澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

市民運動が公の施設を利用する権利について

暮れから正月にかけて、市民団体の機関紙や活動報告が夥しく郵送されてくる。草の根で地道に活動している多くの人々がいることに、この上ない心強さを覚える。
その中の,いかにも手作りの一通が提起している問題をご紹介したい。

「学校と地域をむすぶ板橋の会」という市民団体がある。略称は「むすぶ会」。公立校における「日の丸・君が代」強制を、地域の問題として受けとめようという貴重な運動体。その機関紙が、「手と手 声と声」という。不定期の刊行なのだろうが、そのN0.19が暮れに届いた。

その中に、板橋区男女平等推進センターでチラシ配架を拒否される」という看過しがたい記事がある。チラシ「配架」とは、来館者の誰もが取っていけるよう「棚にチラシを置いておく」ことだという。市民運動用語では、「置きビラ」である。

「政治的なチラシは、配架して便宜をはかることができない」と拒否されたという。これは、地域に訴えようという市民団体には、切実な問題である。おそらく全国のあちらこちらで,同様の問題が起こっているのではないだろうか。行政が市民運動を「政治的」と色づけて、「政治的な活動には一切の協力お断り」というありがちな構図。これは、考えさせられる。やや長文だが、全文転載させていただく。

板橋区男女平等推進センターには、私たち登録団体が依頼すれば窓口のラックにチラシを置けることになっています。来館者が自由にチラシを取ることができます。
会は、7月に日比谷で開催された「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流集会に賛同し、この集会チラシに「むすぶ会は賛同団体です」と連絡先を明記したシールを貼り、7月8日にラックに置いてほしいと依頼しました。しかし、センターから「政治的なものはダメ。登録団体連絡会のルールにもある」と拒否の電話がありました。

私たちは忙しくて直ぐ話に行けないが、判断した責任者と話したいと返事をしました。9月5日に担当の係長と話をすることになりました。係長の見解は課長も当然承知している内容とのことです。

区の判断
板橋区男女平等推進センター「スクエア・I(あい)」のチラシ類の取り扱い基準(登録団体用)の「3 配架をお断りするもの(3)政治的なもの」にあたると判断した。

区として、地方公務員法36条(政治的行為の制限)の「2 職員は、特定の政党その他の政治団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもって、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもって、次に掲げる政治的行為をしてはならない。(略)四、文書又は図画を地方公共団体又は地方独立行政法人の庁舎(略)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。」とあり、地方公務員として、行なってはならないことであるから断った。

私たちの反論
チラシ裏面に「安倍政権下で教育は危機から崩壊へ」と書かれていますが、「安倍政権という言葉をもって拒否するのはおかしい。」「特定の政権を言葉に出すと政治的となるのか。政治的で問題とされるのは選挙のことではないか。現政権の施策について考えようというのは全く問題ない。」「職員の政治的行為の制限の規定を住民にまで及ぼすのはおかしい。」「公務員は憲法に基づき全体の奉仕者だ。表現の自由を保障すべきだ。」「板橋区は政権が推進しているオリンピックパラリンピックを推し進めている。実際の仕事はどちらかの立場で行っている。」「政治的とは何か? 社会生活の何にでも関係する。」「仮に、オリンピックを成功させよう、とか憲法を考えようとかでも政治的だからダメというのか。」「区は、反対しているからダメと言っているに過ぎない」「9条俳句の裁判で公民館は負けた」「勝手な判断で団体の活動に介入するべきでない」
等と抗議しました。

2014年にも区は、区民祭り時に男女平等推進センター掲示の登録団体紹介用に提出した会のポスターに対して、「議員の目にとまる可能性があり、」政治的と捉えられる心配があるから」と文章中の「『日の丸・君が代』強制反対!を掲げた活動紹介として添付した講演写真の「『日の丸・君が代』強制に反対!板橋のつどい」との文字をボカシてほしいと言ってきました。その時は期間が追っており他の部分でも趣旨は伝わると判断し掲示を優先しました。ところがその後の話合いの場では、「男女平等に関係ないから」と言い方を変えてきました。それ以降は、このような問題は起きませんでした。

今回、区は、一貫して「政治的」を理由に 「区施設の管理責任を持つ必要がある」「会の活動を否定している訳ではない」と言い私たちの意見について「弁護士に確認してみます」と答えました。私たちは、今後、配架依頼した時の対応を見ていく、ということでこの日の話し合いを終えました。

その後、会が実行委員として参加している「わいわい祭り」のチラシ(戦争させない!なくそう原発!と記載)は、何の問題もなく配架されました。今回同封の「板橋つどいのチラシ」は、これから配架依頼しますが、区の対応によっては速やかな話し合いを要求し、配架を獲得したいと考えます。ご注目ください。

理不尽な行政側の言い分に、活動家が位負けすることなく頑張って抗議し反論している様子が彷彿とする。できれば、このような場合には行政側の文書が欲しい。問題のチラシの何が「政治的なもの」なのか理由を確認したいところ。

ややはっきりしないが、板橋区の言い分は、次のように整理できるだろう。
(1) 「男女平等推進センター・チラシ類の取り扱い基準(登録団体用)」に、「配架をお断りするもの」として「政治的なもの」と規定されているところ、当該のビラはその「政治的なもの」に当たるので配架をお断りする。

(2) 地方公務員法36条(政治的行為の制限)2項・四号を根拠に、地方公務員として、「政治的活動に庁舎を利用させてはならない」とされているから、配架お断り。

言うまでもなく、この問題のベースには、憲法がある。「むすぶ会」の会員には、思想・良心の自由(19条)があり、思想・良心に従って表現する自由(21条)が基本権として保障されている。板橋区には、区民の基本的人権を尊重し、その施設を区民に利用させるに際して、一切の差別的取り扱いをしてはならない。これが大原則である。

法律レベルで問題とすべきは、地方自治法第244条社会教育法第23条である。
(1)「男女平等推進センター・チラシ類の取り扱い基準」の内容は詳らかにしないが、係長が言うような内容であれば、明らかに両法に違反している。違憲・違法で無効である。早急に取り扱い規準を作りかえなければならない。

(2)問題は、区民の権利の有無なのだから、職員の地位を定める地方公務員法の規定を持ち出すのは筋違いである。しかも、担当職員の地公法36条解釈は、明らかに間違っている。

地方自治法第244条を確認しておこう。市民運動が行政施設を利用する際の大原則である。お上に、施設を使わせてもらっているのではない。私たち主権者・住民の権利としての公の施設の合理的使用方法を条文化したものである。

第1項 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
第2項 普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
第3項 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。

市民運動活動家は、地方自治法第244条2項を暗記しておくとよい。板橋区は、むすぶ会のセンター利用を拒否してはならない」のだ。

もう一つは、社会教育法第23条である。いわゆる「公民館」に関する法的根拠。
関連条文を引用しておこう。

社会教育法「第五章 公民館」
第20条(目的) 公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

第22条(公民館の事業) 公民館は、第20条の目的達成のために、おおむね、左の事業を行う。
五 各種の団体、機関等の連絡を図ること。
六 その施設を住民の集会その他の公共的利用に供すること。

第23条(公民館の運営方針)
第1項 公民館は、次の行為を行つてはならない。
一 もつぱら営利を目的として事業を行い、特定の営利事務に公民館の名称を利用させその他営利事業を援助すること。
二 特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。
第2項 市町村の設置する公民館は、特定の宗教を支持し、又は特定の教派、宗派若しくは教団を支援してはならない。

これで十分だろう。問題は、社会教育法第23条1項2号である。公民館の運営において禁止されているのは、「特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。」に限定されている。市民運動における安倍政権批判が、「特定の政党の利害に関する事業」になろうはずはない。

手と手 声と声」の主張はまことにもっともなのだ。
「安倍政権という言葉をもって拒否するのはおかしい。」「特定の政権を言葉に出すと政治的となるのか」「政治的で問題とされるのは選挙のことではないか」「現政権の施策について考えようというのは全く問題ない」「職員の政治的行為の制限の規定を住民にまで及ぼすのはおかしい」「公務員は憲法に基づき全体の奉仕者だ」「表現の自由を保障すべきだ」「板橋区は政権が推進しているオリンピックパラリンピックを推し進めている。実際の仕事はどちらかの立場で行っているのか」「政治的とは何か? 社会生活の何にでも関係する。」「仮に、オリンピックを成功させよう、とか憲法を考えようとかでも政治的だからダメというのか。」「区は、反対しているからダメと言っているに過ぎない」「9条俳句の裁判で公民館は負けた」「勝手な判断で団体の活動に介入するべきでない」
すべて、自信をもっていただきたい。

ほとんど無関係だが、地方公務員法36条2項にも触れておきたい。その条文は以下のとおりである。
36条2項
職員は、
・特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、
・あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、
次に掲げる政治的行為をしてはならない。

四 文書又は図画を地方公共団体庁舎、施設等に掲示し又は掲示させ、その他地方公共団体の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。

一見して明らかなとおり、これは公務員の規律の問題である。本件に関係するとすれば、「職員が、特定の目的をもって、庁舎、施設を利用させること」という禁止規定に触れるか否かである。重要なのは、36条2項の目的である。下記のどちらかがなければならない。

1 特定の政党その他の政治団体・特定の内閣・地方公共団体の執行機関を支持又は反対するという目的
2 公の選挙・投票において特定の人または事件を支持または反対するという目的

