澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

秘密政治結社「アベノセイダーズ」結成宣言 ― 当「憲法日記」毎日連続更新1800回記念号

宣  言

1 われらはみな日本国憲法とともに生きる主権者国民である。暮らしの中にこの憲法の理念を活かして、もっと明るく生き生きと豊かな生活をする道を見付けたい。
そのためには、平和への道、自由への道、平等への道、福祉国家への道、民主主義への道、公平・公正な政治の道を尋ねなければならない。

2 誰がこの道を阻んでいるか。アベだ。
  誰が平和を壊そうとしているか。アベだ。
  誰が近隣諸国との協調を破壊しているか。アベだ。
  誰が専守防衛を越える大軍拡を狙っているか。アベだ。
  誰が言論の自由を奪おうとしているか。アベだ。
  誰が格差と貧困を生み出しているか。アベだ。
  誰が福祉を切り捨て過労死を作っているか。アベだ。
  誰が政治と行政を私物化しているか。アベだ。
  誰が歴史修正主義の尖兵となっているか。アベだ。
  誰が、右翼の跳梁跋扈を招いているのか。アベだ。
  虎視眈々と憲法改悪を狙っているのは誰だ。アベだ。
  行政文書を隠匿しているのは誰だ。アベだ。
  公文書を改竄しているのは誰だ。アベだ。

3 近代科学の実証と先人たちの実体験と、
  われらの直観の一致に於て論じたい。
  悪いのはすべてアベだ。アベこそが一番悪い。
  未曾有の悪政の象徴たるアベのせい。
  アベの責任追及云々(でんでん)こそが、喫緊の課題。
  気候が不順な原因も、今日の天気が悪いのも、
  あれもこれも、みんなみんなアベノセイなのだ。
  みんなみんなアベノセイダと声をあげよう。

われらは日本国民のまことの幸福を索ねて、アベのセイダと声を上げよう。
何も言わなければ何も始まらない。何も動かず、何も変わらない。
「アベのせいだ」「アベが悪い」「アベは責任をとれ」「アベやめろ」
そう声を発することが最初の一歩である。
みんなで一歩を踏み出せば、
アベを辞めさせ、憲法を守り、今の世を変えることができる。
偉大なるかな。「アベノセイダーズ」

あらゆる場面で、あらゆる道の模索を重ねよう。子どもに小言を言ったり、夫婦喧嘩をしたり、ちょいと一杯やったり、散歩したり、通勤電車の中など、折々のついでに、「あれもこれもアベノセイダ」とつぶやこう。倦まずたゆまず、「とりあえずアベが悪い」「だからアベはやめろ」と言い続けることを、われらは誓う。

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秘密結社アベノセイダーズ規約

1 名称
本結社(以下、「当会」という)の名称は、正式には「秘密結社アベノセイダーズ」という。
しかし、状況によって、「なにもかにもすべてアベノセイダーズ」でもよいし、「アベノセイかもねーズ」「もしかしたら、それもアベノセイダーズ」と、日和って名称を名乗ってもよい。状況に合わせて柔軟に原則も変える。会の名称だって、融通無碍・変幻自在・曖昧模糊・優柔不断。これこそが当会の本質であり神髄である。

2 目的
本会は、日本の政治・行政・国防・外交・司法・経済・文化・報道・教育等々、国政や国民生活のあらゆる分野における歪みの原因は、すべてアベのせいであるとの確固たる信念のもと、アベ政権とアベ総理・アベ総裁を、あるときは徹底して糺弾し、またあるときはやんわりといい加減に揶揄することによって、その権威を失墜させて、これを政権の座から追い落とし、もって憲法改正を阻止するとともに、平和で豊かな国民生活の実現を目指す。そういう大袈裟で大それたことが当会の目的である。

3 秘密
予想されるアベ政権からの熾烈な弾圧を未然に防止するため、当会の存在自体を厳重な秘密とする。
事務所の所在地も代表者も決して公表することはなく、メンバー登録はせず、ナンバーカードもメンバー名簿も作成しない。当会の財産も収支も秘匿する。外部から当会への連絡方法はすべて遮断し、もっぱらステルス的に地下のゲリラ活動を行うものとする。

4 会員
以下の要件の一つに該当する者は、当会のメンバーたるの資格を有する。
?アベは平和と民主主義に敵対する危険人物であると認識する者
?アベ在任中の改憲策動には与しがたいと考える者
?理由はなんであれ、アベは嫌いだという優れた感性をもつ者

メンバーたるの資格をもつ者が次のどれか一つを実行すれば、即当会のメンバーとなる。
?「私は秘密結社アベノセイダーズのメンバーである」とネット上に宣言すること。
?誰かに「アベの改憲には賛成できない」と、ぽつりとささやくこと。
?周囲に誰もいないことを確認して、小声で「アベはやめろ。アベはやめろ。やっぱりアベはやめろ」と3回呟くこと。

メンバーの脱会は自由である。その際、なんの手続も不要である。また、脱会と再入会を無限に繰り返すことも妨げられない。

5 メンバーの権利と義務
当会のメンバーは、ささやかながらも改憲を阻止するためにアベ糺弾の一翼を担う行動に加わる光貴ある栄誉に浴する。そのこと以外に、当会のメンバーになることによる権利や利益は皆無である。
また、メンバーとして当会からの指示を履行する義務はない。会費納入の義務も、なんの報告義務もない。ただし、ネットにおいて、「アベノセイダ」活動の成果を誇ることは何の制約もなく自由に行うことができる。

なお、会員は、自覚的民主主義者として、「DHC製品は購入しない」「アパホテルには泊まらない」を励行する。

6 活動
当会全体としての活動は予定しない。活動のすべては、各メンバーにおいて、ことあるごとに、なににつけても「それはアベのせい」「アベが悪い」「安倍は早くやめるべきだ」とさりげなく一言を述べることにつきる。

こうして、通常は融通無碍・変幻自在・曖昧模糊・優柔不断に、しかし稀には断固たる活動を通じて、安倍を退陣に追い込もうと努力を重ねる。

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2013年4月1日から、当ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」を毎日書き続けて、本日が連続更新1800回となる。この期間は、第2次アベ政権発足から現在にほぼ重なる。1800回、改憲と壊憲を指向するアベ政権を批判し続けてきた。

当ブログの影響力はたがが知れたものだが、政権批判にまったくの無力でもなかろう。「発言自体がささやかな力」「その継続は多少の力」と信じて、今後もひたすら書き続ける。少なくとも、アベ政治が終わるまでは。
(2018年3月5日・毎日連続更新1800回)

DHC・吉田嘉明との対峙はようやく効果を生みつつある ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第125弾

何人かの友人からご連絡をいただいた。「保守速報」というまとめサイトに、吉田嘉明の顔写真として、こともあろうに私(澤藤)の写真が掲載されているのだという。よりにもよって「保守速報」であり、よりにもよって吉田嘉明である。

記事は、2016年12月に吉田嘉明がDHCのホームページに掲載したヘイト根性丸出しの「会長メッセージ」の紹介に、「速報・DHC会長『日本には驚くほどの数の在日がいる。似非日本人はいらない 母国に帰れ』」と表題して、大きく私の顔写真を載せている。キャプションは、「平成28年2月12日 DHC代表取締役会長 吉田嘉明」とだけ。

普通の人がこの記事を読み、写真を見れば、「この写真の男が、非常識きわまるレイシスト」だと思い込むことになる。「なるほど、こういう人相が差別を恥としない根性曲がりなのだ」と合点する人もあろう。私にとって、吉田嘉明に間違えられることだけで、不名誉これに過ぎるものはなく、不愉快極まりない。

しかも、私がこの記事を見た時点で、6325RT(リツィート)、1235コメ(コメント)となっていたから、反響は大きかったのだ。

そこで、本日のブログには、「保守速報よ。私の写真を削除して謝罪せよ」との記事を掲載するつもりだった。ところが、先ほど確認したところ、私の写真は削除されていた。

そして現在は、以下の記事が掲載されている。なお、これが全文。
「管理人より 掲載した写真は、DHCの吉田会長のものではなく、澤藤弁護士の写真でした。大変申し訳ありません。」

