参院選の開票結果から、革新都政の選挙共闘を展望する。
参院選の東京の票を出方を見ておどろいた。
各党の比例代表の獲得票は以下のとおり(万未満四捨五入)。
1 自民党 180万
2 共産党 77万
3 みんな 71万
4 公明党 69万
5 維新 64万
6 民主党 59万
7 生活 12万
8 社民党 12万
共産党が第2党の座を占めている。その得票率は13.71%。既に、政策内容だけでなく獲得票数の上でも自共対決時代の幕が開いている。これまで自民党と対抗してきた民主党は、第6党に凋落した。おそらく、回復の目はない。
回復の目があるまいという理由の一つが、民主党比例代表当選者7名のうちのたったひとり(大島九州男)を除く、下記6名の顔ぶれである(括弧内は主たる経歴)。
磯崎哲史 (自動車総連特別中央執行委員)
浜野喜史 (電力総連会長代理)
相原久美子(自治労組織局次長)
神本美恵子(日教組教育文化局長)
吉川沙織 (NTT労組特別中央執行委員)
石上俊雄 (東芝グループ労組連合会副会長)
この当選者たちは連合の組織内候補。要するに、自動車総連・電力総連・自治労・日教組・情報労連・電機連合等々の幹部なのだ。それぞれの業界の利益代表でもある。圧力団体としての連合や単産はあれども、民主党という政党がはたして存在していると言える状態なのだろうか。
東京選挙区から出馬して落選した鈴木寛候補も電力総連との因縁が深い。前回選挙の際に鈴木寛候補の選対本部長を務めたのは小林正夫(電力総連副委員長)だった。それあらんか、鈴木寛の4本の重要政策のうち3本は、「現実的な卒原発」「TPP賛成。超党派で経済成長」「必ず、オリンピック招致」というもの。もう1本の「自民党の戦前に戻る憲法草案を止める」が取って付けたよう。これが民主党の政策のレベルなのだ。
参院選の開票を終えたいま、改めて革新の共闘(あるいは共同行動)の成立条件を考える。
共闘は、アプリオリに重要でも必要でもない。政党や民主団体単独では力量が不足し、達成し難い課題について共闘の必要が生じる。脱原発・消費増税反対・秘密保全法成立阻止・雇傭規制緩和反対・教科書検定強化反対等々のシングルイシュー共闘と、首長選挙のごとき包括的な共闘、そして改憲阻止・安保廃棄共闘のごときその中間的なものが考えられる。シングルイシュー共闘は比較的成立が容易であるが、包括的な共闘は信頼関係の醸成なくして成立が格段に困難となる。取りあえずは、もっとも困難な首都の知事選の共闘を念頭に置くこととする。
革新共闘の主体についてはどう考えるべきだろうか。政治を動かすに足りる規模の「革新共闘」には、共産党の参加が不可欠となっている。好むと好まざるとにかかわらず、共産党を除いた革新的な共同の事業の成功はおぼつかないし、おそらくは意味がない。
改めて東京選挙区の「非保守系」候補の得票は以下のとおり。
吉良佳子(共・当選)70万票
山本太郎(無・当選)67万票
鈴木 寛(民・落選) 55万票
大河原雅子(無・落)24万票
これを見る限り、今後の革新共闘の主体は、共産党と無党派市民運動の共闘を軸にするものとなるのだろう。山本太郎の脱原発シングルイシュー票の中に、社民支持票も生活支持票も、そして緑の党も埋没した。各政党とも主体となって、総合的に選挙戦を戦うという構図を描く力量を失っていることを意味する。
これまで、共闘の成立を最優先の課題とする傾向があった。どんな形でも、だれが主導するものにせよ、「とにもかくにも共闘が成立したことそれ自体」を貴重なものとして評価するという傾向である。市民運動が先行して走り出し、各政党に共闘参加を呼び掛ける「この指とまれ」方式しか、共闘成立はないという現実も否定しえなかった。しかし、今、客観状況は変化している。
共闘の成立を真摯に望む関係当事者間において、透明性の高い協議を尽くして共闘の合意に達するという本来のあり方が可能となっている。正攻法を尽くすことなく無理な形での共闘を作りあげる必要に乏しく、成果も期待しがたい。
2016年に猪瀬知事の任期が切れ、次の都知事選を闘う時期がやって来る。12年東京都知事選のような惨敗を繰り返してはならない。泥縄選挙の無力は体験済みである。今回の吉良選挙・山本選挙を見ていると、熱気の度合いにおいて次元が異なることを痛感する。付け焼き刃ではない都政の分析と選挙政策の策定、革新の要にふさわしい候補者の選定、そして戦略や戦術を描くことのできる有能な選対スタッフを、可及的早期につくる努力に着手しなければならない。そして、革新都政実現を願う広範な人々の熱意を生かしきって、革新共闘にふさわしい相乗効果をもたらす都知事選を期待したい。
(2013年7月23日)