注意すべきは、目的をもつ主体は職員である。「むすぶ会」のチラシが、そのような職員の目的を推認させることになるとは、到底考え難い。「安倍政権下で教育は危機から崩壊へ」と記載されていたとしても、その配架を許可した職員が、安倍内閣に反対する目的で配架したことになろうはずはない。

のみならず、同法36条には次の第5項の規定がある。

5 本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。

担当職員は、安心してビラの配架を認めてよい。うっかり禁止すると大ごとになる。板橋区は憲法と法の趣旨立ち返って、言いがかりに等しい社会教育施設の濫用的運用を改めるべきである。

なお、この通信の最終ページには、次の集会案内が掲載されている。このビラの配架がどうなったか。興味津々である。

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「日の丸・君が代」強制反対!
2020板橋のつどい

【開催要項】
2020年2月1日 開場17:30 開会18:00 閉会20:30
場所:板橋グリーンホール601号室
東武東上線大山駅・都営地下鉄三田線板橋区役所前駅共に下車5分
講演:現代の教育政策とこれからの課題
講師:現代教育行政研究会代表 前川喜平さん
1955年奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て、2016年文部科学事務次官。17年同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

報告:CEART(セアート、国連の合同専門委員会)報告を生かす取り組み
「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議 準備会
2014年、アイム89東京教育労働者組合は、東京都教育委員会が発した10・23通達が、国際労働機関(ILO)と国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「教員の地位に関する勧告」(1966年発出)に違反していると申し立てました。その結果、19年春「日の丸・君が代」強制に対する、是正勧告が両機関で承認され、公表されました。国際機関からのこの問題に関しての是正勧告が出されたのは初めてのことだそうです。
しかし、文科省は日本語訳を行おうともせず、できるだけ知られずに忘れ去られることを願う姑息な対応をしています。それに対して、勧告の拡散・実現を求め、「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議を組織し、3月1日に発足集会を開催する準備が進められています。
つどい当日には、勧告内容、今後の取組みについてのアピールが市民会議準備会メンバーから行われます。

報告:八王子「天皇奉迎」に子どもたちは動員されなかった
元東京教組八王子支部役員 水谷 辰夫さん
4月23日に天皇が退位の報告に昭和天皇の墓を訪れた際、二小、横山二小、浅川小の子どもたちが「日の丸」の小旗を振らされ「天皇奉迎」に駆り出された。それに対して……。

(2020年1月13日)

台湾総統選は、「民主主義を守ろう」対「みんな金持ちになれる」の抗争。

台湾総統選の結果には注目すべきだろう。時事の記事には、蔡英文氏が再選 過去最多得票で韓氏に圧勝―「一国二制度」拒絶」と見出しが打たれている。取材者の印象が「圧勝」だというのだ。

昨日《1月11日》の投開票で、投票率は75%と高い。前回が66%だから、選挙民のこの選挙への関心の高さがよく分かる。民進党・蔡英文の得票が817万票(57%)で過去最多であったという。対する最大野党国民党の韓国瑜は552万票(38%)だった。

各紙の報道は、対中関係での強硬路線と融和路線の争いと見て、強硬な姿勢で臨んだ蔡氏に絶大な支持が集まり、対中融和路線派に圧勝した」とする。なお、同時に行われた立法院(定例113)選でも民進党は61議席を得て過半数を維持した。

時事によれば、蔡候補の訴えは、
「台湾の主権と民主主義を守ろう」
これに対する韓候補のフレーズは、
「中国と関係を改善すれば、台湾は安全になり、みんな金持ちになれる」
というもの。

もう少し敷衍すれば、
蔡「なによりも、主権の確保・民主主義の貫徹・自治の防衛が重要ではないか。けっして、大国である中国に呑み込まれてはならない。目先の経済的利益のために、あるいは政治的摩擦を恐れての安易な妥協は将来に取り返しのつかない禍根を残す」
韓「所詮中国の政治的・経済的影響を排除することなど無理なこと。現実的に考えれば、対中融和こそが、望ましい安全保障政策であり、台湾経済を豊かにすることができる」

理念派対実利派の対抗関係でもあり、政治重視派対経済重視派の争いでもあり、短期利益重視派対長期利益重視派の論争でもあると言えよう。

日本各地でもありふれた政治抗争パターンである。原発立地問題や基地建設問題、アベ友学園建設問題、カジノ誘致…、みんなこの手の争いである。日本では、実利派が圧倒的に強く、理念派の旗色が悪い。しかし、香港でも台湾でも、また韓国でも、良識ある理念派の層の厚さに敬意を表せざるを得ない。

なお、4年前の蔡政権発足以後、政権への民衆の支持は必ずしも高揚せず、世論調査による政権支持率は低迷していたという。しかし、中国が事態を逆転させた。2019年1月、習近平が将来の台湾統一に向けて「一国二制度こそが最良の形だ」と発言した際には、蔡氏は即座に「絶対に受け入れられない」と反発した。

そして、同年6月以来の、「一国二制度」の悲劇が香港で繰り広げられた。香港の運動に共感する人々が蔡政権への支持を高揚させた。反対に、台湾でも中国への警戒感が高まり、対中国融和派には、強い逆風となってしまったという。

逆風の源は香港だけではない。たとえば,昨年暮れには上海からこんなニュースが発信されている。

上海に復旦大学という名門がある。日本の大学になぞらえれば京都大学に相当するという。その大学規約の改正が話題となった。毎日の年末の報道では、大学規約から『思想の自由』削除に抗議 中国の名門・復旦大で異例の集会」という見出し。

中国では大学の規約改正に教育省の許可が必要。同省が12月5日に許可した復旦大の新規約によると、序文にあった「学校の学術・運営理念は校歌にうたわれている学術の独立と思想の自由」との部分が削除された。そして「学校は中国共産党の指導を堅持し、党の教育方針を全面的に貫徹する」となった。

 大学では学生らによる抗議集会が18日以降、断続的に開催されている。中国当局は大学での思想管理を徹底。名門大でのこうした集会は極めて異例だ。

 この動きは、ネットで伝えられたが、12月末、既にネット上では関連投稿がほぼ削除されている。検索サイトでも「復旦」「自由」などのキーワードで検索できなくなっている。復旦大当局は18日に「改正手続きは合法的に行われ、党の指導をさらに徹底するものだ」とのコメントを出した。

これだから、香港の人々も、台湾の人々も、中国には呑み込まれたくないと必死にならざるを得ないのだ。
(2020年1月12日)

安倍内閣は、わが国の「健全な民主主義の根幹」を揺るがしている。

各地でロウバイが見頃だという。梅の蕾の綻びもほの見える。桜はまだまだ蕾が固いが、今年の桜はいつもにまして楽しみだ。とりわけ、新宿御苑の桜は,どうしても見に行かねばならない。もちろん、誰からの招待もなく、昨年から500円に値上げされた入場料を支払ってのこと。

もうすぐ、1月20日から始まる通常国会では、まずは徹底した「桜疑惑」追及が期待される。御苑の桜が散る頃に、アベ政権も散れぞかし。

そんな期待を抱かせる根拠は、野党追及本部の合同ヒアリングが充実しているからだ。昨年臨時国会終盤での野党による桜疑惑追及の矛先は鋭く、政権・与党は、野党側の会期会延長要求を頑なに拒んだ。しかし、閉会中も野党の合同ヒアリングは続き、その成果を挙げている。この政権の正体が少しずつ明かされているのだ。

野党合同ヒアリングの成果が、官房長官記者会見に活かされている。昨日(1月10日)官房長官は、記者会見で安倍晋三首相主催「桜を見る会」をめぐり、2013?17年度分の招待者名簿について「行政文書ファイル管理簿に記載していなかった」のは「公文書管理法の関連規定および内閣府の文書管理規則に違反する違法な対応だった」と認めた。これは、大問題である。

この菅長官説明は、「前日の野党追及本部の合同ヒアリングでの野党側の指摘を事実上認めたもの。文書管理をめぐる相次ぐ法令違反を引き起こした安倍政権の重大な責任が改めて問われます。」というのが、本日(1月11日)赤旗のトップ記事。

東京記事が端的にこうまとめている。

 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡り、菅義偉官房長官は10日の記者会見で、2013?17年度の招待客名簿を行政文書の管理簿に記載していなかったことは「公文書管理法の関連規定、内閣府の文書管理規則に違反する対応だった」と述べた。名簿を廃棄する前に首相と協議して同意を得る同法の手続きを踏んでいなかったことも明らかにし、これも違法だとの認識を示した。桜を見る会を巡る問題は、政府が公文書管理の違法性を認めざるを得ない異例の事態になった。 

違法は、2013?17年度の5回にわたる「桜を見る会・招待者名簿」の管理についてのもの。2013年は、第2次安倍内閣発足直後に当たる。第2次安倍内閣発足以来、ずっと違法な文書管理が行われてきたのだ。では、18年と19年はどうだったか。これは、もっとタチが悪い。この招待者名簿は、17年までは保存期間が「1年」とされていた。だから、行政文書管理簿にも廃棄簿にも記載が義務付けられていた。それを、18年に「1年未満」に変えたのだ。こうすれば、管理簿にも廃棄簿にも記載することなく、都合の悪いときにはすぐに廃棄して、知らん顔ができるのだ。

だから、13?17年度の招待客名簿についてだけ、政府『違法』 管理簿不記載 首相同意なく廃棄」なのだ。第2次安倍内閣成立以来、この内閣のやり口は、姑息千万。残しておくには不都合に過ぎる文書だから、追及を不可能にするために、策を弄したとしか考えられないではないか。アベシンゾーとその取り巻き、この件に限らず、小狡いし、国民をナメ切っている。主権者は本気で怒らねばならない。