なんと? これだけ? 「大変申し訳ありません」だけでは、幼稚園児の謝罪に等しい。保守速報よ、誰に対して謝っているのか? 吉田嘉明にか、私にか。いったい私には、どのように申し訳ないと思っているのか? どうして、こんなことが起こったのか。今後の再発防止策はどうするつもりなのか。

この記事がアップされたのは、2018年3月1日14時14分で、削除されたのは3月4日20時過ぎころの模様である。この間丸3日。私は、恥ずべきレイシストとして顔写真を晒されていたのだ。保守速報は、この間の私の名誉の侵害に、どう責任を取ろうというのか。

それだけではない。いくつものサイトがこの写真と記事とを転載している。保守速報は、これについてどう対応しようと言うのだろうか。とくと返答あってしかるべきだろう。ネトウヨとは、最低限の社会常識も持ち合わせていないのか見極めのチャンスだ。しかるべき回答を待ちたい。

この間、このことに関連する幾つものネットの書き込みをみた。励まされるものが多い。

「保守速報が酷いデマを流しています。DHC会長・吉田氏の差別的言動についての記事の中で、別人(澤藤統一郎弁護士)の肖像をDHC会長として掲載しています。これでは澤藤弁護士が差別的発言をしたようにしか見えません。あまりに酷い記事です」

私も同じことを思いました。これじゃ澤藤さんがDHCの社長かと思ってしまう。本当の社長はこちら。なかなか画像検索しても出てきません。

「Share News Japanおよび保守速報で、DHC吉田会長の問題発言とあわせて、吉田会長の顔写真と称する画像が掲載されました。しかしこの写真は吉田会長ではなく、 … 保守速報が引用しているDHC会長と誤認できる画像はDHCによるスラップ訴訟に対する記者会見中の澤藤統一郎弁護士のキャプチャだな。アホなのか。

保守速報がデマを流している例を示しますね。 他人の写真をDHC会長であるかのように載せて、読者を騙しています。写真の人物はDHC吉田に勝訴した澤藤統一郎弁護士です。

この似非ニュースサイトによるクソ記事であるが、DHCの吉田会長の肖像のように貼られている写真からして、DHCにスラップ訴訟を起こされて勝訴した弁護士の肖像だった、という信じられないオチを聞いて呆れている。DHCと争った弁護士をヘイト発言と結びつけようという、悪質な嫌がらせか?

Share News Japanおよび保守速報で、DHC吉田会長の問題発言とあわせて、吉田会長の顔写真と称する画像が掲載されました。しかしこの写真は吉田会長ではなく、なんと、逆にDHCと対決した澤藤弁護士であることが判明。Share Newsおよび保守速報の澤藤弁護士に対する業務妨害の疑いが問題となっています。

保守速報が引用しているDHC会長と誤認できる画像はDHCによるスラップ訴訟に対する記者会見中の澤藤統一郎弁護士のキャプチャだな。アホなのか。

そして、吉田嘉明の「ヘイト・メッセージ」に関する過去の私のブログを引用してくださった方が何人かあった。私も、これを読み直してみて、改めてその通りだとおもう。ぜひお読みいただきたい。

DHC会長吉田嘉明の驚くべきヘイトスピーチ?「DHCスラップ訴訟」を許さない・第93弾
https://article9.jp/wordpress/?p=7992

ついでに、吉田嘉明の驚くべきヘイトメッセージも挙げておこう。

https://top.dhc.co.jp/company/image/cp/message1.pdf

なお、よく知られているとおり、保守速報は差別記事の掲載(転載)で、名誉毀損と訴えられ、敗訴している。
「ネット上の差別的な投稿を集めて掲載され、名誉を傷つけられたとして在日朝鮮人の女性が、まとめサイト「保守速報」を運営する男性に2200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が(2017年11月)16日、大阪地裁であった。森田浩美裁判長は、運営者に名誉毀損や差別の目的があったと認定し、200万円の支払いを命じた。
訴えていたのは、大阪府東大阪市在住のフリーライター李信恵(リシネ)さん。原告の弁護団は、まとめサイト運営者への賠償命令は「我々が知る限りで初めて」と評価した。運営者側は控訴する意向。
判決によると、運営者の男性は2013年7月から約1年間、保守速報に、匿名掲示板「2ちゃんねる」などに書き込まれた李さんを差別や侮蔑する投稿を、編集した上で掲載した。
判決は、李さんへの「頭おかしい」「朝鮮の工作員」といった表現は、社会通念上許される限度を超えた侮辱にあたると認めた。「日本から叩(たた)き出せ」などの記述は排除をあおり、人種差別にあたると判断。容姿などの揶揄(やゆ)も挙げ「名誉感情や女性としての尊厳を害した程度は甚だしく、複合差別だ」と述べた。
運営者側は「情報の集約に過ぎず違法性はない」と主張していた。しかし判決は、表題の作成や情報量の圧縮で内容を効果的に把握できるようになったと指摘。「2ちゃんねるとは異なる新たな意味合いを有するに至った」とし、引用元の投稿とは別に、憲法13条が認める人格権を侵害したと結論づけた。」(朝日)

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DHC・吉田嘉明のヘイト言論に関連して、興味深い関連コメントを拾うことができる。いずれも、至極真っ当な感想や意見。

「DHC代表取締役会長吉田嘉明はレイシスト さっき「 吉田嘉明」で検索してみたら、ゲボゲボな差別主義者がわんさか出てきて気絶しそうになった。やめときゃよかった。」

「小さな抵抗でDHC は買いません!!」

「同意! DHCのサプリは絶対買わない。APAには絶対泊まらない。
アベ政治に猛反対、嫌悪感不信感を抱くものは 自らに今何ができるかを考えよう!」

「なんで、米軍の航空機が保育園や学校の上空を飛ぶ事に賛成する「DHC」の商品をつかうんだろう。」

「APAホテルには絶対に泊まらないし、DHCの化粧品は絶対に買わない。」

「日本青年会議所 下町ボブスレー DHC 産経ニュース ネトウヨ などなど、自民党・安倍首相 応援団って、言うことやること、ヘイト丸出しで薄汚い。」

「読んでる途中で吐き気がしてきた。」

「会社価値を著しく損なう企業家の差別発言。差別主義が臆面もなくのさばる社会に未来はない。差別主義は悪である。声を出していかなければ正義が悪に飲み込まれてしまう。DHC」

「会長が差別発言をし、差別的な番組をを製作するDHCは、日本サッカー協会の反差別主義というポリシーに反する。協会もサガン鳥栖も早急にDHCと縁を切って、反差別の姿勢を明確に打ち出すべきだ。」

僕もゴーゴーカレー 食べるのやめるわ。さようなら。DHC・APAホテル・安倍晋三・改憲・違憲・ファシスト・レイシスト・ヘイト・差別主義者・日本会議…

僕もAPAホテルには泊まりませんし、コンビニでサプリ買うときはDHCではなく、ファンケルにしてます。ゴーゴーカレーも今後食べることはないでしょう(津田大介)

ヘイト企業のDHCを批判する際はこちらの記事がいいですね。DHC不買運動

アパホテルに続いてDHC会長の「似非日本人は母国に帰れ」の在日ヘイト発言が発覚! ヘイト経営者こそ日本の恥だ lite-ra.com/2017/01/post-2… @litera_webから

私がDHC 不買って話ししたら、友人のお世話になってる薬剤師さんがね「DHC のサプリは質が悪いからオススメしません」って言ってたって教えてくれた。そもそもサプリ自体、本当に取る必要があるのか疑問。

やっぱり質も悪いんですか。あの袋のデザインもなんだかチャチい。 DHCのようなネトウヨ企業の製品には、やっぱりお金を払いたくないですね。

あんな人間性の男が経営してるんだよ。お客様のことを考えて作ってるわけないじゃん!DHC の顧客には在日の人たちだってたくさんいると思うよ。そういう想像力のかけらもない人間なんだから??

