アベにも小池にも、ノーを。キツネにもタヌキにもだまされてはならない。
もう一度よく思い起こして、肝に銘じておこう。第194臨時国会は、森友・加計疑惑追及の国会になるはずであった。憲法53条にもとづき、その趣旨で4野党が内閣に臨時国会の招集を要求したのが6月21日。安倍内閣は、開会となれば疑惑の追及に耐えがたいとして、これを棚ざらしにしたまま放置し、ようやく9月28日開会と決定したものの、所信表明すらないままの冒頭解散となって総選挙になだれ込んだ。まさしく、「モリ・カケ疑惑隠し解散」である。
とりわけ森友学園問題では、直接の当事者である近畿財務局の担当官と籠池夫妻との国有地売買における値引き交渉の録音が公開された。これで、従前の政府説明のウソが明らかとなってきた。アベ政権は、その新たな疑惑に向きあうのは不利と見て「疑惑隠し」解散に踏み切ったのだ。後付けの解散の大義など、取って付けた大ウソである。
「丁寧に説明します」というのが、これまでのアベのウソの常套句だった。「これからは丁寧にいたします」と誓約して、これを実行したためしはない。その常套句が最近変化しつつある。「丁寧に説明した」と過去形で語るのだ。いったいぜんたい、どこでどう「丁寧に説明した」というのか。アベは国民をなめきっている。「丁寧に説明しました」などという子供だましで、国民をごまかせると思っているのだ。万が一にも、総選挙で勝つことになれば、「森友問題も、加計学園も、共謀罪も集団的自衛権行使容認問題も、もうみんな丁寧に説明しましたよね」と言いかねない。
そこで、「国民をなめてはいけない」というメディアの調査報道に期待したい。今朝(10月5日)の毎日新聞の「『衆院選2017』 政治家、言葉軽すぎ 『丁寧な説明』で冒頭解散 / 中身明かさず改憲踏み絵」というファクト・チェックの調査記事が、記者のスジの通った姿勢を示している。小国綾子、和田浩幸両記者の署名記事。
記者は読者に、いや日本の民主主義にこう問いかけている。
「政治家の言葉が軽すぎやしませんか。決めたことや言ったことが数日でひっくり返る。安倍晋三首相の『自己都合』と批判される衆院解散で政治が混乱し、政治家たちが右往左往する。今回の選挙では何を信じ、何を基準に投票すればよいのか。」それを検証しようというのだ。
「『森友・加計学園問題隠し』と批判される安倍首相は、解散表明時に選挙を通じて国民に説明するとしたが、これまでの街頭遊説で言及はない。政権公約に掲げている憲法改正にも言及していない。
民進党の前原誠司代表は希望者全員合流を請け合ったが、希望の党の小池百合子代表は「(リベラル派を)排除する」と宣言。前原氏も「想定内だ」と述べ、周囲を驚かせた。
現状をどうみるか。識者2人に聞いた。
政治アナリストの伊藤惇夫さんは、首相が解散表明時、森友・加計問題について「丁寧に説明する努力を重ねてきた」と発言した点に注目する。「あぜんとした。それが大して問題にならないのも不思議です」。北朝鮮情勢を踏まえ首相が不在時、東京で待機するとしていた菅義偉官房長官が地方遊説に出たことについても「はっきり言って虚言。そんなことが許されていいのか」とあきれている。
映画作家で米国在住の想田和弘さんは、政治家の言葉の変遷について「確信犯的なウソに見える」と言う。「首相は森友・加計問題で全然『丁寧な説明』をしていない。説明するつもりなら冒頭解散はありえない。結局は疑惑逃れでしょう」
返す刀で希望を批判する。「党綱領に『立憲主義と民主主義に立脚し』と盛り込む一方、憲法改正の中身を明らかにしないまま政策協定書で候補の“踏み絵”に使う。どこが立憲主義ですか」。想田さんは希望の唱える政権選択選挙に疑惑の目を向ける。「小池氏は選挙後の自民党との連立を否定していない。安倍政権にノーと言うつもりで希望に投票しても、ふたをあけたら自公と大連立ということになりかねません」(以下略)
「政治家の言動、どうなっているの?」と題する表が付けられている。
幾つかの項目を選んで、自民党と希望・民進の各トップの発言と、現実を対比したもの。「こうなるはずだったのが…」「こうなってしまって…」と、まとめられている。
まずは、自民党。
「(森友、加計学園問題では)批判も受けとめながら、国民のみなさまにご説明もしながら選挙を行う。(9月25日記者会見で安倍首相)」はずだったのが、現実には⇒「首相はこれまでの遊説で、森友・加計問題に言及せず」
「菅義偉官房長官らは北朝鮮情勢に備え衆院選期間中も東京都内で待機し危機管理にあたる(9月26日に安倍首相が指示)」のはずが、⇒「10月1日に菅官房長官が北海道遊説。『官房副長官が待機し、万全の態勢であることに変わりはない』(2日の記者会見で菅氏)」
「憲法改正(自衛隊明記、教育無償化、緊急事態対応など)の原案を国会に提案、発議(政権公約)」のはずが、⇒「安倍首相はこれまでの遊説で憲法改正に言及せず」
そして、希望や民進党も。
「小池代表が国政に出ることもあり得る(希望の党の若狭勝氏が1日、NHKの番組で)」が、⇒「(衆院選には)出ない(2日の毎日新聞インタビューで小池氏)」
「(政権交代は)次の次(の衆院選)くらい(若狭勝氏・NHK)」が、⇒「今回の選挙で政権を狙いたい。まずは単独政権(毎日新聞・小池氏)」
「(希望への合流では)誰かを排除するわけではなく、みなさんと一緒に進む」(9月28日の民進党両院議員総会で前原誠司代表)」のはずが、⇒「(リベラル派は)排除する。(9月29日記者会見で小池氏)」「現時点では全てが想定内(10月3日前原氏)」
「消費税が2~3%高くなっても安心して過ごせる社会を(安倍政権への)対立軸として示したい。(8月20日、上尾市での代表戦遊説で前原氏)」だったが⇒「民進党から合流した前職らに希望の党が示した政策協定書は『消費税の10%引き上げ凍結容認』」
こうしてファクトチェックしてみると、「言葉軽すぎおじさん」と「リセットおばさん」。その無責任さかげんにおいて、竜虎相譲らない。いや、両名とも徹底して国民をだまそうとしているのだ。有権者はしっかりと見極めなければならない。政治家の言葉の軽さの裏に意図的なダマシがあることを。キツネにもタヌキにもだまされてはならない。でなければ、待ち受けるものは改憲翼賛体制なのだから。
(2017年10月5日)