東京新聞記事には、「立憲民主党の安住淳国対委員長は記者団に『行政府の立法府に対する挑戦であり、国民の財産を毀損する許しがたい行為。場合によっては犯罪に近い』と批判。20日召集の通常国会で追及する考えを表明した」とある。まったく、そのとおりである。

何度でも繰り返す。公文書とは、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」なのだ。アベシンゾーとその一味は、この国民共有の財産を私物化してきた。これまでも、隠匿し、改ざんし、廃棄してきたのは、自分たちの行政を隠しておかねばならなかったからなのだ。こうして、わが国の「健全な民主主義の根幹」が,今揺るぎつつある。
(2020年1月11日)

新体制のNHK経営委員会に意見と質問を申しあげる。

本日(1月10日)、NHK経営委員会に赴き、下記の「新体制のNHK経営委員会に対する意見と質問」書を提出してきた。この意見をご覧いただけたら、申し入れの趣旨がお分かりいただけようが、新体制のNHK経営委員会に反省の姿勢が見られないのではないか、ということである。

「クローズアップ現代+」の制作フタッフは、郵政グループによるかんぽ生命不正販売の事実を生々しく暴いた。これを日本郵政の上級副社長鈴木康雄が、元総務次官の肩書にものを言わせてもみ消しに動いた。情けないことに、NHK経営委員会がこれに同調し、NHK会長がこれに屈した。この事件の後、かんぽ生命不正販売の事実は「クロ現代+」の報道の通りであったことが確認され、昨年暮れに、日本郵政グル―プ3社の社長が引責辞任することとなり、更に鈴木康雄の辞任も発表された。また、NHK経営委員会も、石原経営委員長から森下俊三新委員長に交替した。この新体制の真摯な反省の有無が問題なのだ。

本日、提出に出向いたのは醍醐聰さん、小田桐誠さん、渡辺真知子と私の4人。応接されたのは、経営委員会事務局副部長以下3名の事務職員。1時間に近い口頭でのやり取りがあった。

最初に醍醐さんが各経営委員に対する「意見と質問」書を提出し、そのコピーを配布して「意見」の趣旨を詳細に説明した。「質問」個所は全文を読み上げた。

次いで、小田切さんが自己紹介の後、ジャーナリズム本来のありかたからみてのNHK経営委員会のありかたの批判をし、渡辺さんも短く国民の意見を代表するものとの立場からの短い意見を述べた。

本日の私の発言の大要は以下のとおり。このように整理された形でしゃべったわけではないが、まとめればこう言うこと。

私は、これまでNHKのあり方には厳しい批判をしてきた。しかし、けっして一面的に批判だけをしてきたつもりはない。実は、NHKには親近感をもっている。本来あるべきNHKになっていただきたいのだ。
 私は、中退ではあるが東大文学部社会学科の出身。当時の学科の同級生は圧倒的にジャーナリズム志望で、中でもNHK就職希望者が多かった。もしかしたら正確でないかも知れないが、私の記憶では31名の級友の内9名がNHKに就職した。私がそのうちの1人だった可能性もある。当時、ジャーナリスト志望の若者には、NHKは輝く存在だった。
 しかし、今、どうだろうか。NHKは若者にとっての輝きを失っているのではないだろうか。政権との距離が近く、財界との関係のみ深い。ジャーナリズム本来の仕事ができる環境と言えるだろうか。とりわけ、今回のかんぽ不正問題を、現場スタッフが見事な取材をし報道をしたことに対して、取材先の圧力を受けて経営委員会とNHK会長が現場を押さえ込んだ。国民のNHKに対する信頼は地に落ちている。これを回復するための、真摯な反省の弁を聞きたい。
 私は、優れた現場スタッフが、存分に働けるNHKであって欲しいと願っている。けっして、どんな回答でも揚げ足をとってやろうなどと思っているわけではない。国民世論を代表する立場で、経営委員諸氏の真摯な回答をお待ちしている。

? なお、私は、「経営」と「制作」の分離は当然と考えている。分離とは、「制作」が「経営」の意向を気にすることなく、思う存分活動できること。そのためには、「経営」は、外部から制作への圧力を受けとめる防波堤でなければならない。
 NHKにおけるコンプライアンスとは憲法と一体となった放送法の理念を忠実に守って、国民の知る権利に奉仕すること。ガバナンスとは、そのために必要な制度の運営に幹部が責任を果すべきこと。上命下服の経営秩序をコンプライアンスと言いガバナンスと言って現場を締めつけているのなら、明らかに、そんなものはメディアには有害というしかない。

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?2020年1月10日

NHK経営委員長 森下俊三 様
同経営委員各位

「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える
11. 5 シンポジウム」実行委員会

世話人:小林 緑(国立音楽大学名誉教授・元NHK経営委員)/澤藤統一郎(弁護士)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐 聰(東京大学名誉教授・「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表)/田島泰彦(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授)/皆川 学(元NHKプロデューサー) 

新体制のNHK経営委員会に対する意見と質問

2019年12月27日、日本郵政グル―プ三社長が引責辞任し、更に鈴木康雄日本郵政上級副社長の辞任も発表されました。私たちは、鈴木副社長がNHK「クローズアップ現代+」の「かんぽ不正問題」続編放送に対し不当な圧力を掛け続けたことを批判してきましたが、それとともにNHK経営委員会が、副社長の「かんぽ不正」もみ消しに加担した責任は重いと考えます。
ところが、2018年9月25日、鈴木副社長と面会し、日本郵政からの抗議を経営委員会に取り次ぐなど続編の放送中止に加担した森下俊三氏が、あろうことか新しい経営委員長に選ばれました。しかも森下氏は、反省するどころか、今なお筋違いな「ガバナンス論」を盾に、上田NHK会長への厳重注意を正当化し続けています。森下氏は、12月24日の経営委員長就任記者会見で、次のように発言しました。「現場が”経営と制作は分離している”と認識しているとしたら、ガバナンス上の大変な問題である」。私たちはこの発言は重大な誤りであり、NHK経営委員長としての資格に欠けた認識であると考えます。
以下、私たちの見解を述べ、貴職と経営委員会の回答を求めます。

別の市民団体が2019年10月15日に、石原NHK経営委員長(当時。以下、同じ)、森下委員長職務代行者(同上)、経営委員各位に提出した質問書、「日本郵政によるNHKの番組制作への介入に係る経営委員会の対応に関する質問」に対して、石原経営委員長と貴委員会は10月29日、回答をされました。そこでは、経営委員会は、NHKの自主自律を損なった事実はないとして、次のように表明されています。
「去年9月25日に森下委員長職務代行者が鈴木副社長と面会した後、経営委員会は、昨年10月に郵政3社から書状を受理し、10月9日、23日に経営委員で情報共有および意見交換を行った結果、経営委員会の総意として、ガバナンスの観点から、会長に注意を申し入れました。 なお、放送法第32条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識しており、自主自律や番組の編集の自由を損なう事実はございません。」
この回答に対する私たちの見解は以下のとおりです。

森下職務代行者は、日本郵政三社の社長が連名で経営委員会あてに文書を送った10日前に日本郵政鈴木康雄上級副社長と個別に面会し、NHKへの不信を聞き取り、正式に経営委員会に申し入れるよう伝えたとされています。こうした行為は、経営委員が、自社商品の不正販売が社会的に大きな問題となり、当該問題を取り上げたNHK番組の取材対象となった法人の首脳と非公式に面会し、そこで聞き取ったクレームを経営委員会に取り次ぎ、続編の放送計画に影響を与えた行為ですから、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることはない」と定めた「放送法」第3条に抵触します。また、NHKの全役職員は「放送の自主・自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき、全ての業務にあたる」と定めた「NHK放送ガイドライン2015」に明確に違反しています。
「ガバナンスの観点」とは、当初当該番組幹部が郵政に出向いて「番組制作と経営は分離し、会長は番組制作に関与しない」と発言したことを批判してのことと思われますが、放送法第51条は、「会長は協会を代表し、・・・業務を総理する」とあって、これはいわゆる「編集権」が意味する番組内容に関する決定権が会長にあることは意味していません。実際の業務の運営は、放送総局長に分掌され、その上で個別の番組については、番組担当セクションが責任を持って取材・編集に当たっています。
「経営と制作の分離」とは、個別の番組に対して経営者が介入し、政治的判断でゆがめることのないよう、長い言論の歴史の中で培われてきた不文律で、一部の独裁的国家を除いて、世界のジャーナリズムではスタンダードのシステムです。経営委員会が放送法で個別番組への介入を禁じられているのも同様の所以です。
森下俊三新経営委員長は、職務代行者時代、「ガバナンスの強化」を理由とすれば、行政や企業が経営委員会を通して放送に介入できる回路を作ってしまいました。また経営委員会は「総意」としてそれを追認してしまいました、「コンプライアンスの徹底」が求められるのは、経営委員会自身だと考えます。そこで質問です。

[質問―1] 今後も、個別の番組について、「ガバナンスの問題」として申し入れることはあり得ますか?