こういう差別主義を丸出しにする経営者ってのは、そもそも経営センスがなさすぎてお可哀想じゃよね。痛すぎる。

一番大切なのはカネなんですよ。日本のために役に立ってるか立ってないかっていうのも、多分稼ぎが良いか悪いかって視点だと思う。

人間の価値を本人の意思によらない属性とカネで測る奴など、ろくなもんじゃありません。

つくづく思う。息長く闘うことが大切だ。DHC・吉田嘉明との対峙は、もうすぐ4年にもなる。一貫した批判が、ようやくDHCや吉田嘉明の体質の問題をえぐり出し、DHC製品不買の声も大きくなりつつある。長く闘うことはシンドイが、多くの人々に支えられた長い闘いが、ようやく実りの萌しが見えてきているという実感がある。

「消費者主権」とは、主権者が日々の消費行動を通じてよりよい社会を作っていくという理念を表している。「よりよい社会」とは差別のない社会のことでもある。ヘイト企業・スラップ企業のDHCを追い詰めるのは、自覚した主権者一人ひとりの覚悟であり、具体的には、ヘイト・スラップのDHC製品を買わないことだ。
(2018年3月4日・連続1799回)

捜査に影響という口実の政府答弁拒否を許してはならない

国会は、森友関連の文書改竄問題で揺れている。
朝日の報道によれば、「学園との土地取引の際に財務省近畿財務局が作成したものとして国会議員に開示された決裁文書は、実は問題発覚後に新たに作成された文書で、原文書は別にある。しかも、両文書の内容には違いがあり、開示文書は書き換えられた可能性がある」というのだ。

公平・公正な行政過程を検証するための公文書を、あとから都合よく書き直す。こんなことがまかり通ったのでは、行政に対する国民の信用は崩壊してしまう。

本日の「納税者一揆・第2弾」の最初のコールが、「(アベのお友達に税金を)横流しするな!」「納税者をなめるな!」「納税者の怒りを思い知れ!」だった。公文書改竄は納税者の怒りの火に油を注ぐものだ。こんな行政に納税者が怒るのは当たり前ではないか。

今ここに至って、政府が国民の信用をつなぎ止めるには、誠実に2通の文書を議会に明らかにして、誰がどのような経緯で2枚目を作成し人目につかぬように保管していたのか、包み隠さず丁寧に説明するしかない。アベ流の「丁寧」ではなく、字義のとおりの丁寧な説明が必要なのだ。

ところがどうだ。その説明は頑強に拒否されている。「大阪地検において背任のほか、公用文書等毀棄で告発を受けて捜査が行われている」。「お答えすることが捜査にどのような影響を与えるかということについては予測しがたいため、今のところは答弁は差し控えなければならないものだと思う」というのだ。不誠実もきわまれりと言わざるを得ない。

告発されたことをこれ幸いに、不都合な証言拒否の言い訳に使おうという奇妙な論理。これこそ詭弁である。こんなことで、国会答弁の拒否を許しては、議院内閣制の根幹が揺らぐことになりかねない。

「捜査に影響を与える」とは、いったい何を意味しているのか。証人を威迫し証拠を隠滅するなど捜査を妨害してはならないのは当然のことだが、議院での野党の質問に対して、誠実に真実を答弁することは捜査の妨害になりえない。

議院での質疑と、刑事司法における捜査とは、その目的も手続もまったく別のものである。それぞれが独立して行われるべきが当然で、刑事の捜査が始まったら国会は質疑を控えて捜査の進展を見守らなければならない、などというルールもマナーもない。むしろ、刑事の捜査着手を口実に、議会での不都合な質問を封じ、答弁を拒絶することなどあってはならない。場合によっては、司法当局の捜査名目による審議妨害に毅然と対決して、国権の最高機関である国会の正常な運営を確保する見識を示さなければならない。

法的に、国会審議において、国務大臣は「刑事捜査への支障が生じる虞れ」を理由に、議員の質問に対する答弁を拒否できるだろうか。

人は一般に質問されてこれに答えるべき義務は負わない。個人の人格を尊重する大原則から当然の事理と言ってもよいし、強いて憲法の条文を当て嵌めて21条の表現の自由が沈黙の自由を含むということにもなろう。

しかし、国会に呼ばれた大臣は、一般人ではない。国会議員からの質問に誠実に答弁する義務を負う。この義務は、議院内閣制という憲法上の制度の根幹を形成する重要な義務だ。

この義務の根拠条文を探せば、憲法63条と国会法74条ということになる。2012年4月4日、下記の政府答弁がこのことを確認している。
「憲法第63条において、『内閣総理大臣その他の国務大臣は、議院で答弁又は説明のため出席を求められたときは出席しなければならない』とされており、これは、国会において誠実に答弁する責任を負っていることを前提としていると認識している。また、国会法第74条に基づく質問に対し、政府としては、誠実に答弁すべきものと考えている。」

この大臣の「誠実答弁義務」は、議員の「質問権(=誠実答弁要求権)」に対応するものである。この議員の権利行使に対する国政担当者の誠実な義務の履行があって、政治と行政の民主主義過程が正常に展開することになる。この国政担当者の義務履行の価値を凌駕する何らかの免責事由が考えられるだろうか。

憲法38条1項の供述拒否権(黙秘権)が免責事由となるだろうか。
「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」という文言を文字通りに、「自己に不利益な供述」の拒否権(「不利益供述拒否権」)と考えるのが通説判例だが、刑訴法198条2項が被疑者に、同311条1項が被告人に「包括的供述拒否権」を保障している。被疑者・被告人は、「終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる」とされている。また、同法146条が刑事事件の証人について、「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞おそれのある証言を拒むことができる。」と規定している。

また、民事訴訟法196条は、「証言が証人又は証人と『次に掲げる関係を有する者』(配偶者、四親等内の血族若しくは三親等内の姻族)が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは、証人は、証言を拒むことができる。証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも、同様とする。

そして、議院証言法第4条がこう述べている。
「1項 証人は、自己又は次に掲げる者(配偶者、3親等内の血族若しくは2親等内の姻族)が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる。
3項 証人は、宣誓、証言又は書類の提出を拒むときは、その事由を示さなければならない。」

アベ首相にも、麻生財務相にも、人権がある。自らの、あるいは一定の親族についての犯罪を認める内容の供述(国会答弁)までは強制されないと考えざるをえない。取調室においても、議院においても、自白の強要は許されない。その場合、虚偽の供述はできないが、黙秘はなし得る。

議院証言法の手続を類推して、「当該答弁が、答弁者自身(あるいは一定の親族)に刑事捜査が及ぶ虞ある場合に限って、その旨を明示して」答弁を拒否する余地があるというべきだろう。その場合に政治的な指弾を覚悟せざるを得ないことは当然である。

それ以外、たとえば、「捜査に支障の虞がある」「政治的に、内閣が持ちこたえられない」などを答弁拒否の口実としてもてあそぶことを決して許してはならない。

昨日の参議院予算委員会の質疑を通して、世間は「麻生も太田も、『開示された文書以外に原文書が存在し、開示文書は改竄されたもの』と承知している」と受けとめている。そのような国民の疑惑に敢えて挑戦するかたちで、なお太田が答弁拒否を継続すれば佐川の二の舞だ。しかも、もう国税庁長官の席はない。もちろん、麻生にとっても、もう行く先はない。
(2018年3月3日・連続1798回)

DHC・吉田嘉明はデマとヘイトの放送を止めよ ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第123弾

ヘイトは憎むべき醜行だ。ヘイトする者よ、恥を知れ。
デマは卑劣漢のやることだ。デマを撒き散らす者よ、恥を知れ。
ヘイトとデマを重ねたら…。これこそ悪辣きわまる。深く恥を知れ。
さらに、この卑劣な醜行を指摘をされてなお反省せず開き直ったとすれば、そのような破廉恥漢をどう表現すればよいのだろうか。私の乏しい語彙では、思いつかない。

朝日の報道が、「『ニュース女子』打ち切りへ MXと制作会社に隔たり」。この見出しの「制作会社」が、「DHCテレビジョン」である。

「DHCテレビジョン」の代表者(会長)は吉田嘉明。在日差別に余念なく、「似非日本人」や「反日」を攻撃してやまない人物。私(澤藤)も、「似非日本人」「反日」「誹謗中傷」「悪辣」と言われている。「DHCテレビジョン」が制作した、ヘイトとデマを重ねた番組を、そのまま放送して批判を浴びたのが、MX(地上波の東京メトロポリタンテレビジョン)。その番組のスポンサーは、当然のことながらDHC本体である。そして、MXとDHC側との間にある「隔たり」とは、廉恥の心の有無についての大きな懸隔だ。

