参院選2日目ー自民党のゼネコン献金要求は犯罪である
一昨日(7月3日)、参院選公示前日の与野党党首討論会の席上で、共産党の志位委員長が、自民党から日本建設業連合会宛に献金要請があることを暴露した。その金額は4億7100万円。これは、大事件である。にも拘わらず、メディアの取り上げ方があまりに小さい。どう考えても不自然。
敏感に反応したのは、畏友阪口徳雄君。早くも昨日付のブログで、「参議院選挙に関しての寄付要請であると認められ、公職選挙法違反!!」と指摘している。本日の私のブログは、阪口意見を補充するもの。
赤旗の記事によると、志位さんの発言は以下のとおり。
「志位: 安倍さんに質問いたします。ここに今年2月、自民党の石破幹事長をはじめ三役連名で出された文書があります。ゼネコンなどで構成する「日本建設業連合会」にあてた政治献金の要請文です。私たちの「しんぶん赤旗」日曜版が入手したものです。要請文には、自民党の政治資金団体である国民政治協会の文書が添えられております。そこでは、自民党は「『強靱な国土』の建設へと全力で立ち向かっており」、こうした「政策遂行を支援するため」献金をお願いしたいと述べ、「一、金 四億七千壱百萬円也」と金額まで明示しております。まるで請求書です。「国土強靭化」とは10年間で200兆円という巨額の公共事業を進めるものですが、その見返りに金額まで明示して政治献金を求めるーこれは文字通り政治を金で売る、最悪の利権政治だと思いますが、見解を求めます。」
共産党も志位さんも品がよいから、「自民党のやったことは犯罪だ」と決め付けはしない。自民党が文書で要請した献金を「政治献金」だとして、極めて押さえた発言となっている。押さえてなお、「政治を金で売る、最悪の利権政治だと思います」との指摘となっている。この献金要請にゼネコン側が応じたとすれば、こちらの方は「政治を金で買う、最悪の利権行為」と指弾されなければならない。
企業とは利潤追求を目的とする存在である。企業がする政治献金は、自社の利益のためにする支出でなければならず、企業利益を目的とした手段としての政治利用の対価にほかならない。基本的に賄賂と異なるところがないのだ。ところが、政治をゆがめる企業献金も、政治資金規正法は全面禁止とはしておらず、自民党は政党助成金も企業献金も、両方を手にしている。これでは、労働法制も企業税制も、企業の望むとおりとなることは必定ではないか。自民党が政権を担っている限りは、実質において、「企業の企業による企業のための」政治となるざるを得ない。「政治を金で売買する、最悪の利権屋政治」の横行である。
以上は、要請の献金を政治資金と理解した場合の話し。要請の献金が特定の選挙との関連性ありと認定されれば、公職選挙法上の「特定の寄附の禁止」条項に該当して犯罪となる。要するに「金で選挙を買う」悪質な実質犯の一つである。関連条文は以下のとおり。
第199条 衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と…請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない。
第200条1項 何人も、選挙に関し、第199条に規定する者に対して寄附を勧誘し又は要求してはならない。
2項 何人も、選挙に関し、第199条に規定する者から寄附を受けてはならない。
第248条1項 第199条第1項に規定する者(会社その他の法人を除く。)が同項の規定に違反して寄附をしたときは、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項 会社その他の法人が第199条の規定に違反して寄附をしたときは、その会社その他の法人の役職員として当該違反行為をした者は、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
第249条 第200条第1項の規定に違反して寄附を勧誘し若しくは要求し又は同条第2項の規定に違反して寄附を受けた者(会社その他の法人又は団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
日建連の正会員たるゼネコン各社が、「国と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である」ことは自明と言って差し支えなかろう。すると、犯罪の成否は、本件4億7100万円の寄付要請が、「選挙に関しての」ものであったと言えるか否かにかかっている。強要も利益誘導も要件ではない。
自民党3役と財務委員長・経理局長の5名と国民政治協会の会長は248条で、この寄付要請に応じた各社の役職員は249条で、「3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」に処せられることになる。
4日付の赤旗に、2通の献金要請書の全文が掲載されている。その一通が、「財団法人国民政治協会から社団法人日本建設業連合会宛の、4億7100万円という金額を明記したもの」。もう一通が、「自民党(幹事長石破茂以下5人の連名)から社団法人日本建設業連合会宛の金額の記載ないもの」。いずれにも、「寄付」「寄金」「献金」という言葉はない。金額だけを記載して、「何卒よろしくご協力を賜りますようお願い申し上げます」でわかり合える間柄なのだ。
2通の要請文書の日付は、いずれも「平成25年2月」である。その時期と、要請の文言、金額、そして自民党とゼネコンという当事者の関係から、選挙との関連性を見極めなければならない。
文書の文言は、「本年夏には、参議院選挙が行われます。ねじれ状態を解消してこそ、はじめて安定した政治を行うことが可能となります」「国民国家のために、我々はこれに勝利し、安定政権を打ち立てなければなりません」。そう明記したうえで、「御協力方につきましては、わが党の政治資金団体であります一般財団法人国民政治協会より別途お願いを申し上げていることころでございますが、何卒御高配賜りますよう重ねてお願い申し上げます」というものである。
5か月先の参議院選挙を明示し、「ねじれ状態を解消してこそ、はじめて安定した政治を行うことが可能となります」「これに勝利し、安定政権を打ち立てる」ために、「御協力をお願い」というのである。これで、「参院選に関しての寄付要請」と認定することになんの躊躇が必要であろうか。これは、「最悪の利権政治」という道義的責任のレベルではない。明らかに公選法上の犯罪というべきである。
なお、4億7100万円という切りの悪い金額は、何らかの基準によって計算し算出した金額であることを窺わせる。おそらくは寄付金の総枠規制を考慮した個別企業への割付を行ったものであろう。背景に算定根拠がある以上は、「1円も欠けてはならない」とする迫力を感じさせる。当然のこととして、他の業界にも同様の寄付要請があろうことも推察させる。
自民党は、今進行している参院選を、このような汚い金を潤沢に注ぎこんで有利に展開している。妥協のない徹底した追求が必要である。
(2013年7月5日)