[質問―2] 森下氏は、経営委員会の席上で、「ネットで情報を集める取材方法がそもそもおかしい。非はNHKにある」と発言しました。しかし、ネットで情報提供を呼び掛けることは「オープンジャーナリズム」の名で放送業界では広く定着している手法です。森下氏は今も「非はNHKにある」と考えていますか。
 また、取材も番組編集の一環ですから、上記のような森下氏の言動は、「放送法」が禁じたNHKの番組編集への経営委員の干渉に当たると私たちは考えます。森下氏の見解をお聞かせ下さい。

[質問―3] 今回経営委員として異例ともいえる三選をされた長谷川三千子氏は、「2012年安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の代表幹事に名前を連ね、経営委員就任時に自らを「安倍氏の応援団」と公言されました。政治的公平が求められる経営委員として、真に適格性があるとお考えですか。
「経営委員会委員の服務に関する準則」は不偏不党の立場に立つことを謳い(第2条、) 「経営委員会委員は、日本放送協会の信用を損なうような行為をしてはならない」(第5条)と定めていますが、上記のような発言を公開の場で行うのはNHKの不偏不党、政治からの自律に対する視聴者の信頼を失墜させるものだと私たちは考えます。長谷川委員の見解をお聞かせ下さい。

以上の質問に別紙住所宛に、1月23日までに各項目に沿ってご回答下さるようお願いします。誠実な回答をお待ちします。

以上
(2020年1月10日)

法務大臣の刑事司法観に私見をコメントする

法務省のホームページに法務大臣・森まさ子の「コメント」が3件掲載されている。いずれも、カルロス・ゴーンの動静に関するものだが、一国の法務大臣たる者が、一被告人に対してこれだけのことを言わなければならないものだろうか。やや大人げない印象を禁じえない。

いずれ、貴重な法務大臣の刑事司法観。全文転載して、私見を付しておきたい。もっとも、この人は、弁護士である。おそらくは弁護士としては、この法務大臣コメントとは別の刑事司法観を持っているはず、と思うのだが。

http://www.moj.go.jp/danwa_index.html

森法務大臣コメント(カルロス・ゴーン被告人関係)ー令和2年1月5日

昨年12月31日,保釈中のカルロス・ゴーン・ビシャラ被告人が,日本の刑事司法制度を批判するとともに,レバノンにいるとの声明を発表したとの報道がなされた。

私は,法務大臣として,この問題を覚知した後,速やかに,事実関係の把握を含め適切な対処に努めるよう関係当局に指示をした。

事実関係については,現在も確認中であるが,ゴーン被告人が日本を出国した旨の記録はないことが判明しており,何らかの不正な手段を用いて不法に出国したものと考えられ,このような事態に至ったことは誠に遺憾である。

我が国の刑事司法制度は,個人の基本的人権を保障しつつ,事案の真相を明らかにするために適正な手続を定めて適正に運用されており,保釈中の被告人の逃亡が正当化される余地はない。

既に,ゴーン被告人に対する保釈が取り消され,また,国際刑事警察機構事務総局に対して我が国が要請した赤手配書が発行された。

検察当局においても,関係機関と連携し,迅速に捜査を行い,ゴーン被告人の逃亡の経緯等を明らかにするため全力を尽くし,適切に対処するものと承知している。

引き続き,法務省としても,関係当局,関係国,国際機関と連携しつつ,我が国の刑事手続が適正に行われるよう,できる限りの措置を講じてまいりたい。

また,出入国在留管理庁に対し,関係省庁と連携して,出国時の手続のより一層の厳格化を図るよう指示したところであり,同様の事態を招くことがないよう,今後とも必要な対応を行ってまいりたい。

註 「赤手配書」とは、国際手配書(INTERPOL Notices)9種の内、「引渡し又は同等の法的措置を目的として、被手配者の所在の特定及び身柄の拘束を求めるもの」をいう。

法務行政の責任者が、「ゴーン被告人が…何らかの不正な手段を用いて不法に出国したものと考えられ,このような事態に至ったことは誠に遺憾である。」「関係省庁と連携して,同様の事態を招くことがないよう,今後とも必要な対応を行ってまいりたい。」ということは、当然であろう。

とは言え、「我が国の刑事司法制度は,個人の基本的人権を保障しつつ,事案の真相を明らかにするために適正な手続を定めて適正に運用されており,保釈中の被告人の逃亡が正当化される余地はない。」には、「おや、そこまで、ムキになって言うかね」という印象。

「保釈中の被告人の逃亡が正当化される余地はない。」は、そのとおりだと思う。しかし、「我が国の刑事司法制度は,個人の基本的人権を保障しつつ,事案の真相を明らかにするために適正な手続を定め」は、理想を述べるもので、現実に「適正に運用されており」は、言ってる本人も、こそばゆいのではなかろうか。

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森法務大臣コメント(カルロス・ゴーン被告人関係)ー令和2年1月9日

先ほど,国外逃亡したカルロス・ゴーン被告人が記者会見を行ったが,今回の出国は犯罪行為に該当し得るものであり,彼はICPOから国際手配されている。

ゴーン被告人は,我が国における経済活動で,自身の役員報酬を過少に記載した有価証券報告書虚偽記載の事実のほか,自己が実質的に保有する法人名義の預金口座に自己の利益を図る目的で日産の子会社から多額の金銭を送金させた特別背任の事実などで起訴されている。

ところが,ゴーン被告人は,裁判所から,逃げ隠れしてはならない,海外渡航をしてはならないとの条件の下で,これを約束し,保釈されていたにもかかわらず,国外に逃亡し,刑事裁判そのものから逃避したのであって,どの国の制度の下であっても許されざる行為である。しかも,それを正当化するために,国内外に向けて,我が国の法制度やその運用について誤った事実を殊更に喧伝するものであって,到底看過できるものではない。

我が国の刑事司法制度は,個人の基本的人権を保障しつつ,事案の真相を明らかにするために,適正な手続を定めて適正に運用されている。
そもそも,各国の刑事司法制度には,様々な違いがある。例えば,被疑者の身柄拘束に関しては,ある国では広く無令状逮捕が認められているが,我が国では,現行犯等のごく一部の例外を除き無令状の逮捕はできず,捜査機関から独立した裁判官による審査を経て令状を得なければ捜査機関が逮捕することはできない。このように身柄拘束の間口を非常に狭く,厳格なものとしている。

刑事司法制度は各国の歴史や文化に基づき長期間にわたって形成されてきたものであり,各国の司法制度に一義的な優劣があるものではなく,刑事司法制度の是非は制度全体を見て評価すべきであり,その一部のみを切り取った批判は適切ではない。

身柄拘束に関する不服申立て制度もあり,罪証隠滅のおそれがなければ妻との面会なども認められる。全ての刑事事件において,被告人に公平な裁判所による公開裁判を受ける権利が保障されている。

そして,我が国は,これまでの警察や検察,司法関係者と国民の皆様の努力の積み重ねにより,犯罪の発生率は国際的にみても非常に低く,世界一安全な国といってよいものと考えている。

もちろん,様々なご指摘があることは承知しており,これまでも,時代に即して制度の見直しを続けてきたものであり,今後もより良い司法制度に向けて不断に見直しをしていく努力は惜しまない。

我が国の刑事司法制度が世界中の方々に正しく理解していただけるよう,今後も,情報提供を行い疑問に答えてまいる所存である。
ゴーン被告人においては,主張すべきことがあるのであれば,我が国の公正な刑事司法手続の中で主張を尽くし,公正な裁判所の判断を仰ぐことを強く望む。

政府として,関係国,国際機関等とも連携しつつ,我が国の刑事手続が適正に行われるよう,できる限りの措置を講じてまいりたい。

「被疑者の身柄拘束に関しては,ある国では広く無令状逮捕が認められているが,我が国では,現行犯等のごく一部の例外を除き無令状の逮捕はできず,捜査機関から独立した裁判官による審査を経て令状を得なければ捜査機関が逮捕することはできない。このように身柄拘束の間口を非常に狭く,厳格なものとしている。」というパラグラフには驚いた。こんなことは言うべきではない。「我が国の公正な刑事司法手続」とは、「無令状の逮捕はできない」という程度のものと思われてしまう。実際そうなのかも知れないが。

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森法務大臣コメント(2)(カルロス・ゴーン被告人関係)ー令和2年1月9日)

昨日のカルロス・ゴーン被告人の会見においては,ゴーン被告人から,我が国の刑事司法制度に対し,様々な批判的な主張がなされた。

その多くが,抽象的なものや,趣旨が判然としないもの,根拠を伴わないものにすぎないものであったが,広く世界に中継されるなどしたものであり,世界中に誤った認識を拡散させかねないものであることから,正しい理解を得るために,昨日申し上げた点に加え,一般論としてではあるが,何点か,冒頭において指摘しておきたい。
なお,個別具体的な事件における捜査・公判活動は,検察当局の責任と権限において行われるべき事柄であることから,法務大臣として,それらに関する主張に対し,事実関係や所感を述べるものでないことを申し添える。

つまりは、すべて一般論だけでコメントをするというのだ。法務大臣という立場からは、そうせざるを得ない。具体的な案件に立ち入ることはでないのだ。おそらくは隔靴掻痒であろう。ならば、的確な反論にはなりようがないのだらら、無理にコメントなどせぬ方がよかったのではないか。

☆我が国の司法制度が「人質司法」であるとの批判がなされたが,昨日も申し上げたとおり,我が国の刑事司法制度は,個人の基本的人権を保障しつつ,事案の真相を明らかにするために,適正な手続を定めて適正に運用されており,批判は当たらない。