天下に周知の事実だが、「『ニュース女子』は昨年(2017年)1月2日の放送で、沖縄県の米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設の反対運動の参加者を『過激派デモの武闘派集団』と表現し、基地反対派が救急車を止めたなどと伝えた」(毎日)。そして、この『過激派デモの武闘派集団』に在日韓国人が日当をもらって参加していたと放送した。

放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は昨年12月、こうした放送内容に十分な裏付けがあったかを制作会社側に確認していなかったなどとして、MXに『重大な放送倫理違反があった」との意見書を公表している。直接批判されたのは、DHCテレビではなくMXだった。

誰が見ても、ヘイト感情剥き出しのデマ放送。誹謗と中傷の典型。恐らくは、日本放送史の負の遺産としてトップ・フェイクの座を守り続けるだろうという代物。ヘイトの対象は、沖縄の平和運動と在日韓国人である。

さすがに、MXには恥ずべきことをしたという思いが強い。PBOの批判に対して「改めて真摯に受け止めたい」としている。常識的な廉恥の心をもっていたということだ。メディアの世界で真っ当に社業を継続するためには、デマやヘイトと訣別しなければならないという決意がみえる。

同社のホームページのプレスリリース欄(3月1日)に、次の短い文章が掲載されている。
「番組『ニュース女子』放送終了について
当社では、番組『ニュース女子』につきましては、より放送責任を明確にする立場から、当番組の制作主体を当方に移したいとの意向をスポンサーに申し入れてきました。しかしながら、最終的に両社間の協議が不調に終わったため、当社での放送を3月末を以て終了いたします。」

この申し入れ先のスポンサーが、DHC・吉田嘉明である。そのスポンサーの側には、少しも恥を知る気持ちの持ち合わせがない。MXからの、「今後は当番組の制作主体を当方に移したい」との申し入れが拒否されたのだ。このため、MXとしては今春の番組改編に合わせて番組の放送をやめざるを得ないこととなった。これが、「MXと制作会社の大きな隔たり」の実態である。「ニュース女子」だけでなく、DHCが1社提供している番組「エクストリームBeauty」も終了するほか、MXが請け負っていたDHCの広告代理店業務も打ち切る。

一方、DHCテレビのホームページには、なんのコメントも掲載されていない。これまでの言い分はこうだ。
「(日当について)断定するものではなく、疑問として投げかけており、表現上問題があったとは考えておりません」「(基地反対派の取材をしないのは不公平との批判について)言い分を聞く必要はないと考えます」「今後も誹謗中傷に屈すること無く、日本の自由な言論空間を守るため、良質な番組を製作して参ります」

デマ放送に対する批判を「誹謗中傷」と言ってのけ、微塵も反省の色を表していない。むしろ、「不当な批判に屈することなく、日本の自由な言論空間を守る」と開き直っている。DHC・吉田嘉明らは、デマやヘイトの言論空間はどこにもあり得ないということを知らねばならない。「今後も…良質な番組を製作して参ります」には、開いた口が塞がらない。「今後も…」というのは、「これまでも良質な番組を製作して」来たことを前提としているのだから。もちろん、沖縄ヘイトのデマ番組を含めてのことだ。

MXの決断は、事実上のDHCとの訣別だという。朝日の取材に、MX幹部は「今回の放送打ち切りで、ディーエイチシーとの取引はゼロになる覚悟だ。営業的には苦しいが、このままでは番組内容が一方的になることがある。ネット時代に放送のあり方が問われている大事な曲がり角だ。我々の意向を理解してくれる新スポンサーを探すしかない」と言う。やや悲壮感がただよっている。

DHCは、MXにとって最大の取引先だ。2016年度の有価証券報告書によると、MX総売上高の11・5%をDHCとの取引が占める。15年度は14・3%、14年度は21・0%だった。それでも、DHCを切らざるを得ないと決断したわけだ。

MXに対しては、ニュース女子の放送直後から市民らが本社前で抗議活動を続け、MX労組も会社の見解を求める申入書を出すなど厳しい目が向けられてきた。

常識をもっているMXに対しては、BPOの批判や世論の抗議が効いた。しかし、常識も廉恥心も持ち合わせぬDHC・吉田嘉明らには、商品の不買だけが特効薬である。デマやヘイトを憎む市民に呼びかける。

DHCの製品を買うのはやめよう。そのことが、消費行動を通じて真っ当な社会を形成する運動に繋がる。

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明日は、3月3日「モリ・カケ追及! 納税者一揆 第2弾」

国会では、文書の書き換えが新たな大問題。ますます、佐川氏と昭恵夫人の証人喚問が急務。麻生財務相、安倍首相の責任追及が喫緊の課題。

次のようなアピールを掲げて、第2弾の行動があります。より多くの方にご参加をお願いします。

<モリ・カケ追及! 第2弾 国税庁包囲行動&デモ行進>
3月3日(土)13時30分 日比谷公園 西幸門集合
13時40分? 国税庁・財務省包囲行動
14時30分  デモ出発

よびかけ一式:
http://sinkan.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/233-dd8f.html

チラシ:
https://app.box.com/s/aqgf2wydnsudd2pxfg6fyw4suug7tp0h

「森友・ 加計問題の幕引きを許さない市民の会」
http://sinkan.cocolog-nifty.com/blog/

コール
・安倍のお友達に税金を横流しするな!
・納税者をなめるな!
・納税者の怒りを思い知れ!
・ふざけた国会答弁 許さない
・音声録音 うそはない!
・検察は財務省を捜査せよ!
・佐川を証人喚問せよ!
・ウソつき佐川を罷免しろ!
・麻生は にやけた答弁 やめろ!
・悪代官麻生を追放しよう!
・責任逃れの安倍を許さない!
・安倍の逃げ切り 許さない!
・一番の悪代官安倍は辞めろ!
・昭恵夫人を喚問だ!
・モリ・カケ食い逃げ 許さない!
・納税者一揆の爆発だ!
・納税者一揆 続けるぞ!

替え歌】(寺尾そのみ作)?
『矢切の渡し』のメロディで

「佐川逃げたよ」「捜さないでよ」
納税の気が失せる 確定申告
民の心に 背いてまでも
地位につきたい 腐れです

「埋めてないよね?」「ゴミは出ないよ」
カゴイケが隠し録り 値切りの話
裏で怪しい 資料は捨てて
アベに忖度 ヒラメです

「タダで売るのよ」「国の土地だよ」
バレたから火がついた お尻がヤバい
息を殺して 目を伏せながら
明日もコソコソ 佐川です

(2018年3月2日・連続1797回)

3月1日 今日はビキニデー

今日、3月1日はビキニデーです。
1954年の今日、アメリカは太平洋のビキニ環礁で水爆実験を行いました。広島に落とされた原爆の1000倍もの威力のあるものでした。この核実験で、多くの日本人が被爆しました。その最前線にいたのが、第五福竜丸の乗組員23名の方々です。その全員が急性放射線障害で入院され、久保山愛吉さんが半年後に亡くなられました。原爆に続いて、水爆でも、爆発の最初の犠牲者は日本人となったのです。

3月1日のビキニデーには、この世から恐ろしい核兵器をなくすことを誓い合いたいと思います。

是非東京夢の島にある第五福竜丸展示館にお越しください。そして耳を澄まして、保存されたこの船の、核の悲惨さを訴える声に耳を傾けてください。核のない平和な世の中を作ろうという呼びかけが聞こえてくるはずです。

「お互いに核兵器をもてば、戦争を抑止して平和を保つことができる」という意見はおろかしいのではありませんか。核に囲まれた平和なんてゴメンだ。世界中の原爆も水爆も、そして原発もなくしてほしい。第五福竜丸が、そう言っているように聞こえませんか。

夢の島まで足を運ぶ時間がないかたは、せめて展示館のURLを開いて、第五福竜丸の写真と資料をご覧ください。

 http://d5f.org/

こんな説明があります。

第五福竜丸とは
第五福竜丸は 1954 年3 月1 日、マーシャル諸島ビキニ環礁でアメリカがおこなった水爆実験により被ばくした静岡県焼津港所属の遠洋マグロ延縄漁船です。爆心地より160キロ東方の海上で操業中、突如西に閃光を見、地鳴りのような爆発音が船をおそいました。 やがて、実験により生じた「死の灰」(放射性降下物)が第五福竜丸に降りそそぎ、乗組員23人は全員被ばくしました。
その後、第五福竜丸は放射能がへるのを待って東京水産大学(現・東京海洋大学)の学生の航海の練習船「はやぶさ丸」となりました。

