日弁連が、石原慎太郎元都知事の差別発言に3度目の人権救済措置
私には、「水に落ちた犬を打つ」趣味はない。首都の公教育から自由を奪った張本人である石原慎太郎(元知事)は、すでに「水に落ち目の犬」状態と思っていたら、なかなかそうでもない。
昨日(9月25日)「太陽の党が復活」と報じられた。各紙に西村・田母神・石原という極右トリオが手をつないだ写真が掲載されている。
「無所属の西村真悟衆院議員と元航空幕僚長の田母神俊雄氏は25日、国会内で記者会見し、2012年に石原慎太郎氏らが結成して休眠状態だった『太陽の党』を引き継ぎ、党の活動を再開すると発表した。代表に西村氏、代表幹事には田母神氏が就いた。所属国会議員は西村氏1人。次期衆院選で党勢拡大を図る。会見には、次世代の党の最高顧問を務める石原氏も出席した。太陽の党は、次世代の党との連携を視野に入れている。」(共同)との報道。
そんなわけで、石原慎太郎元知事について、打つこと、叩くことを遠慮することはなさそうだ。
日弁連は、毎月機関誌「自由と正義」を会員に配布している。その9月号が先日届いたが、日弁連人権擁護委員会の委員会ニュース「人権を守る」9月号が同封されていた。これは年4回刊である。
ここで、日弁連が石原慎太郎元知事に人権救済警告をしていることを知った。今年の4月下旬のことだが、おそらく、よくは知られていないことなので、全文を紹介しておきたい。
タイトルは、『差別発言で元都知事に再度の警告』『今回は少数者の人権侵害で日弁連からの照会も無視』というもの。担当者の苦々しさが、伝わってくる。
人権救済申し立てに対しては、「不措置」か「措置」の結論が出される。調査の結果、人権侵害またはそのおそれがあると認められる場合には「措置」となり、措置の内容としては、司法的措置(告発、準起訴)、警告(意見を通告し反省を求める)、勧告(適切な措置を求める)、要望(趣旨の実現を期待)、助言・協力、意見の表明等がある。
また、さらに、日弁連は人権擁護委員会による措置の内容を実現させるため、2009年4月以降、人権救済申立事件で警告・勧告・要望等の措置を執行した事例について、一定期間経過後(現在は6ヶ月経過後)に、各執行先に対して、日弁連の警告・勧告・要望等を受け、どのような対応をしたかを照会(確認)している。回答内容が不十分な場合、再度の照会を行うこともある、という。
今回の人権救済措置は同一人物に3度目のもの。紹介記事の内容は以下の通り。
「日弁連は本年4月22日、衆院議員の石原慎太郎元東京都知事に対し、知事時代に、同性愛者など性的少数者を蔑視し、社会から排除しようとする発言があり、性的少数者の人権を侵害しており、社会の差別意識を助長する危険性もあるとして、強く反省を求める警告をしました。
「石原元知事の差別発言に対する日弁連の人権救済措置は、いずれも知事時代の2000年8月の『三国人発言』に対する要望、03年12月の『ババア発言』に対する警告に続いて三度目です。石原元知事は今回、事実関係の確認を求める日弁連からの二度の照会を無視し、一切の回答を拒否。日弁連は、石原元知事からの主張や反論はないと判断した上で、石原元知事が、対象は異なるが差別発言を繰り返していると認定し、元職であっても知事による発言の影響力は大きいとして、再度の警告としました。
『繰り返される差別発言』
警告の対象となった石原元都知事の発言は三つ。まず10年12月、青少年健全育成条例改正を求める要望書を提出に都庁を訪れたPTA団体などの代表者に「テレビなんかにも同性愛者が平気で出るでしょ。日本は野放図になり過ぎている。使命感を持ってやりますよ」などと発言し(第1発言)、この発言の真意を記者から問われると「(同性愛者は)どこかやっぱり足らない感じがする。遺伝とかのせいでしょうか」などと発言したこと(第2発言)が、いずれも新聞報道されました。
さらに11年2月発売の週刊誌の記事では、「我欲を満たすための野放図な害毒は日本を駄目にする」「同性愛の男性が女装して、婦人用化粧品のコマーシャルに出てくるような社会は、キリスト教社会でも、イスラム教社会でもあり得ない。日本だけがあっていいという考え方はできない」などと発言していました(第3発言)。
これに対して、国際的な人権NGOや性的少数者の人権保障を訴えるNGOがインターネット上で抗議活動をおこない、海外からも批判されるなど、社会的反響も確認できました。
『憲法や自由権規約を侵害』
そこで日弁連は、事実関係を調査し、いずれの発言も都知事としての発言であると認定した上で「性的少数者はテレビなどに出演すべきではない存在だという誤った認識を社会に与え」「性的少数者を社会から排除すべきとの差別を招きかねない」「性的少数者は人間として不十分だと受け止められる危険性があり、差別を助長する」と判断。多様な性的指向や性自認を認めず、性的少数者の人権を否定し、その社会進出を拒否し、排除しようとする発言であり、憲法13、14条や国際人権規約などが保障する性的少数者の権利を侵害すると結論づけました。」
日弁連の石原に対する3回の要望・警告は、「民族差別」「女性差別」「性的マイノリティへの差別」についての公然たる発言を人権侵害と認定するものである。人権感覚の欠如に基づく差別発言は、同人の民主主義社会における政治家としての致命的欠陥を露呈している。
このような人物が関わる「太陽の党」は必然的に日陰を作る。日陰となる位置にある人を差別する政党の「党勢拡大」など許してはならない。
(2014年9月26日)