?  我が国の刑事司法が「人質司法」であるとの批判は多くの法曹に,とりわけ弁護士に共有されているところである。被疑者・被告人の人権が厳格に保障されているとは到底言うことができない。
  その最近での典型事例が、倉敷民商弾圧禰屋事件。民商の事務局員であった禰屋町子さんは、14年1月21日に逮捕され法人税法違反(脱税幇助)と税理士法違反の罪で起訴されたが、徹底して否認を貫き、何と428日間の勾留を余儀なくされた。一審岡山地裁は有罪判決を言い渡したが、懲役2年・執行猶予4年であった。執行猶予を言い渡すべき事件で、428日間の勾留である。これを人質司法という。しかも、この件は控訴審の広島高裁岡山支部で、18年1月に有罪判決が破棄それて差戻されている。以来1年、まだ検察差し戻し審の公判が始まらない。検察の立証計画が整わないのだ。
  法務大臣知悉の事件のはずだが。

☆有罪率が99%であり,公平な判決を得ることができないとの批判がなされたが,我が国の検察においては,無実の人が訴訟負担の不利益を被ることなどを避けるため,的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みのある場合に初めて起訴するという運用が定着している。また,裁判官は,中立公平な立場から判断するものである。高い有罪率であることを根拠に公平な判決を得ることができないとの批判は当たらない。

  起訴事件における有罪率の高さは、一面起訴の慎重さを物語るが、他面起訴した事件はなにがなんでも有罪にしないわけにはいかないという検察の悪弊を語ってもいる。このことを水掛け論にするのではなく、多くの冤罪が、後者の側面がら生まれていることを具体的に検証しなければならない。なお、ゴーンのケースが、どういうものか、法務大臣は語ることができない。

☆取調べが長時間であること,弁護人の立会がないこと等取調べ全般に対する批判がなされたが,そもそも,我が国においては,被疑者に黙秘権や,立会人なしに弁護人と接見して助言を受ける権利が認められている。また,適宜休憩をとるなど被疑者の人権に配慮した上,録音録画の実施を含め適正な取調べを行っている。

  この法務大臣の「反論」は、説得力に欠ける。「取調べが長時間であること」「弁護人の立会が認められていない」ことは真っ向から否定することができない。「そもそも」などと言い出すことがゴマカシである。「適宜休憩をとる」「弁護人と接見して助言を受ける権利が認められている」程度のことしか言えないことが、批判されているのだ。

☆検察が公判を引き延ばしており判決まで5年以上かかるというのは問題であるとの批判がなされたが,そもそも,検察当局は,公判手続が速やかに進むよう様々な努力をしている。

  多分これは、法務大臣の言い分が正しかろう。むしろ問題は、公判手続が速やかに進み過ぎることにある。被告・弁護側に、十分な防御の時間が与えられない。とりわけ、ゴーンのように、当該の事件に専念できる弁護人を有する被告人は例外である。多くの被告人は、このような手厚い弁護を期待し得ない。明らかに、経済力による弁護権保障格差が存在するのだ。常に、検察官の迅速な公判進行に対応できるとは限らない。

☆保釈中に妻と会うことを禁止するのは人権侵害であるとの批判がなされたが,そもそも,逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがなければ特定の者との面会制限などはなされない。

??? これも当然のことだろう。通常、保釈中の制限住所は自宅となのだから、配偶者と会うことを禁止するなどということはありえない。ゴーンの場合は、例外的に、配偶者との接触が、具体的な逃亡や証拠隠滅の恐れがあると考えられたのだろう。日本の司法一般の問題としての,ゴーンの批判は当たらない。

☆日産や日本政府関係者の陰謀によって行われた捜査であるとの批判がなされたが,そもそも,検察当局においては,特定の利害関係者の陰謀に加担して,本来捜査が相当でないものを捜査するようなことはあり得ない。

  あってはならないことは確かだし、ゴーンの会見の主張に具体性はない。おそらくはないことだろうと思われるが、さりとて、あり得ないだろうか。今のところ、藪の中としか言いようがない。

☆この他にも,ゴーン被告人は,自身の刑事手続に関して,るる主張を繰り広げていたが,いずれにしても,これらの主張によって,ゴーン被告人の国外逃亡が何ら正当化されるものではない。

?? それはそのとおりであろう。ゴーンは、弁護団とともに、法廷で自身の刑事手続に関する主張を展開すべきであったし、それができたはずだ。法廷の主張は、メディアも耳を傾ける。レバノンでなければ、主張できなかったはずはない。

☆また,個別事件に関する主張があるのであれば,具体的な証拠とともに,我が国の法廷において主張すればよいのであり,ゴーン被告人においては,我が国の公正な刑事司法手続の中で主張を尽くし,公正な裁判所の判断を仰ぐことを強く望む。

  「我が国の公正な刑事司法手続」「公正な裁判所の判断」というフレーズに、違和感は残るものの、この点については、概ね同意できる。

(2020年1月9日)

DHCスラップ「反撃」訴訟控訴審では、附帯控訴を予定 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第168弾

DHCスラップ「反撃」訴訟控訴審第1回口頭弁論は、1月27日(月)午前11時? 511号法廷でおこなわれる。ことは、表現の自由にも、政治とカネの問題にも、消費者の利益にも関わる問題である。是非、多くの方に傍聴いただきたい。

昨年(2019年)10月4日、東京地裁民事第1部で一審の勝訴判決を得た。この判決は、DHC・吉田嘉明が私(澤藤)を訴えたスラップは違法であると明確に断じた。だから、請求認容額(110万円)にかかわらず、勝利感の強い判決で、当方から積極的に控訴する気持にはならなかった。

ところが、被告側DHC・吉田嘉明が控訴し、私は被控訴人となった。控訴審に付き合いを余儀なくされる立場に立つと、660万円の請求に対する110万円の認容額の少なさに不満が募るようになった。そこで、附帯控訴をすることとなった。

原審で原告が請求した損害は以下の3費目である。なお、前件訴訟というのが、DHC・吉田嘉明が私に仕掛けたスラップ訴訟のことであり、本件訴訟が反撃訴訟のことである。
?前件訴訟応訴のための財産的損害(弁護士費用)
?前件訴訟提起による精神的損害(慰謝料)
?本件訴訟提起のための弁護士費用
この三者を合計した損害の内金として660万円を請求した。

これに対する、原判決の認定は、以下のとおりとなっている。
?前件訴訟応訴のための財産的損害(弁護士費用)ゼロ
?前件訴訟提起による精神的損害(慰謝料)???  100万円
?本件訴訟提起のための弁護士費用       10万円

まず慰謝料の額が低い。その理由を判決は、「敗訴の可能性(多額の損害賠償債務の負担)の観点から,原告の精神的な損害を過大に評価することは困難である。」という。噛み砕いて言えば、「こんな荒唐無稽の訴訟をされたところで、被告(澤藤)が負けるはずもないのだから、大した心配をすることはなかったでしょう」というのだ。それはなかろう。訴訟が荒唐無稽であればあるほど腹立たしさは募るものなのだ。また、敗訴可能性の濃淡にかかわらず、応訴のための時間と労力を割かねばならない煩わしさには多大なものがある。到底100万円では納得しがたい。

なによりも、前件スラップ訴訟に応訴のための弁護士費用負担分を認めなかったことが不服である。

この金額は本来多額である。訴額6000万円の事件だと弁護士費用の標準額は旧弁護士会報酬規程に則って着手金が247万円である。しかも、これが各審級で必要となる。成功報酬は678万円である。私が、この標準額を弁護団に支払うとなれば、1425万円となる。その一部でも、違法なスラップを提訴したDHC・吉田嘉明に支払わせなければならない。

実は、これまで、違法なスラップ提訴による損害賠償を認容した判決例において、弁護士費用を損害と認定したものは極めて少ない。ところが、最近N国がこの種の判例を作ってくれている。その典型が、判例時報2354号60頁に紹介されている、2017年7月19日東京地方裁判所民事第41部判決。

同判決は、「NHKの受託会社の従業員が放送受信契約締結勧奨のために訪問したことが不法行為に当たるとして提起された別件訴訟につき、権利が事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、業務を妨害する目的であえて提訴したもので、裁判制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠く不当訴訟であるとして、別件訴訟の原告と提訴を促し訴状の作成に関与した者との共同不法行為責任を認めた事例」と紹介されている。

端的に言えば、N国の指示に従って、視聴者の一人がNHKを被告とする10万円の損害賠償訴訟を提起し,当然のごとくに敗訴した。ところが問題はそれで収まらない。この訴訟をスラップと考えたNHKが、逆に54万円の弁護士費用について損害賠償訴訟を提起してその全額が認容されたという事件である。

注目すべきはNHKの請求が「別件訴訟」の応訴費用についてだけのものであり、判決は訴訟追行に必要な弁護士費用としてNHKが弁護士に支払った54万円の全額を、「相当」と認めた。「別件訴訟」は訴額10万円に過ぎない。しかも、原告2人(視聴者とN国幹部)とも弁護士をつけない本人訴訟である。考えられる限り迅速に審理が終了して判決に至った簡易な事案であって、この判決は控訴なく確定している。

それでも、東京地裁民事41部は、訴額10万円の損害賠償請求事件における被告側の応訴費用である弁護士費用54万円全額を損害として認定し,その賠償を認定した。

これと比較すれば、DHC・吉田嘉明の私(澤藤)に対する前件スラップ訴訟は、訴額6000万円の大型損害賠償請求事件である。しかも原告側は本人訴訟ではなく弁護士が訴訟代理人として付いている。さらに、一審だけでなく、控訴審も上告受理申立審までフルコースを闘った。それでいて、応訴に不可欠な弁護士費用の負担を損害額としてまったく認めず、その部分の認容額がゼロだという。この極端な不権衡は明らかに不当というほかはない。