水爆ブラボー
3月1日に、アメリカが炸裂させた水爆「ブラボー」は、広島に落とされた原爆の1000 倍(15メガトン)の破壊力でした。爆発によって砕けた珊瑚の粉塵はキノコ雲に吸い上げられ、放射能を帯びた「死の灰」となり周辺の海や島々に降り積もりました。放射能は広範な海と大気を汚染したのです。

漁船の被ばく
被害を受けたのは、第五福竜丸だけではありません。日本各地から多くの船が出漁し被害を受けました。54年末までに856隻が放射能に汚染されたマグロを水揚げしています。多くの乗組員が被ばくした可能性がありますが、健康被害など不明な点が多いのです。

マーシャル諸島の被害
マーシャル諸島は太平洋中西部に浮かぶ、たくさんの珊瑚礁からなる国です。アメリカは1946年から58年までここを核実験場とし、67 回もの実験を行いました。
実験場とされたビキニ環礁とエニウェトク環礁をはじめ、多くの環礁や島が被害を受けたとされていますが、アメリカ政府はビキニ、エニウェトク、ロンゲラップ、ウトリックの四環礁以外の被害は認めていません。
人びとの間ではガンや甲状腺異常、死産や先天的に障がいを持つ子どもが生まれるなど、被害が現れています。また、いくつかの環礁では故郷の島に戻ることができません。

世界遺産ビキニ環礁
2010年7月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により、ビキニ環礁は世界遺産に登録されました。その理由として「珊瑚礁の海に沈んだ船やブラボー水爆の巨大なクレーターなど、核実験の証拠を保持している。繰り返された核実験はビキニ環礁の地質、自然、人々の健康に重大な影響を与えており、平和と地上の楽園とは矛盾したイメージをもち核時代の夜明けを象徴している」と発表しています。同環礁の住民は、いまも帰ることはできません。

第五福竜丸の保存
第五福竜丸(当時は水産大の「はやぶさ丸」)は1967年に廃船処分となり、解体業者に払い下げられ、船体はゴミの処分場であった「夢の島」の埋立地に放置されました。これを知った市民のあいだから保存のうごきがおこり、「沈めてよいか第五福竜丸」の投書(朝日新聞68年3月10日)や原水爆禁止運動など全国で取り組みがすすめられました。
1976年6月に東京都立第五福竜丸展示館が開館し、船は展示・公開されました。

木造船第五福竜丸
第五福竜丸は1947年に和歌山県古座町(現・串本町)でカツオ漁船第七事代丸として建造されました。全長約30メートル、高さ15メートル、幅6メートル、総トン数140トンの木造船です。
第五福竜丸は戦後の食糧難の時代に遠洋漁業に従事した木造船としてきわめて貴重です。

「第五福竜丸事件」と「ビキニ事件」
ビキニ水爆実験により、第五福竜丸一隻だけでなく多くの船舶が被害を受けたことから、当協会では「ビキニ事件」という呼称を使っています。マーシャル諸島での核実験は1958年までつづけられており、被害を限定的に捉えることは適切ではないと考えています。

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ビキニデーの今日、東京新聞が、核問題にちなんだ社説を掲載しました。
抜粋して紹介したいと思います。

ビキニ水爆実験の教え 記憶で未来を守れ
64年前、ビキニ水爆実験で第五福竜丸をはじめ多くの日本人漁船員や現地の住民が被ばくした。苦しみは今も続く。教訓を未来に伝えたい。

第五福竜丸の漁船員らが被ばくしたのは、米国の水爆実験「ブラボー」で、1954年3月1日にマーシャル諸島のビキニ環礁で実施された。漁船には23人が乗り組んでいて、実験場の約160キロ東にいた。

5月まで続いた6回の水爆実験で、周辺の海域にいた漁船や貨物船などの乗組員約1万人が被ばくしたとされる。漁船員は帰国後、検査を受けたが、そのデータは長い間、厚生労働省が「ない」としていた。情報公開請求で開示したのは2014年である。

◆治療はなかった
米国がマーシャル諸島で核実験を始めたのは、46年7月。58年までに原爆、水爆合わせて67回に達した。この地域は第二次大戦が終わるまでは日本の委任統治領で、南洋群島と呼ばれた。戦後、米国が施政権を握り、核実験場にされたのである。

 核実験は軍事機密なので、現地ではかん口令がしかれた。米国政府は住民の被ばくを隠す一方で、専門医らを送って放射線の健康影響調査を進めたといわれる。

たとえば、爆心地から百八十キロ東にあったロンゲラップ島では、ブラボー実験のとき、82人が暮らしていた。島民は下痢や嘔吐(おうと)、やけど、脱毛といった急性放射線障害に見舞われた。二日後、米軍が別の島にある基地に移送した。そこでは米人医師によって検査や写真撮影はされたが、特に治療はされなかったという。

米国は57年に「安全だ」と説明して住民を島に帰還させた。帰還したのは、被ばく者と核実験時には島にいなかった住民ら約250人。

人体実験という見方を米国は否定しているが、ブルックヘブン米国立研究所は「もっとも価値ある生態学的放射線被ばくデータを提供してくれる」ことを意義としていた。島では死産、流産が続き、やがて甲状腺がんが多発した。住民は85年に再び、島を離れた。

マーシャル諸島は86年にマーシャル諸島共和国として独立したが、経済は米国に依存している。ビキニ環礁核実験場は「負の世界遺産」に指定されたが、日米で情報が隠されていたこともあり、実態はあまり知られていない。
(以下略)

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今年のビキニデーは、世界中の国々が核兵器禁止条約の締結を目指して、「核兵器のない世界を」「非核平和の日本の実現を」という、運動の高まりの中で迎えることとなりました。

「ヒバクシャ国際署名」と「安倍9条改憲ノーの署名」運動をともに広げようという声も大きく広がっています。

被爆国日本こそが、核兵器の全面禁止・廃絶の先頭に立たねばなりません。まずは、日本政府に、広島・長崎の声と、第五福竜丸の声を聞かせなければなりません。そうして、情けない日本政府に、日本国民の声を集めて突きつけて、「核兵器禁止条約に署名せよ」と迫りましょう。

3・1ビキニデーの今日こそは、そのように思いをめぐらすべき日だと思います。
(2018年3月1日・連続1796回)

籠池泰典よ 君を泣く

あゝ籠池泰典よ 君を泣く
君の思想は妖しきも
人柄憎めぬ君なれば
君に一声かけまほし
君 力を落とすことなかれ
気骨を失うことなかれ

夏の盛りに囚われて
羽をもがれて塀の中
外の世界と隔てられ
秋冬過ぎて春近く
花咲く季節となりぬれど
いまだ自由の萌しなし

有罪宣告あらざるに
身の拘禁は7か月
接見禁止の7か月
憤怒を深く呑み込んで
泣くに泣けない
身の辛さ

勾留理由は二つある
「逃亡」するにちがいない
「罪証隠滅」するだろう
逃亡できるわけはない
隠滅すべき証拠もない
真の理由はただ一つ
うるさい君の口封じ

思えばアベを甘く見た
アキエのことも甘く見た
教育勅語にアベバンザイ
アベを取りまき 取り入って
神風吹かせてうまくいく
上手の手から水が漏れ
手のひら返して邪魔にされ
トカゲのシッポと切られたり

昨日の同志が今日の敵
朋友相信ジていたはずが
今さら「妻は欺された」
信義に悖る一言は
いくらなんでも酷すぎる
卑劣な漢の痴れ言は
トカゲのアタマの保身術
いかで許しておくべきや

