澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

統一教会と地方保守勢力、再びの癒着を許してはならない。

(2023年3月3日)
統一地方選が間近である。これまで、あまり話題にならなかったが、地方政治の保守勢力と統一教会との連携は、中央以上に緊密な模様である。さすがに、中央政界では、どの政党も統一教会との関係は断絶しなければならないと姿勢を正している。しかし、地方でその姿勢を貫いくことは至難の業なのだ。再びの蜜月の関係を求めて、地方の統一教会と保守勢力とが、蠢動しているようだ。

昨日の毎日新聞朝刊トップに、「特定宗教の遮断回避を 101地方議会に陳情書」という調査報道。そして、社会面の関連記事に「陳情 保守系との断絶危惧」という見出し。

「特定の宗教との関係を遮断する決議や宣言をしないことや、特定の宗教と議員らとの関係を調査しないことを求める陳情書や要望書が、少なくとも30都道府県の101議会に提出されていたことが、毎日新聞のアンケート調査で判明した。提出者が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)や関連団体の関係者と確認できたのは18議会だったが、他の陳情書や要望書も文面が酷似しており、教団との関係を断つ動きが地方議会で進むことに対抗しようと提出された可能性がある」

これは分かりやすい。調査対象とされた全国の主要な330自治体中の101議会である。組織的な動きであることに疑問の余地はない。これまで保守勢力と連携していた統一教会は、議会決議の蔓延を恐れている、「保守系との断絶を危惧」しているのだ。

毎日は、「国政と同様に地方でも、保守系政治家との気脈が断たれかねない現状への危惧や不満が背景にある」としているが、実は「保守勢力の側も統一教会との断絶を危惧している」というのが、毎日報道から読みとるべきところ。当然のことながら、反転攻勢の意図も読みとらねばならない。

以下の毎日の関連記事に注目せざるを得ない。

「2022年11月中旬。栃木県議会や県内全市町の計26議会宛てに、同じ内容の陳情があった。『議会が特定の宗教や関連団体との関係を遮断することは、思想・良心の自由や請願権の侵害』と訴え、そうした決議をしないよう求めていた。提出したのは『基本的人権を守る栃木県民の会』。代表の増渕賢一(としかず)氏(76)は県議通算9期で県議会議長や自民党県連幹事長も務め、15年に引退した地元保守政界の重鎮だ」

言うまでなく、陳情書の「特定の宗教」は、旧統一教会を指す。彼は、統一教会と地元政界のつながりについて、「互いに利があって近づくんだろう」と言う。自身は信者ではないが、「国際勝共連合栃木県本部」の幹事長を長く務めている。「教団関連とは分かっていた。入ったのは反共という理念が一致したから」。教団信者の選挙支援も受けた。「ビラのポスティングを黙々とやってくれて助かった」。「県内で政治家と教団の窓口になったのは、全部私。教団は存在をアピールして理念を広めるため、政治家は票になるため、お互いに近づく」。

この人物の行動は、統一教会の指示であるよりは、保守陣営の要求によるものと言うべきだろう。むしろ、両者がここまで密着し一体化していることに愕然とする。今さら、切っても切れぬ仲になっているのだ。

これまで、この両者がどれほど密接な関係にあったか。その一端を、本日の毎日記事が教えてくれる。「旧統一教会系イベントに地方議員170人参加か 旅費負担も」というもの。

「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体が2020年2月に韓国で主催したイベントに、日本から多くの地方議員らが参加していたことが議員らへの取材で判明した。参加した元市議は「関係者から約170人が参加したと聞いた」と証言。議員らは教団側に旅費を負担してもらったり、公費の政務活動費(政活費)で処理したりしていた。取材に対し、政治活動に対する教団の影響を否定したが、専門家は不適切だと指摘している。」

このイベントは、UPF(天宙平和連合)が主催「ワールドサミット2020」。教団の創始者・文鮮明の生誕100年を記念する行事。170か国から政治家や宗教指導者、学者ら6000人以上が参加したという。教団トップの韓鶴子総裁が「全ての国家が天の父母様の子女になればこれ以上の戦争と葛藤はあり得ません」とあいさつする場面もあったという。

毎日は、参加した議員の多くに取材しているが、その中に兵庫県西宮市の市議会議長のコメントがある。「UPFの旅費負担で参加。国会議員秘書時代から付き合っているUPFの知人に誘われた。5万?6万円とされた旅費を「今回は結構です」と言われて受け入れたという。問題発覚後、費用を精査して9万7200円を返還。取材に「軽率だった」と釈明する一方、個人的な行動で「違法ではない」と強調した」との記事になっている。

また、政務活動費で処理しあとで返還したというケースもある。これに関して、政治資金の問題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)が「教団側の費用負担により議員は教団への弱みができる。持ちつ持たれつの関係になりかねず不適切だ。また、政活費は議会活動の調査などに支払われるものだが、イベント参加はそのためのものではない。違法支出の可能性が高い」とコメントしている。

統一教会と保守勢力、反共という理念で結ばれているのか、あるいは「互いに利があって近づいた」のか。いずれにしても相当に深みに陥っている腐れ縁。国民の監視の目を光らせておかなければ、たちまちにして再度の癒着を許すこととなる。

Comments are closed.

澤藤統一郎の憲法日記 © 2023. Theme Squared created by Rodrigo Ghedin.