 N国事件判決中に次の説示がある。不当提訴の応訴費用を相当な損害として認定するには、「当該訴訟における訴額及び当該訴訟の有する社会的影響力等の諸要素を考慮して判断すべきもの」「原告に対する損害賠償請求訴訟が相当数提起されており、その勝敗が、係属中の他の訴訟や今後同種の訴訟が提起される可能性に影響を及ぼし得るものであること等を踏まえ」る、というのである。

DHC案件においても、DHC・吉田嘉明から私(澤藤)に対する前件訴訟の勝敗が、スラップ訴訟提起常習者としてDHC・吉田嘉明の行動に、大きく影響する。私が十分な勝ち方をすれば、吉田嘉明はこれに懲りて、今後同種のスラップ訴訟の提起を断念することになろうる。しかし、私が十分な勝ち方をしなければ、吉田嘉明は懲りることなく、またスラップを続けるだろう。

私の勝訴は社会を益することになり、吉田嘉明が勝てば社会を害することになるのだ。
(2020年1月8日)

総理大臣・安倍晋三の仕事始めは、政教分離違反の違憲行為から

例年、総理大臣・安倍晋三の仕事始めは伊勢神宮参拝からである。今年も例外ではない。ゴルフ休み明けの伊勢神宮。総理大臣が特定の宗教施設に公然と参拝する。東京在住の安倍晋三が町内の神社に初詣するのとはわけが違う。天皇の祖先神を祀るとされている神宮に、わざわざ公費で出かけるのだ。もちろん、違憲。

いささかなりとも憲法感覚の持ち合わせがあれば、やるべきことではない。メディアも世論ももっと敏感に、安倍を批判しなければならない。立憲民主党も、国民民主も真似をせぬ方がよい。政権を担ったら、絶対やってはいけない。

わが国の政教分離とは、権力と神道との危険な癒着を厚い壁で隔てることを言う。ここで言う神道とは、天皇を神にまつりあげた国家神道の基礎となった宗教をいう。国家が再び天皇を神とし、神なる天皇というこの上なく重宝な政治的道具を利用させぬための歯止めである。

そのような意味で、憲法の政教分離規定が最も警戒する宗教施設が二つある。1番が伊勢神宮で、2番が靖国神社である。伊勢は天皇の祖先神を祀るのだから、天皇の政治的利用を嫌う憲法の立場からは、政教分離と言えば、まずは政権と伊勢神宮との関係を問題とする。この両者を隔絶しなければならないのに、何と無神経な安倍晋三。

そして2番目の靖国神社は、皇軍将兵の戦没者を神として祀る軍事的宗教施設である。これも天皇の神社だが、なによりも軍国主義の精神的主柱とされた。だから、皇軍の侵略を受け、あるいは植民地化された近隣諸国の目は厳しい。靖国に首相や天皇の参拝あれば、厳しい外圧を覚悟しなければならない。

伊勢への首相の参拝は、外圧は小さいが、これこそ厳格な政教分離の対象なのだ。私は毎年このことを指摘してきた。最近のものは下記のURLでお読みいただけたら、ありがたい。

総理大臣・安倍晋三の仕事始めは伊勢神宮参拝から
https://article9.jp/wordpress/?p=11847?? (2019年1月5日)

伊勢神宮での内閣総理大臣年頭記者会見
https://article9.jp/wordpress/?p=7939 (2017年1月5日)

新年の伊勢神宮「公式参拝」、そこで首相が祈願したこと
https://article9.jp/wordpress/?p=6176? (2016年1月6日)

今年は天皇交替で元号変更後の新年だが、今年の伊勢での安倍晋三年頭記者会見は精彩がない。批判をするにも面白みに欠ける。そこで、衆議院のホームページに掲載されていたこんな質問主意書と答弁書を取りあげたい。

2018年1月22日提出の質問趣意書。提出者は立民の逢坂誠二議員。表題が「安倍総理の伊勢神宮参拝に関わるLINEでの発信に関する質問主意書」というもの。

「平成三十(2018)年一月四日、首相官邸のLINEの公式アカウントで安倍総理は、「安倍晋三です。伊勢神宮に向かう道中、新幹線から美しい富士山が見えました」(「本発言」という。)と発信している。
静粛な環境の下、歴代の総理大臣が年頭にあたり伊勢神宮に参拝することは、社会通念上、国民に受容されていると考えられるものの、その行動を首相官邸のLINEの公式アカウントで告知することは、伊勢神宮の活動に関する助長、促進につながるものと考える。
このような観点から、以下質問する。

一 歴代の総理大臣が年頭にあたり宗教施設である伊勢神宮に参拝することは、社会通念上、国民に受容されていると考えているのか。政府の見解如何。
二 本発言が発信されることで、伊勢神宮への参拝者が増加し、特定の宗教施設の活動を援助、助長、促進するものではないのか。政府の見解如何。
三 本発言をLINEで発信することは、「昭和四六(行ツ)六九 行政処分取消等」(最高裁判所大法廷判決 昭和五十二年七月十三日)でいうところの、「当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為」に該当し、日本国憲法第二十条に反するのではないか。政府の見解如何。
四 静粛な環境の下、内閣総理大臣が年頭にあたり伊勢神宮に参拝することは、社会通念上、国民に受容されていると考えられるものの、その行動を事前に、首相官邸のLINEの公式アカウントで告知することは、伊勢神宮の活動に関する助長、促進につながり、不適切ではないか。政府の見解如何。

逢坂議員の人柄については、予てから信頼に足りる政治家という好印象が強い。しかし、「静粛な環境の下、内閣総理大臣が年頭にあたり伊勢神宮に参拝することは、社会通念上、国民に受容されていると考えられる」は、私見と大きく食い違う。曖昧な「国民意識の受容」をもって軽々に憲法原則を曲げてはならないと思う。また、質問内容もものたりないとは思う。それでも、果敢にこのような趣意書を発信して答弁を引き出している姿勢は評価したい。

なお、引用されている「昭和四六(行ツ)第六九号・行政処分取消等請求上告事件」は、津地鎮祭訴訟のこと。(行ツ)は、行政訴訟上告審の事件番号に付する符号。民事訴訟ではなく、行政訴訟としての住民訴訟だった。名古屋高裁の住民側勝訴判決を逆転し、厳格分離説を排斥して政教分離の規準として目的効果論を採用した判例として知られているもの。

衆議院議員逢坂誠二君提出安倍総理の伊勢神宮参拝に関わるLINEでの発信に関する質問に対する答弁書

一について
内閣総理大臣が私人としての立場で行う伊勢神宮参拝については、政府として立ち入るべきものではないことから、お尋ねについてお答えすることは差し控えたい。

二から四までについて
お尋ねの「発信」又は「告知」は、それ自体宗教的意義をもつ行為ではなく、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるようなこともないことが明らかであることから、「日本国憲法第二十条に反する」及び「不適切」との御指摘は当たらないと考えている。

ニベもない答弁書である。質問の一部に対しては、「安倍晋三の伊勢神宮参拝は『私人としてのもの』だから政府は関与しない」という。また、LINEでの告知は、目的効果基準からは許されるとしている。しかし、安倍晋三は、肩書を記帳し、随員を同道し、公用車も使い、列車にも公費で乗車している。玉串料だけは私費で支出しているというが、それなら問題ないということにはならない。

下記は、天皇と首相の靖国神社公式参拝を違憲とした岩手靖国訴訟仙台高裁判決(1991年3月1日)の判示の一節である。

「天皇及び内閣総理大臣の靖国神社公式参拝は,その目的が宗教的意義をもち,その行為の態様からみて国又はその機関として特定の宗教への関心を呼び起こす行為というべきであり,しかも,公的資格においてされる公式参拝がもたらす直接的,顕在的な影響及び将来予想される間接的,潜在的な動向を総合考慮すれば,前記公式参拝における国と宗教法人靖国神社との宗教上のかかわり合いは,憲法の政教分離原則に照らし,相当とされる限度を超えるものであり,憲法20条3項が禁止する宗教的活動に該当する違憲な行為である」

目的効果基準を前提としてなお、「直接的・顕在的な影響だけではなく、将来予想される間接的・潜在的な動向、波及的効果までを総合考慮する」ことによって、政教分離違反・違憲と断じている。安倍晋三は、この判決の「靖国神社」を「伊勢神宮」と読み替えて、よく理解してもらわねばならない。
(2020年1月7日)

「1.世界はアメリカを非難する。2.日本はアメリカを説得せよ。3.政府は自衛隊の中東派遣を撤回せよ。」 ー これが共通のスローガンだ。

米国によるイラン軍司令官殺害に関する
社会権の会(防衛費より教育を受ける権利と生存権の保障に公的支出を求める専門家の会)声明

はじめに

アメリカのトランプ大統領は2020年1月3日、米軍がイラン革命防衛隊の司令官ソレイマニ氏をイラクのバグダッドで殺害したと発表した。トランプ大統領は同日の記者会見で、ソレイマニ司令官は「米国の外交官や軍人に対し、差し迫った邪悪な攻撃を企てていた」と批判し、「我々の行動は戦争を止めるためのものだった」として殺害を正当化している。イランが「イランに対する開戦に等しい」「国連憲章を含む国際法の基本原則を完全に侵害する国家テロだ」として反発し報復を宣言する(ラバンチ国連大使)一方、米国防総省は米軍部隊3,500人を中東地域に増派する方針を明らかにし、米イラン関係、米イラク関係を含め中東地域は緊迫した情勢となっている。