あゝ籠池泰典よ 君を泣く
君の無念を噛みしめる

夫婦逮捕で空いた家
主の留守が好都合
空き巣ねらいも同然に
競売手続き開始とは

卑劣と非情は権勢に
常に伴うものなれど
怒りは怒髪天をつく

祟徳の院は舌を噛み
血文字の呪いを書きつけて
魔道の王となりしとか
ああ君の心も似たるかな
憤怒の炎 燃やさばや

いずれは言葉を取り戻し
アベの顔色なからしめ
溜飲下ろすその日まで

君 精気を失うことなかれ
矜持を捨てることなかれ
叛骨失うことなかれ
膝を屈することなかれ

あゝ 籠池泰典よ 君を泣く
妻と息子を支えとし
君 力を落とすことなかれ
(2018年2月28日・連続1795回)

中学生・高校生に「働くルール」の授業を

本日(2月27日)の赤旗11面に掲載されたあるコラム。筆者は、大阪の元教員。「中学生が学ぶ働くルール」連載第4回の最終回。拡散のつもりで、全文をご紹介したい。

「最終回は、解雇と退職勧奨の違い、整理解雇の4要件がテーマです。
歯科衛生士の私の妻は勤務先の病院が歯科を閉鎖するとき、解雇されそうになりました。退職手続きにやってきた事務長に、妻は「これは解雇か退職勧奨か」と問い詰めます。のらりくらりと逃げる事務長に、「解雇するなら撤底的にたたかう。大阪労連(授業ではO労連)にも支援を要請する」と通告しました。
 事務長の質問「大阪労連って何?」は想定内でした。「大阪労連はK病院(同じ業種)やMゴルフ場(病院の裏山)の解雇を撤回させた組織です」と言ったとたんに事務長は部屋を飛び出しました。夕方には会長がやって来て、希望者全員が他の部署で継続雇用となりました。

授業では事務長とのやりとりをリアルに再現しました。1人の抗議で解雇を撤回させることができた背景には地域の二つの労働争議があったこと、そして1人の抗議が同僚の職も守ることができたことを伝えました。生徒の感想は…。
『声をあげることは少し怖いですが、それをすることで自分の一生も、もしかしたら他の人の人生も変わるかもしれないなと思った』
 『不当な扱いに声をあげることは、自分のためだけではなく周りの人のためにもなるということがよくわかった』
 『僕は、1人が世の中の常識を知っていたら多くの人が救われると思う。いけないことがあるならば、はっきり言うことが大事だなと思った。働くルールを理解し、まちがいをしないようにしたいと思った』

連載を終えるにあたってひと言。労働組合や民主団体は、常に世代継承の課題と向き合っています。一方で若者はアルバイトや奨学金の返済に追われ、社会の仕組みを学ぶ機会が奪われているのが現状です。彼らの生活や感性に寄り添った学びの場を提供すれば、大きく成長する可能性も秘めており、ここに希望があるのではないでしょうか。」

なんと真っ当な中学生の反応だろう。確かに、「ここに希望がある」。中学生や高校生に、「働くルール」を教えることは大切だ。昔私が若手弁護士として労働事件にのめり込んでいたころ、私教連からの要請を受けて、就職間近の高校3年生に、労働基準法と労働組合法の講義をしたことがある。明日からの実人生に関わる問題として、みんなが真剣に聞いてくれたことを思い出す。何年かにわたって、延べ10回ほどもしたのではなかったか。道徳教育の時間など、全部を「働くルール」に充ててもよいのではないか。

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同じ日に、毎日新聞に対照的な記事がある。京セラを創業した稲盛和夫の半生記「思い邪(よこしま)なし」。ロングインタビューをした作家の執筆という。

本日の小見出しは、「若手社員の反乱」

設立2年目の昭和35年(1960年)、高卒の新人社員を20名迎え入れた。元気があって優秀そうな少年たちが入ってきてくれた。

ところが彼らは入社直後から不満をこぼし始める。
理由はあった。採用の際、宮木電機の立派な事務所を借りて面接をしたのだ。当然彼らは試験会場を本社だと思い込んでいる。ところが入社すると、宮木電機の古ぼけた木造の倉庫のような建物が自分たちの会社の本当の姿だったのだ。一階の焼成炉の出す熱が二階にまともに上がってくる。夏は猛烈な暑さの中、下着姿で汗だくになって働かされた。
(詐欺に漕ったも同然だ!)と不満をこぼし始める。

1年でそれは爆発する。
昭和36年(1961年)4月29日のこと、前の年に入った高卒社員のうちの11人が突然、稲盛のところにきて「要求書」を突き出した。
採用時に一年経てば月給制にすると約束していたことの速やかな履行(それまでは日給制で、遅刻・早退・欠勤があるとその時間分を基本給から差し引かれていた)。そして毎年の昇給とボーナスの支払いなど将来の保証を求めてきたのである。
「これを了承していただけなければ全員辞めます!」
青天の霹靂とはこのことだ。

〈採用試験のときから、「何ができるか分からないが、一生懸命頑張って立派な企業にしたいと思っている。そういう企業で働いてみる気はないか」と彼らに話をしてきた。それを承知のうえで採用され入社したはずなのに、一年早々で会社に要求を突きつけ、「保証をしてもらわなければ、我々は会社を辞めたい」と言ってきた〉(『ガキの自叙伝』)

おまけに採用時に知らなかた事実が判明する。高卒の新入社員には京都西陣の職工の子弟が多かったのだが、中でもリーダー格の青年の父親は西陣の共産党のオルグの中核をしており、彼は家で夜な夜な父親たちが労働争議の相談をしているのを聞きながら育ったというような家庭環境だったのだ。
「だから会社にも赤旗新聞を持ってきて、廊下に落ちておったりするのはざらだったんですね。非常に危険だなというふうに、当時思っておりました。その連中に一生懸命、人間とはというようなものを説いてですね。みんなをこちらのほうに向けさせていくというのを頑張ったんですけれども…」

当時を思い出して筆者に語る稲盛の顔に、悔しそうな表情が浮かんだ。
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私は、1962年に高校を卒業しているから、稲盛に「要求書」を突きつけた若者たちと同世代、親近感を覚える。団結しての、断固たるスジの通った要求。立派なものだ。

これに対して、約束を守らずして、「その連中に一生懸命、『人間とは』というようなものを説いてですね」とごまかそうという稲盛はみっともない。アベ並みの「思いっきり邪(よこしま)」ではないか。資本主義社会とは合理的なものだ。《契約は遵守されなければならない。とりわけ、企業が労働者にした約束においては》。こんな当たり前のことが分かっていないのだ。

しかも、「リーダー格の青年の父親は共産党のオルグの中核をしており、彼は家で夜な夜な父親たちが労働争議の相談をしているのを聞きながら育ったというような家庭環境」「非常に危険だな」が、たいへんに興味深い。

天皇制下での治安維持法は、国体の安寧と併せて、露骨にも資本主義経済体制の擁護を目的に明記した。恐らくは、戦前の企業人にとっては、天皇制の擁護と共産党の排除とは表裏一体のもので、天皇制政府が企業の守護者であると実感していたに違いない。60年当時の稲森の頭も、反共主義の点では戦前の経営者と同様の感覚だったことをよく示している。恐らくは今なお同じに違いないし、多くの経営者が同じ頭になっているのだろう。

つくづく思う。中学生にも高校生にも、働くルール学ぶことは重要だ。稲森とて、純粋な中学生時代があったろう。その頃に、「働くルール」をきちんと学ばせておくべきだった。そうすれば、起業してから、労使双方にとってもっとよい労働環境を作ることができただろう。無用な紛争を避けることは、労使双方にメリットがあることではないか。

今、アベ政権が「働き方改革(働かせ改悪)」一括法案を国会に提出予定であり、裁量労働制の対象業種拡大が大きな話題となっている。アベのやることだ、企業の利益のためのものであって労働者の不利益に決まっている、と考えるべきがまず真っ当な感覚。そして、労働時間に関する仕組みの基本は、中学生や高校生のうちにきちんと学んでおくべきなのだ。稲盛だけではなく、「思い邪(よこしま)」な経営者が跋扈しているのだから。
(2018年2月27日)

ここにもアベのギワク。「下町ボブスレー」の闇と埃。

ピョンチャンの喧噪が終わった。
隣国のイベントでこの騒ぎ。この間の国会論戦からの目眩まし効果には顕著なものがあった。東京五輪ともなれば、さらに「政権の政権による政権のための五輪」になるだろう。あるいは、「ナショナルのナショナリストによるナショナリズムのための東京五輪」。さらには、「財界の商業主義による徹底した利潤追求のための東京五輪」。そんなものはご勘弁願いたい。この願いかなわねば、20年夏の東京の喧噪を避けて、穏やかで静かな地への疎開を本気で考えなければならない。

