選挙での野党共闘の勝利⇒自民改憲断念⇒安倍退陣

これを、「好循環」という。アベノミクスへの期待が蜃気楼として消えつつある今、このような好循環はけっして夢でも幻でもないと思うのだが。
(2016年4月4日)

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