?意見の理由

ソレイマニ氏はイラン革命防衛隊コッズ部隊の司令官として、各国でイスラム教シーア派民兵組織(イスラム国[IS]に対抗してイラクの宗教指導者シスタニ師が呼びかけて結成された人民動員部隊[PMU]など)を支援してきた革命防衛隊最高幹部であり、敵対するアメリカに対しては、過去に、中東に展開する米軍をいつでも攻撃できるという趣旨の発言もしていた。しかし、いかに政治的・軍事的に目障りな存在であるとしても、超法的に人を殺害することが許されるはずはない。大統領という国家機関によって指示されたこの殺害行為は、明白な脱法行為であり、アメリカによる国際法違反行為(超法的処刑extra-judicial execution)である。

国連憲章51条は「武力攻撃が発生した場合」にのみ自衛権の行使を認めており、先制的・予防的な自衛権の行使は認められていない。在外自国民の保護など、国の領土保全に対する武力攻撃に至らない程度の侵害行為に対しても、自衛権を援用することは許されない。攻撃が急迫していると信ずるに足りる合理的な理由がある場合には先制攻撃も許されるという学説もあるが、差し迫ったものかどうかの判定は先制攻撃を行う国が行うこととなり、濫用されやすい考え方である。

先制的自衛論を含め、そもそも自衛権の行使が濫用されやすいものであることは、歴史が示している。アメリカの軍艦が攻撃を受けたとして、アメリカがベトナム戦争に本格的に参戦するきっかけとなった「トンキン湾事件」は、後に、アメリカが秘密工作によって自ら仕掛けた「やらせ」であったことがジャーナリストによって暴かれた(ペンタゴン・ペーパーズ)。また、2003年のイラク戦争は、イラクが大量破壊兵器を持っている「恐れ」を理由とし、ブッシュ大統領の先制攻撃論(ブッシュ・ドクトリン)によってアメリカとイギリスが一方的にイラクを攻撃したものだったが、大量破壊兵器は発見されなかった。にもかかわらず、軍事行動は「フセイン大統領の排除」、「イラクの民主化」と目的を変遷させて続けられた。

こじつけの理由であれ、いったん始まった軍事行動はエスカレートするのが常であり、その結果は悲劇的である。ベトナム戦争では200万人以上のベトナム人が犠牲になり、米軍の撒いた枯葉剤による障害や健康被害に苦しむ人が今もいる。イラク戦争は推定で数十万人ものイラクの民間人死者を出し、米軍の使った劣化ウラン弾などによる奇形児の誕生など被害は続いている。さらに、イラク戦争とそれに続くアメリカ・イギリス軍の駐留、その後発足したイラク新政権、これらにより激化した社会の混乱とイスラム教の宗派対立は、「イラクのアルカイダ」を源流とするISを生む結果になったと今では広く認識されている。

イラク戦争時、日本の小泉政権はアメリカに追随してイラク戦争を手放しで支持したが、イラク戦争を遂行した国や支持した国(オランダ、デンマークなど)と異なり、日本政府は今なお、イラク戦争を支持した政治判断の検証をしていない。それどころか政府は、憲法の専守防衛の原則に明らかに反する2015年の安保法制によって、地球上どこでもアメリカと共に集団的自衛権を行使して日本の自衛隊が軍事活動を行うことを可能にする法整備を行った。

今回の事件を受け、中東に駐留する米軍がイランから攻撃を受ける可能性がある。その場合日本は、集団的自衛権の行使として米軍と共に反撃することが求められる事態になりうる。折りしも日本政府は先月末の閣議決定で、1月中に中東地域に海上自衛隊を派遣する決定を行っている。これは、「日本関係船舶の安全確保に向けた情報収集を強化」するという名目で、防衛省設置法上の「調査・研究」を根拠として行われるものだが、自国船舶の防護を求めるトランプ政権の意向を受けた派遣であり、これによって得られた情報はアメリカと共有されることが当然考えられる。自衛隊が駐留することになった結果、場合によっては、アメリカの同盟国として自衛隊が攻撃を受けることがありうる。きわめて憂慮すべき事態である。
トランプ大統領は、環境保護や紛争の平和的解決のための国際協定から次々とアメリカを離脱させる一方、日本には高額の米国製兵器を売りつけ、日本や韓国、ドイツなど同盟国に駐留米軍経費負担の大幅増を求めるなど、国際社会の公益には関心がなくもっぱら米国の経済的利益のための「ディール」を推進する人物である。そして、日本政府はそのような指導者をもつアメリカと距離をおくどころか、その要求を唯々諾々と受入れ、米国製兵器のローン購入を含め、防衛費をかつてない規模に増加させ続けている。急速に少子高齢化が進む中、年金の引下げと生活不安(「老後2,000万円」問題)、保育所を設置し待機児童をなくす、若い人の人生の足かせになっている「奨学金」ローンの問題といった少子化対策、教育を受ける権利を実現するための学費値下げなどが本来、日本の抱える最重要課題であるにもかかわらずである。

今回の殺害は、次期大統領選挙も見据え「強いアメリカ」を演出する意図もあったとみられるが、アメリカも、そして日本も、イラク戦争がISを生み今に至っていることへの反省もなく、さらに中東地域を武力衝突の悪循環に陥れることは断じて許されない。

意見の趣旨

我々は日本政府に対し、第一に、ソレイマニ司令官殺害が戦争を止めるための正当な行為だったとするアメリカの説明を支持せず、超法的殺害として毅然と非難する態度を取るよう求める。第二に、自衛隊の中東派遣は直ちに中止すべきである。第三に、アメリカがさらなる軍隊派遣と攻撃によって武力衝突の危険を高めていることに日本として懸念を示し、問題の平和的な解決を促すことを強く要求するものである。
2020年1月5日

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2020年 1月 6日

報道関係のみなさま

世界平和アピール七人委員会

私たち世界平和アピール七人委員会は、本日、添付の通り、「米国によるイラン革命防衛体司令官殺害を非難し、すべての関係者が事態を悪化させないよう求める」を発表し、国連総長、国連総会議長、米国大使館、イラン大使館、安倍首相、茂木外相、河野防衛相に送りました。報道関係のみなさまには、私たちのアピールとその意図するところを、世界に広く伝えていただくよう、よろしくお願いします。

なお、私たちは、米国がイラン核合意を一方的に破棄し、中東の緊張が高まる情勢の中で、「調査・研究」を名目として自衛隊が中東に派遣されることについて、昨年12月12日付で「自衛隊の海外派遣を常態化してはいけない」を発表しています。これも併せて、お送りします。

「世界平和アピール七人委員会」は、1955年(昭和30年)11月、世界連邦建設同盟理事長で平凡社社長の下中弥三郎の提唱で、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の有志の集まりとして結成され、国際間の紛争は絶対に武力で解決しないことを原則に、日本国憲法の擁護、核兵器禁止、世界平和などについて内外へのアピールを発表してきました。 今回のアピールは、平和アピー
ル七人委員会発足から、138番目のアピールです。
発足時のメンバーは、下中のほか、植村環(日本YWCA会長)、茅誠司(日本学術会議会長、のちに東京大学総長)、上代たの(日本婦人平和協会会長、のちに日本女子大学学長)、平塚らいてう(日本婦人団体連合会会長)、前田多門(日本ユネスコ協会理事長、元文相)、湯川秀樹(ノーベル賞受賞者、京都大学教授、京都大学基礎物理学研究所長)でした。

その後、委員は入れ替わり、現メンバーは、武者小路公秀(国際政治学者、元国連大学副学長)、大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者、慶應義塾大学名誉教授)、池内了(宇宙論・宇宙物理学者、総合研究大学院大学名誉教授)、池辺晋一郎(作曲家、東京音楽大学客員教授)、?村薫(作家)、島薗進(上智大学教授、宗教学)です。

連絡先:世界平和アピール七人委員会事務局長 小沼通二
URL: http://worldpeace7.jp

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2020年1月6日 WP138J

米国によるイラン革命防衛体司令官殺害を非難し、
すべての関係者がこの危機を悪化させないよう求める

世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 ?村薫 島薗進

米国政府は、イラクでイラン革命防衛隊の司令官を1月3日にドローンで殺害したと発表した。これに対してイランは報復を予告している。イラク首相は主権侵害だとしている。
「米国」と「イラン」の立場を置き換えたとき、米国政府と米国民は自国軍の司令官の殺害という事態を受け入れられるだろうか。

私たち世界平和アピール七人委員会は、米国によるこの殺害を非難し、この危険な事態をさらに悪化させないよう関係するすべての国に求める。
国連安全保障理事会のメンバー諸国は 直ちに自国の立場を明示すべきであり、国連は速やかに総会を開いて対話による解決のためのあらゆる努力を行っていただきたい。
米国とイラン双方と友好関係にあると自任する日本政府は、直ちに米国に完全な自制を促すべきである。