ところで、ピョンチャン五輪での注目すべき2点。一つは、南北宥和のきっかけである。五輪と言えば「平和のための祭典」だろうが、このきっかけが米朝対話と平和の実現にどう繋がることになるか。五輪後を注目したい。

もう一つが、ジャマイカの下町ボブスレー採用拒否事件。「メンバー・オブ・アベノセイダーズ」の視点から、関心をもたざるを得ない。この件、もっと大きく「アベのせいだ」事件として取り上げられてしかるべきだろう。メディアは、下町ボブスレープロジェクトと安倍政権の関係に、鋭く切り込んでいただきたい。

五輪出場権を得たジャマイカ・チームが、無償で提供された「下町ボブスレー」をなぜ拒否したか。この点は各紙が伝えている。たとえば、朝日は、「遅い、安全でない、検査不合格」と見出しを付けて、ジャマイカ側の言い分を紹介している。

「(下町ボブスレープロジェクト推進)委員会によると、使用しないのは五輪出場を決めた女子チーム。「スピードが遅い」「規格違反で失格のリスクがある」などを理由として挙げているという。同チームは下町ボブスレーを使い続けていたが、昨年12月からラトビア製を使い「こちらの方が速い」などと主張しているという。

下町ボブスレープロジェクトは町工場の高い技術力を世界に示そうと2011年に開始。日本チームにはソチ五輪、平昌五輪と採用されなかったが、16年にジャマイカとの契約に成功した。」

委員会側の反論もあげてはいるが説得力はない。ラトビアの小工場に負けたことを潔く認めて、恥の上塗りを避けるしかなかろう。

ところが、問題はもっと別のところにある。アベが深く絡んでいるのだ。6000万円の補助金も出ている。これは裏の埃を徹底してはたき、闇に光を当てなければならない。

東京新聞2月14日の「こちら特報部」が「下町ボブスレー騒動の根を探る」という上手な記事にまとめている。タイトルは、「首相お墨付き美談一転、物議」「町工場を超え官民一体事業」。このタイトルで大方のことは想像がつくだろう。

リードは、「平昌五輪での数々のドラマが報じられる中、「下町ボブスレー」をめぐる一件が騒ぎになっている。東京都大田区の町工場の有志らが競技用そりを製作。だが、無償提供を受けていたジャマイカ代表チームが五輪開幕直前に使わないと通告し、損害賠償請求に発展しつつある問題だ。ただ、この事業は当初の下町の美談を超え、いつしか官民一体のプロジェクトに変容していた。問題の根はそこにもありそうだ。」というもの。

不明にして知らなかった多くのことをこの記事で教えられた。「教育出版」というアベ御用の出版社が、小学5年生の道徳教科書に「下町ボブスレーに乗って笑顔でポーズを決めるアベ」の写真掲載と聞いて仰天した。えっ? アベと道徳? そりゃ水と油、氷と炭、月とすっぽん、提灯に釣り鐘、泥と雲。およそこれほど似つかわしくない取り合わせも考えがたい。

この東京の記事、コメンテータとしての早川タダノリの起用が適切で、問題のとらえ方に説得力がある。

だが、この東京新聞記事は、やや品がよすぎる。その分インパクトに欠ける。たとえば、この下町ボブスレー・プロジェクト推進委のジェネラルマネージャーが、加計問題の加計孝太郎、森友問題の籠池泰典に当たる人物なのだが、さりげなくその顔写真は出しても名前までは出さない。

それに比較して、適当に品が悪くそれだけに突っ込み鋭い記事がリテラ(2月13日)である。タイトルは、「下町ボブスレーに“韓国ヘイト”と森友加計そっくりの“アベ友優遇”疑惑! 補助金にも安倍首相が介入か」と具体的。
リテラはいつもお薦めだが、これは特に是非お読みいただきたい。「下町ボブスレー・プロジェクト」に、いかに深くアベが関わっていたか、その思惑はなにかが、よく分かる。

http://lite-ra.com/2018/02/post-3798.html

まず、ヘイトの問題。「下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会」なる運営団体の公式ツイッターが口汚い中国、韓国ヘイトを投稿していた。リテラは、「こんな差別体質の組織のソリがオリンピックに参加していたらと思うと、空恐ろしくなる」と言っているが、このことについては割愛する。

必要な範囲で引用しておきたい。
「大田区の企業経営者ら産業振興目的でこのプロジェクトを立ち上げたのは、2011年。当時はほとんどスポンサーも付いておらず、ここまで大きな話題になっていなかった。ところが、2013年2月、安倍首相が政権に返り咲いて最初の国会の施政方針演説で、いきなりこの下町ボブスレーのことを紹介する。
『小さな町工場からフェラーリやBMWに果敢に挑戦している皆さんがいます。自動車ではありません。東京都大田区の中小企業を経営する細貝さんは仲間とともにボブスレー競技用ソリの国産化プロジェクトを立ち上げました。世界最速のマシンをつくりたい。30社を超える町工場がこれまで培ってきたものづくりの力を結集して、来年のソチ五輪を目指し、世界に挑んでいます。高い技術と意欲をもつ中小企業、小規模事業者の挑戦を応援します』」

「以後、ANA、伊藤忠商事、東芝など、名だたる企業が名乗りをあげ、NHKでのドラマ化も決定。マスコミの取材が殺到するようになる。さらに、2013年6月30日、自民党が開いて中小企業小規模事業者政策緊急フォーラムなる会合には、下町ボブスレーのソリの現物が会場に運び込まれ、安倍首相が乗り込むパフォーマンスを披露。この様子も多くのメディアに紹介され、右派系の『教育出版』の小学校道徳教科書にはその写真が掲載された。

下町ボブスレーにとっては、大宣伝になったわけだが、安倍政権は宣伝に協力しただけではない。施政方針演説の数カ月後の同年6月、政府は、このプロジェクトに直接、資金を投入することを決めた。経済産業省が下町ボブスレーを『JAPANブランド育成支援事業』に採択し、以後3年間にわたって、上限2000万円の補助金を交付し続けたのだ。

このプロジェクトの中心人物が、下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会のゼネラルマネージャー・細貝淳一。大田区で防衛機器、OA機器向けの金属材料販売加工を行う会社を経営しているが、下町ボブスレーを立ち上げ、以来、スポンサー集めから運営までを取り仕切ってきた。今、「安倍総理に最も影響力がある中小企業の社長」と言われているという。

「その細貝が、クラウドファウンディングのサイト「zenmono」で、安倍効果についてこう語っている。

「ここで安倍晋三さんが大ヒットを飛ばしてくれる」「総理になられた時、施政方針演説ってあるじゃないですか。あそこで大田区の企業が下町ボブスレーというプロジェクトで世界を目指していると。」「下町ボブスレーに対して信用がついて、そこでスポンサーがドドドドッと。だから後付けなんだよ、もう全部。先に走っちゃうから、金使うこと前提。あとは奇跡がボンボンボンって。」

まるで森友学園・籠池理事長の「神風が吹いた」を思い出させる発言だが、実際、森友・加計疑惑と全く同じように、安倍首相の鶴の一声、施政方針演説をきっかけに、日本政府全体が一斉に下町ボブスレー支援に動いたのは間違いない。」

さらに、注目すべきは、大田区を地盤とする平将明衆議院議員(自民)がこう語っていること。“細貝さんが安倍さんに『補助金の申請書類が多すぎる』と言ったら、安倍さんから茂木さんに話が降りてきて、茂木さんから私に話が降りきて、申請書類を半分にした”というエピソード。

これ、時期的に見ても、下町ボブスレーが上限2000万円の補助金を2013年から3年間受けた経産省中小企業庁の『JAPANブランド育成支援事業』の申請をにらんでの要望だったと考えられる。

 ようするに、安倍首相は、オトモダチの要望に応じて、補助金の申請書類が少なく済むように役所に圧力をかけさせたということではないか。

 いや、安倍首相の圧力はたんに申請書類の分量だけでなく、採択そのものにも影響を与えた可能性がある。申請書類をめぐる動きで、安倍首相がどんなプロジェクトに補助金を出したがっているかは当然、役所に伝わり、そうなれば、官僚が忖度して動くのは火を見るより明らかだからだ。

まさに何から何までモリカケとそっくりな展開になってきた下町ボブスレー問題。政府が全面協力しながらラトビアの町工場に技術力で負けてしまった責任やその敗北を認めずに損害賠償をちらつかせる姿勢、オリンピックに参加しようというプロジェクト運営者がヘイトを繰り返していたという事実は、それだけで言語道断であり非難に値するが、この問題にはもっと深い闇がある。

いったいどういう経緯で、政府が一プロジェクトにここまで肩入れし、国民の血税をつぎ込むに至ったのか。それこそモリカケ並みの徹底追及が必要だろう。」

ここにも、摘出すべきアベ忖度政治の病巣がある。
(2018年2月26日)

「メンバー・オブ・アベノセイダーズ」宣言

「アベノセイダーズ」という言葉を流行らせようという陰謀がある。あるいは、「アベのせいだ症候群」。ともかくよくないことは、なんでも短絡的に安倍晋三のせいに違いないと主張する人々や、その傾向を揶揄しようというもの。もちろん、アベ陣営得意の印象操作の一環である。「レッテル貼りは止しましょう」というあの手で、アベの責任を追及する矛先を少しでも鈍らせようという魂胆。こんな姑息な作戦で、アベの責任追及に怯みがあってはならない。

むしろ、開き直ろう。このキャンペーンを逆用しよう。私は、「メンバー・オブ・アベノセイダーズ」であることを高らかに宣言する。「アベのせいだ症候群」罹患もカミングアウトしよう。その自覚において、「まずは何についてもアベが悪い。アベが元凶だ」と結論することとする。同じことだが、「アベのやっていることはすべて間違い」「あれもこれもアベのやったことだからよくない」とも。そう結論しておいて、しかる後に、おもむろにその理由付を考える。この思考方法こそが正しい姿勢だ。これこそ、第1次アベ政権登場以来のウオッチャーとして到達した経験的真実であり、政治倫理上の正義でもある。

思い出せば、60年安保の時代、世は熱い安保性悪説、安保元凶論の空気に満ち々ちていた。すべては岸のせい、安保が悪い。「アンポ・ハンタイ」「岸を倒せ」だった。これが今はかたちを変えて、「アベのせいだ」「アベを倒せ」。

私が大学にはいったころ、学内はまだ安保闘争の余熱冷めやらぬ雰囲気だった。「すこし勉強したまえ。そうすれば、米日反動の同盟が社会の矛盾の元凶であることが分かるはずだ」と説かれたものだ。「素晴らしい日本国憲法の体系は、邪悪な安保法体系によって侵蝕されている。国民主権も、平和も、そして人権も、安保条約によってなきも同然ではないか」。フーム、なるほど。

「安保によって生活のあらゆる面が不正常になっているのだ。たとえば、天気予報が当たらないのも安保のせいだ。正確な天気予報には、偏西風の風上にある中国やシベリア、朝鮮の気象データが不可欠なのだ。しかし、気象データは軍事情報でもある。気象庁には、安保条約ある限り近隣諸国からのデータがはいってこない。安保条約を廃棄すれば、直ぐにでも天気予報はよく当たるようになる」。へー、そんなものですかねえ。いたく感心はしたが、真偽のほどはいまだによく分からない。

いま、憲法改悪・アメリカ追随外交・集団的自衛権行使容認の安全保障・防衛費を聖域化した軍拡・格差拡大の経済政策・国家主義教育・不公平きわまる税制・極端に資本の側に偏した労働政策・苛酷な社会保障・環境破壊・原発再稼働・沖縄の見殺しと弾圧・メディア規制・ヘイトスピーチの野放し・オトモダチ人事と忖度政治の横行・政治と行政の私物化・歴史修正主義…。すべての分野で、アベ政治こそが、諸悪の根源ではないか。いささかもこれを免責してはならない。

学校や幼稚園に飛行物体の部品が落ちてくるのも、全国に公認の博打場が建設されようとしているのも、国税庁長官の最悪人事も、最高裁が官房機密費の開示を命令しても情報隠しに恋々としているのも、世論に逆らっても裁量労働制の拡大に狂奔しているのも、すべてはアベノセイだ。ひょっとすると、サンゴやジュゴンが姿を消したのも、大雪も竜巻も地震も、そして花粉症も、何もかもがアベノセイなのかも知れない。

全国の「隠れメンバー・オブ・アベノセイダーズ」諸君。あれもこれも、細大漏らさずにアベの責任を追及しよう。その追及が実を結ぶ共同行動を目指して、心からの連帯のあいさつを送る。
(2018年2月25日)

高校生が書いた「私たちの憲法前文」

まいにち笑っていられる幸せ。
まいにちごはんが食べられる幸せ。
まいにち学べる幸せ。
まいにち安心して眠れる幸せ。
まいにち会いたい人に会える幸せ。
あたり前のまいにちは特別なまいにち。
もしまだ戦争が日本で続いていたら
もしまだ核兵器が使われ続けていたら
今、この瞬間のようにありふれた幸せに溺れることもできていない。
あたり前に感謝しながら
自分が幸せになるための努力をしていきたい。
頭の片隅に幸せになりたくてもなれない人がいることを覚えておきたい。
そうすることで世界が一歩幸せに近づく。
(「ほっととーく・145号」2018年2月3日号より)
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現代の高校生が、社会の理想を憲法に託して、まぎれもなく自分の言葉で書き上げた「私の憲法前文」だ。この前文を書く作業を通じて、自分と社会とが緊密に繋がっていることを明確に再認識したのではないか。自分の幸せは社会のありかたと無関係にはない。平和なくして、あたり前のまいにちはない。

この一文の素晴らしさは、徹底して「個人の幸せ」から出発して筆を進めているところだ。そのことが多くの人々の共感を呼ぶ。笑うこと、食べること、学ぶこと、安心して暮らすこと、自由に人と交際すること、それこそが幸せだ。ここには、国家も、民族も、王様も、党も、家も、神様も出る幕はない。「個人の幸せ」こそが第一義だ。その他の諸々は、個人の幸せのためのもの。そのような確信が、身についているのだ。まずは、そのことを素晴らしいと思う。

この書き手は思いをめぐらせる。「個人の幸せ」に敵対するもの、「個人の幸せ」を根こそぎ奪い去るもの。その危険なものは戦争だ。核兵器だ。「個人の幸せ」には平和が不可欠なのだ。「個人の幸せ」を守る平和への感謝をしつつ、平和を守り抜く努力をしていかねばならない、と。

さらに、思いはめぐる。「幸せになりたくてもなれない人がいる」現実についての認識である。「幸せになりたくてもなれない人」の具体的イメージは、この短い文章からは伝わってこない。

戦火に怯える紛争地域の人々、基地建設と闘わざるを得ない人々、原発被害によって故郷を追われた人々、過労死するまでの労働を強いられる人々、国籍や民族や思想や信仰による差別に苦しむ人々、公害や労災や職業病の被害者。そして、貧困にあえぐ多くの人々。この理不尽はすべて社会が作り出した不幸だ。不幸を作り出した社会が、その自覚と反省によって不幸をなくせないはずはない。

さらには、病気や自然災害や事故に苦しむ人々の不幸には、社会が手を差し伸べなければならない。この社会の理想に向けての一歩が、社会と世界の幸せの実現に一歩近づくということなのだ。

個人の幸せから出発して、個人の幸せの実現のためには世界の幸せが必要と考える。そして、この「前文」を書いた君の言うとおり、「幸せになりたくてもなれない人がいることを自覚しつつの、自分が幸せになるための努力」が世界の幸せを生み出す力になる。そう、1926年に、詩人(宮沢賢治)もこう言っている。
  近代科学の実証と求道者たちの実験とわれらの直観の一致に於て論じたい
  世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない

賢治は、
 まづもろともにかがやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばらう
と言って散った。
この「前文」を書いた君は、今の世の無数の賢治の一人だ。私も、そうなりたいと思っている。
(2018年2月24日)

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