日本政府は、米国が2019年6月に提案した有志連合には参加せず、海上自衛隊の護衛艦と哨戒機を、通行する船舶の護衛を含まない「調査・研究」のために中東に派遣すると、国会にも国民にも説明しないまま2019年12月27日に決定した。
しかし得られる情報を有志連合と共有するため、バーレーンにある米中央海軍司令部に連絡員を派遣することが明らかになり、事態が変われば派遣目的を変更するとされている。これでは米国に与するものとみなされてもしかたがない。我々が12月12日に発表したアピール『自衛隊の海外派遣を常態化してはいけない』の内容をあらためて強く求める。日本国憲法によって法的に制限された軍事組織である自衛隊を危険地域の周辺に派遣させるべきでない。日本は非軍事的手段による平和構築に積極的に取り組むべきである。

連絡先::http://worldpeace7.jp

(2020年1月6日)

下関市でも「安倍派市長によるアベ友優遇疑惑」

通常国会は、1月20日開会の予定。「桜」「カジノ」「イラン」と、政権には頭の痛い問題が山積している。開会直後からの、鋭い野党の切り込みを期待したい。

とりわけ、「桜疑惑」は、追及次第で政権を散らすことになりうる大問題である。首相たる者の行政私物化が歴然だからである。モリ・カケは、いずれも安倍晋三の責任についての疑惑は限りなく濃いものの、安倍自身の具体的関与の点において、直接証拠に欠ける。忖度した部下の責任に転嫁した形となっているのだ。これに比して、「桜を見る会」疑惑については、安倍晋三自身の責任が明確なのだ。

いやしくも首相の地位にある者において、国民のための行政を、安倍晋三個人のための行政にねじ曲げ、国民からの負託に背いたのである。その罪は深く、放置してはならない。適切な責任をとらせなければならない。

本来国民への奉仕者である公務員が、その任務に背き自分の私益のために権限を濫用する行為は、背任に該当する犯罪である。公務員のトップに位置する内閣総理大臣の行政私物化は、国家の私物化に等しい犯罪行為である。こんな人物に権力を委ねることはできない。

昨年11月18日参院予算委での田村智子質問が衝撃的だった。が、それ以後も具体的な問題が次から次への出てきた。安倍晋三の行政私物化の実態が、衆目に曝されつつある。こんな人物が、こんな政治を行っていたのだ。

これまで、安倍晋三の行政私物化の証左として、安倍の選挙区(山口4区≒下関市)内の後援会員の多くが「桜を見る会」に招待されていたことが問題とされてきた。安倍の私的な後援会活動、延いては選挙対策活動を、国費で行っていたということへの批判である。

しかし、どうも漠然と選挙区内の後援会員を招待していたというにとどまらないようなのだ。もう少し生臭い事情があるという。それが下関市長選における論功行賞だというのだ。これは、昨年末の野党の合同ヒアリングでも問題とされていると言うが、「紙の爆弾」2月号に、横田一記者(フリー)が、ルポを書いている。タイトルが、「山口県下関市『桜を見る会』税金私物化―首相の地元選挙対策と特定企業優遇」というもの。その概容をご紹介したい。

 下関市では、安倍首相と宏池会(岸田派)の林芳正・元農水大臣が父親の代からライバル関係で、市長選は両者の代理戦争の様相も呈し、市長ポストの争奪戦を続けてきた。最近三代の下関市長は、以下の通りである。
 江高潔市長(1995年?2009年)安倍派
 中尾昭友市長(09年?17年)林派
 前田晋太郎市長(17年?)安倍派

17年の市長選は、8年も続いた林派の市長ポストを、久々に安倍派奪還の選挙だった。この選挙対策として、あるいは論功行賞として、この選挙の前後に地元選挙民の招待者が膨らんだという。

問題はこの先である。

 なぜ安倍首相は、法律違反のリスクを冒してまで、「桜を見る会」を使って下関市長選などの地元選挙対策に力を入れていったのか。
 江島市長(安倍派)時代には、神戸製鋼所などの安倍首相関連企業が地元大型案件を相次いで受注して談合疑惑も浮上、田辺よし子市議(無所属)らが議会で追及した。
 こうした『アベ友優遇案件』ともいえる談合疑惑で最も有名なのが、安倍首相の出身企業であった神戸製鋼所が市のゴミ処理関連事業を連続受注したことだ。同社は談合情報が飛び交うなか、2000年に「奥山工場焼却施設」(110億円)、そして01年にも新環境センター「リサイクルプラザ」(60億円)を落札した。
 しかも奥山工場の焼却施設は「プラズマ溶融炉」で「焼却灰がリサイクルできる」ということが売りだったが、当時の神戸製鋼所の実績は皆無だったのに、なぜか受注に至った。「癒着ではないか」という声が市民の間から出たのはごく自然のことだった。
 しかもメリットとされた「焼却灰のリサイクル」は実現せずに頓挫。それでもプラズマ溶融炉の維持管理費を関連企業「神鋼ソリューション」に払い続けてきたが、林派の中尾市政になった12年8月に使用停止を決定、電気代などが浮いて経費削減をすることができた。安倍派市長時代には、神戸製鋼所からプラズマ溶融炉を購入しただけでなく、余計な維持管理費も系列企業に支払っていたが、林派市長時代に打ち止めになったということだ。
 もう一つのリサイクルプラザでも「神戸製鋼所に決まった」という談合情報が流れたが、市は入札を強行。情報通り、神戸製鋼所が落札したため、市議会で「官製談合ではないか」と追及された。
 こうした地元での『アベ友優遇政治』への反発が強まり、首相直系の江島氏は不出馬に追い込まれ、09年の下関市長選では、安倍派県議だった新人候補(友田たもつ県議)を林減の中尾市長が破った。ようやく安倍減市長による市政にピリオドが打たれたのだ。
 しかし13年に再選された中尾氏は17年の市長選で安倍首相が全面的に支援した前田氏に僅差で敗北、三選を果たせなかった。

下関市でも、安倍派市長がアベ友企業(神戸製鋼所)優遇の談合疑惑があったというのだ。既にその追及が下関市議会では行われてきたという。この横田一ルポを読むまで私はまったく知らなかった。この際、是非とも国会で徹底的な追及を期待する。日本の政治全体が腐る前に、患部を摘出しなければならない。
(2020年1月5日)

トランプこそテロリスト。アメリカこそならず者国家である。

正月気分が消し飛んだ。背筋が寒い。これは大変な事態ではないか。昨日(1月3日)トランプがイラン革命防衛隊の司令官をバグダードの空港付近で殺害したという事件である。ゴーンの逃亡などとは次元が違う。もしや開戦もと,本気になって心配しなければならない。

殺害されたソレイマニという司令官は、イランの国民的英雄とされるきわめて重要な人物だったという。最高指導者ハメネイも復讐のメッセージを出している。イラン国民が報復の挙に出ることは覚悟しなければならない。イランだけではなく、主権を侵害されたイラク国民の憤激も当然の無法な行為。いったいトランプは、こんな危険なことを,どんな理由でやらねばならなかったのか。このあとの事態をどう治めるつもりなのか。そもそも成算あってのことなのか。

トランプ氏は、「合衆国の軍は、世界随一のテロリスト、カセム・ソレイマニを殺害した空爆を完璧な精度で実行した」「その殺害は、戦争を始めるためでなく、止めるため」だったと述べたという。

しかし、愚かで邪悪なトランプよ。おまえにこそ、「テロリスト」「ならず者」でないか。そしてトランプを大統領としているアメリカこそ、「テロ支援国家」「ならず者国家」と言われるに相応しい。

また、ペンタゴンは、「大統領の指示のもと、米軍はカセム・ソレイマニを殺害することで、在外アメリカ人を守るための断固たる防衛措置をとった」と発表したという。

同じことをイランの国防省も言いたいはずである。「最高指導者の指示のもと、イラン軍は最悪のテロリスト・トランプを殺害することで、イランの国民の生命と財産を守るための断固たる防衛措置をとった」と。

明らかなことは、この愚行によって、イランとアメリカの緊張は一気に激化することだ。いや、中東全体が一触即発の事態となる。もしかしたら、「一触」は既に通り過ぎていて、「即発」が待ち受けているのかも知れない。

オバマ前政権でホワイトハウスの中東・ペルシャ湾政策を調整していたフィリップ・ゴードンは、ソレイマニ殺害はアメリカからイラクへの「宣戦布告」のようなものだと言う。

その自覚あってか、米国務省はイラク国内のアメリカ人に「ただちに国外に退去するよう」警告し、米軍は兵3000人を中東に増派する方針という。オバマが築いた中東平和への努力をトランプがぶち壊している。なんということだ。

アメリカとイランの現在の緊張は、イラン核合意からトランプが一方的に離脱したことに始まっている。火に油を注ぐ今回のアメリカの行為には、世界がトランプを批判しなければならない。とりわけ、これまで動きが鈍かった関係各国が緊急に動かなければならない。

この事態に日本は鳴かず飛ばずのようだが、傲慢で愚かなトランプと肌が合うという、お友達の日本首相は、トランプに沈静化の努力をするよう、身を挺して説得しなければならない。たとえ失敗しても、誠実にやるだけのことをやるかどうか、国民は見ている。それをしなければ、「外交はやる気のないアベ政権」の看板を掲げるがよい。

もう一点。中東へ派遣を閣議決定した護衛艦一隻とP?3C哨戒機。あの決定を取り消さねばならない。派遣名目の「調査・研究」をするまでもない。中東情勢の厳しさは既によく分かった。よく分かった以上は、武力を紛争地に展開する愚は避けなければならない。イランから見れば、憎きアメリカの同盟軍となるのだから。失うものは大きい。
(2020年1月4日)

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